今回はシリアス多めかも
シービーが3冠を取ってから幾ばくかの時が経ったとき、俺は一人狼狽えていた。
「理事長からの呼び出しだと…?」
バカな、いったいどういう了見で?俺は模範的トレーナーのはずなのに…
「いや、俺は潔白だ。緊張することはねぇ」
そうだ。むしろ変に気にすること自体が怪しい。
心の準備を終わらせ身なりを整えてから理事長室へ向かう。
「失礼します」
しっかり3回ノックをして入室する。
目の前には椅子に座り扇子を広げてこちらを見るトレセン学園の秋川やよい理事長と、その傍らにいる理事長秘書のたづなさんがいた。
「歓迎ッ!よく来てくれた。新人トレーナーの身でありながら三冠達成という偉業を成し遂げた君には大いに期待している」
「は、はぁ…ありがとうございます」
相変わらず見た目に不相応な喋り方だ。その見た目とは裏腹に、トレセン学園の理事長を務めるその手腕には驚く。
「不足ッ!わがトレセン学園には素晴らしい才能を持ったウマ娘たちが多くいる。しかし!彼女たちウマ娘の数に対しトレーナーがあまりに不足している」
「まあ、確かにそうですね」
(俺に何の関係があるんだこれ?人手不足解消は経営者のやることであってトレーナーの俺にゃどうしようもできねぇが…)
「本題ッ!私もできればそれを解決するべく手を打っているが、すぐにとはいかない。よって、君のような優秀なトレーナーたちにはより多くのウマ娘を担当してもらいたい。故に、異例ではあるが君にはチームを結成してもらいたい」
「は…?い、いやいやまだ新人ですよ?そんなの周りが許さないでしょう。それにシービーだってまだ現役ですし、俺個人の問題では…」
(確かにウマ娘と触れ合う機会は多いにこしたことはねぇが、チームってのは流石に…チームなんて作ったことねぇから過去の記憶すらも役に立たねぇぞ)
「不要ッ!その心配は必要ない。新人とはいえ君はウマ娘を三冠へと導いた。実績は十分だろう。もちろんしっかり我々が十全なサポートをすると約束する。どうかこの話、受けてはくれないだろうか?」
「え〜い、いやぁ…でもなぁ」
「懇願ッ!ウマ娘たちの未来には君の力が必要だ。もし必要であれば金銭も支払う。この通りだ!」
(あ〜流石にこう頭を下げられちゃあなぁ…)
見た目は幼い少女。そんな人に頭を下げさせるのは俺の良心が悼む。
(見た目に反して情緒は随分大人だな。理事長という立場でありながら俺に頭を下げるとは…ウマ娘に対しての想いは本物らしい。これは仕方ねぇかなぁ…)
(ていうかたづなさんが無言で見つめてきて怖い…)
「…わかりました。その話お受けします。必ず成功は確約できませんが、精一杯努力すると約束しましょう。だからどうか頭を上げてください理事長」
「感謝ッ!君にウマ娘たちの未来を託す。どうか頼んだぞトレーナー。君の今後の活躍、期待している」
(いやぁちょっと背負うもの重いよ…)
「では、これで失礼します」
そう言って理事長室を後にした。
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「話を受けはしたが…どうすっかねぇ」
(担当ウマ娘の確保…いや、まずはシービーに話さねぇとか?)
