『神のチートで勇往邁進!〜20年後の同窓会に現れた独眼竜は、三度(みたび)恋の火を灯す〜』   作:夜幻

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第79話「それぞれの未来」

卒業式から、数週間。

 

満開だった桜も、少しずつ散り始めていた。

 

高校生活を終えた七人は、それぞれの道へ進み始めていた。

 

毎朝、同じ時間に起きる。

 

同じ制服を着る。

 

同じ学校へ向かう。

 

そんな日々は、もう戻ってこない。

 

けれど。

 

不思議なことに、寂しさだけではなかった。

 

新しい生活への期待。

 

自分自身の未来への不安。

 

そして。

 

これからも続いていく友情。

 

それぞれの胸に、たくさんの想いを抱えながら。

 

七人は、それぞれの未来へ歩き始めていた。

 

 

「行ってきます!」

 

四葉が玄関から飛び出す。

 

「忘れ物はありませんか?」

 

五月が声をかける。

 

「大丈夫です!」

 

「本当に?」

 

「……たぶん!」

 

「たぶんでは困ります」

 

五月が呆れた顔をする。

 

「四葉、財布」

 

「え?」

 

「テーブルの上」

 

「あっ!」

 

四葉が慌てて戻る。

 

「ありがとうございます!」

 

「相変わらずね」

 

二乃が笑う。

 

「四葉は昔から変わらない」

 

一花も笑う。

 

三玖は、そんな四葉を見ながら小さく微笑んだ。

 

「でも、四葉らしい」

 

「そうですよ!」

 

四葉は財布を鞄に入れる。

 

そして。

 

玄関へ向かう。

 

「じゃあ、行ってきます!」

 

「行ってらっしゃい」

 

「気をつけて」

 

五人の声に見送られ。

 

四葉は外へ出た。

 

 

四葉が向かった先は、大学だった。

 

スポーツ関係の学部。

 

彼女は高校時代から得意だった運動能力を活かし、将来はスポーツを通じて子供たちを支える仕事に就きたいと考えていた。

 

「おはようございます!」

 

「おはよう、四葉ちゃん」

 

「今日も元気ね」

 

「はい!」

 

四葉は、誰にでも明るく挨拶する。

 

それが彼女の長所だった。

 

誰かが困っていれば助ける。

 

落ち込んでいる人がいれば声をかける。

 

失敗しても。

 

「次、頑張りましょう!」

 

と笑う。

 

高校時代から何も変わらない。

 

けれど。

 

心の中には、一つだけ。

 

高校時代とは違うものがあった。

 

「……悠飛さん」

 

ふと、名前が浮かぶ。

 

二十年後。

 

同窓会で再会した悠飛の姿。

 

そして。

 

その隣に立ちたいという想い。

 

四葉は、拳を握る。

 

「私も頑張らなくちゃ」

 

恋だけじゃない。

 

自分自身も成長しなければならない。

 

いつか。

 

悠飛に胸を張って会えるように。

 

それが。

 

四葉の新しい目標だった。

 

 

一花は、別の道を選んだ。

 

大学へ進みながら。

 

芸能関係の仕事にも挑戦する。

 

高校時代から持っていた演技への興味。

 

舞台。

 

映像。

 

モデル。

 

様々な仕事を経験しながら。

 

少しずつ、自分の可能性を探していく。

 

「一花さん、次のオーディションですが――」

 

「はい」

 

「かなり競争率が高いです」

 

「分かっています」

 

一花は笑う。

 

「でも、やってみたいので」

 

「大丈夫ですか?」

 

「大丈夫」

 

そして。

 

少しだけ胸を張る。

 

「私、諦めるのは嫌いなんです」

 

その言葉の裏には。

 

一人の男性の存在があった。

 

如月悠飛。

 

高校時代。

 

いつも自分たちを守ってくれた。

 

そして。

 

二十年経っても。

 

心の中から消えなかった。

 

「……」

 

仕事の合間。

 

一花はスマートフォンを見る。

 

