『神のチートで勇往邁進!〜20年後の同窓会に現れた独眼竜は、三度(みたび)恋の火を灯す〜』   作:夜幻

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最終章 20年後、三度目の恋 第81話「世界大富豪ランキング第2位――独眼竜、帰還」

二十年。

 

その歳月は、人を変える。

 

少年は大人になり。

 

少女は女性になる。

 

夢を追い続けた者は、いつしかその道の第一人者となり。

 

普通の人生を歩んだ者もまた、それぞれの場所でかけがえのないものを手に入れていた。

 

そして――。

 

一人の少年は。

 

世界を動かす男になっていた。

 

如月悠飛。

 

四十代。

 

金髪のウルフヘア。

 

長身。

 

細身でありながら鍛え抜かれた肉体。

 

右眼には黒い眼帯。

 

その姿から、世界ではこう呼ばれている。

 

――独眼竜。

 

世界大富豪ランキング。

 

第2位。

 

推定総資産、数十兆円。

 

投資。

 

金融。

 

IT。

 

不動産。

 

エネルギー。

 

教育。

 

医療。

 

宇宙開発。

 

世界中の企業に出資し、自らも巨大企業グループを築き上げた男。

 

しかし。

 

その男が今。

 

二十年ぶりに。

 

故郷へ帰ってきた。

 

 

「……東京か」

 

空港のVIP専用ゲート。

 

そこから出てきた悠飛を。

 

数十人のスタッフが出迎えていた。

 

「如月会長、お疲れ様でした」

 

「お疲れ」

 

「今回の海外出張ですが――」

 

「それは後でいい」

 

悠飛は。

 

軽く手を上げた。

 

「今日は仕事をしに帰ってきたわけじゃない」

 

「ですが、会長。明日の午前には――」

 

「キャンセル」

 

「え?」

 

秘書が固まる。

 

「明日の予定は全部キャンセルだ」

 

「しかし……」

 

「俺にも休む権利くらいあるだろ」

 

悠飛が笑う。

 

秘書は。

 

数秒黙った後。

 

苦笑した。

 

「……承知しました」

 

「助かる」

 

悠飛は。

 

空を見上げる。

 

二十年前とは。

 

何もかも変わっている。

 

高層ビル。

 

巨大な広告。

 

自動運転車。

 

人々の服装。

 

街の景色。

 

けれど。

 

不思議だった。

 

この空だけは。

 

あの日と同じに見えた。

 

「……」

 

悠飛は。

 

右眼に触れる。

 

黒い眼帯。

 

二十年前。

 

日の出祭。

 

五月を守るため。

 

無堂の仲間たちと戦った。

 

そして。

 

右眼を失った。

 

あの日から。

 

人生は変わった。

 

だが。

 

後悔はない。

 

「……あの時も」

 

悠飛は。

 

小さく笑う。

 

「守りたかったんだよな」

 

そして。

 

今も。

 

その気持ちは。

 

変わっていない。

 

 

「会長」

 

秘書が声をかける。

 

「ホテルへ向かいますか?」

 

「いや」

 

「では、ご自宅へ?」

 

「それも違う」

 

悠飛は。

 

車のドアを閉める。

 

「昔の学校へ行く」

 

「学校、ですか?」

 

「ああ」

 

「何か式典でも?」

 

「違う」

 

悠飛は。

 

窓の外を見る。

 

「思い出の場所だ」

 

秘書は。

 

それ以上聞かなかった。

 

 

車は。

 

ゆっくりと街を走る。

 

悠飛は。

 

後部座席から。

 

外を眺めていた。

 

二十年前。

 

高校生だった頃。

 

同じ道を。

 

自転車で走った。

 

一花。

 

二乃。

 

三玖。

 

四葉。

 

五月。

 

六華。

 

莉々華。

 

そして。

 

風太郎。

 

たくさんの仲間たち。

 

たくさんの思い出。

 

笑った。

 

喧嘩した。

 

泣いた。

 

