『神のチートで勇往邁進!〜20年後の同窓会に現れた独眼竜は、三度(みたび)恋の火を灯す〜』   作:夜幻

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第60話「日の出祭、開幕」

――日の出祭、当日。

 

朝。

 

旭高校の校門には、色鮮やかな横断幕が掲げられていた。

 

『第○回 旭高校・日の出祭』

 

その文字の下を。

 

朝早くから大勢の生徒たちが行き交っている。

 

普段なら静かな校舎も。

 

今日は違った。

 

「おはようございます!」

 

「こっち、飾り付け終わった?」

 

「体育館の機材、確認した?」

 

「お客さん来てる!」

 

「パンフレット足りないぞ!」

 

校内は。

 

まるで一つの街のような賑わいだった。

 

そして。

 

三年生にとっては。

 

高校生活最後の文化祭。

 

誰もが。

 

今日という一日を忘れないように。

 

精一杯楽しもうとしていた。

 

 

「うわぁ……!」

 

校門をくぐった四葉が。

 

目を輝かせる。

 

「すごいです!」

 

「昨日まで学校だったのに」

 

一花も笑う。

 

「今日は別世界だね」

 

二乃は。

 

周囲を見渡した。

 

「悪くないじゃない」

 

三玖は。

 

静かに頷く。

 

「人が多い」

 

五月は。

 

パンフレットを開く。

 

「まずはクラスの出し物ですね」

 

そして。

 

六華。

 

「……」

 

少しだけ。

 

感慨深そうに校舎を見る。

 

「最後なんだね」

 

「そうだな」

 

隣にいた悠飛が答える。

 

「高校生活最後の日」

 

「うん」

 

六華は笑った。

 

「最高の日にしよう」

 

「もちろん」

 

悠飛も笑う。

 

その瞬間。

 

「悠飛さん!」

 

四葉が飛び込んできた。

 

「今日は一緒に回りましょうね!」

 

「おう」

 

「約束です!」

 

「覚えてる」

 

四葉は嬉しそうに笑った。

 

その横で。

 

一花が。

 

「悠飛くん」

 

「ん?」

 

「私の劇も見に来てね」

 

「もちろん」

 

二乃。

 

「私の店にも来なさいよ」

 

「分かった」

 

三玖。

 

「私のところも」

 

「ああ」

 

五月。

 

「私の担当場所にもお願いします」

 

「もちろん」

 

六華。

 

「私とも約束したよね?」

 

「うん」

 

「……」

 

一気に六人から予定を入れられる。

 

悠飛は。

 

少し苦笑した。

 

「今日、忙しくなりそうだな」

 

風太郎が横から言う。

 

「自業自得だ」

 

「なんでだよ」

 

「知らん」

 

風太郎は呆れた顔をする。

 

「俺は自分の仕事をする」

 

「頑張れよ」

 

「お前もな」

 

二人は拳を軽く合わせた。

 

 

午前九時。

 

校内放送が響いた。

 

『大変長らくお待たせしました』

 

全校生徒が。

 

一斉に動きを止める。

 

『ただいまより――』

 

校庭の時計を見る。

 

『日の出祭を開催します!』

 

――ワッ!

 

校内から。

 

歓声が上がった。

 

拍手。

 

笑い声。

 

音楽。

 

日の出祭が。

 

正式に始まった。

 

 

最初に向かったのは。

 

一花の劇だった。

 

体育館。

 

ステージの前には。

 

多くの観客が座っている。

 

「一花、大丈夫かな」

 

四葉が心配そうに言う。

 

「大丈夫」

 

悠飛は笑った。

 

「一花ならやれる」

 

「……」

 

六華は。

 

悠飛の横顔を見る。

 

――信頼してるんだ。

 

それが。

 

少しだけ羨ましかった。

 

そして。

 

幕が上がる。

 

一花が登場した。

 

空気が変わる。

 

さっきまでの高校生ではない。

 

舞台の上では。

 

一人の女優だった。

 

悠飛は。

 

じっと見つめる。

 

「……」

 

演技。

 

表情。

 

声。

 

どれも。

 

以前より。

 

ずっと上手くなっていた。

 

劇が終わる。

 

大きな拍手。

 

