「おぉ。イギリス料理はあまりいい評判は聞かないが、フルイングリッシュブレックファストは中々いけるな」
「その割にはビーンズを残してるんだな?」
「確かにいけるとはいったが、ビーンズは例外だ。そもそも俺は豆を食べ物と認めてないし、トマトソースにも関わらず色がオレンジだぞ?明らかに薄いだろこれ」
「あんた、やっぱり結構子供舌なんだな。私は別にいいと思うぞ?好き嫌いくらいはあっても」
何を言ってるんだ。食べ物じゃないものに好き嫌いもあるか。
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「どうだ?この帽子。中々イケてるだろ?俺がガキの頃に夢見たあの大スター、ウィリー・ウォンカと同じだぜ?」
「うん、まあ悪くないんじゃないか?あんたが同じように扱われるとは到底思えないけどな」
「別に気分だよ気分。わざわざわかってること言うなよ…」
「ハハッ、そうか?てっきり勘違いしてるなら訂正してあげるたほうがいいと思ったんだが」
ちょっとしたショッピングをしたりして、次は観光地巡りへ向かった。
「知ってるか?ステゴ。ビッグベンは大きな鐘の愛称で、塔自体の名前はエリザベス・2世の即位60周年を記念してエリザベス・タワーに改称されたらしい」
「へぇ。そりゃ知らなかったな。そういえば、今度時代に合わせてビッグベンをアナログからデジタル時計に切り替えるらしいぞ」
「マジ?時代はアナログよりデジタルなのか…」
「もちろん冗談だけどな」
「なんの意味があるんだよその嘘…」
ビッグベンを見に行ったり。
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「お、見ろよトレーナー。ユニオンジャックだぞ。ロイヤルスタンダードゃないってことは今は国王はここにいないわけだ。せっかくだし、見たかったな」
「まあ儀礼みたいなものだ。旅人とは違って国を治める人間は大変なんだろ。それより、俺は衛兵に捕まらないか心配だ」
「今私がここで叫べば現実になるかもな」
「絶対にやめろよ!」
ファッキンガム宮殿はバッキンガム宮殿と違って夜な夜な奇妙なうめき声が聞こえるらしい。
「う〜ん…なんかストーンヘンジって地味じゃないか?いや、紀元前3000年頃からあるって聞きゃ立派なんだけどな」
「この先面白い何かが発見されるかも知れないぞ?わからないからこその浪漫ってのがここにはあるんだろ」
「そう聞くとなんだか急にすごい何かに見えてきたぜ…俺たちもなんか積み上げたりしとくか?3000年後に残ってりゃなんか凄くなるかもしれん」
「なら50トンは運ばないといけないな。もちろん、手伝ってくれるんだろ?」
「石なんて積み上げた所で意味なんかない。もっと生産的なことをしよう。ゴミ拾いとか」
積み木ならぬ積み石ってか?ここは地獄じゃねぇんだぞ。
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「トレーナー。マーマイトって知ってるか?」
「いや?なんだそれ」
「まあ簡単に言えばジャムみたいなものだ。主にパンに塗ったりするペーストだな」
「へぇ。そんなのがあるとは知らなかった。あんまり日本じゃ見ないし、イギリス特有なのか?」
「イギリス人以外はあんまり食べないらしい。せっかくだし食べてみるか?私はもう食べたことあるからあんたが食っていいぞ」
「そりゃどうも。悪いな」
そう言って出されてきたトーストにはピーナッツバターのようなものが塗られていた。これがマーマイトってわけか。見た目は悪くない。では頂こう。
「…は?」
脳の処理が追いつかない。なんだこれ?ふざけてんのか?
「なんだこれ、しょっぺぇクソ塩辛いぞ…ジャムじゃなかったのか?謎に酸味もあるし…」
「あぁ、言い忘れてた。マーマイトは割とイギリス人の中でも好みが分かれるらしい。それと、少し塗りすぎたかもな。本来は少量しか塗らないみたいだ。いやぁ、うっかり」
「うっかりじゃねぇだろ!お前食べたことあるっつってたじゃねぇか。ハメやがったな…」
「まぁまぁ。口をつけてしまったものは仕方ないだろ?」
「クソッ、この鬼畜が…」
俺は血涙を流してなんとか食べきった。
「あぁ、酷い目にあったぞ…口直しになんかないのか?」
「そう言うと思ってたよ。せっかくだしイギリスらしいものを注文したんだ。今回は伝統的な料理だから安心してくれ」
「おぉ。フィッシュアンドチップスとかサンデローストとかか?」
「それは来てからのお楽しみってやつさ」
まあさっきの例外を除けばイギリス料理は案外そこまで悪くはない。中々期待できるはずだ。
「お、来たみたいだぞ」
「おぉ、いったいどんな料理…」
「なにこれ?なにこれなにこれなにこれ…」
頭が痛くなってきた。これは本当に現実なのか?ここはだれ?わたしはどこ?