悠飛からのメッセージ。

 

『みんな元気か?』

 

一花は。

 

少し笑って。

 

返信する。

 

『元気だよ。悠飛くんも頑張ってね』

 

送信。

 

そして。

 

小さく呟いた。

 

「私も頑張るから」

 

いつか。

 

悠飛が振り返ったとき。

 

「あの頃の一花」ではなく。

 

「今の私」を見てほしい。

 

それが。

 

一花の願いだった。

 

 

二乃は。

 

自分の好きなものを追いかけた。

 

料理。

 

高校時代から興味を持っていた世界。

 

大学では食に関する勉強をしながら。

 

アルバイトとしてレストランでも働く。

 

「二乃、今日もお願いね」

 

「任せて」

 

厨房に立つ二乃。

 

手際よく料理を仕上げていく。

 

「すごいですね」

 

後輩が驚く。

 

「昔から料理は得意なのよ」

 

二乃は胸を張る。

 

「でも、まだまだ」

 

「え?」

 

「もっと上手くなりたいの」

 

高校時代。

 

家族のために料理を作った。

 

みんなの笑顔を見るのが好きだった。

 

だから。

 

将来は。

 

自分の店を持ちたい。

 

そんな夢を持つようになっていた。

 

そして。

 

その店には。

 

いつか。

 

五つ子全員が来る。

 

六華も。

 

莉々華も。

 

そして。

 

悠飛も。

 

「……」

 

二乃は。

 

その光景を想像する。

 

「ふふ」

 

思わず笑う。

 

「いつか、絶対に作ってやるんだから」

 

 

三玖は。

 

歴史の道を選んだ。

 

高校時代から好きだった歴史。

 

大学では。

 

本格的に歴史学を学ぶ。

 

「三玖さん、この資料についてどう思います?」

 

「この記述は、別の史料と照らし合わせる必要があります」

 

「詳しいですね」

 

「好きだから」

 

三玖は。

 

静かに答える。

 

けれど。

 

以前とは違う。

 

自分の好きなことを。

 

堂々と好きだと言えるようになった。

 

それは。

 

高校生活の中で得たものだった。

 

風太郎との勉強。

 

五つ子での努力。

 

そして。

 

悠飛に言われた。

 

「好きなものを好きと言えるのは強さだ」

 

という言葉。

 

三玖は。

 

その言葉を大切にしていた。

 

「……」

 

大学の図書館。

 

一人で本を読む。

 

その横に。

 

高校時代の写真を置いている。

 

七人と。

 

悠飛。

 

「みんな」

 

三玖は。

 

小さく笑う。

 

「それぞれ頑張ってるかな」

 

そして。

 

写真の悠飛を見る。

 

「悠飛も」

 

 

五月は。

 

教師を目指していた。

 

高校時代。

 

母・零奈への憧れ。

 

そして。

 

無堂との一件。

 

その出来事を通して。

 

五月は。

 

改めて思った。

 

教師とは。

 

ただ知識を教えるだけではない。

 

生徒の未来に寄り添う仕事なのだ。

 

だから。

 

大学では教育学を学ぶ。

 

「先生になるんですか?」

 

友人に聞かれ。

 

五月は頷いた。

 

「はい」

 

「大変そう」

 

「そうですね」

 

五月は。

 

少し笑う。

 

「でも」

 

その瞳には。

 

強い意志があった。

 

「私は、教師になりたいんです」

 

いつか。

 

自分が母から受け取ったものを。

 

次の世代へ渡すために。

 

 

六華は。

 

教育関係の道を選んだ。

 

子供たちを支える仕事。

 

一人一人の可能性を見つける仕事。

 

「六華先生!」

 

「どうしたの?」

 

「これ見て!」

 

子供が。

 

嬉しそうに絵を見せる。

 

「上手ね」

 

「本当?」

 

「もちろん」

 

六華は笑う。

 

子供たちの笑顔を見るたび。

 

思う。

 

自分も。

 

