「正直、今更何言ってんだって感じなんだけどよ…イチャイチャしてぇってのは、動機であって目的じゃねぇんだ」
(最初は、まあ正直に言えばあわよくばそういう関係になりたいだとか?思ってたんだけどな)
「社会も、三女神も。そして俺自身がそれを許さねぇんだ」
「手段と目的が入れ替わるっていうのか?冷え切ってたものが、つい熱くなっちまって、その熱が冷めねぇんだ」
(俺に触ると火傷するぜ、なんて茶化そうにもあいつら俺より熱いからな。どうしようもねぇ)
「まさか、あいつらがそうなるとは思わなくてな。どうにも鈍かったらしい。今になってそれに気づいたが、どうすりゃいいんだか。三女神は間違いを教えてくれるが、正解は教えてくれねぇ。不親切な神様だよな、ほんと」
(選ぶのは同時に選ばないことと同義だ。俺にはそんな資格はねぇが、いつか負債は返さないといけねぇ)
「だが、返すにはなにもかもが俺に足りてねぇんだ」
まだ結論を出すには早いが、過去の事例から考えるに、開演と幕引きには一定の法則があるはずだ。一つは色を塗り終えたとき。2つは時間制限。どちらにしても俺は答えを出す前に幕を引くことになる。
「運命は既に決められている。俺の手で変えるとかそういうことを言いてぇが、まだそれを言うには早い」
(ウマ娘を導く。それはトレーナーとしての義務であり、責任だ。だからこそ、俺なりに上手くやってきたつもりだった。だがまさか世界線を跨いでそれが発生するとは思わんだろ)
「スピリチュアルだとか言われても仕方ねぇが、きっとこれは使命だ。誰から与えられたのかはこの際三女神だろうが悪魔だろうが誰だっていい」
(いったいどれだけのウマ娘を導けば終われるんだろうな。勇者だってパーティーが必要なのに、俺は一人かよ)
「色を塗り終えたとき、俺はいったいどれだけの負債を抱えてるんだろうな。ほんと、最悪だ」
(シリウスがどうかは現状判断しかねるが、ステゴは会ったときからずっと特殊なやつだった。あいつも俺と似たように、記憶を持ち越せるのかね?)
「それは良いことでもあり、悪いことでもある。もしそうなら答えをやる日が果てしなく遠いのに、あいつはずっとそれを待たなきゃいけねぇ。旅の相棒だからといってそれはなぁ…」
果ての見えない旅を一緒に歩むことができるわけでもねぇのに待ってろってのは余りに酷だ。
「権利は捨てても義務は捨てるな。殊勝な心がけだぜほんと」
人間には皆幸福追及権があるらしいが、俺には義務の比重が大きくてかなわねぇ。
「後退はできねぇ。ブレーキは初めっから用意されてねぇ。ほんっと欠陥だらけだよな」
「逃げたら一つ、進めば二つ。腹括るしかねぇな。最後くらい、偽るのはやめにしよう。責任ってのはそういうもんだろ。なあ、トレーナー?」
(全て明かせる訳では無いが、少なくとも説明くらいはしてやらないといけねぇよな)
俺は、シリウスに電話をかけた。
『ようやく捕まる気になったか?
「残念だが俺は犬じゃねぇんだ。少し、真面目な話をしようぜ、シリウス。3女神像の前で待ってる」
そう言って、電話を切った。
_________
「こんなところに呼び出して、なんのつもりだ
「俺も、思わなかったよ。思えば、お前は俺の嘘を見破るのが随分上手かったよな。なら、わかるだろ?」
「…アンタの話を聞いてやる。くだらねぇことだったら承知しねぇぞ、トレーナー」
「シリウス。俺のトレーナーになった動機はハッキリ言って不純だ。だが、今の目的は違う。担当を支えて、導いて、後押ししてやる。それがトレーナーとしての責任だと俺は思う」
「ふん、それがどうした?だからって私から離れられると?」
「シリウス、お前は言ったよな?唐突に記憶を取り戻したって。俺にはなんでお前がそうなったのかはわからねぇが、今の俺の現状はわかる。俺は、ウマ娘を導く使命がある」
「使命?それがどうした。私には関係ない」
(ああ、そういえばお前はそういう奴だったな。シリウス)
「そうだな、お前には関係ない。でも俺にはある。使命ってのは投げることも、置くこともできない。俺は停滞を許されない。常に歩き続けるしかねぇんだ」
それを聞いたシリウスは少し驚いた後、すぐに俺の胸ぐらを掴み憤った。大方、嘘とでも思ったのか。いや、信じたくないだけかもな。
「なにふざけたこと言ってやがる。お得意の嘘か?このホラ吹きが!正直に言いやがれ!」
「嘘じゃねぇ。わかるだろ?シリウス。こんな時にまで嘘はつかねぇよ。俺から言えるのは、お前に応えてやることはできねぇ。ただ、それだけだ」
「…なんでお前なんだ?お前はどうしようもねぇバカで、鈍くて、非常識な子犬だろ?そんなやつがなんで…」
胸ぐらを掴む手の拘束力はどんどん弱まっていった。
「おいおい、そりゃ流石に傷つくぜ。なんでっつってもまあ、そういう運命だったんだろ。俺とお前が出会ったように、この世には運命ってのがあるのさ」
本当は理屈で説明してやりたかったが、こんな時でも俺にはそんなの思いつかねぇ。だから、俺で話すしかない。
「私を世界で一番輝く星にするって約束はどうしたんだ?」