一花が舞台袖から出てくる。

 

「どうだった?」

 

「すごかった」

 

悠飛が即答する。

 

「本当に?」

 

「ああ」

 

「……」

 

一花は。

 

嬉しそうに笑った。

 

「ありがとう」

 

そして。

 

小さな声で。

 

「悠飛くんに見てもらえてよかった」

 

 

次は。

 

二乃の模擬店。

 

「いらっしゃいませ!」

 

エプロン姿の二乃。

 

普段よりも。

 

さらに華やかに見える。

 

「悠飛、来たわね」

 

「ああ」

 

「何食べる?」

 

「おすすめは?」

 

「全部」

 

「全部?」

 

「当然でしょ」

 

二乃は笑う。

 

「私が作ったんだから」

 

「じゃあ」

 

悠飛が注文する。

 

「これ」

 

「任せて」

 

しばらくして。

 

料理が出てくる。

 

「いただきます」

 

一口。

 

「……美味い」

 

「本当?」

 

「うん」

 

「……」

 

二乃は。

 

嬉しそうに笑った。

 

「ならよかった」

 

そして。

 

小さく呟く。

 

「頑張った甲斐があった」

 

 

三玖の担当は。

 

歴史展示だった。

 

「……」

 

三玖は。

 

悠飛に説明する。

 

「ここは」

 

「うん」

 

「江戸時代の文化」

 

「詳しいな」

 

「好きだから」

 

「三玖らしい」

 

三玖は。

 

少し照れながら。

 

「悠飛も」

 

「ん?」

 

「興味ある?」

 

「ある」

 

「……」

 

三玖の顔が。

 

少し明るくなる。

 

「じゃあ」

 

「うん」

 

「あとで一緒に回ろう」

 

「もちろん」

 

 

四葉は。

 

体育館で。

 

子供向けのゲームコーナーを担当していた。

 

「次の方どうぞー!」

 

「四葉」

 

「悠飛さん!」

 

「忙しそうだな」

 

「はい!」

 

四葉は。

 

汗を拭きながら笑う。

 

「でも楽しいです!」

 

「無理するなよ」

 

「大丈夫です!」

 

「本当に?」

 

「はい!」

 

四葉は。

 

元気に笑った。

 

その笑顔を見ながら。

 

悠飛も笑う。

 

 

五月は。

 

講演会の準備をしていた。

 

「……」

 

ステージの設営。

 

椅子。

 

マイク。

 

資料。

 

すべて確認する。

 

「五月」

 

悠飛が声をかける。

 

「はい?」

 

「手伝おうか?」

 

「ありがとうございます」

 

二人で準備する。

 

「もうすぐ」

 

五月が言った。

 

「無堂さんの講演ですね」

 

「ああ」

 

「……」

 

五月は。

 

少し不安そうな顔をする。

 

「どうした?」

 

「いえ」

 

「何か気になる?」

 

「……」

 

五月は。

 

首を横に振った。

 

「大丈夫です」

 

しかし。

 

その言葉とは裏腹に。

 

胸には。

 

小さな違和感が残っていた。

 

 

昼。

 

校庭。

 

六華は。

 

悠飛と二人で歩いていた。

 

「ようやく」

 

六華が笑う。

 

「二人になれたね」

 

「そうだな」

 

「今日は」

 

六華は。

 

少し照れながら。

 

「楽しい?」

 

「ああ」

 

「私も」

 

しばらく。

 

二人で歩く。

 

「ねえ、悠飛」

 

「ん?」

 

「昔のこと」

 

「ああ」

 

「まだ思い出す?」

 

「少しずつ」

 

「……」

 

六華は。

 

古い写真を思い出す。

 

「約束」

 

「うん」

 

「覚えてる?」

 

悠飛は。

 

少し笑う。

 

「大きくなったら、お嫁さんになるってやつ?」

 

「……!」

 

六華の顔が赤くなる。

 

「そ、そう」

 

「でも」

 

悠飛は。

 

前を見ながら言う。

 

「子供の頃の約束だからな」

 

「……」

 

六華は。

 

少し寂しくなる。

 

「そうだね」

 

けれど。

 

悠飛は続けた。

 

「今の気持ちは」

 

「……」

 

「今の俺が決めるものだろ」

 

