継承戦40日目くらいまではプロット通っていると思われるので、とりあえず走りますね。原作の完全不確定要素は捏造か放置になりますが……(サイマジョの犯人とかはどうしようか頭を抱えています)
【名前】リグ=ファウラー
(リギング(リグ):船の帆とマストを支えるロープ・ワイヤ・滑車などの総称)
(ファウラー:水鳥撃ちの猟師)
【系統】変化系能力者
【性別】男
【年齢】26
【所属】ハンター協会 幻獣ハンター(シングル)/第12王子モモゼ=ホイコーロ嘱託外注護衛兵
【性格】慎重/打算的/情に脆い
【略歴】
孤児として生まれる。四歳でこの世界が前世で読んだ漫画の世界だと気付き、念の修行を始める。里親に拾われ12歳で事故により死に別れる。14歳でプロハンターの師を得る。
16歳でハンター試験に合格し、幻獣ハンターとなる。『
師がマフィアと繋がる密猟団に殺される。カイトの協力を得てA級首を首魁とする一団を壊滅させ、幹部八名を縛り首にする。人間を殺したのはこの一件のみ。よって幻獣ハンターでありながら最大の実績は賞金首狩りである。
カイトの要請によってNGLでのキメラアント調査に参加した。
【能力】
『
自身のオーラが直接触れた面の摩擦を変化させる。大きくすれば引っかかり、小さくすれば滑る。対象は固体の表面。流体のせん断応力もある程度は操作できるが、固体と接する界面に限定される。
自身の体表に掛ければ、完全に垂直に入らない限り攻撃は滑る。足場に掛ければ相手の踏ん張りを奪う。ロープに掛ければ、荷重を掛けたまま結び目を滑らせることも、その逆もできる。
変化させた箇所は『凝』で視認できるが、摩擦の大小は本人にしか分からない。『隠』で偽装できる。
制約と誓約
・同意のない他人には掛けられない。
・同時に掛けられる面積は、自身と自身のロープの表面積まで。
・オーラが直接触れていなければならない。
・他人が助けを求める声に背を向けられない。破れば、新たな制約を追加するまで能力が使用不能になる。(敵対者は対象外)
『
自身が手で結んだ結び目に限り、離れた場所から締める、解く、組み替える。同時に操作できる結びは五つまで。ストックは事実上無制限。
解いた結び目は別の場所に結び直せ、『滑走路』を掛ける起点にもなる。ネフェルピトーを倒すための急造であり、変化系の対極にある操作系のため適性は低い。
制約と誓約
・一度
【備考】
首筋にネフェルピトーの『
【出航二日目・昼→夕】
テーブルの上には、ピトーが淹れた紅茶が微かに湯気を立てている。
モモゼ王子はそれに口を付け、意外そうな顔をした。茶も料理も、ピトーはかなり上手い。本人は味付けなしでも普通に食べるくらいには味覚が偏っているのだが、レシピがあればその通りに作る能力はかなり高い。
──王になるにはどうすれば良いか。
モモゼ王子の問いに対して直線的な回答を避け、俺は壺中卵の儀について切り出した。
「『生き残ったただ一名が正式な王位継承者となる』。解釈をねじ曲げることは可能でしょうが、法律の条文とは異なり恣意的な解釈が許されるとは限りません」
モモゼ王子の問いは、『生き残るためには』ではなく『王になるためには』だった。モモゼ王子の視点ではその二つに差はないのかもしれないが、後者の言葉を選んだのにもわけがあるはずだ。
つまり、彼女は本当に、王になりたいと思っている。
幼さが故の視野の狭さや憧憬が含まれていないとは思わないが、それを外野が切り分ける意味もない。
「私以外の王子が全員死ねば、私が王になる」
「その通りです」
「では、殺さねばなりませんね」
「殺せますか? マラヤーム王子を、ワブル王子を。殺し合いなど望まないと言う王子たちに刃を突き入れることはできますか?」
俺の問いに、モモゼ王子は僅かに目を細めた。
「マラヤームを手に掛けねばならないとしても、私は迷いません」
声は震えていなかった。
モモゼ王子の中では既に何度か繰り返された言葉なのだろう。
守護霊獣は王子の気性や願望を反映した姿や能力を取る、という説明は、確か原作でも示されていた情報だった。事実、開示された王子たちの気質と守護霊獣の能力は噛み合っていた。