そして。

 

守った。

 

「……」

 

悠飛は。

 

目を閉じる。

 

すると。

 

記憶が蘇ってくる。

 

『悠飛さん!』

 

四葉の声。

 

『悠飛くん』

 

一花の声。

 

『悠飛』

 

二乃の声。

 

『……悠飛』

 

三玖の声。

 

『悠飛さん』

 

五月の声。

 

『悠飛』

 

六華の声。

 

『悠飛くん』

 

莉々華の声。

 

「……」

 

全部。

 

覚えている。

 

二十年経っても。

 

一度も忘れたことはない。

 

 

学校。

 

正門前。

 

悠飛は。

 

車から降りる。

 

警備員が驚いた。

 

「如月様?」

 

「久しぶり」

 

「お久しぶりです!」

 

悠飛は。

 

苦笑する。

 

「俺のこと知ってるのか?」

 

「もちろんです!」

 

警備員は。

 

興奮気味だった。

 

「世界大富豪ランキング第2位の如月悠飛様ですよね?」

 

「……」

 

悠飛は。

 

少し困った顔をする。

 

「昔、この学校の生徒だったんだ」

 

「え?」

 

「だから」

 

校舎を見る。

 

「ちょっと見に来ただけ」

 

「どうぞ!」

 

許可を得て。

 

校内へ入る。

 

廊下。

 

階段。

 

教室。

 

どれも。

 

二十年前の記憶を呼び起こす。

 

「……ここか」

 

三年一組。

 

悠飛は。

 

教室の扉を開けた。

 

誰もいない。

 

夕方。

 

静かな教室。

 

机。

 

黒板。

 

窓。

 

そして。

 

桜の木。

 

「……」

 

悠飛は。

 

一番後ろの席へ向かう。

 

昔。

 

自分が座っていた場所。

 

机に手を置く。

 

「懐かしいな」

 

 

『悠飛!』

 

突然。

 

記憶の中で。

 

声がした。

 

振り返る。

 

高校生の四葉がいる。

 

「悠飛さん!」

 

笑っている。

 

その隣に。

 

一花。

 

二乃。

 

三玖。

 

五月。

 

六華。

 

莉々華。

 

「みんな……」

 

悠飛は。

 

思わず笑う。

 

『二十年後も、みんな一緒です!』

 

四葉の声。

 

「……」

 

そして。

 

現実に戻る。

 

誰もいない教室。

 

悠飛は。

 

窓の外を見る。

 

桜。

 

「約束は」

 

小さく。

 

呟く。

 

「守ったぞ」

 

 

その夜。

 

ニュース番組。

 

『世界大富豪ランキング最新版が発表されました』

 

画面に。

 

一人の男の写真。

 

『第2位は、日本の実業家・投資家、如月悠飛氏』

 

『総資産は――』

 

司会者が。

 

数字を読み上げる。

 

『推定約○兆円』

 

スタジオが。

 

ざわめく。

 

『四十代にして世界有数の資産を築いた如月氏は、金融、IT、エネルギー、医療など幅広い分野へ投資を行っており――』

 

「……」

 

そのニュースを。

 

七人の女性も見ていた。

 

一花。

 

「またランキング上がったんだ」

 

二乃。

 

「昔から規格外だったけど……」

 

三玖。

 

「すごい」

 

四葉。

 

「悠飛さん、すごいです!」

 

五月。

 

「本当に……」

 

六華。

 

「……」

 

莉々華。

 

「世界的大富豪かぁ」

 

七人のグループチャットが。

 

動き始める。

 

四葉。

 

『悠飛さん、ニュースになってます!』

 

二乃。

 

『知ってるわよ』

 

一花。

 

『有名人だね』

 

三玖。

 

『独眼竜』

 

五月。

 

『右眼を失っても、ここまで……』

 

六華。

 

『昔から、そういう人だった』

 

莉々華。

 

『本人はあまり気にしてなさそう』

 

そして。

 