こんなふうに。

 

誰かに背中を押してもらった。

 

幼い頃。

 

転んだ自分に。

 

手を差し伸べてくれた少年。

 

「……」

 

悠飛。

 

六華は。

 

ふと窓の外を見る。

 

「先生?」

 

「何でもないよ」

 

「恋?」

 

「えっ?」

 

子供の突然の言葉に。

 

六華の顔が赤くなる。

 

「ち、違うわよ」

 

「顔赤い!」

 

「もう!」

 

教室に。

 

笑い声が響く。

 

六華は。

 

笑いながら思う。

 

――いつか。

 

悠飛にも。

 

この笑顔を見せたい。

 

 

莉々華は。

 

自分自身の才能を活かす道へ進んだ。

 

文章。

 

創作。

 

企画。

 

人と人を繋ぐこと。

 

高校時代。

 

五つ子や六華と過ごす中で。

 

莉々華は。

 

人の心を観察することが得意になった。

 

誰が困っているのか。

 

誰が寂しがっているのか。

 

誰が言葉にできない想いを抱えているのか。

 

それを見つける。

 

そして。

 

そっと支える。

 

「莉々華さんって、人の気持ちに敏感ですよね」

 

大学の友人に言われた。

 

「そうかな?」

 

「はい」

 

莉々華は。

 

少し笑う。

 

「昔から周りに個性的な人が多かったから」

 

「例えば?」

 

「秘密」

 

「えー!」

 

莉々華は笑った。

 

けれど。

 

心の中では。

 

七人の仲間を思い浮かべていた。

 

そして。

 

もちろん。

 

悠飛も。

 

 

そして。

 

悠飛。

 

彼もまた。

 

高校卒業後。

 

普通の大学生として過ごすつもりだった。

 

しかし。

 

彼の才能は。

 

それを許さなかった。

 

学問。

 

武術。

 

投資。

 

経営。

 

何をやっても。

 

突出してしまう。

 

「悠飛」

 

大学の友人が。

 

呆れた顔をする。

 

「お前、本当に何者なんだ?」

 

「普通の大学生だけど?」

 

「嘘つけ」

 

「本当だって」

 

「じゃあこの投資成績は何だよ」

 

「運が良かった」

 

「絶対違う」

 

悠飛は。

 

笑う。

 

けれど。

 

本人には。

 

自覚が薄かった。

 

努力する。

 

学ぶ。

 

考える。

 

そして。

 

結果を出す。

 

ただそれだけ。

 

 

大学卒業後。

 

悠飛は。

 

投資の世界へ進んだ。

 

最初は。

 

小さな資金から。

 

しかし。

 

その判断力。

 

分析力。

 

そして。

 

圧倒的な決断力によって。

 

資産は。

 

急速に増えていく。

 

「また利益を出したのか?」

 

「まあな」

 

「一体何を見てるんだ?」

 

「市場」

 

「それだけ?」

 

「それだけ」

 

そんな会話を。

 

何度繰り返したことか。

 

そして。

 

数年後。

 

悠飛は。

 

世界でも知られる投資家となった。

 

さらに。

 

自ら会社を立ち上げ。

 

事業にも進出。

 

金融。

 

IT。

 

不動産。

 

教育。

 

医療。

 

様々な分野へ投資し。

 

巨大な企業グループを築いていった。

 

だが。

 

どれだけ成功しても。

 

悠飛の生活は。

 

意外なほど変わらなかった。

 

質素な食事。

 

早寝早起き。

 

毎日の鍛錬。

 

そして。

 

大切な人たちへの連絡。

 

「……」

 

悠飛は。

 

スマートフォンを見る。

 

グループチャット。

 

七人の名前。

 

一花。

 

二乃。

 

三玖。

 

四葉。

 

五月。

 

六華。

 

莉々華。

 

高校卒業後も。

 

連絡は途切れなかった。

 

頻繁ではない。

 

それでも。

 

誕生日。

 

年末。

 