好意を広めたいものはそのような能力に、誰かに会いたいものはそれを叶える能力に、他人を支配したいものはそれが可能な能力に。継承に重きを置けば次代に繋がる能力になり、先のことを心配する気質なら未来に大きく実る能力に。
継承と独占、隷属と君臨、蓄財と利殖、疑念と審美、共生と協調、布教と博愛、誘引と安逸、魅了と人望、結束と同志、形代と献身、往還と再会、注目と要請、守勢と安心。
モモゼ王子の守護霊獣はげっ歯類の形質を持つ。尾が長いことから直接のモチーフはネズミなのだろうが、マラヤーム王子が飼うハムスターとの関連を疑わずにはいられない。
加えて、その能力はひどく迂遠だ。
特定の人物にだけ姿を見せ、『おヒマ?』と尋ねる。相手が暇だと答えるまで付き纏い、暇だと答えた人間を操作する半強制型の操作系能力。
暇かどうか尋ねるのは、自分には『暇な時にしか相手にされないくらいの価値しかない』と思っているから。
忙しいからと蔑ろにされることに傷付き続けた果ての能力だとすれば、いっそ惨たらしく映る。
「……ワブル王子を殺せるとは仰らないのですね」
「いいえ、ワブル王子であっても──」
「では、質問を変えます。モモゼ王子は生き残りたいのですか? それとも、王になりたいのですか?」
「後者です」
ピトーが隣に腰掛け、背伸びをしてから背もたれに身体を預けた。彼女の奔放っぷりと不遜には肝を冷やすばかりだが、現時点では俺よりも献身的にモモゼ王子を守っているので文句は言えない。
寧ろ120点を付けるべきだ。
「口を開けて待っていても王様にはなれないけどね。配下もいないのにどうやって他の王子を殺すの?」
「……私とて、望みが薄いことくらいは理解しています。この儀式が平等でないことも、この状況を打破する手段が私には乏しいことも」
「無理だよって言ったら諦める?」
「いいえ」
妙にピトーがモモゼ王子を気に入っている感じがするのが気にかかる。
単なる好奇心なら良い。生まれつき王に仕える役割を持っていたピトーが、生まれながらの王ではなく、殺し合いの果てに王に至らんとする者たちの内実に興味を抱くことは、必然に思える。
ただし、過度に肩入れをし始めると全てが狂う。
ありえないことではあるが、今からピトーが順に部屋を回って王子を殺していけば、それだけでモモゼ王子は王位を得るのだから。
その場合、船は未曾有の大災害に襲われるだろう。ピトーを殺すための国王軍とハンター協会による連合軍と、ピトーが操る死者の軍勢の戦争。
モモゼ王子がピトーに恩赦を与えられるようになるまでの間に無数の人間が命を落とし、状況によってはピトーも死ぬ。
「王になる要件は、残り58日以内に自分以外の王子を全員死なせること、それだけです」
「……はい」
「そして現状、自力でこれが可能なのは
モモゼ王子が頷く。
俺は彼女に王位を諦めさせるべきだろうか?
外部の嘱託護衛としては越権行為だが、他に進言できる人間がいない。
「第3以下の王子は、防衛に徹するしかありません。もちろん、他の王子を削る手段は持っているでしょうが、第一層の趨勢を動かすほどではありませんから」
そもそも暗殺合戦を見越して準備してきた王子の方が少ないはずだ。
「つまり、私は何もできないのですね」
「はい。他の王子は最低限の私設兵を備えていますが、モモゼ王子には我々しかいません」
協会員が負っている任務は護衛だけだ。他の陣営を害することは基本的にない。勿論、操られたりした場合はその限りでは無いが、モモゼ王子は俺たちを防衛装置としてしか運用できない。
「生き残ることで王になるのなら、お二人の仕事は私を王にするのと等しいのではありませんか? そうでなければ私は殺されるのでしょう」
「ある意味では仰る通りです。ですから、モモゼ王子が王位を継承する可能性がないとは言いません。ただしそれは、他の王子たちが都合よく削り合った場合のみです。もっとも、最後の二人になってしまえばモモゼ王子には矛がありませんが」
モモゼ王子が深く息を吐いた。
ピトーが愉快げに身体を起こして、前のめりにテーブルに手をついた。
「弟が死ねば兵が手に入るよ?」
「内憂を引き入れるだけではありませんか? 生き残っているお母様の私設兵はウェルゲーだけです」