悠飛から。

 

『見たのか』

 

四葉。

 

『見ました!』

 

悠飛。

 

『明日、時間あるか?』

 

既読。

 

一花。

 

『え?』

 

二乃。

 

『何よ』

 

三玖。

 

『どうしたの?』

 

四葉。

 

『あります!』

 

五月。

 

『私も大丈夫です』

 

六華。

 

『空ける』

 

莉々華。

 

『私も』

 

悠飛。

 

『じゃあ、明日』

 

一花。

 

『ちょっと待って』

 

『何するの?』

 

悠飛。

 

『昔の場所を回ろうと思ってる』

 

しばらく。

 

誰も。

 

返信しなかった。

 

そして。

 

四葉。

 

『行きたいです!』

 

一花。

 

『私も』

 

二乃。

 

『仕方ないわね』

 

三玖。

 

『行く』

 

五月。

 

『もちろん』

 

六華。

 

『私も』

 

莉々華。

 

『決まりね』

 

悠飛。

 

『じゃあ、明日』

 

 

翌朝。

 

東京駅。

 

待ち合わせ。

 

最初に来たのは。

 

四葉だった。

 

「おはようございます!」

 

「おはよう」

 

悠飛が。

 

振り返る。

 

四葉は。

 

一瞬。

 

言葉を失った。

 

二十年前とは。

 

違う。

 

当たり前だ。

 

悠飛は。

 

大人になった。

 

けれど。

 

「……」

 

四葉は。

 

思った。

 

やっぱり。

 

あの頃と同じ。

 

優しい。

 

「どうした?」

 

「いえ!」

 

四葉は。

 

笑う。

 

「久しぶりに二人で会ったので、ちょっと緊張しました!」

 

「二人?」

 

「……あ」

 

四葉の顔が。

 

赤くなる。

 

その時。

 

「お待たせ」

 

一花が来た。

 

「おはよう」

 

続いて。

 

二乃。

 

「朝から元気ね」

 

三玖。

 

「おはよう」

 

五月。

 

「皆さん、お久しぶりです」

 

六華。

 

「お待たせ」

 

莉々華。

 

「全員揃ったね」

 

「よし」

 

悠飛が。

 

手を叩く。

 

「行くか」

 

「どこへ?」

 

一花が聞く。

 

「まずは」

 

悠飛が。

 

笑う。

 

「俺たちの高校」

 

 

八人は。

 

かつて通った道を歩いた。

 

「あっ!」

 

四葉が。

 

突然立ち止まる。

 

「ここ!」

 

「どうした?」

 

「昔、ここで転びました!」

 

二乃。

 

「覚えてるわよ」

 

三玖。

 

「四葉、派手に転んだ」

 

「三玖まで!」

 

一花が笑う。

 

「懐かしいね」

 

五月。

 

「本当に」

 

六華は。

 

少し離れて。

 

その様子を見ていた。

 

莉々華が。

 

隣に来る。

 

「どうしたの?」

 

「……ううん」

 

六華は。

 

首を振る。

 

「ただ」

 

悠飛を見る。

 

「帰ってきたんだなって」

 

莉々華も。

 

悠飛を見る。

 

「そうだね」

 

 

学校に到着。

 

校舎を歩く。

 

廊下。

 

教室。

 

階段。

 

図書室。

 

体育館。

 

どこへ行っても。

 

思い出が蘇る。

 

「ここで勉強会した」

 

三玖。

 

「ここでは喧嘩したわね」

 

二乃。

 

「林間学校も懐かしいです!」

 

四葉。

 

「キャンプファイヤー」

 

五月。

 

「……」

 

六華。

 

「日の出祭」

 

その言葉だけで。

 

全員の表情が変わった。

 

「……」

 

悠飛は。

 

右眼に触れる。

 

一花が。

 

そっと言う。

 

「悠飛くん」

 

「大丈夫」

 

悠飛は。

 

笑った。

 

「もう昔のことだ」

 