六華は。

 

目を見開く。

 

「……うん」

 

「だから」

 

悠飛は笑う。

 

「昔の約束だけで何かを決めるつもりはない」

 

「……」

 

「今、大切な人たちと過ごして」

 

「うん」

 

「その中で」

 

悠飛は。

 

少しだけ空を見る。

 

「自分がどうしたいかを決めたい」

 

六華は。

 

胸が熱くなった。

 

「悠飛」

 

「ん?」

 

「ありがとう」

 

「何が?」

 

「なんでもない」

 

六華は笑った。

 

 

午後。

 

いよいよ。

 

特別講演の時間が近づいていた。

 

体育館には。

 

多くの生徒が集まっている。

 

教師。

 

保護者。

 

来賓。

 

そして。

 

五つ子と六華。

 

悠飛。

 

風太郎。

 

「……」

 

風太郎は。

 

舞台袖を見る。

 

無堂が。

 

ゆっくりと壇上へ上がった。

 

拍手。

 

無堂は。

 

笑顔で頭を下げる。

 

「皆さん」

 

マイクを握る。

 

「本日は、日の出祭という素晴らしい日にお招きいただき、ありがとうございます」

 

再び拍手。

 

「私は教育に携わる者として」

 

無堂は話し始めた。

 

「若者たちに伝えたいことがあります」

 

悠飛は。

 

腕を組んで聞いていた。

 

「人生とは」

 

無堂が続ける。

 

「競争です」

 

会場が静まる。

 

「努力する者が報われる」

 

「才能ある者が上へ行く」

 

「そして」

 

無堂は。

 

生徒たちを見る。

 

「優れた人間が、そうでない人間を導く」

 

風太郎が眉を寄せた。

 

「……」

 

悠飛も。

 

何か引っかかった。

 

無堂の話は。

 

一見すれば。

 

教育論。

 

しかし。

 

どこか。

 

人を選別するような響きがある。

 

「……」

 

六華も。

 

不安そうに無堂を見る。

 

そして。

 

無堂は。

 

突然。

 

一人の生徒へ視線を向けた。

 

「特に」

 

「……?」

 

「ここにいる」

 

無堂の視線。

 

悠飛へ。

 

「非常に優秀な生徒には」

 

会場がざわつく。

 

「自分がどれだけ特別なのか」

 

「……」

 

「理解してもらいたい」

 

悠飛は。

 

無堂を見返した。

 

「……俺ですか?」

 

無堂は笑った。

 

「そうです」

 

「……」

 

「如月悠飛君」

 

体育館が。

 

静まり返った。

 

「あなたは」

 

無堂が続ける。

 

「非常に優れた才能を持っている」

 

「……」

 

「学業」

 

「……」

 

「武術」

 

「……」

 

「人心掌握」

 

「……」

 

「どれを取っても」

 

無堂は笑う。

 

「普通の高校生とは違う」

 

風太郎が立ち上がる。

 

「無堂さん」

 

「はい?」

 

「それが何だと言うんですか?」

 

無堂は。

 

風太郎を見る。

 

「君は?」

 

「上杉風太郎です」

 

「なるほど」

 

無堂は。

 

少し笑う。

 

「君も優秀な生徒だ」

 

「どうも」

 

「しかし」

 

無堂の声が。

 

少し低くなる。

 

「優秀な人間には」

 

「……」

 

「それ相応の責任があります」

 

悠飛は。

 

立ち上がった。

 

「責任?」

 

「ええ」

 

「それは」

 

悠飛は。

 

無堂を見据える。

 

「自分より弱い人間を支配することですか?」

 

会場が。

 

ざわめく。

 

無堂の笑顔が。

 

一瞬。

 

消えた。

 

「……面白いことを言いますね」

 

「違いますか?」

 

「教育とは」

 

無堂は答える。

 

「正しい方向へ導くことです」

 

「誰が正しいと決める?」

 

「私です」

 

「……」

 

悠飛は。

 

静かに言った。

 

「それは教育じゃない」

 

「……」

 

「押し付けです」

 

体育館が。

 

完全に静まった。

 

五つ子。

 

六華。

 

風太郎。

 

全員が。

 

悠飛を見ていた。

 

