『神のチートで勇往邁進!〜20年後の同窓会に現れた独眼竜は、三度(みたび)恋の火を灯す〜』   作:夜幻

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第七章 日の出祭――独眼竜誕生 第61話「五つ子と六華と莉々華の読切」

日の出祭、開催初日。

 

午後になっても、旭高校の熱気は一向に冷める気配がなかった。

 

午前中に行われた特別講演では、教育評論家・無堂の不穏な言動と、体育館裏で起きた機材トラブルによって、一時的に校内が騒然となった。

 

しかし、学校側の迅速な対応もあり、文化祭そのものは予定通り続行されていた。

 

「……本当に大丈夫なのかな」

 

廊下を歩きながら、五月が心配そうに呟く。

 

「大丈夫ですよ」

 

四葉が答える。

 

「先生たちもちゃんと確認してくれてますし!」

 

「四葉」

 

悠飛が振り返る。

 

「無理に明るくしなくてもいいぞ」

 

「……」

 

四葉が一瞬黙る。

 

「やっぱり、悠飛さんには分かっちゃいますか?」

 

「ああ」

 

「……怖いです」

 

四葉は小さく笑った。

 

「正直に言うと、ちょっとだけ」

 

「そうだよな」

 

悠飛は優しく言う。

 

「だから、何かあったらすぐ俺に言え」

 

「はい!」

 

四葉は頷いた。

 

その横で。

 

一花が小さく笑う。

 

「本当に、悠飛くんって頼りになるよね」

 

「そう?」

 

「そうだよ」

 

二乃も口を挟む。

 

「まあ、そこは認めるわ」

 

三玖も。

 

「頼りになる」

 

五月も。

 

「私もそう思います」

 

六華は。

 

「……私も」

 

そして。

 

「だからこそ」

 

六華は真剣な顔で続ける。

 

「一人で全部背負わないでね」

 

「……」

 

悠飛は少し驚いた。

 

「分かった」

 

「本当に?」

 

「ああ」

 

「約束?」

 

「約束」

 

六華は安心したように笑った。

 

 

その時だった。

 

「おーい!」

 

聞き覚えのある声が、廊下の向こうから響いた。

 

「あれ?」

 

一花が振り返る。

 

「誰?」

 

四葉が目を細める。

 

廊下の向こうから、こちらへ歩いてくる少女。

 

長い髪を揺らしながら、手を振っている。

 

「みんなー!」

 

「……莉々華?」

 

六華が目を見開いた。

 

少女――莉々華は。

 

満面の笑みで駆け寄ってきた。

 

「久しぶり!」

 

「莉々華ちゃん!」

 

四葉が嬉しそうに駆け寄る。

 

「来てくれたんですね!」

 

「もちろん!」

 

莉々華は笑う。

 

「日の出祭だもん。来るに決まってるじゃん」

 

一花も笑顔になる。

 

「いらっしゃい」

 

「一花ちゃんも久しぶり」

 

「うん」

 

二乃が腕を組む。

 

「相変わらず元気ね」

 

「二乃ちゃんに言われたくないなぁ」

 

「何よ」

 

「ふふっ」

 

三玖も微笑む。

 

「莉々華、久しぶり」

 

「三玖ちゃんも!」

 

五月も。

 

「来てくださってありがとうございます」

 

「こちらこそ!」

 

そして。

 

莉々華は。

 

最後に悠飛を見る。

 

「……」

 

じーっ。

 

「……何だ?」

 

悠飛が首を傾げる。

 

莉々華は。

 

しばらく彼を見つめたあと。

 

ニヤッと笑った。

 

「なるほど」

 

「何が?」

 

「これが噂の悠飛くんかぁ」

 

「噂?」

 

「うん」

 

「どんな?」

 

「秘密」

 

「なんだそれ」

 

悠飛が苦笑する。

 

莉々華は。

 

楽しそうに笑った。

 

 

「そういえば」

 

六華が尋ねる。

 

「今日は一人?」

 

「うん」

 

「家族は?」

 

「あとで来るって」

 

「そう」

 

「それよりさ」

 

莉々華は。

 

五つ子と六華を見る。

 

「みんなで何か回らない?」

 

「いいわね」

 

二乃が即答した。

 

「せっかく来たんだし」

 

「賛成!」

 

四葉が手を挙げる。

 

「私も!」

 

「じゃあ」

 

一花が笑う。

 

「七人で回ろうか」

 

「七人?」

 

悠飛が聞く。

 

「もちろん」

 

一花が言った。

 

「私たち六人と莉々華ちゃん」

 

「……」

 

悠飛は。

 

少し苦笑する。

 

「俺は?」

 

「悠飛くんは付き添い」

 

