『神のチートで勇往邁進!〜20年後の同窓会に現れた独眼竜は、三度(みたび)恋の火を灯す〜』   作:夜幻

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番外編④「風太郎、最高顧問への道」

如月悠飛にとって、上杉風太郎という男は何者なのか。

 

 親友。

 

 学生時代からの戦友。

 

 そして――。

 

 二十年後には、悠飛の右腕として世界を支える男。

 

 だが。

 

 そんな風太郎にも、まだ何者でもない時代があった。

 

 高校生だった頃。

 

 勉強だけが取り柄だった少年。

 

 家族の生活を支えるために努力し。

 

 五つ子たちの家庭教師を務め。

 

 そして。

 

 如月悠飛と出会った。

 

 これは。

 

 そんな一人の少年が。

 

 やがて「最高顧問」と呼ばれるまでに至った物語。

 

 

「上杉」

 

 放課後。

 

 旭高校の教室。

 

 悠飛が風太郎の机へやってきた。

 

「何だ?」

 

「少し相談がある」

 

「珍しいな。お前から相談とは」

 

 風太郎は参考書を閉じた。

 

「俺、会社を作ろうと思ってる」

 

「……会社?」

 

「ああ」

 

 風太郎の目が細くなる。

 

「具体的には?」

 

「まだ決めてない」

 

「決めてないのに会社を作るのか?」

 

「だから相談してる」

 

「……」

 

 風太郎はため息をついた。

 

「まず事業内容を決めろ」

 

「何がいいと思う?」

 

「お前、自分の会社を作るのに俺に丸投げするのか?」

 

「丸投げじゃない。信頼してるだけだ」

 

「……」

 

 風太郎は黙った。

 

 その言葉が。

 

 妙に嬉しかった。

 

「分かった」

 

「いいのか?」

 

「お前が本気なら付き合う」

 

「ありがとう」

 

「ただし」

 

 風太郎は人差し指を立てた。

 

「俺の言うことを聞け」

 

「もちろん」

 

「経営は勉強と同じだ」

 

「うん」

 

「感情だけでは動かせない」

 

「分かってる」

 

「数字を見る」

 

「分かってる」

 

「人を見る」

 

「……」

 

「そして、未来を見る」

 

 悠飛は笑った。

 

「やっぱり風太郎に頼んで正解だった」

 

「まだ何もしてないぞ」

 

「それでもだ」

 

 この日。

 

 二人の間に。

 

 後の「右腕」へと繋がる最初の約束が生まれた。

 

 

 数年後。

 

 悠飛の事業は急速に成長していた。

 

 投資。

 

 IT。

 

 教育。

 

 不動産。

 

 金融。

 

 海外事業。

 

 悠飛には。

 

 他人にはない圧倒的な先見性があった。

 

 しかし。

 

 どれだけ才能があっても。

 

 一人ですべてを管理することはできない。

 

 そこで。

 

「風太郎」

 

「何だ?」

 

「正式に俺の右腕になってくれないか?」

 

 風太郎は。

 

 悠飛を見る。

 

「……俺が?」

 

「ああ」

 

「他にも優秀な人間はいるだろ」

 

「いる」

 

「なら、なぜ俺だ?」

 

 悠飛は。

 

 即答した。

 

「信用してるから」

 

「……」

 

「俺が間違ってたら止めてくれ」

 

「……」

 

「俺が暴走したら殴ってくれ」

 

「それは遠慮なくやる」

 

「だろ?」

 

 悠飛は笑った。

 

「だから頼む」

 

 風太郎は。

 

 しばらく黙っていた。

 

 そして。

 

「分かった」

 

「本当か?」

 

「ああ」

 

「ありがとう!」

 

「ただし」

 

「また条件か?」

 

「当然だ」

 

 風太郎は。

 

 真剣な顔をする。

 

「俺はお前のイエスマンにはならない」

 

「望むところだ」

 

「間違っていると思ったら反対する」

 

「頼む」

 

「危険だと思ったら止める」

 

「頼む」

 

「会社のために必要なら、お前にも意見する」

 

「それが欲しかった」

 

 風太郎は。

 

 小さく笑った。

 

「なら、やってやる」

 

 

 風太郎の仕事は。

 

 想像以上に過酷だった。

 

 朝から会議。

 

 昼は取引先。

 

 午後は海外とのオンライン会議。

 