無堂は。

 

しばらく黙っていた。

 

そして。

 

笑った。

 

「なるほど」

 

「……」

 

「あなたは」

 

無堂は。

 

悠飛を見つめる。

 

「なかなか面白い」

 

そして。

 

壇上から降りる。

 

「今日のところは」

 

「……」

 

「ここまでにしましょう」

 

講演は。

 

予定より早く終了した。

 

 

体育館の外。

 

「悠飛!」

 

一花が駆け寄る。

 

「大丈夫?」

 

「ああ」

 

二乃も。

 

「何なの、あの人」

 

「分からない」

 

三玖。

 

「危険」

 

「俺もそう思う」

 

四葉。

 

「でも悠飛さん、格好良かったです!」

 

「ありがとう」

 

五月。

 

「無堂さん」

 

「うん」

 

「何か」

 

五月は。

 

言葉を探す。

 

「私たちを試しているような」

 

「……」

 

六華が。

 

「私もそう感じた」

 

風太郎が。

 

資料を持ってやってくる。

 

「俺もだ」

 

「風太郎」

 

「無堂は」

 

風太郎は。

 

低い声で言った。

 

「何かを狙っている」

 

「……」

 

その瞬間。

 

校内放送が響いた。

 

『生徒の皆さんに連絡します』

 

全員が。

 

顔を上げる。

 

『体育館裏で、機材トラブルが発生しました』

 

「機材トラブル?」

 

五月が言う。

 

『関係者は至急、体育館裏へ――』

 

放送が。

 

突然。

 

途切れた。

 

「……」

 

悠飛の顔が変わる。

 

「行くぞ」

 

「悠飛?」

 

「何かおかしい」

 

風太郎も。

 

「俺も行く」

 

六華。

 

「私も」

 

五つ子も。

 

「私たちも!」

 

七人は。

 

体育館裏へ走った。

 

 

体育館裏。

 

そこには。

 

倒れた機材。

 

そして。

 

一人の男子生徒が。

 

「……!」

 

四葉が駆け寄る。

 

「大丈夫ですか!」

 

「う……」

 

男子生徒は。

 

頭を押さえている。

 

「何があった?」

 

悠飛が聞く。

 

「分からない……」

 

「誰か見なかった?」

 

男子生徒は。

 

震えながら。

 

「黒い服の男……」

 

「……!」

 

六華が。

 

昨日の男を思い出す。

 

「無堂さんの……?」

 

悠飛は。

 

周囲を見る。

 

誰もいない。

 

だが。

 

地面に。

 

一枚の紙が落ちていた。

 

拾い上げる。

 

そこには。

 

一言だけ。

 

『第一幕、終了』

 

「……」

 

風太郎が。

 

顔をしかめる。

 

「やっぱり」

 

「何?」

 

一花が聞く。

 

風太郎は。

 

悠飛を見る。

 

「日の出祭は」

 

「……」

 

「まだ始まったばかりだ」

 

悠飛は。

 

紙を握りしめた。

 

「……そうだな」

 

そして。

 

五つ子と六華を見る。

 

「みんな」

 

「うん」

 

「絶対に離れるな」

 

四葉が頷く。

 

「はい!」

 

二乃も。

 

「分かった」

 

三玖。

 

「任せて」

 

五月。

 

「はい」

 

六華。

 

「約束する」

 

悠飛は。

 

一人一人を見る。

 

「今日を」

 

「……」

 

「最高の思い出にする」

 

「……」

 

「そのためなら」

 

悠飛は。

 

拳を握る。

 

「俺が全部止める」

 

 

その頃。

 

校舎の屋上。

 

無堂は。

 

日の出祭の会場を見下ろしていた。

 

「……」

 

生徒たち。

 

笑顔。

 

歓声。

 

その中に。

 

悠飛たち。

 

「如月悠飛」

 

無堂は。

 

静かに呟く。

 

「あなたがどこまで耐えられるか」

 

風が吹く。

 

「見せてもらいましょう」

 

そして。

 

日の出祭は。

 

まだ。

 

始まったばかりだった。

 

青春最後の文化祭。

 

笑顔の裏側で。

 

大きな事件の幕が。

 

静かに。

 

上がり始めていた。

 

 

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