「いやあちょっとマジでしんどいな…全ての能力値カンストの俺でもスカウトだけはステータス振ってねぇんだよな」
(まあとりあえずチームを作ることはシービーに伝えにゃいかんな。流石に現役中なのに自分のトレーナーがいきなり他のウマ娘担当しますってのあれだし)
「でもあいつがどう思うかいまいち読めねぇんだよなぁ」
(スカウトするウマ娘も大事だしなぁ。シービーと反りが合わないといけねぇし、そもそもあいつが了承するのかどうか)
「あーマジで厄介なことになっちまった…」
「ま、なんとかなるだろ」
人生でなんとかならないことなんてない。
「なんとかなるまでやりゃいいだけだ」
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「休日になんでトレーナー室にいるのかは聞いたほうがいいのか?」
「それもう聞いてるの一緒だと思うけど。キミに会いたかったからじゃだめ?」
「ダメってこたぁねぇが、一言連絡くれりゃいいのによ」
「アタシなりの気遣いだよ。忙しいかもしれないと思って」
「変なところで気が回るなお前。まあ、話したいことがあったからちょうどいい」
「へぇ、キミから話したいことなんて珍しいね」
「さっき理事長から呼び出されてな。人手不足だからより多くのウマ娘を担当するためにチームを作れと」
「へぇ〜。でも、キミがその要求を呑むとは思えないけど?」
「俺も最初はその気だったが、あぁも頭を下げられちゃあなぁ…サポートはしてくれるみたいだし、いいだろ?チーム」
「う〜ん…アタシのお願いを聞いてくれるならいいよ?」
「こっちは理事長からの要請でやってんのにアンフェアだろ」
「聞いてくれないなら了承できないかな〜」
(なんだこいつは…?ふざけてんのか?)
「…お願いってのはなんだ?簡単なものにしろよ」
ガキの無茶には答えてやるのが大人だ。
「キミって過去のことを話さないよね?だから、知りたくなっちゃってさ。キミの過去について」
「過去ぉ?過去なんて聞いてなんになるんだよ」
(全く理解できねぇな。こいつの口からそんな言葉が出てくるとは思いもしなかった)
「アタシがもっとキミを理解するには必要でしょ?」
「俺は理解されなくてもいいんだが…過去っつってもどんな?」
「う〜んそうだなぁ…キミがトレーナーになった経緯とか?」
(マジでそんなのが気になるのかよこいつ?はぁ……?)
「それ、ほんとに話さなきゃだめなわけ?別に他のことだったらなんでも話してやるんだが」
「残念だけどそれは無理かな〜どうしても気になっちゃって」
「いやぁマジ…?渋いってマジしびぃよシービーだよ…」
「そんなに話したくないの?尚更気になるなぁ」
(過去と未来を天秤にかけるなら、流石に天秤は未来の方に傾くよなぁ…は〜最悪だ。どうにかしろよ三女神)
「……どうせ聞くなら一言一句聞き逃すなよ」
「楽しい話を期待してるよ。ミスター・トレーナー」
「調子いいこと言いやがって…」
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トレーナーになると決めた経緯は大体俺が高校生くらいの時に遡る。
高校2年生の俺はいわゆる不良だった。といってもヤンキーとかそういうわけじゃなく、単に授業がでない素行不良だ。
まあ売られた喧嘩は全部買ったが、それだけではならないはず。
まあそういうわけで俺は腫れ物扱いされてた。でも仕方ねぇだろ?なんのために生きてんのかわからなくなってたんだ。
「先生からの呼び出し、ねぇ…行かなくてもいいかな」
(どうせ行った所でなにも変わらないしな)
そう、本来はそれで終わるはずだったんだ。だが、残念ながらそうはいかなかった。俺の肩をガッシリつかんだやつがいた。
「残念だがついきてもらうぞ。最近のお前の態度は目に余る」
「勘弁してくれませんか?俺みたいな奴の相手なんてしても得なんてないでしょ?見逃してくださいよ」
「悪いがこっちも仕事でな。俺に得はないがやらなきゃ俺がクビにされてしまう」
「はぁ…手短に頼みますね」
そう言って誰もいない教室で面談?が始まった。
「多感な時期なのはわかるが、授業にはきちんと出ろ。1年のときはそんなんじゃなかったろ?高校くらいは卒業しとけ」
「誰にでも心境の変化くらいありますよ。皆そういいますけど、俺にはやりたいことなんてない。だからこそ普通を目指して生きてきましたが、最近になってそれも違うなって思ったので」
「お前のその思考が間違いとは言わないが、俺は教師としてお前を導く役目がある。無謀なことはさせられない」