 夜は資料確認。

 

 さらに。

 

 悠飛の投資案件をすべて精査する。

 

「この案件は駄目だ」

 

「理由は?」

 

「リスクが高すぎる」

 

「利益は大きい」

 

「だから危険なんだ」

 

「なるほど」

 

「お前は利益だけを見る癖がある」

 

「そうか?」

 

「そうだ」

 

「気をつける」

 

「あと、この契約書」

 

「うん」

 

「条件が甘すぎる」

 

「相手は信用できる会社だぞ」

 

「信用と契約は別だ」

 

「……なるほど」

 

 風太郎は。

 

 悠飛の才能を否定しない。

 

 しかし。

 

 才能に頼り切ることも許さない。

 

 その姿勢が。

 

 会社を大きくしていった。

 

 

 ある日。

 

 大きな海外企業との契約を巡って。

 

 経営陣が意見を割った。

 

「契約すべきです」

 

「いや、待つべきだ」

 

「今を逃せば機会損失になります」

 

「それでもリスクが高い」

 

 会議室が騒がしくなる。

 

 悠飛は。

 

 黙っていた。

 

「悠飛」

 

 風太郎が言う。

 

「俺は反対だ」

 

「理由は?」

 

「相手の財務状況が見えない」

 

「資料では問題ない」

 

「資料を信じすぎるな」

 

「……」

 

「裏を取るべきだ」

 

「分かった」

 

 悠飛は。

 

 すぐに判断した。

 

「契約延期」

 

 経営陣がざわめく。

 

「社長!」

 

「風太郎を信じる」

 

 悠飛は。

 

 迷わなかった。

 

 数週間後。

 

 その企業に。

 

 巨額の不正が発覚した。

 

 もし契約していれば。

 

 悠飛の会社も大きな損失を受けていた。

 

「……」

 

 会議室。

 

 風太郎は。

 

 静かに資料を閉じた。

 

 悠飛が言う。

 

「助かった」

 

「仕事だ」

 

「いや」

 

 悠飛は笑った。

 

「お前が右腕でよかった」

 

「……そうか」

 

 風太郎も。

 

 少しだけ笑った。

 

 

 そんな二人を。

 

 陰から見ている人物がいた。

 

「お父さん」

 

 声をかけたのは。

 

 らいはだった。

 

「風太郎さんって、すごいね」

 

 勇也は頷く。

 

「そうだな」

 

「悠飛さんと仲良しだね」

 

「ああ」

 

「兄弟みたい」

 

 勇也は笑った。

 

「いや」

 

 少し考えて。

 

「もっと複雑な関係かもしれないな」

 

「?」

 

「親友であり、相棒であり」

 

「仕事仲間」

 

「そして、互いに互いを止められる存在」

 

 らいはは。

 

「素敵だね」

 

 と笑った。

 

 

 そして。

 

 風太郎自身にも。

 

 守りたいものがあった。

 

 三玖。

 

 高校時代から。

 

 少しずつ育ててきた想い。

 

 仕事が忙しくなっても。

 

 その関係だけは。

 

 大切にしていた。

 

「風太郎」

 

「ん?」

 

「忙しい?」

 

「まあな」

 

「……無理しないで」

 

「三玖こそ」

 

「私は大丈夫」

 

 三玖は笑う。

 

「風太郎が頑張ってるから」

 

「……」

 

「私も頑張れる」

 

 風太郎は。

 

 三玖を見る。

 

「ありがとう」

 

 その言葉は。

 

 仕事の時より。

 

 ずっと素直だった。

 

 

 二十年後。

 

 世界大富豪ランキング第2位。

 

 如月悠飛。

 

 世界中のメディアが。

 

 彼を「独眼竜」と呼んでいた。

 

 しかし。

 

 悠飛の隣には。

 

 必ず一人の男がいる。

 

 上杉風太郎。

 

 彼は。

 

 悠飛の最高顧問。

 

 経営戦略。

 

 国際交渉。

 

 危機管理。

 

 投資判断。

 

 人事。

 

 あらゆる重要案件を担う。

 

 世界最高峰の経営参謀。

 

 そして。

 

 悠飛が最も信頼する男。

 

 ある記者が。

 

 悠飛に質問した。

 

「社長。

 

 あなたの成功の最大の要因は何でしょうか?」

 

 悠飛は。

 

