『神のチートで勇往邁進!〜20年後の同窓会に現れた独眼竜は、三度(みたび)恋の火を灯す〜』   作:夜幻

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第67話「無堂の仲間たち」

夕暮れの旧校舎。

 

誰も使っていない教室に、八人の人影があった。

 

如月悠飛。

 

中野一花、二乃、三玖、四葉、五月。

 

六華。

 

そして莉々華。

 

その正面には、無堂。

 

「……」

 

無堂は、先ほどまで手にしていた写真を静かにしまった。

 

「なるほど」

 

低い声。

 

「七人とも、ここまで来てしまいましたか」

 

「無堂さん」

 

悠飛が前へ出る。

 

「彼女たちを巻き込むつもりはなかった」

 

「でしょうね」

 

「なら、どうして呼んだ?」

 

「私が呼んだわけではありませんよ」

 

無堂は、悠飛の背後を見る。

 

「彼女たちが勝手についてきただけでしょう」

 

「……!」

 

悠飛が振り返る。

 

「どうして来た?」

 

四葉が胸を張った。

 

「悠飛さんが一人で行くからです!」

 

「だからって――」

 

「だって!」

 

四葉は言った。

 

「私たち、仲間でしょう?」

 

「……」

 

悠飛は言葉を失う。

 

一花が微笑む。

 

「そういうこと」

 

二乃も腕を組む。

 

「勝手に一人で全部背負わないで」

 

三玖が頷く。

 

「私たちもいる」

 

六華も。

 

「私も」

 

莉々華も。

 

「もちろん」

 

そして。

 

五月が一歩前に出た。

 

「悠飛さん」

 

「……」

 

「昨日、言いましたよね」

 

「何を?」

 

「私の夢は、私一人で守らなくていいって」

 

「……」

 

「だったら」

 

五月は、まっすぐ悠飛を見る。

 

「悠飛さんのことも、悠飛さん一人で抱え込まないでください」

 

「……五月」

 

その言葉に。

 

悠飛は、何も返せなかった。

 

 

「仲良しごっこは、その程度にしておきなさい」

 

無堂の声が響く。

 

「あなたたちは、何も分かっていない」

 

二乃が睨む。

 

「何がよ」

 

「この男の過去を」

 

「……」

 

「そして」

 

無堂は悠飛を見る。

 

「私の過去を」

 

悠飛の目が細くなる。

 

「なら、聞かせてもらおうか」

 

「嫌です」

 

「……は?」

 

「あなたに教える義務はありません」

 

「じゃあ、何のために呼んだ?」

 

「あなたを試すためです」

 

「俺を?」

 

「ええ」

 

無堂は一歩下がった。

 

「あなたは、自分が正義の味方だと思っている」

 

「そんなつもりはない」

 

「では何です?」

 

「……」

 

悠飛は答える。

 

「俺はただ、目の前で誰かが傷つくのを黙って見ていられないだけだ」

 

無堂は笑った。

 

「それを正義感というのですよ」

 

「そうかもな」

 

「そして」

 

無堂の表情が変わる。

 

「そういう人間は利用しやすい」

 

「……!」

 

その瞬間。

 

旧校舎の廊下から。

 

複数の足音が聞こえた。

 

「……?」

 

四葉が振り返る。

 

「誰か来ます」

 

一花も。

 

「何人?」

 

三玖が耳を澄ませる。

 

「……一人じゃない」

 

「え?」

 

二乃が身構える。

 

「複数いるわ」

 

足音。

 

一つ。

 

二つ。

 

三つ。

 

やがて。

 

教室の扉が開いた。

 

「無堂先生」

 

現れたのは。

 

三人の男だった。

 

全員、制服ではない。

 

一人は大柄。

 

一人は細身。

 

そしてもう一人は、黒いジャケットを着た中年の男。

 

「……誰?」

 

莉々華が呟く。

 

無堂は。

 

平然としていた。

 

「紹介しましょう」

 

「……」

 

「私の協力者です」

 

大柄な男が笑う。

 

「久しぶりだな、無堂」

 

細身の男も続く。

 

「相変わらず面倒な仕事を押し付けてくれる」

 

最後の男は。

 

悠飛を見る。

 

「こいつが例の少年か?」

 

無堂は頷く。

 

「ええ」

 

「……」

 

「如月悠飛」

 

名前を呼ばれ。

 

悠飛の警戒が一段上がる。

 