「おいおい、2回も世界一になっておきながらそれ言うのかよ?お前は本当に欲張りだなぁ」
(まったく、困ったやつだ。離れたくなくなっちまうじゃねぇか)
「お前が見えなけりゃ、意味ねぇだろうが…」
「俺はいつ聞かれてもすぐに答えられるぜ。世界で一番明るく輝く星はシリウスだってな。俺に見えるくらい、輝いてくれよ」
「ハッ、無茶言いやがって…」
「んなことねぇさ。だって、お前は一等星だろ?」
例え俺には輝きが見えなかったとしても、しっかり目に焼き付けてある。
「なら、アンタに届けてやるよ。一等星の輝きを」
どうやら、その心配はいらなかったらしい。
「最高だ。お前は世界一だぜ、ほんと」
(嬉しいことを言ってくれる。流石は俺のシリウスだ)
「いつか必ず手に入れてやる。待ってろよ」
「楽しみにしてるぜ、シリウス」
それだけを返して、俺は帰っていった。
________
「よっ、さっきぶりだな。ステゴ」
「まさか、あんたから来てくれるとはな。なんで私の位置がわかったんだ?」
「そりゃあ勘だ。長年の勘ってやつ」
「ハハッ、やっぱり面白いな。それで?どうしたんだ」
やっぱり、こいつは察しがいいな。
「そうだな…平たく言えば、説明かね」
「へぇ、説明…ね。いったいどんな?」
「お前はいつも話してたよな。自分じゃない自分の記憶があるって。それとは少しだけ違うが、俺にもそういうのがある。特別サプライズだぞ?これはトップシークレットだ」
「………」
おっと、滑っちまったらしい。
「まあそういうわけでさ。あの時は休憩だなんて言ったけど、やっぱり付き合う必要はねぇ。俺の旅にお前を付き合わせる資格はない。お前にはお前の旅がある」
「私の旅じゃない。私と、あんたのだろ?」
「まったく、お前ってやつは…終わりどころか、先の見えない旅についてくる必要がどこにあるんだ?」
「未知を楽しむのが私たちだろ?見えないくらいがちょうどいい。そう言ったのはあんただった」
(旅は道連れ。そういうわけか)
「ハハッ、そうだったっけか?そうだったかもな」
「再会して早々離れるなんて、あんた私以上の風来坊だな?」
「それについては本当に悪いと思ってるよ。だが、止まるわけにも戻るわけにもいかなくてね。許してくれ」
「もし、旅の途中で別れることになってもまたいつかあんたを見つければいい。あんたが私にそうしたように」
「俺達の旅路が再び交差することを願ってるよ。じゃあな」
あんまり長く話すと、どうしても言葉が出づらくなっちまう。だから、次会ったときに持ち越しておくよ。
________
「あー、なんて言えばいいんだろうな…とりあえず、キャンバス全部に色を塗らないといけなくなっちまった」
「あははっ!描ききれないほうがいいとか言ってたのに?」
「仕方ねぇだろ。急な方向転換ってのはあるもんだ」
「まあ、それもそうかもね。キミらしいや」
簡単にわかられては困るといつか言ったが、どうやら随分俺への理解度が高いらしい。
「要するに、キミはアタシから遠い所に行っちゃうってわけだ。約束したのにね」
(う〜ん鋭いな。当然の反応か)
「それを言われると弱いな。天命ってやつは俺にもどうしようもなくてな。ま、いつか抗ってみせるさ」
「冗談だよ冗談。そっか、キミは変わらないね。前もそんなこと言ってたと思うけど」
「人はそう簡単には変わらねぇからな」
「アタシはキミに変えられちゃったけどね?」
「冗談だろ?どこが変わってるんだ」
見る限りはあの頃から変わっていない。
「教えてあげない。キミにわかってほしいからね」
「言葉にするのは大切だって言ってなかったか」
俺にとって都合の悪い言葉は覚えてるくせに、自分で言ったことは覚えていないらしい。
「あははっ!そうだったっけ。でも思えば、キミはアタシ以上に自由だったよね。だからこそ、今も捕まってくれない」
「ガキに捕まるのは大人としてのプライドが許さなくてね」
「ふーん…ならいつでも帰っておいでよ、アタシの家に。スペース空けておくからさ。ご自由に」
「ほう、そう来たか。固かった頭も随分柔らかくなったじゃねぇか。なるほど、お前も変わったな。なら、いつか帰ることにするよ。じゃあな」
シービーも自由な発想ができるようになったらしい。
_________
「どこに行ってしまったのかと思ったよ、トレーナー君」
「どこにもいねぇし、どこにでもいるのが俺だ」
「ようやく私の元にきたということは、答えは決まったのかな?聞かせてもらおう。トレーナー君」
偉そうなことを言って最後まで付き合ってやれねぇのが心苦しい。だが、それでも言わねばならない。
「…俺はもうお前を支えてやれねぇ。悪いな」
「…君は契約したとき私に言ったろう?果てまで付き合うと」
「時間の許す限り。そう言ったろ?もう時間がなくなっちまってな。お前も、有意義に時間は使ったほうがいい」
「絶対は私だと、そう言ったのは君だったはずだ」
「どんなものにも絶対はない。その例外としてお前がいる。だが、俺はその例外に含まれねぇ。いや、例外だからこそか?」