 迷わなかった。

 

「風太郎です」

 

 記者が驚く。

 

「ご自身の能力では?」

 

「もちろん努力しました」

 

 悠飛は笑う。

 

「でも」

 

 隣を見る。

 

「俺が間違った時に止めてくれる人間がいた」

 

「俺が迷った時に答えを出してくれる人間がいた」

 

「俺が前へ進みすぎた時に、後ろから引き戻してくれる人間がいた」

 

 そして。

 

「それが風太郎です」

 

 会場から。

 

 拍手が起こる。

 

 風太郎は。

 

 少し困った顔をした。

 

「お前、そういうことを人前で言うな」

 

「本当のことだろ」

 

「……まあな」

 

 二人は。

 

 笑った。

 

 

 その夜。

 

 会社の最上階。

 

 東京の夜景を見下ろしながら。

 

 風太郎は。

 

 一人でコーヒーを飲んでいた。

 

「風太郎」

 

 悠飛が入ってくる。

 

「まだ仕事か?」

 

「お前もだろ」

 

「俺は終わった」

 

「なら帰れ」

 

「冷たいな」

 

「明日も仕事だ」

 

「分かってる」

 

 悠飛は。

 

 風太郎の隣に座る。

 

「なあ」

 

「何だ?」

 

「覚えてるか?」

 

「何を?」

 

「高校時代」

 

「……」

 

「俺が会社を作るって言った時」

 

 風太郎は。

 

 少し笑った。

 

「ああ」

 

「まさか、こんなになるとはな」

 

「お前もな」

 

「俺?」

 

「世界大富豪ランキング第2位」

 

「自分でも笑う」

 

「俺も笑う」

 

「ひどいな」

 

 二人で笑った。

 

 そして。

 

 風太郎は夜景を見る。

 

「……長かったな」

 

「ああ」

 

「でも」

 

 風太郎は言った。

 

「悪くない人生だった」

 

「これからも続くぞ」

 

「分かってる」

 

「まだ終われない」

 

「そうだな」

 

 悠飛が立ち上がる。

 

「帰るぞ」

 

「どこへ?」

 

「家」

 

「俺は?」

 

「一緒に飯食おう」

 

「……分かった」

 

 

 その後。

 

 二人は車に乗った。

 

 運転手が尋ねる。

 

「どちらへ?」

 

 悠飛は。

 

 少し考えてから答えた。

 

「みんながいるところへ」

 

「承知しました」

 

 車が走り出す。

 

 窓の外。

 

 東京の夜景が流れていく。

 

 悠飛の右眼には。

 

 今も黒い眼帯がある。

 

 風太郎は。

 

 その姿を横目で見る。

 

 あの日。

 

 日の出祭で。

 

 悠飛が右眼を失ったこと。

 

 その後も。

 

 彼は一度も弱音を吐かなかった。

 

 だからこそ。

 

 風太郎は決めていた。

 

 自分が悠飛の右腕になる。

 

 彼が一人で背負わなくていいように。

 

 彼が世界中の人間を守ろうとしても。

 

 その背中を支える。

 

 それが。

 

 自分の役割だと。

 

「なあ、悠飛」

 

「ん?」

 

「これからも俺を使え」

 

「……」

 

「お前の右腕として」

 

 悠飛は。

 

 少しだけ笑った。

 

「頼りにしてる」

 

「任せろ」

 

 

 それから数年。

 

 風太郎は。

 

 正式に「最高顧問」の肩書を与えられた。

 

 社内では。

 

 社長である悠飛に次ぐ発言力。

 

 しかし。

 

 本人は権力を求めなかった。

 

「最高顧問なんて大げさだ」

 

 そう言いながら。

 

 毎日。

 

 悠飛の隣で働いた。

 

 社員たちは。

 

 そんな二人を見ていた。

 

「社長と最高顧問って、仲がいいですよね」

 

「ああ」

 

「上下関係というより」

 

「親友みたいですね」

 

「実際、親友らしいぞ」

 

「いい関係だな」

 

 誰もがそう言った。

 

 それは。

 

 二人が築き上げた。

 

 唯一無二の信頼関係だった。

 

 

 そして。

 

 同窓会の日。

 

 ホテルの大広間。

 

 久しぶりに集まった仲間たち。

 

 一花。

 

 二乃。

 

 三玖。

 

 四葉。

 

