『神のチートで勇往邁進!〜20年後の同窓会に現れた独眼竜は、三度(みたび)恋の火を灯す〜』   作:夜幻

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第八章 卒業、そして20年 第74話「最後の春」

春が来た。

 

冬の冷たさが薄れ、校庭の桜が少しずつ蕾を膨らませている。

 

三年生にとっては、最後の春。

 

そして――高校生活最後の季節だった。

 

「……もう卒業か」

 

校門の前で、如月悠飛は空を見上げた。

 

右目には、いつもの黒い眼帯。

 

日の出祭の事件から、長い時間が過ぎた。

 

右眼の傷は癒えた。

 

しかし、失われた視力が戻ることはなかった。

 

それでも。

 

悠飛は以前よりも自然に生活できるようになっていた。

 

右側から来る人間には、足音や気配で気づく。

 

距離感も、少しずつ身体が覚えてきた。

 

武道も。

 

以前と同じではない。

 

だが、以前よりも強くなった。

 

片目を失ったことを、弱点にしない。

 

それが悠飛の決意だった。

 

「悠飛さん!」

 

後ろから。

 

聞き慣れた声がした。

 

「四葉か」

 

「はい!」

 

四葉が走ってくる。

 

その後ろには。

 

一花。

 

二乃。

 

三玖。

 

五月。

 

六華。

 

莉々華。

 

そして風太郎。

 

「おはよう」

 

一花が手を振る。

 

「おはよう」

 

二乃。

 

「……おはよう」

 

三玖。

 

「おはようございます」

 

五月。

 

「おはよ」

 

六華。

 

「おはよう」

 

莉々華。

 

「朝から全員か」

 

悠飛が笑う。

 

「最後の一年だからね」

 

一花が言った。

 

「高校生活も、あと少し」

 

「……」

 

その言葉に。

 

全員が少しだけ黙った。

 

「最後」

 

その言葉は。

 

思っていた以上に重かった。

 

 

教室。

 

三年一組。

 

黒板には。

 

新しいクラス名簿が貼られていた。

 

「……」

 

生徒たちが集まり。

 

自分の名前を探している。

 

「私、ここ!」

 

四葉が叫ぶ。

 

「声大きい」

 

二乃が呆れる。

 

「だって嬉しいんです!」

 

「私は……」

 

三玖が名簿を見る。

 

「ここ」

 

一花。

 

「私も」

 

五月。

 

「……」

 

六華。

 

「ここだね」

 

莉々華。

 

「私も」

 

悠飛は。

 

名簿を確認する。

 

「……」

 

自分の名前。

 

如月悠飛。

 

三年一組。

 

その文字を。

 

しばらく眺めた。

 

「……最後か」

 

風太郎が。

 

隣に立つ。

 

「感慨深いな」

 

「お前がそんなこと言うとは」

 

「俺だって思うことくらいある」

 

「悪かった」

 

「分かればいい」

 

二人で笑う。

 

 

始業式。

 

体育館。

 

校長の話。

 

新学年の注意。

 

進路。

 

受験。

 

卒業。

 

当たり前の話が続いていく。

 

悠飛は。

 

静かに聞いていた。

 

高校生活。

 

入学したときは。

 

三年間なんて長いと思っていた。

 

けれど。

 

気づけば。

 

最後の一年。

 

「……」

 

悠飛は。

 

周囲を見る。

 

一花。

 

二乃。

 

三玖。

 

四葉。

 

五月。

 

六華。

 

莉々華。

 

風太郎。

 

みんな。

 

三年前とは。

 

少し変わった。

 

顔つき。

 

考え方。

 

夢。

 

そして。

 

自分自身も。

 

変わった。

 

右眼を失ったこと。

 

日の出祭。

 

無堂。

 

様々な事件。

 

そして。

 

友情。

 

恋。

 

「……」

 

悠飛は。

 

そっと眼帯に触れた。

 

失ったもの。

 

得たもの。

 

そのすべてが。

 

今の自分を作っている。

 

 

放課後。

 

桜の木の下。

 

悠飛は。

 

一人で立っていた。

 

「……」

 

まだ満開ではない。

 

それでも。

 

蕾の間から。

 

小さな花が顔を出している。

 

