『神のチートで勇往邁進!〜20年後の同窓会に現れた独眼竜は、三度(みたび)恋の火を灯す〜』   作:夜幻

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番外編⑤「幼い日の七人」

 ――あの日のことを、覚えているだろうか。

 

 まだ背丈も低く。

 

 難しいことなど何一つ分からなくて。

 

 将来、自分が何になるのかも。

 

 誰を好きになるのかも。

 

 どんな困難に立ち向かうことになるのかも。

 

 何も知らなかった。

 

 ただ、毎日が楽しかった。

 

 笑って。

 

 走って。

 

 喧嘩して。

 

 仲直りして。

 

 泣いて。

 

 また笑った。

 

 そんな幼い日々を一緒に過ごした七人。

 

 如月悠飛。

 

 中野一花。

 

 中野二乃。

 

 中野三玖。

 

 中野四葉。

 

 中野五月。

 

 そして――。

 

 中野姉妹の従姉妹。

 

 空龍六華。

 

 七人の物語は。

 

 まだ誰も「恋」を知らなかった頃から始まっていた。

 

 

「悠飛くん、まだー?」

 

 玄関の外から。

 

 元気な声が響いた。

 

「もう少し!」

 

 家の中から悠飛の声。

 

「遅いよー!」

 

「四葉、待って」

 

 五月が注意する。

 

「だって早く遊びたいんだもん!」

 

 四葉は頬を膨らませる。

 

 その隣では。

 

 一花が笑っていた。

 

「四葉は相変わらず元気だね」

 

「一花も遊びたいでしょ?」

 

「まあね」

 

 二乃は腕を組む。

 

「それにしても、悠飛って準備遅くない?」

 

 三玖が小さく呟く。

 

「……男の子だから?」

 

「それは理由になるんですか?」

 

 五月が首を傾げる。

 

 そして。

 

 五人の少し後ろに。

 

 一人の少女が立っていた。

 

「六華ちゃん、どうしたの?」

 

 四葉が振り返る。

 

「え?」

 

「なんか静かだから」

 

「……そう?」

 

「うん」

 

 少女――空龍六華は。

 

 少し恥ずかしそうに笑った。

 

「悠飛が来るのを待ってるだけ」

 

「私たちも!」

 

 四葉が笑う。

 

「そうだね」

 

 六華も笑った。

 

 六華は。

 

 中野姉妹の従姉妹だった。

 

 五人とは幼い頃から家族ぐるみで交流している。

 

 姉妹同然。

 

 友達同然。

 

 そして。

 

 何よりも大切な家族。

 

 だから。

 

 六華が五人の中にいることは。

 

 誰にとっても当たり前だった。

 

「お待たせ!」

 

 その声とともに。

 

 悠飛が家から出てきた。

 

「遅い!」

 

 四葉が叫ぶ。

 

「ごめんごめん」

 

「何してたの?」

 

 一花が聞く。

 

「お母さんに水筒を持っていけって言われて」

 

「なるほど」

 

 二乃が頷く。

 

「じゃあ行こう!」

 

 四葉が走り出す。

 

「待てって」

 

 悠飛も走る。

 

 五つ子と六華も。

 

 その後を追いかけた。

 

 ――これが。

 

 七人の「いつもの一日」だった。

 

 

 七人が向かったのは。

 

 家の近くにある大きな公園。

 

「今日は何する?」

 

 一花が聞く。

 

「鬼ごっこ!」

 

 四葉が即答する。

 

「また?」

 

 二乃が呆れる。

 

「だって楽しいもん!」

 

「私はブランコがいい」

 

 三玖が言う。

 

「私は……」

 

 五月が考える。

 

「お弁当を食べたいです」

 

「五月はいつもそれだね」

 

 一花が笑う。

 

「育ち盛りですから」

 

 五月は胸を張る。

 

 六華が笑う。

 

「じゃあ、まず鬼ごっこして、そのあとお弁当」

 

「賛成!」

 

 四葉が喜ぶ。

 

「悠飛は?」

 

「俺もやる」

 

「決まり!」

 

 四葉が手を挙げる。

 

「鬼は私!」

 

「えっ」

 

 全員が驚いた。

 

「なんで?」

 