「付き添いかよ」

 

「冗談」

 

一花が笑った。

 

「八人でね」

 

 

最初に訪れたのは。

 

三年生の教室で開かれていた喫茶店だった。

 

「いらっしゃいませー!」

 

「わぁ!」

 

莉々華が目を輝かせる。

 

「すごい!」

 

「結構本格的でしょ?」

 

一花が言う。

 

「文化祭って感じ!」

 

「莉々華」

 

六華が笑う。

 

「何食べたい?」

 

「ケーキ!」

 

「即答ね」

 

二乃が笑う。

 

「じゃあ私も」

 

「私も!」

 

四葉が手を上げる。

 

「私もケーキ」

 

「四葉はさっき食べてなかった?」

 

「別腹です!」

 

「それ、よく聞くけど本当に別腹なの?」

 

悠飛が言う。

 

「本当です!」

 

「そうか」

 

「そうです!」

 

全員が笑った。

 

 

喫茶店を出ると。

 

莉々華は悠飛の隣を歩いていた。

 

「ねえ」

 

「ん?」

 

「悠飛くん」

 

「何?」

 

「モテるでしょ?」

 

「……」

 

悠飛が固まる。

 

後ろから。

 

「莉々華!」

 

六華が慌てて声を上げる。

 

「いきなり何を言ってるの!」

 

「だって」

 

莉々華は振り返る。

 

「五つ子ちゃんたち、みんな悠飛くんのこと気にしてるじゃん」

 

「……」

 

五つ子が。

 

一斉に黙る。

 

「……」

 

悠飛は。

 

全員を見る。

 

「……そうなのか?」

 

「鈍感!」

 

莉々華が笑った。

 

「ははは!」

 

「笑うなよ」

 

「だって面白いんだもん」

 

六華は。

 

額に手を当てた。

 

「もう……」

 

 

その後。

 

八人は校内を見て回った。

 

美術部の展示。

 

写真部の作品。

 

演劇部の舞台。

 

吹奏楽部の演奏。

 

中庭では。

 

軽音楽部がライブを行っている。

 

「青春って感じだね」

 

一花が呟く。

 

「うん」

 

三玖が頷く。

 

「高校最後だし」

 

「……」

 

その言葉に。

 

六華は少しだけ寂しそうな顔をした。

 

「最後かぁ」

 

「どうした?」

 

悠飛が聞く。

 

「ううん」

 

六華は首を振る。

 

「ちょっと寂しいだけ」

 

「まだ終わってない」

 

「……え?」

 

「今日一日あるだろ」

 

悠飛は笑う。

 

「それに」

 

「うん」

 

「高校生活が終わっても、関係まで終わるわけじゃない」

 

六華は。

 

目を丸くする。

 

そして。

 

「……そうだね」

 

笑った。

 

「そうだよね」

 

 

午後三時。

 

校庭では。

 

文化祭名物のスタンプラリーが始まっていた。

 

「やりましょう!」

 

四葉が大張り切り。

 

「全種類集めたいです!」

 

「七人で?」

 

莉々華が聞く。

 

「もちろん!」

 

「楽しそう!」

 

「じゃあ」

 

悠飛がスタンプ台を確認する。

 

「最初はここだな」

 

「悠飛さん、先導お願いします!」

 

「了解」

 

七人の少女と一人の少年。

 

それぞれが笑いながら校内を走り回る。

 

その姿は。

 

少し前まで不穏な空気に包まれていたことが嘘のようだった。

 

しかし。

 

そんな時間は。

 

長くは続かなかった。

 

 

午後三時三十分。

 

校舎の一角。

 

六華が。

 

ふと足を止めた。

 

「……」

 

「どうしたの?」

 

一花が聞く。

 

「誰かいる」

 

廊下の奥。

 

人影。

 

黒い服。

 

「……」

 

莉々華も。

 

その方向を見る。

 

「誰?」

 

「分からない」

 

悠飛が前に出る。

 

「みんな、ここにいて」

 

「悠飛」

 

六華が心配そうにする。

 

「大丈夫」

 

悠飛は。

 

廊下を進む。

 

人影は。

 

角を曲がった。

 

「待て!」

 

悠飛が追う。

 

だが。

 

そこには誰もいなかった。

 

床に。

 

一枚の紙。

 

『第二幕』

 

悠飛は。

 

それを拾った。

 

「……」

 

嫌な予感がする。

 

「またか」

 

 

「悠飛!」

 

四葉たちが駆け寄る。

 

「何だった?」

 

「これ」

 

紙を見せる。

 

六華が眉を寄せる。

 

「第二幕……」

 

「さっきの機材トラブルと同じ」

 

五月が言う。

 