「俺の名前を知ってる?」

 

「当然だ」

 

黒ジャケットの男が答える。

 

「お前のことは、ずっと調べていた」

 

「……」

 

「幼少期から現在まで」

 

悠飛の表情が変わる。

 

「何者だ?」

 

男は答えない。

 

代わりに。

 

無堂が言う。

 

「彼らは、私と同じ目的を持っています」

 

「目的?」

 

「過去を清算することです」

 

「……」

 

「あなたに関する過去を」

 

 

「ふざけないで!」

 

二乃が叫んだ。

 

「何で高校にこんな人たちが入ってきてるのよ!」

 

「それは簡単だ」

 

黒ジャケットの男が言う。

 

「学校側に協力者がいるからだ」

 

「……!」

 

全員が驚く。

 

悠飛は。

 

冷静に尋ねる。

 

「誰だ?」

 

「それを知ってどうする?」

 

「……」

 

「学校には」

 

男は笑う。

 

「我々の言うことを聞く人間がいる」

 

「つまり」

 

悠飛は。

 

「文化祭の時から仕組まれていた?」

 

無堂が答える。

 

「正確には」

 

「……」

 

「もっと前からです」

 

五月の顔が青ざめる。

 

「……そんな」

 

一花が五月の肩に手を置く。

 

「大丈夫」

 

二乃も。

 

「私たちがいる」

 

三玖。

 

「怖くない」

 

四葉。

 

「はい!」

 

六華。

 

「……」

 

莉々華。

 

「悠飛がいる」

 

しかし。

 

悠飛は。

 

首を横に振った。

 

「違う」

 

「え?」

 

「俺だけじゃない」

 

悠飛は。

 

全員を見る。

 

「俺たち全員で乗り越える」

 

その言葉に。

 

一花が笑う。

 

「そうこなくちゃ」

 

 

大柄な男が前に出る。

 

「ずいぶん余裕だな」

 

「……」

 

「俺は」

 

男は拳を鳴らした。

 

「岩崎」

 

「……」

 

「昔、無堂先生と一緒に教師をしていた」

 

悠飛は。

 

「元教師?」

 

「そうだ」

 

「じゃあ」

 

悠飛は聞く。

 

「なぜ今ここにいる?」

 

岩崎は笑う。

 

「教師なんて辞めた」

 

「……」

 

「馬鹿馬鹿しくなったんだよ」

 

「何が?」

 

「生徒のために尽くしたところで」

 

岩崎は。

 

吐き捨てる。

 

「感謝されるどころか、責任だけ押し付けられる」

 

「……」

 

「だったら」

 

拳を握る。

 

「自分のために生きたほうがいい」

 

悠飛は。

 

静かに答える。

 

「それで生徒を傷つけても?」

 

「……」

 

「関係ない?」

 

岩崎は。

 

笑った。

 

「そういう甘さが嫌いなんだよ」

 

悠飛の目が細くなる。

 

「なるほど」

 

「何だ?」

 

「無堂と似てる」

 

「……!」

 

岩崎の顔が険しくなる。

 

「俺と無堂先生を一緒にするな」

 

「同じだろ」

 

「何?」

 

「生徒より自分を優先する」

 

悠飛は言う。

 

「それだけだ」

 

岩崎が。

 

一歩踏み込んだ。

 

「……気に入らねえ」

 

「俺も」

 

「如月!」

 

岩崎が拳を振り上げる。

 

しかし。

 

悠飛は。

 

一歩横へ動いただけだった。

 

拳が空を切る。

 

「遅い」

 

「……!」

 

悠飛は。

 

岩崎の手首を掴む。

 

そのまま。

 

力をほとんど使わず。

 

身体を回す。

 

「うわっ!」

 

岩崎がバランスを崩す。

 

床に倒れる。

 

「……!」

 

四葉が目を輝かせる。

 

「すごい!」

 

二乃が呆れる。

 

「何でそんな簡単に……」

 

三玖。

 

「武道やってるから」

 

「そうだけど」

 

一花が笑う。

 

「悠飛くん、やっぱり強いね」

 

岩崎が起き上がる。

 

「……」

 

顔が真っ赤になっている。

 

「この野郎!」

 

再び突進。

 

悠飛は。

 

その攻撃を受け止める。

 

「力任せじゃ」

 

「……」

 

「俺には勝てない」

 

「黙れ!」

 

悠飛が。

 

軽く押す。

 