ピトーの物騒な提案を、モモゼ王子が切り捨てる。
ウェルゲーが加われば俺たちは動きにくくなるが、俺としてはビスケとハンゾーの戦力が惜しい気持ちもある。とはいえ考えても詮無いことではあるし、昨日諦めた内容でもある。他の王子の死を前提にして動くことはできない。
ピトーの話を遮り、話の軌道修正を試みる。
「王位継承のセレモニーは既に日付まで決まっています。その日までに王子が複数生き残っていたらどうなると思いますか?」
「ただセレモニーを延期すれば良いのではありませんか?」
「念が絡まなければその通りです。講義を先取る形になりますが、念能力には『制約と誓約』という概念があります。クラピカの言葉を借りれば、念能力はハイリスクハイリターン。リターンを大きくしたければ、リスクも大きくする必要があります。そしてそれは、この壺中卵の儀についても同様です」
「その『リスク』が、タイムリミットだと仰るのですね」
「ええ。セレモニーまでに王子が一人に絞られなければ、儀式は破綻し、ホイコーロ一族は国家元首の座から陥落すると考えられます」
「そうなれば、残った王子は全員死ぬのではありませんか?」
「その可能性は否定しません。が、それは王子にとってのリスクであって王や儀式にとってのリスクではありません。もとより93%が死ぬ儀式ですから、それが100になったとて大きな問題ではない。それよりも儀式の成功率を下げる方が『制約と誓約』としては自然です」
「……王位を捨てて逃げれば、生き延びられるのですね」
「逃走は賢明ではないでしょう。儀式からの途中離脱にはペナルティが課されると考えるのが自然です。でなければ、そもそも儀式を成立させることが不可能になる。落とし所としては、団結です。下位王子達が団結して抵抗することは、儀式にとってリスクになる」
下位王子が団結して壺中卵の儀に抗っても儀式が完遂されるようにベンジャミン王子に軍事権を与えているのだとすれば、国王はやはり相当の策略家だ。
モモゼ王子は再び紅茶に口をつけた。
「諦めろと仰るのですか?」
「決めるのは私ではありません」
「……では、まだ諦めません」
少々落胆する。
意固地になっているようにも見えるが、俺には王子の内心は読み取れなかった。
問題を先送りにすることにはなるが、保留にしておくのもなしではない。
王を目指すにも、ただ生き残ることを目標にするにも、ひとまずやるべき事は決まっている。
王子の守護霊獣が壁をすり抜けて違う部屋へと走っていった。
止めるべきか迷い、判断を王子に委ねる。
「王子の守護霊獣がエリア11へ向かいました。『絶』をするかご判断を」
「……止めます。守護霊獣は温存したいですから」
温存が本心か建前かは分からないが、モモゼ王子はゆっくりと『絶』をし、すぐに『纏』に戻る。王子の背中に守護霊獣が再出現し、退屈したように座り込んだ。
モモゼ王子の守護霊獣は他陣営への攻撃としては使えるかもしれないが、手駒を集めるのには使えない。温存する判断は間違っていないと思う。
「……モモゼ王子、最初の問いに答えます。同盟を組むべきです」
「結局はそうなるのでしょうね。リグ様、エリア14の念講習には引き続き参加してください」
「承知しました」
話が大まかに纏まり、俺はソファから立ち上がった。
食事に関しては俺が担当することになっている。時間としては少し遅くなってしまったが、モモゼ王子の考えが把握できたのは良かった。
俺に釣られたように、モモゼ王子も立ち上がる。
それから彼女は一歩ずつゆっくりとこちらへ近付いて、俺の手に触れた。次いで、空いた左手でピトーの手を掴む。
「お二人は、最後まで私を守ってくださいますか?」
俺の制約には掠めない。
だが、中身は同じだ。護衛や従者を引き剥がされても文句さえ言わなかった子どもが、頼ることを覚え始めている。
良い成長だ。こんな蠱毒さえなければ、彼女にはもっと輝かしい未来が待っていただろうに。
「お守りします。信じてください」
「ボクも仕事はするよ」
「私が、お二人の望まぬ方向へ進んだとしても?」
「……まあ、諫めはしますが」
モモゼ王子が目を伏せて頷く。座ったままのピトーが手を離した。