五月は。

 

申し訳なさそうに。

 

「でも……」

 

「五月」

 

悠飛が。

 

優しく止める。

 

「俺は後悔してない」

 

「……」

 

「君を守れたんだから」

 

五月の目に。

 

涙が浮かぶ。

 

「悠飛さん……」

 

四葉が。

 

五月の肩に手を置く。

 

「五月」

 

「はい」

 

二乃も。

 

三玖も。

 

一花も。

 

六華も。

 

莉々華も。

 

静かに。

 

五月を囲む。

 

悠飛は。

 

微笑んだ。

 

「俺たちは」

 

「もう過去だけを見る必要はない」

 

「未来を見よう」

 

 

その日の午後。

 

八人は。

 

学校近くの公園へ移動した。

 

昔。

 

よく集まった場所。

 

ベンチ。

 

桜。

 

ブランコ。

 

「変わらないな」

 

悠飛が言う。

 

「私たちは変わりましたけどね」

 

五月。

 

「外見は」

 

二乃。

 

「中身もよ」

 

一花が笑う。

 

「そうかな?」

 

三玖。

 

「私は変わってない」

 

「三玖は昔から三玖ね」

 

四葉。

 

「私も変わってません!」

 

「四葉もね」

 

全員が笑う。

 

悠飛は。

 

その光景を見ながら。

 

思った。

 

――帰ってきた。

 

本当に。

 

帰ってきたのだ。

 

二十年前。

 

この場所で。

 

何度も笑った。

 

何度も喧嘩した。

 

何度も支え合った。

 

そして。

 

今。

 

また。

 

同じ場所で。

 

同じ仲間たちと。

 

笑っている。

 

 

夕方。

 

夕陽が。

 

街を染める。

 

「そろそろ帰るか」

 

悠飛が言う。

 

「……」

 

七人は。

 

少し寂しそうな顔をした。

 

一花が。

 

口を開く。

 

「ねえ」

 

「ん?」

 

「今日は楽しかったね」

 

「ああ」

 

二乃。

 

「また来ましょう」

 

三玖。

 

「うん」

 

四葉。

 

「次はもっといろんなところへ行きたいです!」

 

五月。

 

「いいですね」

 

六華。

 

「……」

 

六華は。

 

悠飛を見る。

 

「悠飛」

 

「ん?」

 

「私」

 

一瞬。

 

言葉に詰まる。

 

けれど。

 

勇気を出した。

 

「二十年経っても」

 

「あなたに会えてよかった」

 

悠飛は。

 

少し驚いた。

 

そして。

 

笑う。

 

「俺も」

 

「……」

 

六華の顔が。

 

赤くなる。

 

一花は。

 

その様子を見ていた。

 

二乃も。

 

三玖も。

 

四葉も。

 

五月も。

 

莉々華も。

 

誰も。

 

何も言わない。

 

けれど。

 

それぞれの胸に。

 

同じ感情が芽生えていた。

 

――負けたくない。

 

二十年前。

 

まだ。

 

幼かった恋心。

 

それは。

 

二十年の歳月を経ても。

 

消えていなかった。

 

むしろ。

 

より強く。

 

より深く。

 

育っていた。

 

 

夜。

 

悠飛は。

 

一人でホテルの部屋にいた。

 

窓の外。

 

東京の夜景。

 

世界有数の資産家。

 

誰もが。

 

彼の成功を羨む。

 

だが。

 

悠飛が欲しかったものは。

 

金ではなかった。

 

名誉でも。

 

地位でもない。

 

「……」

 

今日。

 

みんなと過ごした時間。

 

それだけで。

 

十分だった。

 

スマートフォンが鳴る。

 

グループチャット。

 

四葉。

 

『今日は本当に楽しかったです!』

 

一花。

 

『また行こうね』

 

二乃。

 

『次は私の店』

 

三玖。

 

『楽しみ』

 

五月。

 

『ありがとうございました』

 

六華。

 

『また会いたい』

 