「なあステゴ、ちゃんとした料理だって言ったよな?」
「あぁ。18世紀からあるちゃんとした料理だぞ?うなぎのゼリー寄せは」
「そうか。嘘は言ってないもんな。でも、嘘を言ってないからって何をしてもいいとは俺は思わないんだよね」
「何事もチャレンジだぞ、トレーナー。旅は道連れ、あんたにも付き合ってもらうぞ」
「…まあ、意外と食ってみたら美味しいかもしれないしな」
大丈夫。これは食べ物。食べ物だ。食べ物…
「じゃないだろこれは!なんでうなぎにゼリーを合わせるんだ?意味がわからない。どういう経緯で生まれるんだよ」
「テムズ川で大量に穫れたうなぎを栄養源として効率よく摂取するために生まれたらしいぞ」
「効率よくって時点で味考慮してねぇだろ!」
クソクソクソ…覚悟を決めるしかねぇ。
意を決して一口食べてみた。
俺は死んだ。
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ふぅ、三女神のご加護がなければ危なかった。
「う〜ん困ったな」
「どうした?なんかあったのか?」
「宿が取れなくてね。一部屋なら空きがあるんだが…」
「ならいいじゃねぇか。何を悩むことがあるんだ」
「それがベッドがダブル一つしかなくてね」
「は?いや待て待て、まず前提として一部屋しかないのか?しかもダブル一つだと?」
「まあ他にないものは仕方ないだろ?」
「いやいや、探せば一つくらい…」
ない。ないないない!どこを探してもない!どういうことなんだよ三女神ぃ!!
「んなアホな…しかもここソファすらないぞ…」
(同じ部屋ってだけでもギリアウトなのに添い寝はアウトすぎる。豚箱送りは嫌だぞ…)
(俺より詳しいからって任せた責任は俺にもあるわけだし、そもそもとして他人を床で寝させるのは普通になしだ)
「俺が床で寝るしかないのか…?」
「一緒に寝ればいいだろ。私は別にそれで構わない」
「お前が気にしなくても世間と俺が気にするんだよ」
「へぇ…あんたも意外とそういうの気にするんだな」
「俺を倫理観ゆるゆるモンスターだとでも思ってんのか…?」
まあとりあえず向かうしかないか…
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「クソッ、受け付けの奴にめちゃくちゃ見られた…俺だってなりたくてこうなってるわけじゃねぇってのに」
「なんだ。私といっしょは嫌なのか?」
「そういう話じゃねぇって言ったろ」
「ただ同じベッドで寝るだけだろなにをあんたはそんなに気にしてるんだ?それともなにかやましいことでも考えてるのか?」
「んなわけ」
「じゃあいいだろ?トレーナー」
「…その手には乗っからねぇぞ」
「意外と意気地なしなんだな。あんた」
「あぁ?誰が意気地なしだコラ。舐めてんじゃねぇぞコラ」
「私も成人したんだ。社会がどうだとか、そういうのを言い訳に逃げてるあんたを意気地なしと言わないでなんて言う?」
乗せられるな。ガキの安い挑発だ。気にする必要はない。
「ヤッテヤロウジャネェカヨコノヤロウ!!」
(添い寝だとか同衾だとか。そんなのがなんだってんだ?相手はガキだぞ。むしろそんなことを気にするほうがよくない。ガキのお守りでなんてそういうことは多少ある)
(ガキの間違いは正してやらねばならない。休職したとはいえ俺は偉大なトレーナーなのだ。)
寝る支度を整えベッドに入る。
(ううむ、寝れないときは羊を数えるといいとは言うが、そもそもあれは英語のSleepがSheepに似てるという意味でのものだよな?日本語に適応されるのか?)
(まあ子供騙し、やった所で意味はないだろうが一応試してみることとしよう)
(羊が一匹…羊が二匹…羊が三匹…羊が4匹…羊が5匹…羊が6匹…山羊が二匹…羊が7匹…山羊が8匹…羊が…)
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「なんだ、もう寝たのか。つまらないな」
「…本当に子供っぽいよな。あんた」
いつの間にか寝てしまったトレーナーに言う。
「大人を気取ってるくせに落ち着きがない。でも、肝心な所では外さない」
本当に、あんたとの旅は退屈しない
(私のことをもう少し意識してくれたっていいと思うんだが)
思わず不機嫌になってしまうが、このトレーナーにはそんなことはわからないだろう。
しかし、この寝顔を見ているとなんだか毒気を抜かれてしまう。
(ま、旅はまだまだ続く。それに…)
「欲しいものがそう簡単に手に入ったらつまらない」
「楽しい旅にしよう。トレーナー」
聞こえてもいないだろう一人の男にそっと囁いた。
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グッモーニン!
どうやら昨日はいつの間にか寝落ちしてたらしい。ステゴはまだ寝ている。その寝顔を見て意識せずとも思ってしまう。
(ウマ娘ってのは本当に端正な顔立ちしてるよなぁ…)
俺はウマ娘とイチャイチャしたくてトレーナーになったはずなんだが、なんだか担当としてずっと居続けるとそういう気分でなくなっていくのかもしれない。
これでは仏像掘って魂入れず、まさに画竜点睛を欠くということではないだろうか?
「ま、楽しけりゃなんでもいいか」
先のことなんて後で考えりゃいい。今が楽しければそれでいいんだ。俺は今を最高速度で駆け抜けたい。
「ん…おはよう。トレーナー」
「あぁ。おはよう」