「君がいなくなれば私に教え、導き、 支え、押してくれるのは他に誰がいる?君となら、全てのウマ娘たちが幸せに暮らせる世が作れると、私はそう思っていた」
「俺の代わりはいないかもしれねぇが、俺が必要というわけじゃねぇ。絶対はない。俺が絶対必要なんてことはねぇし、絶対無理なんてこともない。お前なら絶対にできる」
「生徒会のメンバーに、自分に憧れを抱いてくれる後輩。ライバル、お前には揃ってる。必要な手札が。だからこそ、より近づけるには別のアプローチが必要なんだ。お前ならできる。俺は、そう信じてるぜ。ルドルフ」
「…そうか。君はきちんと、ウマ娘たちのことを考えていたようだ。嘘であってほしかったが、君はこんな時まで嘘は言わないだろう。ならば、信じていてくれ」
「ああ。実現したその日には、酒でも飲もう」
ルドルフは、相変わらず立派だった。だが、理想というのはただ一人で叶えるものじゃない。それをわかってくれていたらしい。まったく、本当にどいつも出来がいいな。
_________
「なんだか寂しいな、本当によ」
(色々悪態ついて、感謝して、とにかく色んなことを三女神になすりつけた気がするな)
姿勢を正して両手を組み、三女神像に祈る。
「どうかウマ娘たちが幸せに暮らせますように」
今度は混じり気なく、心から祈ることができた。
最後に一発、かましとくか。
「お願い三女神様!贅沢は言わないのでウマ娘とイチャイチャさせてください!え?ダメ?はーつっかえ…三女神ってクソだわ。もう三女神信仰すんのやめます」
まずはここまで読んでいただいた方、本当にありがとうございます。
突然ではありますが、ここで一旦この作品は完結ということにさせてください。
急な話でもありますので、少し説明させていただきます。
エタるという形にするのは、作品自体にも思い入れがありますし、ここまで読んでいただいた方々にも申し訳ないと思ったため、今回ひとまず落とし所をつけることにしました。
いつになるか、もしかしたら一生来ないかもしれませんが、もし続きを思いつくことがあれば続編という形で書こうと思います。
また、新シリーズについても執筆する予定です。早ければ明日、遅くとも一週間以内くらいには投稿できると思います。
ガッカリしてしまった方々には本当に申し訳ありません。
そして、ここまで読んでいただいた方、本当にありがとうございました。
余談というより補足になりますが、必ず読む必要はありません。少しスペースを開けておきます。
今回書けなくなった理由についてですが、書いていくうちに設定を守ろうとするあまり、自分の中でなかなか整合性の取れる展開を作ることができず、身動きが取れなくなってしまったためです。
ギャグとシリアスの複合で作品を進めていくつもりでしたが、ギャグのネタが少しマンネリ化してきたかなと思ったのと、シリアス面において記憶を引き継ぐ設定が長編にするには自分の技量では難しかったです。
この設定を失敗とは思っておらず、むしろ作品を続けていくうえでは大いに役に立ったと思っています。もしなければ一つの作品として考えたとき、物語的に薄くなっていたと思います。
それを前提に話していけば、引き継ぐ記憶が膨大になればなるほど作中での負債が増えていきます。
そうなると、結局主人公はいつまで経ってもウマ娘たちの思いに答えられないわけで、少なくとも自分のなかでの主人公は、常識人と言うわけではないものの、仕事や責任に対しての誠実さは持ち合わせているという方向性で書いてきました。
仕方がないとはいえ結果的に思いには応えられませんし、全ウマ娘たちのエピソードをシリウスやステゴ編のような温度感で進めていくことは困難と判断したためこのような形で完結とすることにしました。
ウマ娘と普通に恋愛したりする話は番外編で書く予定で、そこでは整合性とかは必要以上に考えずのびのび書いていきたいと思っています。
ウマ娘自体や登場キャラクターたちへの気持ちがなくなったというわけではありません。
長くなってしまいましたが最後にもう一度、ありがとうございました。
話の整合性とか全部無視して番外編とかif書きたくなったのでアンケート取ります。お任せの場合だけめちゃくちゃ自由にやります
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シービー
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ルラち
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シュヴァル
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ドゥラ
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タキオン
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タマモ
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