何か大きな出来事があったとき。

 

必ず連絡する。

 

「……」

 

悠飛は。

 

笑う。

 

「みんな、元気そうだな」

 

それだけで。

 

十分だった。

 

 

十年後。

 

それぞれの人生は。

 

さらに大きく変わっていた。

 

一花は。

 

女優として。

 

少しずつ名前が知られるようになっていた。

 

二乃は。

 

料理人として腕を磨き。

 

自分の店を持つ夢に近づいていた。

 

三玖は。

 

歴史研究の道へ。

 

五月は。

 

教育者を目指して。

 

勉強を続けていた。

 

四葉は。

 

スポーツ指導者として。

 

多くの子供たちと関わっていた。

 

六華も。

 

教育関係の仕事で。

 

人を支えていた。

 

莉々華は。

 

文章や企画の仕事で。

 

自分の才能を発揮していた。

 

そして。

 

悠飛は。

 

世界有数の資産家へ。

 

だが。

 

彼らは。

 

それぞれ忙しくなっても。

 

時々。

 

集まった。

 

「久しぶり!」

 

「相変わらずうるさい」

 

「二乃、酷いです!」

 

「四葉がうるさいだけ」

 

「三玖まで!」

 

笑い声。

 

昔と同じ。

 

大人になっても。

 

変わらない。

 

そんな時間が。

 

みんなにとって。

 

何より大切だった。

 

 

そして。

 

二十年。

 

高校卒業の日。

 

七人で交わした約束。

 

『二十年後も、みんなで会おう』

 

その日が。

 

近づいていた。

 

一花は。

 

仕事の合間に。

 

カレンダーを見る。

 

「あと一週間」

 

二乃は。

 

店の厨房で。

 

新しい料理を考える。

 

「同窓会には何を持っていこうかな」

 

三玖は。

 

研究室で。

 

資料を整理する。

 

「もうすぐか」

 

四葉は。

 

子供たちに囲まれながら。

 

笑っていた。

 

「先生、何の日?」

 

「大切な日です!」

 

五月は。

 

教壇に立ちながら。

 

窓の外を見る。

 

「……二十年」

 

六華は。

 

帰宅後。

 

高校時代の写真を取り出す。

 

「約束の日」

 

莉々華は。

 

昔のアルバムを開く。

 

「みんな、どうなってるかな」

 

そして。

 

悠飛。

 

自宅の書斎。

 

机の引き出しから。

 

一枚の写真を取り出す。

 

卒業式の日。

 

七人の少女。

 

そして。

 

自分。

 

「……」

 

写真の裏。

 

四葉の文字。

 

『二十年後も、みんな一緒!』

 

悠飛は。

 

静かに笑った。

 

「約束だもんな」

 

 

同窓会前日。

 

七人のグループチャットが。

 

久しぶりに大きく動いた。

 

一花。

 

『明日、絶対遅刻しないでね』

 

二乃。

 

『誰に言ってるのよ』

 

三玖。

 

『四葉』

 

四葉。

 

『えっ!?』

 

五月。

 

『四葉でしょうね』

 

四葉。

 

『みんな酷いです!』

 

六華。

 

『でも、四葉ならありそう』

 

莉々華。

 

『ふふ』

 

四葉。

 

『六華まで!?』

 

一花。

 

『悠飛くんは?』

 

しばらく。

 

既読がつかない。

 

そして。

 

悠飛。

 

『ちゃんと行く』

 

四葉。

 

『やったー!』

 

二乃。

 

『当たり前でしょ』

 

三玖。

 

『楽しみ』

 

五月。

 

『皆さんに会えるのが楽しみです』

 

六華。

 

『うん』

 

莉々華。

 

『私も』

 

一花。

 

『じゃあ、明日ね』

 

最後に。

 

四葉。

 

『二十年越しの約束です!』

 

 

そして。

 

翌日。

 

同窓会。

 

二十年ぶりに。

 

八人が集まった。

 

いや。

 

正確には。

 