莉々華。

 

『次はいつにする?』

 

悠飛。

 

『来週でもいいぞ』

 

四葉。

 

『早いです!』

 

一花。

 

『ふふ』

 

二乃。

 

『相変わらずね』

 

三玖。

 

『悠飛らしい』

 

五月。

 

『では、来週にしましょう』

 

悠飛。

 

『決まり』

 

スマートフォンを置く。

 

「……」

 

悠飛は。

 

窓の外を見る。

 

そして。

 

右眼の眼帯に触れる。

 

二十年前。

 

この眼を失った。

 

それでも。

 

左眼で。

 

たくさんのものを見てきた。

 

世界。

 

仕事。

 

成功。

 

失敗。

 

仲間。

 

そして。

 

大切な人たち。

 

「……」

 

悠飛は。

 

静かに笑った。

 

「俺の人生」

 

「悪くないな」

 

 

翌朝。

 

世界中のニュースサイトが。

 

一斉に報じた。

 

『世界大富豪ランキング第2位・如月悠飛氏、日本へ帰国』

 

『独眼竜、二十年ぶりに母校を訪問』

 

『如月氏、旧友との再会を果たす』

 

さらに。

 

SNSでは。

 

一枚の写真が話題になった。

 

母校の校門前。

 

八人の男女。

 

中央に。

 

眼帯をした悠飛。

 

左右に。

 

一花。

 

二乃。

 

三玖。

 

四葉。

 

五月。

 

六華。

 

莉々華。

 

高校時代の写真と。

 

現在の写真を並べたもの。

 

ネット上には。

 

驚きの声が溢れた。

 

『この女性たち誰?』

 

『全員美人すぎる』

 

『如月悠飛の幼馴染?』

 

『二十年前からの仲間なのか』

 

『独眼竜の青春時代?』

 

『映画みたい』

 

『この八人の関係が気になる』

 

しかし。

 

当人たちは。

 

そんな世間の騒ぎなど。

 

知る由もなかった。

 

いや。

 

知っていても。

 

気にしなかっただろう。

 

彼らにとって。

 

大切なのは。

 

世間の評価ではない。

 

二十年前から。

 

変わらない仲間との時間だった。

 

 

数日後。

 

悠飛のもとに。

 

一通の手紙が届いた。

 

差出人。

 

高校の同窓会実行委員会。

 

『卒業二十周年記念同窓会へのご参加、ありがとうございました』

 

そして。

 

最後に。

 

一文。

 

『また十年後に、お会いしましょう』

 

悠飛は。

 

その手紙を読んで。

 

微笑んだ。

 

「十年後か」

 

四十代。

 

五十代。

 

その頃には。

 

自分も。

 

もっと年を取っているだろう。

 

みんなも。

 

それぞれの人生をさらに歩んでいる。

 

けれど。

 

きっと。

 

また会う。

 

「約束したからな」

 

悠飛は。

 

手紙を机の引き出しへしまった。

 

そこには。

 

二十年前の写真。

 

そして。

 

今回の写真。

 

二枚が並んでいた。

 

高校生の八人。

 

そして。

 

大人になった八人。

 

「……」

 

悠飛は。

 

その二枚を見比べる。

 

変わった。

 

本当に。

 

みんな変わった。

 

だけど。

 

笑顔だけは。

 

同じだった。

 

 

その夜。

 

一花。

 

二乃。

 

三玖。

 

四葉。

 

五月。

 

六華。

 

莉々華。

 

七人は。

 

それぞれの場所で。

 

同じ写真を見ていた。

 

二十年前。

 

そして。

 

現在。

 

一花は。

 

「……」

 

二乃は。

 

「……」

 

三玖は。

 

「……」

 

四葉は。

 

「……」

 

五月は。

 

「……」

 

六華は。

 

「……」

 

莉々華は。

 

「……」

 

誰も。

 

口には出さない。

 

けれど。

 

心の中には。

 

同じ名前があった。

 

