この世界に絶対はない。それはレースであっても例外ではない。
一番人気が下位人気に負けることだってある。勝利の女神は平等に微笑む。
しかし、もし本当に絶対を可能にするウマ娘がいたとしたら?
歴史に蹄跡を残し、頂点に立つ。そんなウマ娘を、お前たちはこれから知ることになる。
「その固定観念を打ち砕いてやる。よく見ておけ」
さあ、このレースを皇帝の戴冠式としよう。
『さあ第三コーナー、淀の坂をシンボリルドルフはどう登り、どう下るのか。さあ外からゴールドウェイが行きました。場内は騒然としています!』
『第三コーナーの山の上、頂上にたどり着きました。これから下っていきますシンボリルドルフ』
『最終コーナー、前の方にはニシノライデン』
『さあシンボリ差を詰める!ハーバークラウンが来た!ハーバークラウンが来ていて第四コーナーをカーブする!』
『さあシンボリは果たして伸びてくるのか!菊の冠を戴くのか!さあどうなる!ニシノライデン先頭だ!』
『その内から差を詰めてくるシンボリルドルフ!』
『物凄い脚だ!物凄い脚だ! 来たぞ来たぞ来たぞ!シンボリ来た!シンボリ来た!』
『しかし外からゴールドウェイだ! 外からゴールドウェイ! シンボリが先頭に立った!』
この世の絶対はお前だけだ。さあ皇帝よ、走れ!証明しろ!シンボリルドルフ!
『シンボリが先頭に立った! 大歓声だ!大歓声だ京都レース場!大輪の花が薄曇りの京都レース場に大きく咲いた!! 3冠ウマ娘8戦8勝!』
『わが国ウマ娘史上、不滅の大記録が達成されました京都レース場!』
『2つの冠を携え、皇帝が最後の冠を戴きました!世代の頂点に立ったのはシンボリルドルフです!恐れ入った!』
皇帝の即位。この戴冠式は、人々の記憶に永遠に留まることになるだろう。
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ある男の嘆き。
「なぜだ?なぜだなぜだなぜだ!新人トレーナーだぞ!」
ミスターシービー、ターフの演出家と呼ばれる三冠ウマ娘。やつがあのウマ娘を担当すると分かったとき感じたのは、運がいい。ただそれだけだった。
「何の実績も持たぬ新人の小僧がよくもまあ大言壮語を吐いたものだ。まあ、よくあることだが」
気まぐれに選ばれたトレーナー。たかが新人に負けるはずがないと、そう驕っていた。
最初の冠、皐月賞をミスターシービーが戴いたとき、偶然だと思った。
「バカな…いや、偶然だ。フロックに決まってる」
偶然は2度続いた。ミスターシービーはダービーを取った。
「クソッ!新人が三冠だと?あっていいはずがない…」
菊だけは取らせまいと、新人なんかに渡してなるものかと意気込んだ。
「だが結果として菊すらも取られた!三冠ウマ娘の誕生、それはまだいい。その担当が新人トレーナーだと!?」
「あっていいことではない。あり得ていいはずがない!一生のうちにG1勝利ウマ娘を育てることすらできないトレーナーだっている。だというのに、奴はG1勝利どころか三冠ウマ娘を誕生させた!」
諦めてなるものかと。自らの過ごしてきた月日を否定させまいと次こそは、もう起こらせないと誓ったと言うのに。
シンボリルドルフは、皇帝は奴を選んだ。
「シンボリルドルフだと?なぜだ、なぜ奴が?シンボリ家のウマ娘をなぜ…」
今思えば理由など明白だった。奴は皇帝の覚悟に答えた。だからこそ皇帝は奴を杖に選んだのだろう。
だとしても、それでもこの燃え上がる炎は消えなかった。
またしても皐月を取られた。何たる不覚。自分が情けない。
「私が過ごしてきた日々はなんだったんだ?年だけを重ねて、新人に追い抜かれて。なんたる軟弱…」
ダービーを取られた。偶然などではなかった。奴は間違いなく優秀だった。いや、優秀なんて言葉で表しきれるものじゃない。あれではまるで…
「菊だけは、最後の冠だけは渡してはいけない。絶対に、絶対に絶対に絶対に!ダメだダメだダメだ、あれだけは…」
あれを渡してしまえば、自分の今までの全てが無価値になってしまうように思えた。
『シンボリが先頭に立った! 大歓声だ!大歓声だ京都レース場!大輪の花が薄曇りの京都レース場に大きく咲いた!! 3冠ウマ娘8戦8勝!』
「無敗の三冠、だと…?」
その声を聞いて、力をなくしてしまった。
「レースに絶対はない。だというのに、あれには勝てる気がしない。いったいなんだというのだ!?」
私は、思わず奴にそう問うてしまった。
「シンボリルドルフには絶対がある。ま、そんなところだろ」
「新人トレーナーの貴様がなぜ選ばれる!?ベテランも優秀なトレーナーのスカウトも軒並み断ったあのウマ娘たちがなぜ貴様なんかに!」
「あーはいはい、負け惜しみね。年だけ重ねたジジィは上を見なくなるからな。俺に気づかなかったってわけか。自分が頂点だなんて甘えた考えは捨てて俺に挑んでこいよ。いつでも受けてやる」