岩崎の身体が後ろへ飛ぶ。

 

「ぐっ……!」

 

そのまま壁に背中をぶつける。

 

「岩崎!」

 

細身の男が叫ぶ。

 

「下がれ!」

 

「うるせえ!」

 

岩崎は。

 

再び立ち上がろうとする。

 

しかし。

 

悠飛が手を上げた。

 

「もうやめよう」

 

「……」

 

「これ以上やる意味がない」

 

岩崎は。

 

拳を握ったまま。

 

動きを止めた。

 

「……」

 

無堂が。

 

それを見ていた。

 

「なるほど」

 

「……」

 

「腕だけではありませんね」

 

「何が?」

 

「あなたは」

 

無堂は。

 

悠飛を見つめる。

 

「人を傷つけることを避ける」

 

「……」

 

「それが弱点になる」

 

悠飛は。

 

答えた。

 

「弱点でもいい」

 

「……」

 

「俺は、必要以上に誰かを傷つけるつもりはない」

 

無堂は。

 

笑わなかった。

 

 

細身の男が前へ出る。

 

「俺は黒田」

 

「……」

 

「昔、無堂と同じ学校にいた」

 

悠飛は。

 

「教師か?」

 

「元教師だ」

 

「何で辞めた?」

 

黒田は。

 

肩をすくめる。

 

「俺の場合は、辞めさせられた」

 

「理由は?」

 

「生徒への体罰」

 

「……」

 

五月の顔が険しくなる。

 

「そんな……」

 

黒田は笑った。

 

「昔は普通だったんだよ」

 

「……」

 

「言うことを聞かない生徒を殴る」

 

「……」

 

「それが指導だった」

 

悠飛は。

 

冷たく言う。

 

「今でもそう思ってる?」

 

「当然だ」

 

「……」

 

「口で言って分からないなら」

 

黒田は。

 

手を握る。

 

「身体で分からせればいい」

 

悠飛は。

 

「それで教師を辞めさせられたんだな」

 

「……」

 

「当然だ」

 

黒田の顔が歪む。

 

「お前に何が分かる!」

 

「分からない」

 

悠飛は答える。

 

「でも」

 

「……」

 

「暴力で人を従わせるのが教育じゃないことくらい分かる」

 

黒田が。

 

ポケットから何かを取り出した。

 

「……!」

 

五月が息を呑む。

 

小型の警棒。

 

「危ない!」

 

四葉が叫ぶ。

 

黒田が。

 

悠飛へ向かって振り下ろす。

 

「悠飛さん!」

 

五月の声。

 

悠飛は。

 

寸前で身体をひねる。

 

警棒が肩をかすめた。

 

「……!」

 

痛み。

 

しかし。

 

悠飛は。

 

冷静だった。

 

「五月」

 

「はい!」

 

「みんなを下げろ」

 

「でも!」

 

「いいから!」

 

五月は。

 

一瞬迷った。

 

そして。

 

一花たちを見る。

 

「みんな!」

 

「分かった!」

 

全員が後ろへ下がる。

 

悠飛は。

 

黒田と向き合う。

 

「もう一度だけ言う」

 

「……」

 

「その武器を捨てろ」

 

「嫌だね」

 

「……」

 

「俺は」

 

黒田は。

 

笑う。

 

「お前みたいな綺麗事野郎が嫌いなんだ」

 

「そうか」

 

悠飛は。

 

構える。

 

「じゃあ」

 

「……」

 

「止める」

 

 

次の瞬間。

 

黒田が突っ込む。

 

警棒が振られる。

 

悠飛は。

 

避ける。

 

右。

 

左。

 

上。

 

そして。

 

一歩。

 

踏み込む。

 

黒田の懐。

 

「なっ――」

 

悠飛は。

 

腕を取った。

 

肘。

 

肩。

 

腰。

 

身体全体を使う。

 

黒田の身体が。

 

床へ叩きつけられる。

 

「ぐっ……!」

 

警棒が落ちる。

 

悠飛は。

 

それを遠くへ蹴った。

 

「終わりだ」

 

「……」

 

黒田は。

 

動けない。

 

「これ以上やれば」

 

悠飛は。

 

静かに言う。

 

「怪我をする」

 

「……」

 

「俺も、お前も」

 

黒田は。

 

悔しそうに睨む。

 

「……何なんだ、お前」

 

悠飛は。

 

答える。

 

「ただの高校生だ」

 

「嘘つけ」

 