「リグがご飯作ってる間に『
「無理はさせないように」
ピトーの魂胆はわかっている。俺たちから見てもモモゼ王子の才能は群を抜いている。
『絶』の様子から見て、必ずしも今後の『念』の修得がスムーズに行くとは限らないが、それでも才能に溢れていることは確かだ。
この船にいる間に『発』にまで至る可能性は十分にあるだろう。どころか、明日にでも水見式を行なっても構わないほど。
つまり、ピトーにとって『面白い』念使いになる可能性を秘めている。まあ、ピトーが護衛にやる気を出しているだけマシか。
♦
夕食の後も、モモゼ王子の訓練は続いた。『練』と『絶』のメニューをこなし、汗だくになった王子がソファに倒れ込む。『練』の持続時間は30分。二日目にして既に異常値だ。
倒れ込んだままの王子に、念の講義を垂れ流していく。身体は重い倦怠感に襲われているはずだが、質問が次々に飛んでくる。理解は十分、意欲も申し分ない。
そこへ、部屋のインターホンが鳴った。一瞬空気が張り詰め、ドアの向こうにいるのがハンゾーだと分かった途端に緩む。
『スマンが、内線を使わせてくれねぇか?』
「カードキーを部屋に置き忘れたのか?」
『バカ言えよ。デケェトラブルなんだ、頼む』
モモゼ王子へ振り返る。彼女は身体を起こし、ピトーの助けを借りて身なりをざっと整え直した。
「入れて差し上げてください」
「承知しました」
ハンゾーを通すと、彼はまずモモゼ王子を見て、安堵したように息を吐いた。王子はソファに腰掛けたままで、その隣にピトーが立っている。ハンゾーは入口のすぐ側で立ち止まり、口を開いた。
「情報収集のために1013号室を出て警備兵に聞き込みをして回っていたんだが、しばらくして戻ったところ、
「それで1013号室に電話を掛けたいと。守護霊獣が残っているのなら、そいつの能力による隔離や隠蔽と見るのが自然だが……」
「とはいえ、希望的観測なのは否めないだろ?」
「……王子、構いませんか?」
「ええ」
「ありがとうございます。いや、途方に暮れてたんだ。助かるぜ」
俺が内線を取り、1013号室に電話をかける。電話に出たのは先程同様、ウェルゲーだった。さっさとハンゾーに代わる旨を伝えると、彼は受話器の向こうで鼻を鳴らした。
ハンゾーはしばらくウェルゲーと話していたが、どうやらビスケに代われと言っても拒絶され続けているらしい。
ピトーが先程ちらりと口にしていたが、俺はこの部屋にマラヤーム王子の護衛を引き入れるのには反対だ。協会員は純粋な戦力だが、ウェルゲーは致命的な事態を引き起こしかねない。たとえ今後ビスケが彼を懐柔するとしても。
「……代わってください」
モモゼ王子が立ち上がり、ハンゾーから受話器を譲り受けた。ハンゾーは少し驚いたようにたじろぎ、俺の方へと近寄り声を潜めた。
「……モモゼ王子、少し変わったか?」
「二度も生命を狙われれば変わるだろうな。俺は良い方向の変化だと思っている」
「ああ、オレもそう思うが……」
少し話した後、モモゼ王子がハンゾーに受話器を差し出した。
「ビスケ様に代わっていただきました」
ハンゾーが礼を言いながら受話器を受け取り、ビスケと状況の確認を始める。
原作では、モモゼ王子の死をきっかけにマラヤーム王子の守護霊獣が急成長したのだったか。
モモゼ王子は殺されていないが、二度の襲撃の情報がマラヤーム王子にも伝わり、守護霊獣の成長を促したのかもしれない。原作の仕様をきっちりと覚えているわけではないが、同じように空間隔離系の能力を発現していると思われる。
ハンゾーが受話器を戻した。
「オレは一度検証のため1013号室へ戻ります。後でもう一度内線をお借りしたいのですが……」
「構いません。ところで、差し支えなければどのような情報を収集なさっていたのかお教え頂けませんか?」
「む。……仕事故に詳しくはお答えできませんが、壺中卵の儀についてのことやモモゼ王子を襲撃した犯人について調べておりました。ウェルゲーもセヴァンチ王妃も、王子同士の殺し合いなど信じていなかったのですよ」
それだけを言い残して、ハンゾーは去っていった。
モモゼ王子はそれを見送ってから、俺たちの方へ向き直った。
「修行の続きをお願いします」