「悠飛」

 

振り返る。

 

六華だった。

 

「何してるの?」

 

「桜を見てた」

 

「まだ早いよ」

 

「分かってる」

 

「……」

 

六華が。

 

悠飛の隣に立つ。

 

「最後の春だね」

 

「そうだな」

 

「高校生活、終わるんだね」

 

「……」

 

「寂しい?」

 

「少し」

 

悠飛は。

 

素直に答えた。

 

六華は。

 

少し驚いた顔をする。

 

「悠飛がそんなこと言うなんて」

 

「俺だって寂しいときくらいある」

 

「そうだよね」

 

二人で。

 

桜を見る。

 

「ねえ、悠飛」

 

「ん?」

 

「卒業したら」

 

「……」

 

「どうするの?」

 

「大学へ行く」

 

「どこ?」

 

「東京」

 

「そっか」

 

六華は。

 

少し寂しそうに笑った。

 

「私も東京」

 

「本当か?」

 

「うん」

 

「じゃあ」

 

悠飛は。

 

笑う。

 

「また会えるな」

 

「……うん」

 

六華は。

 

その言葉を大切そうに受け止めた。

 

 

翌日。

 

進路相談。

 

教室には。

 

進路希望調査票が配られた。

 

「大学か……」

 

一花が。

 

紙を見る。

 

「私は芸能関係も考えてる」

 

「女優の道か」

 

悠飛が聞く。

 

「うん」

 

一花は。

 

少し照れながら笑った。

 

「まだまだだけど」

 

「一花ならできる」

 

「本当に?」

 

「ああ」

 

「……」

 

一花は。

 

少し嬉しそうに笑った。

 

「ありがとう」

 

二乃は。

 

「私は料理」

 

「料理?」

 

「うん」

 

「将来、店を持ちたい」

 

「いいな」

 

「もちろん」

 

二乃は胸を張る。

 

「最高の店を作る」

 

三玖は。

 

「私は歴史」

 

「歴史?」

 

「うん」

 

三玖は。

 

少しだけ頬を赤くする。

 

「好きだから」

 

四葉は。

 

「私はスポーツ関係!」

 

「四葉らしいな」

 

「はい!」

 

五月は。

 

「私は教師です」

 

悠飛は。

 

少し笑った。

 

「五月らしい」

 

「……」

 

五月は。

 

頷いた。

 

「誰かの夢を支えられる人になりたいです」

 

その言葉に。

 

悠飛は。

 

少しだけ目を細めた。

 

「きっとなれる」

 

「ありがとうございます」

 

六華は。

 

「私は……」

 

少し迷って。

 

「教育関係かな」

 

「五月と同じ?」

 

「うん」

 

五月と。

 

六華が顔を見合わせる。

 

「一緒に頑張りましょう」

 

「はい」

 

莉々華は。

 

「私はデザイン」

 

「服?」

 

「うん」

 

「似合ってる」

 

「ありがとう」

 

そして。

 

悠飛。

 

「俺は」

 

「……」

 

全員が。

 

悠飛を見る。

 

「経済と経営」

 

「やっぱり」

 

風太郎が言った。

 

「お前ならそうだと思った」

 

「何だよ」

 

「昔から数字に強かった」

 

「まあな」

 

悠飛は。

 

進路希望調査票を見つめる。

 

「将来は」

 

少し考えて。

 

「誰かが困っているときに、力になれる仕事がしたい」

 

「……」

 

一花が。

 

優しく笑う。

 

「悠飛くんらしいね」

 

 

春休み。

 

ある日。

 

七人の少女と悠飛。

 

そして風太郎は。

 

久しぶりに全員で集まっていた。

 

「今日は何する?」

 

四葉が聞く。

 

「花見!」

 

「まだ満開じゃないぞ」

 

悠飛が言う。

 

「気持ちが大事です!」

 

「そういうものか?」

 

「そういうものです!」

 

結局。

 

全員で公園へ向かった。

 

桜は。

 

まだ五分咲き。

 

それでも。

 

青空の下。

 

花びらが風に揺れていた。

 

「綺麗……」

 

五月が。

 

桜を見上げる。

 

「……」

 

悠飛も。

 

空を見上げた。

 

「綺麗だな」

 