「鬼ごっこだから!」

 

「意味が分からない」

 

 二乃が呆れる。

 

「じゃあ逃げるよー!」

 

 四葉が走る。

 

「待て!」

 

 悠飛が追う。

 

「きゃー!」

 

 一花も走る。

 

「待って!」

 

 二乃。

 

「……」

 

 三玖も走る。

 

「三玖さん、待ってください!」

 

 五月も走る。

 

「六華!」

 

 悠飛が振り返る。

 

「行くよ!」

 

「うん!」

 

 六華も駆け出す。

 

 七人の笑い声が。

 

 公園いっぱいに響いた。

 

 

「捕まえた!」

 

 悠飛が。

 

 四葉の肩を軽く叩いた。

 

「やったー!」

 

 四葉が喜ぶ。

 

「じゃあ次は悠飛くんが鬼!」

 

「俺?」

 

「うん!」

 

 四葉が笑う。

 

「みんな逃げて!」

 

 六人が一斉に走る。

 

 悠飛も追いかける。

 

「待てー!」

 

 その途中。

 

 三玖が小さな石につまずいた。

 

「……!」

 

 転んだ。

 

「三玖!」

 

 一花が駆け寄る。

 

「大丈夫?」

 

「……うん」

 

 膝に小さな擦り傷。

 

 悠飛もやってきた。

 

「見せて」

 

「……」

 

 三玖は少し恥ずかしそうに足を出す。

 

「大丈夫。ちょっと擦っただけ」

 

 悠飛はポケットからハンカチを出した。

 

「これ使え」

 

「……ありがとう」

 

「家に帰ったらちゃんと洗うんだぞ」

 

「うん」

 

 二乃が言う。

 

「悠飛って、こういうところだけ妙にしっかりしてるわね」

 

「だけ?」

 

「だけ」

 

「ひどいな」

 

 一花が笑う。

 

 六華は。

 

 そんな悠飛をじっと見ていた。

 

「六華?」

 

「……何でもない」

 

「そう?」

 

「うん」

 

 六華は笑った。

 

 胸の奥が。

 

 少しだけ温かくなっていた。

 

 

 昼。

 

 七人は芝生の上に座った。

 

「いただきます!」

 

 五月が一番早かった。

 

「五月、食べるの早い」

 

 三玖が言う。

 

「お腹が空いていたんです」

 

「さっきまで遊んでたからね」

 

 一花が笑う。

 

 四葉が。

 

「悠飛くん、これ食べる?」

 

「何?」

 

「卵焼き!」

 

「いいの?」

 

「うん!」

 

「じゃあ、もらう」

 

 悠飛が食べる。

 

「美味しい」

 

「本当?」

 

「うん」

 

 四葉が嬉しそうに笑う。

 

 すると。

 

 二乃が自分の弁当から卵焼きを取り出した。

 

「じゃあ、これも」

 

「二乃も?」

 

「味が違うから食べ比べて」

 

「いただきます」

 

 悠飛が食べる。

 

「こっちも美味しい」

 

「当然でしょ」

 

 二乃が得意げに笑う。

 

 すると。

 

 一花が。

 

「私のもあるよ」

 

「一花まで?」

 

「どう?」

 

「美味しい」

 

「ふふ」

 

 三玖も。

 

「……私のも」

 

「ありがとう」

 

 五月も。

 

「こちらもどうぞ」

 

「ありがとう」

 

 六華も。

 

「私のも食べる?」

 

「もちろん」

 

 悠飛は。

 

 七人分の料理を少しずつ食べた。

 

「全部美味しいな」

 

「本当?」

 

「うん」

 

 五つ子と六華が。

 

 嬉しそうに笑った。

 

 その光景を見て。

 

 悠飛は。

 

「みんな仲良しだな」

 

 と言った。

 

「当たり前!」

 

 四葉が答える。

 

「私たちは姉妹だから!」

 

「六華も?」

 

 悠飛が聞く。

 

「もちろん!」

 

 四葉が即答する。

 

 六華も。

 

「……うん」

 

 その言葉が。

 

 嬉しかった。

 

 

 午後。

 

 七人は。

 

 公園の奥にある大きな木の下へ向かった。

 

「ここ、秘密基地にしよう!」

 

