『神のチートで勇往邁進!〜20年後の同窓会に現れた独眼竜は、三度(みたび)恋の火を灯す〜』   作:夜幻

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第54話「三人の恋敵」

六月。

 

梅雨入りを間近に控えた旭高校では、蒸し暑い日が続いていた。

 

三年生の教室にも、少しずつ夏の気配が近づいている。

 

けれど。

 

そんな季節の変化以上に。

 

悠飛を取り巻く空気は、大きく変わっていた。

 

「おはよう、悠飛くん」

 

一花が笑う。

 

「おはよう」

 

「昨日の課題、終わった?」

 

「ああ」

 

「さすがだね」

 

その直後。

 

「悠飛さん、おはようございます!」

 

四葉がやって来る。

 

「おはよう、四葉」

 

「今日は体育がありますよ!」

 

「そうだな」

 

「楽しみです!」

 

さらに。

 

「悠飛」

 

六華が隣に立つ。

 

「おはよう」

 

「おはよう、六華」

 

「今日のお昼、一緒に食べよう」

 

「ああ」

 

三人。

 

一花。

 

四葉。

 

六華。

 

それぞれが。

 

悠飛に向ける笑顔。

 

以前なら。

 

ただ仲の良い友人たちに見えた。

 

しかし今は違う。

 

三人とも。

 

自分の想いを自覚している。

 

そして。

 

互いにそれを知っている。

 

「……」

 

二乃が少し離れたところから見ていた。

 

「始まったわね」

 

三玖も頷く。

 

「うん」

 

五月が困ったように笑う。

 

「三人とも、積極的になりましたね」

 

「私たちも他人事じゃないけどね」

 

二乃が言う。

 

「……」

 

三玖は悠飛を見る。

 

「私も」

 

その目には。

 

静かな決意が宿っていた。

 

 

一時間目。

 

数学。

 

教師が黒板に問題を書く。

 

「では、この問題を」

 

「如月」

 

「はい」

 

悠飛が立ち上がる。

 

黒板に答えを書いていく。

 

「正解だ」

 

「ありがとうございます」

 

席に戻る。

 

「さすが悠飛さん!」

 

四葉が小声で言う。

 

「授業中だぞ」

 

風太郎が注意する。

 

「すみません!」

 

一花が笑う。

 

六華も。

 

「いつも通りだね」

 

「何が?」

 

「悠飛は」

 

「そうかな」

 

「うん」

 

六華は笑う。

 

一花が二人を見る。

 

「……」

 

四葉も。

 

「……」

 

三人の間に。

 

微妙な空気が流れる。

 

それに気づいた風太郎が。

 

「……面倒なことになってきたな」

 

「風太郎?」

 

悠飛が振り返る。

 

「何でもない」

 

 

昼休み。

 

屋上。

 

悠飛は一人で弁当を食べようとしていた。

 

「悠飛くん!」

 

一花。

 

「一緒に食べてもいい?」

 

「ああ」

 

一花が座る。

 

すると。

 

「悠飛さん!」

 

四葉。

 

「私もいいですか?」

 

「もちろん」

 

さらに。

 

「悠飛」

 

六華。

 

「私も」

 

「どうぞ」

 

結果。

 

四人で昼食。

 

「……」

 

一花。

 

「……」

 

四葉。

 

「……」

 

六華。

 

三人が互いを見る。

 

「今日はいい天気ですね!」

 

四葉が言う。

 

「そうだね」

 

一花。

 

「暑いけど」

 

六華。

 

「でも、気持ちいい」

 

悠飛だけが。

 

三人の微妙な空気に気づいていない。

 

「みんな、仲良くなったな」

 

「……」

 

三人が同時に悠飛を見る。

 

「何?」

 

「何でもない」

 

三人の声が重なった。

 

「……?」

 

悠飛は首を傾げた。

 

 

食後。

 

四葉が立ち上がる。

 

「悠飛さん!」

 

「ん?」

 

「午後の体育、一緒に組みましょう!」

 

「いいよ」

 

「やった!」

 

一花が言う。

 

「じゃあ私も」

 

「もちろん」

 

六華も。

 

「私も一緒に」

 

「三人とも?」

 

「うん」

 

「分かった」

 

悠飛は笑った。

 

三人の少女は。

 

心の中で同じことを考えていた。

 

――絶対に負けない。

 

 

午後。

 

体育。

 

男女混合のグループ競技。

 

教師がチーム分けをする。

 

「それでは、四人一組で」

 

「悠飛!」

 

四葉が手を挙げる。

 