「無堂さんの仕業でしょうか?」

 

「まだ分からない」

 

悠飛は答える。

 

「でも」

 

一花が周囲を見る。

 

「警戒したほうがいいね」

 

「うん」

 

莉々華が頷く。

 

「でもさ」

 

「?」

 

莉々華は。

 

少しだけ笑う。

 

「せっかくの文化祭なんだから」

 

全員が莉々華を見る。

 

「怖がってばかりじゃ、もったいないよ」

 

「莉々華……」

 

六華が微笑む。

 

「そうだね」

 

「うん!」

 

四葉が元気に頷く。

 

「私たちは楽しみます!」

 

「それでいい」

 

悠飛も笑った。

 

 

夕方。

 

校庭では。

 

キャンドルが並べられ始めていた。

 

夜のイベント。

 

キャンドルナイト。

 

そして。

 

最後にはキャンプファイヤーが予定されている。

 

「綺麗……」

 

五月が呟く。

 

無数の灯りが。

 

夕暮れの校庭を照らしていた。

 

一花。

 

二乃。

 

三玖。

 

四葉。

 

五月。

 

六華。

 

莉々華。

 

そして。

 

悠飛。

 

八人で。

 

その光景を見つめる。

 

「ねえ」

 

莉々華が言った。

 

「みんな」

 

「ん?」

 

「今日のこと」

 

莉々華は笑う。

 

「絶対忘れないでね」

 

「もちろん」

 

一花が答える。

 

「忘れるわけないよ」

 

二乃。

 

「最後の文化祭だし」

 

三玖。

 

「大切な思い出」

 

四葉。

 

「最高の一日にします!」

 

五月。

 

「はい」

 

六華。

 

「私も」

 

そして。

 

悠飛。

 

「……」

 

しばらく黙っていた。

 

「悠飛?」

 

六華が呼ぶ。

 

「俺も」

 

悠飛は。

 

灯りを見ながら言った。

 

「絶対に忘れない」

 

「……」

 

「今日ここにいる全員のこと」

 

その言葉に。

 

少女たちは。

 

それぞれ胸を熱くした。

 

 

そして。

 

夜。

 

キャンプファイヤーが始まった。

 

炎が。

 

高く燃え上がる。

 

「うわぁ!」

 

四葉が歓声を上げる。

 

生徒たちは。

 

音楽に合わせて踊り。

 

笑い。

 

写真を撮り。

 

最後の文化祭を楽しんでいた。

 

悠飛は。

 

少し離れた場所から。

 

その光景を眺めていた。

 

「……」

 

楽しい。

 

本当に。

 

楽しい。

 

だからこそ。

 

守りたい。

 

この時間を。

 

この笑顔を。

 

この仲間たちを。

 

「悠飛」

 

声がする。

 

振り返る。

 

六華。

 

「どうした?」

 

「少しだけ」

 

六華が手を差し出す。

 

「一緒に行こう」

 

「どこへ?」

 

「秘密」

 

「……分かった」

 

二人が歩き出す。

 

その後ろから。

 

「ちょっと!」

 

二乃の声。

 

「二人だけで行く気?」

 

「そうですよ!」

 

四葉も追いかける。

 

「私たちも行きます!」

 

「ふふ」

 

一花が笑う。

 

「じゃあ、みんなで行こう」

 

「うん」

 

三玖。

 

「賛成」

 

五月。

 

「私も行きます」

 

莉々華も。

 

「私も!」

 

八人は。

 

再び一緒になった。

 

 

だが。

 

その瞬間。

 

――ドンッ!

 

校舎の向こうで。

 

大きな音が響いた。

 

「……!」

 

全員が振り返る。

 

「何?」

 

「爆発?」

 

「いや」

 

悠飛が。

 

音の方向を見る。

 

「何かが倒れた音だ」

 

校内放送。

 

『緊急連絡です』

 

全員が。

 

一斉に顔を上げる。

 

『生徒の皆さんは、校庭から移動しないでください』

 

ざわめきが広がる。

 

『繰り返します』

 

放送の声が。

 

少し震えている。

 

『生徒の皆さんは――』

 

突然。

 

音声が切れた。

 

「……」

 

悠飛の表情が変わる。

 

「みんな」

 

「はい」

 

「ここから動くな」

 

「悠飛!」

 

六華が叫ぶ。

 

だが。

 

悠飛は走り出していた。

 

「俺が確認してくる!」

 

「待って!」

 

六華が追おうとする。

 

その手を。

 

一花が掴んだ。

 

「駄目!」

 

「でも!」

 

「悠飛くんを信じよう」

 

六華は。

 

唇を噛む。

 

「……分かった」

 

その頃。

 