――悠飛。

 

二十年前。

 

初めて恋をした。

 

二十年後。

 

再び会った。

 

そして。

 

今。

 

三度目の恋が。

 

始まろうとしている。

 

 

翌週。

 

七人と悠飛は。

 

再び集まった。

 

今度は。

 

二乃の店。

 

「いらっしゃい」

 

二乃が。

 

厨房から顔を出す。

 

「今日は特別メニューよ」

 

「楽しみです!」

 

四葉が喜ぶ。

 

「料理なら任せて」

 

二乃が胸を張る。

 

食事が始まる。

 

笑い声。

 

昔話。

 

未来の話。

 

仕事の話。

 

そして。

 

恋の話。

 

「ねえ」

 

一花が。

 

突然言った。

 

「みんな」

 

「何?」

 

二乃。

 

「今、好きな人いる?」

 

空気が。

 

止まった。

 

「……」

 

三玖。

 

「……」

 

四葉。

 

「……」

 

五月。

 

「……」

 

六華。

 

「……」

 

莉々華。

 

「……」

 

悠飛。

 

「?」

 

「どうした?」

 

一花は。

 

思わず吹き出した。

 

「やっぱり」

 

「?」

 

二乃が。

 

頭を抱える。

 

「本当に鈍感なんだから」

 

「何が?」

 

「何でもない!」

 

七人が。

 

顔を見合わせる。

 

そして。

 

それぞれ。

 

小さく笑った。

 

二十年前。

 

言えなかったこと。

 

二十年後。

 

まだ。

 

言えない。

 

けれど。

 

今度は。

 

逃げない。

 

今度は。

 

諦めない。

 

そして。

 

今度こそ。

 

自分の想いを。

 

自分の言葉で伝える。

 

それが。

 

彼女たちの決意だった。

 

 

夜。

 

店を出る。

 

「じゃあ、また」

 

「またね」

 

「お疲れ」

 

「気をつけて」

 

七人が。

 

それぞれ帰っていく。

 

悠飛も。

 

車へ向かう。

 

その背中を。

 

一花が見る。

 

二乃も。

 

三玖も。

 

四葉も。

 

五月も。

 

六華も。

 

莉々華も。

 

それぞれの場所から。

 

悠飛を見つめる。

 

二十年前。

 

少年だった男。

 

今は。

 

世界大富豪ランキング第2位。

 

右眼に眼帯をした。

 

孤高の「独眼竜」。

 

けれど。

 

彼女たちにとっては。

 

ただの。

 

「悠飛」。

 

幼い頃から知っている。

 

大切な幼馴染。

 

そして――。

 

愛するかもしれない人。

 

 

悠飛は。

 

車に乗り込む前。

 

振り返った。

 

七人が。

 

そこにいる。

 

「どうした?」

 

四葉が。

 

笑顔で手を振る。

 

「何でもありません!」

 

一花も。

 

手を振る。

 

二乃も。

 

三玖も。

 

五月も。

 

六華も。

 

莉々華も。

 

悠飛は。

 

笑った。

 

「じゃあな」

 

車が。

 

走り出す。

 

七人は。

 

その姿を見送った。

 

やがて。

 

車が見えなくなる。

 

一花が。

 

小さく呟く。

 

「……始まったね」

 

二乃。

 

「何が?」

 

一花は。

 

笑う。

 

「私たちの、三度目の恋」

 

誰も。

 

否定しなかった。

 

夜空には。

 

満月。

 

そして。

 

春の桜。

 

二十年という時間を越えて。

 

八人の物語は。

 

再び動き始めた。

 

世界大富豪ランキング第2位。

 

独眼竜・如月悠飛。

 

そして。

 

彼を想い続けた七人の女性たち。

 

それぞれの未来。

 

それぞれの夢。

 

それぞれの恋。

 

これから。

 

そのすべてが。

 

一つに交わっていく。

 

――物語は。

 

ここからが。

 

本当の最終章だった。

 

 

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