「右目では見えませんけどね」

 

五月が。

 

少し言った。

 

「……」

 

悠飛は。

 

笑う。

 

「左目で十分だ」

 

「……」

 

五月が。

 

少し寂しそうな顔をする。

 

「でも」

 

悠飛は。

 

続けた。

 

「見えないからこそ」

 

「……」

 

「見えてるものを大切にできる」

 

「……はい」

 

五月は。

 

微笑んだ。

 

 

昼。

 

弁当を広げる。

 

「はい、悠飛」

 

二乃が。

 

弁当を渡す。

 

「俺の分?」

 

「そう」

 

「ありがとう」

 

三玖も。

 

「私のも」

 

「俺、二つ食べるの?」

 

「……食べられる」

 

「まあ食べられるけど」

 

四葉。

 

「私も!」

 

「四葉まで?」

 

「はい!」

 

一花。

 

「人気者だね」

 

「他人事みたいに言うな」

 

「だって面白いんだもん」

 

「一花もいるだろ」

 

「え?」

 

「弁当」

 

一花が。

 

少し照れる。

 

「……あるよ」

 

「じゃあ食べる」

 

「本当に?」

 

「もちろん」

 

「……」

 

一花は。

 

嬉しそうに笑った。

 

 

夕方。

 

帰り道。

 

悠飛と六華は。

 

少しだけ皆から離れて歩いていた。

 

「ねえ」

 

六華が。

 

口を開く。

 

「ん?」

 

「高校生活」

 

「……」

 

「本当に終わるんだね」

 

「ああ」

 

「私」

 

六華は。

 

少し寂しそうに笑う。

 

「もっとずっと続くと思ってた」

 

「俺も」

 

「でも」

 

「……」

 

「終わるんだ」

 

「終わるけど」

 

悠飛は。

 

前を見る。

 

「全部が終わるわけじゃない」

 

「……」

 

「俺たちは、卒業しても友達だ」

 

六華が。

 

少し笑う。

 

「友達……」

 

「ああ」

 

「……」

 

「どうした?」

 

「何でもない」

 

六華は。

 

笑った。

 

けれど。

 

胸の奥には。

 

別の言葉があった。

 

――私は。

 

――友達だけじゃ嫌。

 

だが。

 

まだ。

 

言えなかった。

 

 

卒業式まで。

 

一ヶ月。

 

二週間。

 

一週間。

 

時間は。

 

容赦なく過ぎていった。

 

教室では。

 

卒業アルバムの写真撮影。

 

寄せ書き。

 

最後の授業。

 

最後の昼休み。

 

一つ。

 

また一つ。

 

「最後」が増えていく。

 

そして。

 

卒業式前日。

 

放課後。

 

誰もいない教室。

 

悠飛は。

 

窓際に立っていた。

 

「……」

 

教室を見る。

 

黒板。

 

机。

 

椅子。

 

窓。

 

何度も見た景色。

 

もう。

 

明日で終わる。

 

「悠飛」

 

風太郎が。

 

入ってきた。

 

「お前もいたか」

 

「ああ」

 

「感傷的になってる?」

 

「少しな」

 

風太郎は。

 

笑う。

 

「珍しい」

 

「今日くらい許せ」

 

「もちろん」

 

二人で。

 

教室を見る。

 

「三年間」

 

風太郎が。

 

言う。

 

「あっという間だったな」

 

「ああ」

 

「最初は」

 

「……」

 

「こんなに友達ができるとは思わなかった」

 

悠飛は。

 

笑った。

 

「俺もだ」

 

「五つ子」

 

「六華」

 

「莉々華」

 

「……」

 

「それに」

 

風太郎が。

 

悠飛を見る。

 

「お前」

 

「俺?」

 

「ああ」

 

「俺たちも」

 

悠飛は。

 

頷いた。

 

「友達だ」

 

「……」

 

風太郎は。

 

少し笑った。

 

「じゃあ」

 

「ん?」

 

「卒業しても」

 

「……」

 

「よろしく」

 

悠飛は。

 

右手を差し出した。

 

風太郎も。

 

握る。

 

「こちらこそ」

 

 

そして。

 

卒業式当日。

 

校門の桜は。

 

満開だった。

 