悠飛は。

 

校舎の中へ駆け込んでいた。

 

廊下を走る。

 

階段を上がる。

 

そして。

 

角を曲がったところで。

 

「……!」

 

一人の男子生徒が倒れていた。

 

「おい!」

 

悠飛が駆け寄る。

 

「大丈夫か!」

 

「……」

 

返事がない。

 

だが。

 

呼吸はある。

 

「よかった」

 

悠飛は。

 

生徒を安全な場所へ移動させる。

 

その時。

 

背後から。

 

「如月悠飛君」

 

声がした。

 

「……!」

 

振り返る。

 

そこには。

 

無堂が立っていた。

 

「あなたは」

 

「こんなところで何をしている?」

 

「それはこちらの台詞ですよ」

 

無堂は。

 

笑っている。

 

「私は」

 

ゆっくり歩く。

 

「教育者として」

 

「……」

 

「生徒を見守っているのです」

 

悠飛は。

 

無堂を睨む。

 

「だったら」

 

「はい?」

 

「なんで生徒が倒れている?」

 

「事故でしょう」

 

「……」

 

「文化祭ですから」

 

無堂は。

 

笑顔を崩さない。

 

「何が起こるか分かりません」

 

悠飛の拳が。

 

強く握られる。

 

「お前」

 

「……」

 

「何を企んでる?」

 

無堂の目が。

 

初めて冷たくなった。

 

「あなたには」

 

「……」

 

「少し早すぎます」

 

「何が?」

 

「真実を知るには」

 

無堂は。

 

一歩下がる。

 

「ですが」

 

「……」

 

「あなたには特別に」

 

無堂が。

 

不気味に笑う。

 

「一つだけ教えてあげましょう」

 

「……」

 

「あなたの右目」

 

悠飛の表情が。

 

一瞬だけ固まる。

 

「……?」

 

「その目が」

 

無堂は。

 

悠飛を見つめる。

 

「あなたの人生を大きく変えることになる」

 

「……何を言ってる?」

 

「では」

 

無堂は。

 

踵を返す。

 

「また会いましょう」

 

「待て!」

 

悠飛が追う。

 

しかし。

 

廊下の先には。

 

もう誰もいなかった。

 

「……」

 

悠飛は。

 

無堂の言葉を思い出す。

 

――あなたの右目。

 

胸に。

 

嫌な予感が広がる。

 

 

その夜。

 

日の出祭は。

 

一応の安全確認を終え。

 

予定通り終了した。

 

生徒たちは。

 

それぞれ帰宅していく。

 

五つ子。

 

六華。

 

莉々華も。

 

校門の前に集まっていた。

 

「今日は」

 

一花が言う。

 

「色々あったね」

 

「うん」

 

三玖が頷く。

 

「でも」

 

四葉が笑う。

 

「楽しかったです!」

 

二乃も。

 

「まあね」

 

五月。

 

「忘れられない一日になりました」

 

六華。

 

「うん」

 

莉々華。

 

「私も」

 

そして。

 

悠飛。

 

「……」

 

一人だけ。

 

浮かない顔をしていた。

 

「悠飛?」

 

六華が声をかける。

 

「どうしたの?」

 

「いや」

 

悠飛は笑う。

 

「何でもない」

 

「嘘」

 

六華は。

 

すぐに見抜いた。

 

「何かあった?」

 

「……」

 

悠飛は。

 

少し迷った。

 

そして。

 

無堂の言葉を思い出す。

 

――あなたの右目。

 

「……まだ分からない」

 

「?」

 

「でも」

 

悠飛は。

 

少女たちを見る。

 

「何かあったら」

 

「うん」

 

「俺が守る」

 

四葉が。

 

笑顔になる。

 

「お願いします!」

 

一花。

 

「頼りにしてる」

 

二乃。

 

「絶対よ」

 

三玖。

 

「信じてる」

 

五月。

 

「お願いします」

 

六華。

 

「……私も」

 

莉々華も。

 

「私も信じる」

 

悠飛は。

 

全員を見る。

 

「ありがとう」

 

そして。

 

その日。

 

一つの運命が。

 

静かに動き始めた。

 

日の出祭。

 

それは。

 

青春最後の文化祭であると同時に。

 

後に。

 

悠飛自身の人生を大きく変えることになる事件の。

 

最初の日でもあった。

 

誰もまだ知らない。

 

この数日後。

 

悠飛の右目に。

 

取り返しのつかない悲劇が起きることを。

 

そして。

 

その悲劇を乗り越えた少年が。

 

やがて。

 

世界に名を轟かせる存在――

 

『独眼竜』

 

と呼ばれる男へと。

 

変わっていくことを。

 

 

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