「本当だよ」

 

 

残る一人。

 

黒ジャケットの男。

 

彼は。

 

ここまで一度も動かなかった。

 

「……」

 

悠飛が見る。

 

「お前は?」

 

男は。

 

ゆっくり歩き出す。

 

「私は戦うつもりはない」

 

「……」

 

「あなたに話をしたいだけです」

 

「なら話せ」

 

「ここでは無理だ」

 

「どうして?」

 

「彼女たちがいる」

 

男は。

 

五つ子たちを見る。

 

「……」

 

「中野家の娘たちには」

 

「……」

 

「知られてはいけないことがある」

 

五月の表情が変わる。

 

「私たちに?」

 

「ええ」

 

「何ですか?」

 

男は。

 

五月を見る。

 

「あなたたちの母親についてです」

 

「……!」

 

五月が。

 

息を呑む。

 

一花も。

 

二乃も。

 

三玖も。

 

四葉も。

 

全員が固まった。

 

「母……?」

 

男は。

 

頷く。

 

「中野零奈は」

 

「……」

 

「無堂の過去を知っていた」

 

「……」

 

「そして」

 

男の目が。

 

悠飛へ向く。

 

「如月悠飛の過去も」

 

「……!」

 

悠飛の頭に。

 

再び痛みが走る。

 

「……っ」

 

「悠飛さん!」

 

五月が駆け寄ろうとする。

 

「来るな!」

 

悠飛が止める。

 

しかし。

 

男は続けた。

 

「あなたは」

 

「……」

 

「幼い頃」

 

「……」

 

「一度だけ、無堂に会っている」

 

「……!」

 

悠飛は。

 

目を見開いた。

 

「嘘だ」

 

「本当です」

 

「俺は覚えてない」

 

「覚えていないだけです」

 

「……」

 

「あなたの記憶には」

 

男は。

 

静かに言った。

 

「大きな空白がある」

 

 

突然。

 

校舎の外から。

 

サイレンの音が聞こえた。

 

「……!」

 

「警察?」

 

莉々華が窓を見る。

 

男は。

 

舌打ちした。

 

「時間切れですね」

 

無堂を見る。

 

「撤退します」

 

「分かりました」

 

無堂は。

 

岩崎と黒田を見る。

 

「二人とも、行きますよ」

 

「……」

 

岩崎は。

 

悔しそうに立ち上がる。

 

黒田も。

 

警棒を拾わずに。

 

二人は無堂についていく。

 

「待て!」

 

悠飛が叫ぶ。

 

しかし。

 

無堂は振り返らない。

 

ただ。

 

最後に一言。

 

「如月君」

 

「……」

 

「あなたが何を守ろうとするのか」

 

無堂は。

 

淡々と言った。

 

「楽しみにしていますよ」

 

そのまま。

 

三人は。

 

旧校舎の奥へ消えていった。

 

 

「……」

 

静寂。

 

悠飛は。

 

拳を握った。

 

「逃げられた……」

 

風太郎が。

 

遅れて駆け込んでくる。

 

「悠飛!」

 

「風太郎?」

 

「大丈夫か?」

 

「ああ」

 

「こいつらは?」

 

「逃げた」

 

風太郎は。

 

床に落ちている警棒を見る。

 

「……何があった?」

 

悠飛は。

 

簡単に説明した。

 

風太郎の顔が険しくなる。

 

「無堂に仲間がいた?」

 

「ああ」

 

「元教師二人」

 

「そう」

 

「それに」

 

悠飛は。

 

黒ジャケットの男が去った方向を見る。

 

「もう一人」

 

「……」

 

「無堂の過去を知っている人間だ」

 

風太郎が。

 

「そいつは?」

 

「名前すら聞けなかった」

 

「……」

 

風太郎は。

 

頭を抱える。

 

「厄介だな」

 

「かなりな」

 

 

五つ子たちは。

 

黙っていた。

 

母の名前。

 

中野零奈。

 

その名前が。

 

自分たちの知らないところで。

 

無堂の過去と繋がっている。

 

そして。

 

悠飛の過去とも。

 

「……」

 

五月が。

 

悠飛を見る。

 

「悠飛さん」

 

「ん?」

 

「大丈夫ですか?」

 

「大丈夫」

 

「でも」

 

五月は。

 

悠飛の顔を見る。

 

「さっき、苦しそうでした」

 

「……」

 

悠飛は。

 

少し笑う。

 