風が吹く。

 

花びらが舞う。

 

校舎には。

 

卒業生たちの姿。

 

「……」

 

悠飛は。

 

校門の前で立ち止まった。

 

桜。

 

最後の春。

 

「悠飛さん!」

 

四葉の声。

 

「行きましょう!」

 

「ああ」

 

一花。

 

二乃。

 

三玖。

 

五月。

 

六華。

 

莉々華。

 

風太郎。

 

みんな。

 

制服姿。

 

今日が。

 

高校最後の日。

 

「……」

 

悠飛は。

 

桜を見上げる。

 

右目は。

 

見えない。

 

けれど。

 

左目には。

 

満開の桜が映っている。

 

「綺麗ですね」

 

五月が。

 

隣に立つ。

 

「ああ」

 

「……」

 

「最後の春か」

 

「はい」

 

五月が。

 

小さく笑う。

 

「でも」

 

「ん?」

 

「春は、また来ます」

 

「……」

 

「卒業しても」

 

「……」

 

「また新しい春が来ます」

 

悠飛は。

 

五月を見る。

 

「そうだな」

 

そして。

 

八人で。

 

校門をくぐった。

 

 

卒業式。

 

名前が。

 

一人ずつ呼ばれていく。

 

「如月悠飛」

 

「はい」

 

悠飛が。

 

壇上へ向かう。

 

体育館が。

 

静かになる。

 

黒い眼帯。

 

その姿を。

 

誰もが知っている。

 

日の出祭事件。

 

少女を守った少年。

 

右眼を失った少年。

 

そして。

 

今。

 

卒業証書を受け取る。

 

「……」

 

校長から。

 

証書を受け取る。

 

深く一礼。

 

戻る。

 

拍手。

 

一花。

 

二乃。

 

三玖。

 

四葉。

 

五月。

 

六華。

 

莉々華。

 

風太郎。

 

みんなが。

 

拍手している。

 

「……」

 

悠飛は。

 

席に戻る。

 

その胸には。

 

一つの感情があった。

 

――終わった。

 

高校生活が。

 

終わった。

 

 

卒業生代表の答辞。

 

友人への感謝。

 

教師への感謝。

 

家族への感謝。

 

そして。

 

未来への希望。

 

悠飛は。

 

静かに聞いていた。

 

最後の言葉。

 

「私たちはこれから、それぞれ違う道へ進みます」

 

「しかし」

 

「この学校で過ごした時間は、決して消えることはありません」

 

悠飛は。

 

目を閉じた。

 

幼い頃。

 

六華と遊んだ日。

 

五つ子と出会った日。

 

風太郎と友達になった日。

 

日の出祭。

 

右眼。

 

涙。

 

笑顔。

 

すべてが。

 

蘇る。

 

「……」

 

そして。

 

チャイム。

 

卒業式終了。

 

拍手。

 

 

校庭。

 

卒業生たち。

 

写真撮影。

 

泣く者。

 

笑う者。

 

抱き合う者。

 

「卒業おめでとう!」

 

「また会おうな!」

 

「絶対だぞ!」

 

そんな声が。

 

あちこちから聞こえる。

 

四葉が。

 

「写真撮りましょう!」

 

「またか」

 

悠飛が笑う。

 

「最後ですよ!」

 

「分かった」

 

全員が。

 

集まる。

 

今度は。

 

教師にも。

 

風太郎にも。

 

声をかける。

 

「はい!」

 

「笑って!」

 

パシャッ。

 

一枚。

 

また一枚。

 

最後の写真。

 

 

そして。

 

夕方。

 

学校を出る。

 

校門。

 

「……」

 

全員が。

 

振り返った。

 

「さよなら」

 

四葉が。

 

呟く。

 

「……」

 

一花が。

 

桜を見る。

 

二乃が。

 

「本当に終わったのね」

 

三玖。

 

「……寂しい」

 

五月。

 

「でも」

 

六華。

 

「また会える」

 

莉々華。

 

「うん」

 

風太郎。

 

「それぞれ頑張ろう」

 

そして。

 

悠飛。

 

「……」

 

しばらく。

 

学校を見る。

 

「ありがとう」

 

誰に向けた言葉なのか。

 

自分でも分からない。

 