(どうせ定型文しか話さない。機械と何ら変わりないな)
「もう自分で考えられる年齢ですよ俺は。誰かに導いてもらう必要なんてないです。どうせ俺のことを鬱陶しいって思ってるんですよね?だったら放っておいてくれると助かります」
そう言えば、目の前の教師は沈黙した。
10秒、いや20秒だったろうか?その沈黙がやけに長く思えた。教師は少し考えた後、俺に言い放った。
「自分で考えられる年齢つったってお前はまだガキだろ?ガキが間違った道に逸れようとしたら矯正してやるのが俺の仕事だ。確かにお前は鬱陶しいが仕事を投げ出すほど俺は責任感がないわけじゃない」
普通の教師では考えられない対応だった。
「お前の言うこともわかるよ。俺だって、やりたいこともなくて適当に生きて、なんのためにやってんだろって思ったことを勉強し続けて。その結果が今だ。大してやりたいとも思ってねぇ仕事をさせられる」
驚きか、それとも聞き逃さないためか。俺は言葉を発することができなくなってしまった。
「でも、最初は適当に選んだ仕事でも長くやってれば馴染んでくる。道を外しかけたやつを導いて、そいつが大人になって立派にやってるのを見たときは、最初にはなかったやりがいを感じた」
「この先が不安なんだろ?だからこそ今やってることが全部無駄なんじゃないかって思えてくる。でも、それで他人の言うことをシャットアウトするのは余りにもガキだ」
「そんなことない!俺にはそんな機械みたいな定型文は必要ない。どうせ言うことが同じなら聞かなくてもいいでしょう?」
「そりゃ面倒くさいガキの対応なんていいから黙って言うことを聞けで皆終わらせてぇだろ。でも、俺は優しいからな。特別に言ってやる。人生何とかなるから気楽に構えとけ」
「…なんですかそれ?何の解決にもならない」
「そりゃならねぇだろ。人生何が起こるかわからない。100億持ってるヤツでもふとした瞬間に全部失うかもしれねぇし、家すらなくなったってなにかの拍子で逆転するかもしれねぇ。だから、自分に言い聞かせんだよ。なんとかなるって」
未だに納得はしていないが、それでも俺が生きる上で大いに役立つマインドだった。
「最初はどんな理由でもいい。やってりゃその内他の理由くらい見つかる。トレーナーだったらウマ娘とイチャイチャしたいとか、そんな不純な理由でも勝たせりゃトレーナーとしては上出来だ」
「そんなやつトレーナーになんてなれませんよ」
「ま、人生でそれが無価値だって決めるのはお前の行動次第だ。自分に貼られた値札が0円なんてムカつくだろ?だったら書き換えてやりゃいいんだ」
「………」
「もしお前がトレーナーを目指すなら手伝ってやるよ。俺も元々はトレーナー志望だったんだ。落ちまったがな」
「適当に目標もなく生きてきたって言いませんでした?」
「そりゃお前、トレーナー試験落ちたからって教師になったってのは格好つかねぇだろ」
運命の出会いだとかそんなことは口が裂けても言ってやりたくはねぇが、そいつは間違いなく俺の人生を変えたやつだった。
________
「ま、そういうわけだ。これでいいだろ?」
「過去のキミ、随分虚無だね。しかも、その教師の影響受けすぎじゃない?」
「誰かを手本にして生きるのが一番効率がいいんだよ」
「あははっ!まあそういうことにしておいてあげる」
(人をバカにしやがって…なんだこいつは)
「まあ面白かったし、ひとまずチーム結成については特に文句はないかな。好きにしていいよ」
「わざわざ過去まで引っ張り出したんだから当たり前だ。というか、なんで今のタイミングだったんだ?」
「ん〜…もしチームを作るんならキミとの時間が減るでしょ?だから、今のうちに知っておいたほうが有利かなって」
「有利って、何が有利なんだよ?戦いでもするのか?やめてくれよ。面倒事を処理させるのは」
「まあ戦いといえば戦いかもね。でも安心して。キミがしっかりアタシを見ててくれるんなら起こらずに済むよ?」
「そういうことを言ってるわけではないんだが…?」
「あははっ!まあまあ、気にしない気にしない」
「はぁ…お前ってやつは本当に…」
話の整合性とか全部無視して番外編とかif書きたくなったのでアンケート取ります。お任せの場合だけめちゃくちゃ自由にやります
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シービー
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