 五月。

 

 六華。

 

 莉々華。

 

 そして。

 

 悠飛。

 

 風太郎。

 

 懐かしい顔が並ぶ。

 

「風太郎」

 

 三玖が呼ぶ。

 

「ん?」

 

「最高顧問って……」

 

「言うな」

 

「……似合ってる」

 

「そうか?」

 

「うん」

 

 三玖が微笑む。

 

 風太郎も。

 

 少しだけ笑った。

 

 そこへ。

 

 悠飛がやってくる。

 

「風太郎」

 

「何だ?」

 

「今日は仕事の話は禁止な」

 

「分かった」

 

「絶対だぞ」

 

「お前もな」

 

「……俺も?」

 

「お前、すぐ仕事の話するだろ」

 

「しない」

 

「本当か?」

 

「本当だ」

 

「なら飲もう」

 

「お前、酒弱かっただろ」

 

「今日は大丈夫」

 

「信用できない」

 

 二人は笑う。

 

 その姿を。

 

 五つ子たちが見る。

 

 一花が。

 

「変わらないね」

 

 二乃も。

 

「ほんとに」

 

 三玖は。

 

「……仲良し」

 

 四葉は。

 

「最高の親友ですね!」

 

 五月は。

 

「素敵な関係です」

 

 六華は。

 

「悠飛には風太郎が必要なんだね」

 

 莉々華は。

 

「はい」

 

 即答した。

 

「お兄ちゃんの右腕ですから」

 

 

 夜。

 

 同窓会が終わる。

 

 ホテルの外。

 

 悠飛と風太郎は。

 

 二人で歩いていた。

 

「今日は楽しかったな」

 

 悠飛が言う。

 

「ああ」

 

「高校時代を思い出した」

 

「俺も」

 

「色々あったな」

 

「ありすぎた」

 

 二人は笑った。

 

 風太郎が。

 

 ふと立ち止まる。

 

「悠飛」

 

「ん?」

 

「俺たち、これからもこんな感じだろうな」

 

「もちろん」

 

「お前が社長で」

 

「お前が最高顧問」

 

「ああ」

 

「それで」

 

 悠飛は。

 

 拳を差し出す。

 

「親友」

 

 風太郎も。

 

 拳を合わせる。

 

「親友だ」

 

 小さな音が響く。

 

 それだけだった。

 

 しかし。

 

 二人にとっては。

 

 二十年以上の時間を象徴する音だった。

 

 

 上杉風太郎。

 

 かつて。

 

 ただ勉強が得意だった少年。

 

 五つ子たちと出会い。

 

 三玖と恋を育み。

 

 如月悠飛という親友を得た。

 

 そして。

 

 努力を重ね。

 

 知識を磨き。

 

 経験を積み。

 

 いつしか。

 

 世界を動かす男の隣に立った。

 

 「最高顧問」。

 

 その肩書は。

 

 単なる役職ではない。

 

 悠飛から託された。

 

 信頼の証。

 

 そして。

 

 風太郎自身が選んだ。

 

 人生の役割だった。

 

 社長と最高顧問。

 

 独眼竜とその右腕。

 

 悠飛と風太郎。

 

 二人の物語は。

 

 まだ終わらない。

 

 これからも。

 

 互いに支え合い。

 

 時にぶつかり。

 

 時に笑い。

 

 それでも。

 

 同じ未来を見つめながら。

 

 歩いていく。

 

 そして。

 

 そんな二人を待っているのは。

 

 かつての仲間たちと。

 

 大切な家族。

 

 そして。

 

 三玖との恋を守りながら歩いていく。

 

 もう一つの未来だった。

 

「風太郎」

 

「何だ?」

 

「明日も頼むぞ」

 

「ああ」

 

「最高顧問」

 

「……その呼び方、やめろ」

 

「似合ってるぞ」

 

「お前に言われると腹が立つな」

 

「ははは」

 

 二人の笑い声が。

 

 夜の街に響いた。

 

 ――上杉風太郎。

 

 最高顧問への道。

 

 それは。

 

 肩書を手に入れるための物語ではない。

 

 大切な親友の隣に立つため。

 

 愛する人との未来を守るため。

 

 そして。

 

 自分自身が選んだ道を。

 

 一歩ずつ進み続けた。

 

 一人の少年の。

 

 二十年に及ぶ物語だった。

 

 

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