学校。

 

友達。

 

青春。

 

全部に向けて。

 

「ありがとう」

 

そして。

 

悠飛は。

 

歩き出した。

 

 

その夜。

 

悠飛の家。

 

机の上に。

 

卒業証書。

 

その隣に。

 

三年間の写真。

 

幼い頃からの写真。

 

五つ子。

 

六華。

 

莉々華。

 

風太郎。

 

そして。

 

自分。

 

悠飛は。

 

一枚の写真を手に取る。

 

日の出祭の日。

 

八人で撮った写真。

 

みんなが笑っている。

 

悠飛の右目には。

 

黒い眼帯。

 

「……」

 

その写真を。

 

大切にしまう。

 

「また会おう」

 

誰にともなく。

 

呟いた。

 

このとき。

 

誰も知らなかった。

 

この「また」が。

 

いつになるのか。

 

どれほど長い時間を。

 

越えることになるのか。

 

そして。

 

二十年後。

 

再び。

 

全員が集まる日が来ることを。

 

まだ。

 

誰も知らなかった。

 

 

二十年後。

 

東京。

 

高層ビル群。

 

夜景。

 

巨大なスクリーン。

 

ニュース番組が。

 

一人の男を紹介していた。

 

『続いては、世界的投資家として知られる如月悠飛氏の最新ニュースです』

 

画面に映る。

 

四十代の男。

 

金髪のウルフヘア。

 

長身。

 

鍛えられた身体。

 

そして。

 

右目を覆う黒い眼帯。

 

『世界有数の資産家として知られる如月氏は、現在も精力的に事業を展開しており――』

 

画面の中の男。

 

如月悠飛は。

 

静かに笑った。

 

「……二十年か」

 

机の上には。

 

一枚の写真。

 

高校時代。

 

最後の春。

 

桜の下で撮った。

 

あの写真。

 

悠飛は。

 

写真を見る。

 

「みんな」

 

そして。

 

小さく笑う。

 

「元気にしてるかな」

 

そのとき。

 

スマートフォンが鳴った。

 

表示された名前。

 

――中野一花。

 

「……」

 

悠飛は。

 

少し驚き。

 

電話に出る。

 

「もしもし?」

 

『悠飛くん?』

 

「久しぶりだな」

 

『うん』

 

「どうした?」

 

『覚えてる?』

 

「何を?」

 

『高校の頃の約束』

 

「……」

 

悠飛は。

 

写真を見る。

 

『二十年後に、みんなで会おうって』

 

「……ああ」

 

『明日』

 

「……」

 

『同窓会だよ』

 

悠飛は。

 

ゆっくり。

 

笑った。

 

「そうだったな」

 

『忘れてた?』

 

「いや」

 

悠飛は。

 

窓の外を見る。

 

二十年後の東京。

 

かつてとは。

 

まるで違う景色。

 

「忘れるわけないだろ」

 

『ふふ』

 

「明日」

 

『うん』

 

「みんな来るのか?」

 

『もちろん』

 

「そうか」

 

『悠飛くんも来てくれる?』

 

悠飛は。

 

一瞬だけ。

 

目を閉じた。

 

そして。

 

笑う。

 

「ああ」

 

『じゃあ、また明日』

 

「また明日」

 

電話が切れる。

 

静寂。

 

悠飛は。

 

高校時代の写真を。

 

もう一度見る。

 

「……二十年」

 

長い。

 

本当に長い時間だった。

 

それでも。

 

写真の中の笑顔は。

 

あの日のまま。

 

悠飛は。

 

右目の眼帯に触れる。

 

そして。

 

小さく呟いた。

 

「待ってろ」

 

「みんな」

 

「今度は」

 

「俺から会いに行く」

 

窓の外。

 

夜の東京に。

 

無数の光が輝いていた。

 

右眼には。

 

その光は映らない。

 

けれど。

 

左眼には。

 

二十年前と同じように。

 

確かな光が映っていた。

 

――青春は終わった。

 

――だが。

 

――絆は終わらない。

 

そして。

 

二十年の時を越え。

 

七人の少女と一人の少年は。

 

再び。

 

同じ場所へ集う。

 

新しい物語の幕が。

 

上がろうとしていた。

 

 

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