「一緒に!」

 

「私も」

 

一花も。

 

「私も」

 

六華。

 

「……」

 

教師が苦笑する。

 

「如月は人気者だな」

 

「そうなんです!」

 

四葉が嬉しそうに答える。

 

「じゃあ、その四人で」

 

「やった!」

 

四葉が喜ぶ。

 

ゲームが始まる。

 

四葉が走る。

 

「悠飛さん!」

 

ボールを渡す。

 

「任せろ」

 

悠飛が受け取る。

 

一花へ。

 

「一花!」

 

「ありがとう!」

 

そして六華へ。

 

「六華!」

 

「任せて!」

 

四人で協力し。

 

見事に得点。

 

「やった!」

 

四葉が悠飛とハイタッチ。

 

「ナイス!」

 

一花も。

 

「楽しいね」

 

六華も。

 

「うん」

 

三人の笑顔。

 

その光景を。

 

二乃と三玖が見ていた。

 

「……」

 

二乃が腕を組む。

 

「本当に積極的になったわね」

 

三玖は小さく頷く。

 

「私も負けたくない」

 

「そうね」

 

 

放課後。

 

三人はそれぞれ。

 

別々の場所で悠飛を誘った。

 

「悠飛くん」

 

一花。

 

「今日、一緒に帰らない?」

 

「いいよ」

 

その直後。

 

「悠飛さん!」

 

四葉。

 

「帰りに寄りたい場所があります!」

 

「どこ?」

 

「秘密です!」

 

さらに。

 

六華。

 

「悠飛」

 

「ん?」

 

「今日、少し時間ある?」

 

「あるけど」

 

「じゃあ、私と……」

 

三人が顔を見合わせる。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

一花が笑った。

 

「どうする?」

 

四葉も笑う。

 

「みんなで行きませんか?」

 

六華も。

 

「それでいい」

 

悠飛は笑う。

 

「じゃあ、四人で行こう」

 

「……」

 

三人とも。

 

心の中では。

 

少しだけ複雑だった。

 

でも。

 

それ以上に。

 

一緒にいられることが嬉しい。

 

 

向かった先は。

 

商店街だった。

 

四葉が言う。

 

「ここです!」

 

「何をするんだ?」

 

「食べ歩きです!」

 

「なるほど」

 

一花が笑う。

 

「四葉らしい」

 

六華も。

 

「楽しそう」

 

四人で歩く。

 

たこ焼き。

 

団子。

 

アイス。

 

「美味しい!」

 

四葉が笑う。

 

「悠飛くん、これ食べてみて」

 

一花が団子を差し出す。

 

「いいの?」

 

「うん」

 

「ありがとう」

 

「……」

 

四葉が見る。

 

「一花さん、それ……」

 

「ん?」

 

「私もやります!」

 

四葉も自分のアイスを差し出す。

 

「はい!」

 

「ありがとう」

 

悠飛が食べる。

 

「美味しい」

 

「ですよね!」

 

六華も。

 

「じゃあ、これ」

 

「何?」

 

「抹茶」

 

「ありがとう」

 

悠飛が食べる。

 

「うん、美味しい」

 

「よかった」

 

三人が。

 

それぞれ嬉しそうに笑う。

 

しかし。

 

その光景を。

 

少し離れた場所から見ていた二乃。

 

「……」

 

三玖。

 

「……」

 

五月。

 

「……」

 

二乃がため息。

 

「本当に三人とも、完全に恋する乙女ね」

 

三玖が呟く。

 

「……私も行けばよかった」

 

五月は苦笑した。

 

「私も少しだけ、羨ましいです」

 

 

夕方。

 

商店街の外れ。

 

四葉が言った。

 

「今日は楽しかったです!」

 

「そうだな」

 

「また来ましょう!」

 

一花も。

 

「うん」

 

六華。

 

「今度は五人で」

 

「五人?」

 

悠飛が聞く。

 

「二乃たちも」

 

「なるほど」

 

四人は笑った。

 

その時。

 

一花が突然。

 

「悠飛くん」

 

「ん?」

 

「ちょっとだけ、二人で話せる?」

 

「いいよ」

 

四葉と六華が少し離れる。

 

一花は悠飛を見る。

 

「この前」

 

「うん」

 

「屋上で言いかけたこと」

 

「……」

 

「まだ覚えてる?」

 

「ああ」

 

「そっか」

 

一花は少し笑う。

 

「もう一度、言うね」

 

心臓が鳴る。

 

「私は――」

 

「一花!」

 