そう言って、奴は去っていった。私は何も言うことができなかった。
ミスターシービーの日本ダービー勝利直後、奴は酒が美味くなると、そう言った。
日本ダービーの栄誉を軽視している。私はそう憤った。
「それすらも間違いだった!奴は、間違いなく勝利を確信していた。負けることを微塵も考えてなどいなかった!」
勝利への確信、それは自分への絶対的な自信かそれともウマ娘への信頼か。
いや、両方だ。
「だからこそ選ばれるのか?」
いつだって勝利の女神は奴に微笑む。
担当も、レースも。まるで運命に選ばれているかのようだった。
「認識が間違っていた。挑戦者はこちらだったというのに。それを見誤った時点で、勝利などありはしなかった」
歳を重ねて上を見ることはなくなった。
「少し、下ばかりを見すぎていたのかもしれない。考えを改めよう。今度は、いや。これからも挑戦者となろう」
「だがいつか。いつか必ず、その座から引きずり下ろしてくれる…待っていろ、小僧!」
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「最高にいい気分だ。お前もそうだろ?シービー」
「勝利の美酒に酔いしれるのはいいけど、今日の主役はルドルフなんだよ?」
「わかってるわかってる。これで俺は6冠トレーナー。まさに伝説だな。誰か俺に勝てるやついんのか?」
(まあ三冠取ったあともスカウト中々決まらなかったしマジで無意味だけどな)
ガチどういうことやねん。なんとかしろよ三女神。
「頂点に立っても、有頂天になってはいけないよ。トレーナー君」
そんなことを話していればどうやら今日の主役が来たらしい。
「主役も来たことだし、始めるか。三冠おめでとうパーティーだいえーい」
「相変わらず雑だねキミは。まあ、それくらい緩くてもアタシはいいと思うけど」
「本当にトレーナー君は、私が会ったときからまるで変わらない。少し、羨ましく思ってしまうよ」
「なんだこいつら…?二人して俺を嘲笑するとは…」
「まあそんなことは置いといて、おめでとう。ルドルフ」
「ありがとう、シービー。これでまたウマ娘たちの幸福に一歩近づけただろうか」
「今日くらいはそのことも考えなくてもいいんじゃない?」
「そうだぞ、羽を休めるのも大切だ。疲弊した王に人はついていかない。誰かのために努力するのはいいことだが、犠牲になる必要はねぇ」
「日進月歩、これしきのことでは止まっていられない。しかし、君たちの言うとおりだ。今日くらいはそうさせてもらおう」
「ねぇ、トレーナー。今思ったんだけど、アタシの時よりちょっと装飾が豪華じゃない?どういう心境の変化?」
「あの時はなんていうか、変に飾るよりも日常感あったほうがいいと思ったんだよ。後普通に金がなかった。最近はお前らのおかげでウハウハだぜ。酒がいくらでも買える」
「常々思っているが、お酒は身体に良くない。ほどほどにしてほしいと私は思っているのだが?」
「俺から酒を取り上げたら正常な思考ができなくなっちまう。酒は百薬の長、アルコール消毒してるんだよ」
「あははっ!もう完全に中毒だね。百害あって一利なしだと思うけどね。アタシは」
「祝い事なのに酒を飲まないなんて選択肢があるか。そもそもルドルフの三冠達成以外にもチームとしての祝いでもあるんだから、別にいいだろ」
少数チームではあるが、誰にも文句は言われない。俺に文句を言ってきた奴は全員ねじ伏せてやったからな。
(ま、これで俺界隈の中で最弱はなくなったろ)
「シービーの時も話したが、これから先の展望は決まってるのか?別に後から決めてもいいが」
「まだ具体的なことは決めていないが、より多くの実績を重ねてウマ娘たちが安心して私に頼ることのできる姿を見せたいと思っている」
「う〜ん随分しっかりしたやつだ。いや、俺たちがおかしかったのか…?」
「トレーナーとアタシが直感的に走るのに対して、ルドルフはちゃんと1個ずつ目的地を決めて走ってるって感じだよね」
「着実に歩を進めていくのはそれが一番だと判断しただけさ。全てのウマ娘の幸福を叶えるというのは、険しい道のりだと理解しているからね」
「まあ険しくても道は道だ。通れないわけじゃない」
「大言壮語。誰もがそう思うことを私はいつか必ず実現してみせる」
「なら皇帝様が転ばないように、しっかり支えてやらねぇとな」
「…またちょっと堅苦しくなっちゃったかな。先のことも話したし、これまでのことでも振り返ろっか」
「それもそうだな。今思えば色々なことがあったな…」
さて、何から語るのが相応しいだろうか?
ゲーム内でシリウスとシービーどっちが好きですか?
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シリウス
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シービー