「昔のことを思い出そうとすると、頭が痛くなるだけだ」

 

「……」

 

「心配するな」

 

五月は。

 

納得していない。

 

けれど。

 

今は何も聞かなかった。

 

 

帰り道。

 

五つ子たちと六華、莉々華は。

 

悠飛と風太郎の後ろを歩いていた。

 

「……」

 

一花が。

 

小さく呟く。

 

「無堂って」

 

「……」

 

「私たちのお母さんと何があったんだろう」

 

二乃。

 

「分からない」

 

三玖。

 

「でも」

 

「……」

 

「悠飛の過去にも関係してる」

 

四葉。

 

「どうしてですか?」

 

六華が答える。

 

「写真に一緒に写ってたから」

 

莉々華も。

 

「私たちが小さい頃の写真」

 

五月。

 

「……」

 

「どうして」

 

五月は。

 

ノートを握る。

 

「私たちは覚えていないのでしょう」

 

一花が。

 

「何か忘れてるのかも」

 

二乃。

 

「それを無堂が知ってる」

 

三玖。

 

「……」

 

四葉。

 

「怖いです」

 

その言葉に。

 

全員が黙った。

 

すると。

 

前を歩いていた悠飛が。

 

振り返った。

 

「怖いなら」

 

「……」

 

「一人にならなければいい」

 

「悠飛さん……」

 

「みんなでいればいい」

 

四葉が笑う。

 

「はい!」

 

二乃も。

 

「そうね」

 

三玖。

 

「うん」

 

一花。

 

「そうしよ」

 

五月。

 

「……はい」

 

六華。

 

「私もいる」

 

莉々華。

 

「もちろん!」

 

悠飛は。

 

微笑んだ。

 

「それでいい」

 

 

その夜。

 

無堂の車。

 

岩崎と黒田。

 

そして。

 

黒ジャケットの男。

 

「……」

 

岩崎が。

 

悔しそうに言う。

 

「まさか、あそこまで強いとは思わなかった」

 

黒田も。

 

「俺もだ」

 

無堂は。

 

窓の外を見る。

 

「彼は」

 

「……」

 

「昔からそうでした」

 

「昔から?」

 

岩崎が聞く。

 

無堂は。

 

答えない。

 

黒ジャケットの男が。

 

代わりに口を開いた。

 

「彼は、幼い頃から人を守ろうとする子供だった」

 

「……」

 

「そして」

 

男は。

 

悠飛の写真を見る。

 

「それが」

 

「……」

 

「彼の最大の長所であり」

 

一拍。

 

「最大の弱点です」

 

無堂は。

 

静かに笑った。

 

「ええ」

 

「……」

 

「だから」

 

無堂は。

 

写真を握りつぶす。

 

「守りたいものを増やしてやればいい」

 

岩崎が。

 

「どういう意味だ?」

 

「簡単ですよ」

 

無堂は。

 

淡々と言った。

 

「彼が守ろうとする人間を」

 

「……」

 

「一人ずつ狙えばいい」

 

車内が。

 

静かになる。

 

「そうすれば」

 

無堂は。

 

窓の外を見る。

 

「彼は必ず」

 

「……」

 

「こちらへ来ます」

 

 

翌朝。

 

悠飛の机には。

 

また一枚の紙が置かれていた。

 

『昨日は楽しかったです』

 

その下。

 

『次は彼女たちの番です』

 

「……!」

 

悠飛の顔から。

 

血の気が引いた。

 

「……ふざけるな」

 

紙を握り潰す。

 

その瞬間。

 

教室のドアが開く。

 

「悠飛!」

 

四葉。

 

「おはよう!」

 

一花。

 

「どうしたの?」

 

二乃。

 

「……」

 

三玖。

 

五月。

 

六華。

 

莉々華。

 

いつもの七人。

 

悠飛は。

 

全員の無事を確認する。

 

「……」

 

そして。

 

心の中で決めた。

 

もう。

 

誰にも近づけさせない。

 

五月の夢も。

 

五つ子たちの未来も。

 

六華も。

 

莉々華も。

 

自分が守る。

 

たとえ。

 

自分が傷ついても。

 

その決意は。

 

やがて。

 

取り返しのつかない選択へと。

 

悠飛を導いていく。

 

まだ。

 

その時は来ていない。

 

だが。

 

『独眼竜』誕生への時計は。

 

確実に。

 

進み始めていた。

 

 

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