四葉の声。

 

「……」

 

一花が振り返る。

 

「すみません!」

 

四葉が慌てて近づいてくる。

 

「六華ちゃんが呼んでます!」

 

「え?」

 

六華を見る。

 

六華が困ったように手を振っていた。

 

「ごめん」

 

「……ううん」

 

一花は笑った。

 

「また今度」

 

「うん」

 

一花は。

 

まだ告白できなかった。

 

 

その帰り道。

 

四葉は一花の隣を歩く。

 

「一花さん」

 

「何?」

 

「……ごめんなさい」

 

「どうして?」

 

「また邪魔しちゃいました」

 

一花は笑う。

 

「気にしてないよ」

 

「本当ですか?」

 

「うん」

 

「……」

 

四葉は少し俯く。

 

「私」

 

「ん?」

 

「一花さんに勝ちたいです」

 

一花は少し驚く。

 

「……うん」

 

「でも」

 

四葉は笑う。

 

「一花さんにも幸せになってほしいです」

 

「四葉……」

 

「だから」

 

四葉は手を差し出す。

 

「一緒に頑張りませんか?」

 

一花はその手を見る。

 

そして。

 

握った。

 

「うん」

 

「約束です!」

 

「約束」

 

 

一方。

 

六華と悠飛。

 

「今日、楽しかったな」

 

「うん」

 

「でも」

 

六華は少し笑う。

 

「一花、まだ何か言いたそうだった」

 

「そうだな」

 

「四葉も」

 

「……」

 

「悠飛」

 

「ん?」

 

「三人とも、本気だよ」

 

「分かってる」

 

「本当に?」

 

「ああ」

 

悠飛は前を向く。

 

「だからこそ」

 

「……」

 

「俺も、ちゃんと向き合わないといけないと思ってる」

 

六華は安心したように笑った。

 

「それならいい」

 

「六華は?」

 

「私?」

 

「ああ」

 

「私は」

 

六華は少しだけ悠飛の腕に近づく。

 

「もう遠慮しない」

 

「……」

 

「幼馴染だからって、譲るつもりもない」

 

悠飛は苦笑する。

 

「強くなったな」

 

「誰のせいだと思ってるの?」

 

「俺?」

 

「そう」

 

二人は笑った。

 

 

翌日。

 

昼休み。

 

二乃が悠飛の前に立った。

 

「悠飛」

 

「ん?」

 

「今度、私とも二人で出かけない?」

 

「いいよ」

 

三玖も。

 

「私も」

 

「もちろん」

 

五月も。

 

「私も……」

 

悠飛は笑った。

 

「じゃあ、みんなで行く?」

 

「違う!」

 

二乃が叫ぶ。

 

「二人で!」

 

「……」

 

悠飛が固まる。

 

「分かった」

 

三玖も。

 

「私も二人で」

 

五月も。

 

「……私も」

 

悠飛は。

 

ようやく理解した。

 

「……なるほど」

 

風太郎が横でため息をつく。

 

「遅すぎる」

 

「何が?」

 

「何でもない」

 

 

放課後。

 

一花。

 

四葉。

 

六華。

 

三人が廊下に並ぶ。

 

一花が言う。

 

「ねえ」

 

「はい」

 

「私たち」

 

「……」

 

「恋敵だね」

 

四葉は少し驚き。

 

それから笑った。

 

「そうですね!」

 

六華も。

 

「うん」

 

「でも」

 

一花が続ける。

 

「私は二人とも大切」

 

「私もです」

 

「私も」

 

三人は笑った。

 

そして。

 

一花が手を差し出した。

 

「誰が選ばれても」

 

「……」

 

「最後まで、友達でいよう」

 

四葉が手を重ねる。

 

「はい!」

 

六華も重ねる。

 

「約束」

 

三人の手が重なった。

 

けれど。

 

その目には。

 

それぞれの決意が宿っていた。

 

――絶対に譲らない。

 

――私も好き。

 

――いつか、選んでもらう。

 

三人は。

 

互いに笑いながら。

 

同じ少年を想っていた。

 

恋敵。

 

それは。

 

敵という言葉だけでは表せない。

 

大切な友達であり。

 

同じ人を愛する仲間でもある。

 

だからこそ。

 

これから先。

 

恋はもっと複雑になる。

 

もっと激しくなる。

 

そして。

 

悠飛自身も。

 

いつか。

 

答えを出さなければならない。

 

初夏の風が。

 

三人の髪を揺らした。

 

恋の季節は。

 

まだ始まったばかりだった。

 

 

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