もっと多くの仲間たちが。

 

その場に集まっていた。

 

昔話。

 

仕事の話。

 

恋愛の話。

 

失敗談。

 

成功談。

 

そして。

 

高校時代の思い出。

 

「懐かしいな」

 

悠飛が言う。

 

「二十年だぞ」

 

「本当に」

 

一花が笑う。

 

「みんな変わったね」

 

「一花が一番変わった」

 

二乃が言う。

 

「女優なんだから当然でしょ」

 

「でも中身は変わらない」

 

三玖。

 

「そう?」

 

「そう」

 

「……ふふ」

 

笑い声。

 

四葉も。

 

笑っていた。

 

けれど。

 

ふと。

 

窓の外を見る。

 

桜。

 

二十年前と同じように。

 

春風に揺れている。

 

「……」

 

四葉は。

 

胸の中で。

 

呟いた。

 

――あの日。

 

私たちは。

 

未来なんて。

 

何も知らなかった。

 

ただ。

 

一緒にいたかった。

 

それだけだった。

 

でも。

 

それぞれが。

 

自分の夢を見つけた。

 

それぞれが。

 

自分の人生を歩いた。

 

そして。

 

今。

 

また。

 

ここにいる。

 

「……」

 

四葉は。

 

笑う。

 

「未来って」

 

「何だか、すごいですね」

 

悠飛が。

 

隣に立つ。

 

「どうした?」

 

「いえ」

 

四葉は。

 

首を振る。

 

「何でもありません」

 

「そうか」

 

「はい」

 

二十年前。

 

同じ校門を出た。

 

七人の少女と。

 

一人の少年。

 

あの日。

 

別々の道へ進んだ。

 

でも。

 

道が別れても。

 

心まで離れる必要はない。

 

それを。

 

二十年かけて。

 

彼らは知った。

 

 

帰り際。

 

一花が。

 

みんなを呼び止めた。

 

「ねえ」

 

「何?」

 

二乃。

 

「また約束しない?」

 

「約束?」

 

四葉が。

 

首を傾げる。

 

一花は。

 

笑う。

 

「次は、十年後」

 

「十年後!?」

 

四葉が叫ぶ。

 

「二十年じゃなくて?」

 

「だって」

 

一花は。

 

みんなを見る。

 

「二十年は長すぎるから」

 

「……」

 

三玖が。

 

笑う。

 

「賛成」

 

五月も。

 

頷く。

 

「私もです」

 

二乃。

 

「いいわね」

 

六華。

 

「うん」

 

莉々華。

 

「もちろん」

 

最後に。

 

悠飛。

 

「分かった」

 

「決まり!」

 

四葉が。

 

手を上げる。

 

「十年後も、みんな一緒です!」

 

「おー!」

 

全員の声が重なる。

 

 

その夜。

 

七人は。

 

それぞれの家へ帰っていった。

 

一花は。

 

明日の撮影に備える。

 

二乃は。

 

新しい料理の試作を考える。

 

三玖は。

 

研究資料を整理する。

 

四葉は。

 

次の日の仕事の準備をする。

 

五月は。

 

教員としての授業案を作る。

 

六華は。

 

子供たちの成長記録をまとめる。

 

莉々華は。

 

新しい企画書を書く。

 

そして。

 

悠飛は。

 

夜景の見える部屋で。

 

一人。

 

窓の外を見る。

 

「……」

 

世界は広い。

 

これからも。

 

多くの出来事がある。

 

成功も。

 

失敗も。

 

出会いも。

 

別れも。

 

それでも。

 

悠飛には。

 

守りたいものがある。

 

「……みんな」

 

高校時代。

 

七人の少女たちと交わした約束。

 

その約束は。

 

二十年経った今も。

 

消えていなかった。

 

 

数日後。

 

それぞれの生活へ戻った七人は。

 

以前と同じように。

 

それぞれの道を歩いていた。

 

一花は。

 

夢に向かって。

 

二乃は。

 

料理の道へ。

 