 四葉が言う。

 

「秘密基地?」

 

「そう!」

 

「何するの?」

 

 一花が聞く。

 

「宝物を隠す!」

 

 二乃が笑う。

 

「子供みたい」

 

「私たち子供だよ?」

 

「……そうだった」

 

 みんなで笑う。

 

 悠飛が。

 

「じゃあ、宝箱を作ろう」

 

「どうやって?」

 

「段ボールがあればできる」

 

「作ろう!」

 

 七人で。

 

 小さな宝箱を作った。

 

 中に。

 

 一人ずつ宝物を入れる。

 

 一花は。

 

「これ」

 

 小さなリボン。

 

 二乃は。

 

「これ」

 

 お気に入りのアクセサリー。

 

 三玖は。

 

「……石」

 

 拾った小さな石。

 

 四葉は。

 

「これ!」

 

 カラフルなボタン。

 

 五月は。

 

「私は写真を」

 

 六華は。

 

「これ」

 

 青いビー玉。

 

 最後に。

 

「悠飛は?」

 

 一花が聞く。

 

「俺?」

 

「うん」

 

 悠飛は。

 

 少し考えた。

 

 そして。

 

 紙を一枚取り出す。

 

「これを入れる」

 

「何?」

 

 四葉が覗き込む。

 

 そこには。

 

 幼い文字で。

 

『七人でずっと仲良くする』

 

 と書かれていた。

 

「……」

 

 全員が。

 

 黙った。

 

「いいね」

 

 一花が微笑む。

 

「うん」

 

 二乃も頷く。

 

「……大切にする」

 

 三玖。

 

「ずっと一緒!」

 

 四葉。

 

「素敵ですね」

 

 五月。

 

 六華は。

 

 紙をじっと見た。

 

「……悠飛」

 

「ん?」

 

「本当に、ずっと?」

 

「ああ」

 

「ずっと?」

 

「ずっと」

 

 六華は。

 

 小指を差し出した。

 

「約束」

 

 悠飛も。

 

 小指を絡める。

 

「約束」

 

 五つ子たちも続いた。

 

「約束!」

 

 七人の小指が重なる。

 

 幼い七人の。

 

 最初の大切な約束だった。

 

 

 それから。

 

 七人の秘密基地には。

 

 少しずつ宝物が増えていった。

 

 そして。

 

 小さな旗も作った。

 

 白い布に。

 

 七人の名前を書く。

 

 その中央には。

 

 悠飛が描いた太陽。

 

「太陽?」

 

 一花が聞く。

 

「うん」

 

「どうして?」

 

「みんなが明るくなるように」

 

「……」

 

 一花は。

 

 少しだけ笑った。

 

「悠飛らしいね」

 

 二乃も。

 

「悪くない」

 

 三玖は。

 

「……好き」

 

 四葉は。

 

「最高!」

 

 五月は。

 

「素敵です」

 

 六華は。

 

「……大切にする」

 

 七人は。

 

 旗を木の枝に結びつけた。

 

 風が吹く。

 

 小さな旗が。

 

 青空の下で揺れた。

 

 

 ある日。

 

 六華は一人で。

 

 秘密基地に来ていた。

 

 そこへ。

 

「六華?」

 

 悠飛がやってきた。

 

「悠飛」

 

「何してる?」

 

「旗を見てた」

 

「気に入った?」

 

「うん」

 

 六華は。

 

 少し黙った。

 

「……悠飛」

 

「ん?」

 

「私たち、ずっと一緒にいられるかな」

 

「いられるだろ」

 

「大きくなっても?」

 

「ああ」

 

「大人になっても?」

 

「もちろん」

 

「本当に?」

 

 悠飛は。

 

 迷わず頷いた。

 

「約束しただろ」

 

「……うん」

 

 六華は。

 

 小指を差し出した。

 

「もう一回」

 

「いいよ」

 

 小指を絡める。

 

「ずっと一緒」

 

「ずっと一緒」

 

 六華は。

 

 嬉しそうに笑った。

 

 この時。

 

 六華自身もまだ知らなかった。

 

 この「ずっと一緒にいたい」という気持ちが。

 

 やがて。

 

 恋へと変わっていくことを。

 

 

 一方。

 