三玖は。

 

歴史を追い。

 

四葉は。

 

子供たちを支え。

 

五月は。

 

教師への道を進み。

 

六華も。

 

教育の世界で。

 

莉々華は。

 

自分の才能を磨く。

 

そして。

 

悠飛は。

 

世界を舞台に。

 

大きな仕事へ挑んでいく。

 

誰も。

 

まだ知らない。

 

これから先。

 

悠飛の人生に。

 

さらに大きな転機が訪れることを。

 

世界有数の資産家。

 

「独眼竜」と呼ばれる男。

 

その人生には。

 

まだ。

 

多くの物語が待っている。

 

そして。

 

その物語の中には。

 

七人の少女たち――いや。

 

今では。

 

七人の大人の女性たちが。

 

再び深く関わっていくことになる。

 

 

春の終わり。

 

悠飛は。

 

自宅の庭にある桜の木を眺めていた。

 

散りかけた花びら。

 

その一枚が。

 

肩に落ちる。

 

悠飛は。

 

それを手に取った。

 

ふと。

 

卒業式の日を思い出す。

 

七人。

 

校門。

 

写真。

 

約束。

 

「二十年後も、みんな一緒」

 

悠飛は。

 

小さく笑う。

 

「守れたな」

 

そして。

 

空を見上げる。

 

「これからも」

 

「……」

 

「守っていくか」

 

それは。

 

誰か一人だけを守るという意味ではない。

 

大切な人たち。

 

家族。

 

仲間。

 

そして。

 

自分自身。

 

それぞれの未来を。

 

尊重しながら。

 

必要なときには。

 

手を差し伸べる。

 

それが。

 

悠飛の生き方だった。

 

 

一方。

 

四葉は。

 

帰宅途中の電車の中で。

 

窓の外を眺めていた。

 

夕暮れ。

 

街が。

 

オレンジ色に染まっている。

 

スマートフォンが震える。

 

悠飛からだった。

 

『今日もお疲れ』

 

四葉は。

 

目を丸くする。

 

そして。

 

笑った。

 

『悠飛さんもお疲れ様です!』

 

送信。

 

すぐに。

 

返信が来る。

 

『またみんなで集まろう』

 

四葉は。

 

胸元にスマートフォンを抱く。

 

「……はい」

 

小さく。

 

呟く。

 

それぞれの未来。

 

それぞれの夢。

 

それぞれの恋。

 

別々の道を歩いていても。

 

心は。

 

繋がっている。

 

そして。

 

いつか。

 

また交差する。

 

その未来を。

 

四葉は。

 

楽しみにしていた。

 

「私も」

 

窓に映る自分を見つめる。

 

「もっと頑張ろう」

 

高校時代の自分より。

 

もっと強く。

 

もっと優しく。

 

もっと胸を張れる女性に。

 

いつか。

 

悠飛の隣に立ったとき。

 

「私も頑張ったよ」

 

そう言えるように。

 

 

春の風が吹く。

 

桜の花びらが。

 

街を舞う。

 

七人の女性たちは。

 

それぞれの場所で。

 

それぞれの未来を生きている。

 

一花。

 

二乃。

 

三玖。

 

四葉。

 

五月。

 

六華。

 

莉々華。

 

そして。

 

悠飛。

 

彼らの物語は。

 

高校卒業とともに。

 

終わったわけではない。

 

むしろ。

 

ここからが。

 

本当の始まりだった。

 

二十年という時間を越えて。

 

再び集まった仲間たち。

 

変わったもの。

 

変わらなかったもの。

 

新しく生まれた想い。

 

そして。

 

まだ伝えられていない想い。

 

それらすべてを胸に。

 

彼らは。

 

それぞれの未来へ進んでいく。

 

いつか。

 

また。

 

同じ場所で笑うために。

 

そして――。

 

それぞれの未来が。

 

一つの場所へ集まるその日まで。

 

物語は。

 

静かに。

 

次の時代へ進み始めていた。

 

 

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