 五つ子たちも。

 

 少しずつ悠飛を特別な存在として見るようになっていた。

 

 一花は。

 

 悠飛と話すと楽しかった。

 

 二乃は。

 

 困った時に頼りになる悠飛を信頼していた。

 

 三玖は。

 

 悠飛の優しさに憧れていた。

 

 四葉は。

 

 一緒に遊ぶ時間が大好きだった。

 

 五月は。

 

 悠飛の真面目さを尊敬していた。

 

 けれど。

 

 まだ誰も。

 

 それを恋とは呼ばなかった。

 

 ただ。

 

「大切な男の子」

 

 それだけだった。

 

 

 ある雨の日。

 

 七人は。

 

 屋内で遊んでいた。

 

「雨、止まないね」

 

 一花が窓を見る。

 

「今日は外で遊べない」

 

 二乃。

 

「……残念」

 

 三玖。

 

「じゃあゲーム!」

 

 四葉。

 

「何をします?」

 

 五月。

 

 六華が。

 

「トランプは?」

 

「いいね」

 

 悠飛が頷く。

 

 七人でトランプを始める。

 

「悠飛、ずるしてない?」

 

 二乃が疑う。

 

「してない」

 

「本当?」

 

「本当」

 

 四葉が笑う。

 

「悠飛くん、顔に出てるよ!」

 

「何が?」

 

「勝って嬉しそう!」

 

「それは普通だろ」

 

「ふふ」

 

 一花が笑う。

 

 三玖も。

 

「……楽しそう」

 

 五月も。

 

「こういう日もいいですね」

 

 六華は。

 

 七人で過ごす時間を。

 

 心から楽しんでいた。

 

 

 そんな日々の中。

 

 ある出来事があった。

 

 帰り道。

 

 四葉が。

 

「先に行くね!」

 

 走り出した。

 

「四葉!」

 

 五月が呼ぶ。

 

 だが。

 

 四葉は止まらない。

 

 曲がり角で。

 

 自転車が近づいてきた。

 

「危ない!」

 

 悠飛が走った。

 

 四葉の手を掴む。

 

「きゃっ!」

 

 悠飛が四葉を引っ張る。

 

 自転車は。

 

 そのまま通り過ぎた。

 

「……」

 

 四葉は。

 

 呆然としていた。

 

「大丈夫?」

 

 悠飛が聞く。

 

「……うん」

 

「走る時は周りを見るんだぞ」

 

「……ごめんなさい」

 

 四葉の目に。

 

 涙が浮かぶ。

 

「怖かった……」

 

 悠飛は。

 

 四葉の頭を撫でた。

 

「もう大丈夫」

 

「悠飛くん……」

 

 四葉は。

 

 悠飛に抱きついた。

 

「ありがとう」

 

「うん」

 

 少し離れたところで。

 

 一花たちも。

 

 六華も見ていた。

 

 六華は。

 

 胸の奥がきゅっとなった。

 

 ――守ってくれる。

 

 あの日。

 

 六華が初めて。

 

 悠飛を特別な存在だと意識した瞬間だった。

 

 

 その夜。

 

 六華は。

 

 家に帰ってからも。

 

 悠飛のことを考えていた。

 

「……」

 

 布団の中。

 

「悠飛……」

 

 小さく名前を呼ぶ。

 

 けれど。

 

 その感情を。

 

 まだ言葉にはできない。

 

 ただ。

 

 明日も会いたい。

 

 また一緒に遊びたい。

 

 もっと近くにいたい。

 

 それだけだった。

 

 

 月日は流れる。

 

 七人は。

 

 少しずつ成長する。

 

 秘密基地に集まる回数も。

 

 少しずつ減っていった。

 

 学校。

 

 勉強。

 

 家族。

 

 それぞれの生活。

 

 それでも。

 

 七人の関係は。

 

 消えなかった。

 

 そして。

 

 ある夕方。

 

 悠飛は。

 

 秘密基地へ向かった。

 

 木はまだ残っていた。

 

 旗も。

 

 少し色あせていた。

 

 宝箱も。

 

 そこにあった。

 

 悠飛は。

 

 箱を開ける。

 

 中には。

 

 幼い日の宝物。

 

 リボン。

 

 アクセサリー。

 

 小さな石。

 

 ボタン。

 

 写真。

 

 青いビー玉。

 

 そして。

 

 あの紙。

 

『七人でずっと仲良くする』

 

 悠飛は。

 

 静かに笑った。

 

「……まだ残ってた」

 

 そこへ。

 

「悠飛?」

 

 声がする。

 

 振り返ると。

 

 六華だった。

 

「六華」

 

「ここにいたんだ」

 

「ああ」

 

 六華は。

 

 箱を覗く。

 

「懐かしい」

 

「覚えてる?」

 

「もちろん」

 

 六華は。

 

 紙を見つめる。

 

「……ずっと仲良くする」

 

「うん」

 

「本当に守れたね」

 

「ああ」

 

 六華は笑った。

 

「これからも」

 

「もちろん」

 

 

 さらに。

 

 少し離れたところから。

 

 五つ子たちがやってきた。

 

「二人とも、何してるの?」

 

 一花。

 

「懐かしい!」

 

 四葉。

 

「これは……」

 

 五月。

 

「昔の宝物?」

 

 二乃。

 

 三玖が。

 

 小さく笑う。

 

「……残ってたんだ」

 

 悠飛は。

 

 紙を見せた。

 

「覚えてるか?」

 

「もちろん」

 

 四葉が。

 

「約束だよね!」

 

 全員が頷く。

 

 六華も。

 

「私たちはずっと一緒」

 

 悠飛は。

 

「そうだな」

 

 七人は。

 

 昔と同じように。

 

 小指を差し出した。

 

 一花。

 

 二乃。

 

 三玖。

 

 四葉。

 

 五月。

 

 六華。

 

 そして。

 

 悠飛。

 

「約束」

 

 七人の声が重なる。

 

 

 ――幼い日の七人。

 

 あの頃。

 

 誰も未来を知らなかった。

 

 悠飛が。

 

 世界に名を知られる「独眼竜」になることも。

 

 風太郎が。

 

 悠飛を支える最高顧問になることも。

 

 三玖と風太郎の恋が育つことも。

 

 一花や四葉、六華が。

 

 悠飛への想いを胸に抱くことも。

 

 莉々華が。

 

 兄を誰よりも愛する極度のブラコンになることも。

 

 何一つ知らなかった。

 

 ただ。

 

 七人でいることが楽しかった。

 

 それだけだった。

 

 そして。

 

 その「楽しい」という気持ちは。

 

 二十年という時間を越えて。

 

 今もなお。

 

 彼らを繋いでいる。

 

 家族。

 

 従姉妹。

 

 親友。

 

 仲間。

 

 そして。

 

 恋。

 

 形は変わっても。

 

 あの日の絆だけは。

 

 変わらない。

 

 

 夕暮れ。

 

 七人は。

 

 秘密基地をあとにする。

 

 六華が。

 

 悠飛の隣を歩く。

 

「ねえ、悠飛」

 

「ん?」

 

「これからも」

 

「うん」

 

「ずっと一緒にいようね」

 

 悠飛は。

 

 昔と同じように答えた。

 

「ああ」

 

「約束?」

 

「約束」

 

 少し前を歩いていた四葉が。

 

「二人とも何してるのー!」

 

 大声で叫ぶ。

 

「今行く!」

 

 悠飛が返事をする。

 

 一花が笑う。

 

「相変わらず四葉は元気ね」

 

 二乃が。

 

「昔から変わらないわね」

 

 三玖が。

 

「……うん」

 

 五月も。

 

「皆さん、待ってください」

 

 七人の足音が。

 

 夕暮れの道に響く。

 

 幼い頃と同じように。

 

 笑いながら。

 

 一緒に帰っていく。

 

 ――あの日。

 

 七人が交わした小さな約束。

 

 それは。

 

 世界を変えるほど大きなものではなかった。

 

 けれど。

 

 七人にとっては。

 

 何よりも大切な約束だった。

 

 そして。

 

 二十年後。

 

 その約束は。

 

 確かに守られている。

 

 だからこそ。

 

 彼らの物語は。

 

 これからも続いていく。

 

 ――幼い日の七人。

 

 それは。

 

 七人の人生の始まりだった。

 

 

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