ネフェルピトーに執着されるだけ   作:おいかぜ

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すんません、やるべきことが全然終わってないのでイチャイチャ増量は次からです……
 
 
 
 
 
 



二十話 水見式

【名前】ネフェルピトー

【系統】特質系能力者

【性別】女(原作では不明)

【年齢】生後約一年

【所属】ハンター協会 ■■ハンター/第12王子モモゼ=ホイコーロ外部嘱託護衛/元キメラアント王直属護衛軍

【性格】好奇心旺盛/好戦的/純心

【能力】

『幕見夢想(コッペリア)』放出系能力

 印を結んだ相手の、狩りの最中の視界を覗き見る。鼓動と大まかな方角は常時分かる。射程は事実上無制限。

 ただし『四次元マンション』など断絶された空間の内部は追えない。印はピトーにのみ外せ、逆方向にも結べる。現在はリグとの間で双方向に結ばれている。

 副次効果として、現在はリグとピトーのオーラが相互に混じりあっている。(絶のクローキング効果に弱デバフ)

 

 制約と誓約

 ・印を結んだ相手には、覗かれていることが伝わる。

 ・見られるのは「狩り」の間に限る。

 ・印を結ぶには、自身が傷を付ける必要がある。

 ・印の数には上限がある。

 

『踊屍不想(ミルタ)』操作系能力(半強制/強制型)

 人型の物体を操る。対象は生物、非生物に限定されない。

 黒い単眼の念獣が現れ、操り糸で対象を結ぶ。自動操縦と手動操作の両方が可能で、生者の『絶』や『凝』を強制するなど、オーラの操作も可能。

『玩具修理者』がないため、損傷した人形は補修できず、長持ちしない。

 

 制約と誓約

 ・操れるものは人型に限る。

 ・操るにはピトーが目視し、かつオーラが触れている必要がある。ただし操作開始後はその範囲に限定されない。

 ・念能力者は死体でなければ操れない。ただし本人の合意がある場合、または実力差が極端な場合は生者でも操れる。

 

『黒子舞想(テレプシコーラ)』操作系能力(自己操作型)

 自身を操る。頭上に操り手が現れ、糸で身体を吊る。思考と判断を省き、反射に振り切ることで速度と精度を極限まで上げる。学習した内容はリアルタイムで応答精度に反映される。

 


 

【三日目・昼】

 

 思い描く理想の同盟は、第3王子(チョウライ)を盟主とする連合だ。

 第3王子(チョウライ)、第5王子(ツベッパ)、第11王子(フウゲツ)、第12王子(モモゼ)、第13王子(マラヤーム)、第14王子(ワブル)。

 以上の六陣営は、八日目の晩餐会で生存している見込みが高く、緩やかな同盟が築ける余地がある。

 

 しかし上手くいくとは思っていない。原作では十二日目に特殊戒厳令が発令され、全ての部屋の制圧が始まった。それより早くなるか遅くなるかは不明だが、第1王子(ベンジャミン)の都合上、戒厳令はいずれ発令されるだろう。

 その際に各陣営は散り散りになり、連絡手段を失う。

 

 モモゼ王子のために今俺が進めておくべきことは、王位継承戦の中核に食い込みつつあるクラピカと縁を結んでおくことだ。モモゼ王子がどういう道を選んだとしても必ずプラスになる。

 

 そういうわけで俺は引き続きクラピカの念講習に参加していた。

 

「しかし参ったぜ。まさか護衛対象から締め出されるとは……」

 

 昨日まで参加していたベレレインテではなく、代わりに1013号室からはハンゾーが参加している。本体で情報収集に出たため、あえなく締め出されてしまったらしい。

 壁際で声を潜めて情報の共有を行う。第13王子(マラヤーム)の守護霊獣の能力は結局、原作通りであると結論付けても良さそうだった。

 

「どうせなら1012号室の護衛に戻って欲しいんだが」

 

「そういうわけにはいかねぇよ。1013号室の来客にも対応しなきゃいけないからな。それに、オレにゃもうその資格がねぇ」

 

「役に立つか立たないかだろう。信用は必要だが、義理が必要とまでは思わない」

 

「オレに合わせる顔がねぇのさ。それに、前も言ったが、オレの雇い主はセヴァンチ王妃だ。依頼主の命令に背くことはできない」

 

「そうか、残念だ」

 

 成功するとはもとより期待していなかったが、ハンゾーをこちらに引き込むのに失敗した。

 護衛を始めて思うが、二人じゃ足りない。ピトーの法外な体力によって、二ヶ月くらいはなんとかなる見込みがあるが、有事を考えれば彼女の体力を温存しておきたいのも事実。

 

 外部から護衛を引き入れるにも、現時点で交渉できそうな手札がほとんどない。ピトーは劇薬となり得るが、彼女を担保にすることは本末転倒だ。

 

 俺が現時点で考慮できるのは、オイト王妃の良心に付け込んだエリア14での同居……だがモモゼ王子は首を縦に振らないだろうし、クラピカからの信用もまだ足りていないと考える。

 

 まだ三日目、焦る必要はないが、俺が持っている知識は十二日目で尽きる。そこまでにアドバンテージを稼ぐには、これでも全く足りていない。

 

 1014号室では既に念の講習が始まっている。

 

 クラピカの指導内容は、先日に引き続き集団での瞑想と念に関する座学だ。この部屋の念能力者はクラピカとビル、バビマイナとヒュリコフ、そして俺とハンゾーに、隠しているロンギ。

 

 指導役をやるには人数が余っているので、俺とハンゾーの立ち位置は、指導の補助兼、第1王子の私設兵達が実力行使に出た場合の制圧役だ。

 

 しかし、こうして念の指導の現場に居合わせると、自分も修行意欲が湧いてくる。ピトーにボコボコにされてからかなり鍛え直したつもりだが、それでも念使いとしてはまだまだ途上。見上げれば見上げるほど、空は高い。

 

 とはいえ『練』の修行なんかをして参加者を威圧するわけにもいかないし、体力を消耗するわけにもいかないので、俺がこの場でやれるのはごく単純なオーラ操作の修行だ。

 

『凝』で偏らせたオーラを、身体のあらゆる部位に移動させる。ごく初歩的な『流』の訓練の一つだ。

 ピトーにオーラ量と速度で劣る俺がやり合うには、『流』の練度を上げることが肝要になる。

 身体能力もオーラ量も、俺がどれほど鍛えても彼女に及ぶことはないだろうから。

 

「……追加の護衛要らねぇだろ。アレだけでも釣りが来るってのに」

 

「守っているだけで生き残れるとは思えないな。守るよりも害する方がずっと易い。この部屋の面子でさえ、十二分に脅威だ」

 

 継承戦において、自分の野心の為だけに念能力を開発するとしたら、俺は暗殺向けの能力にするだろう。守護霊獣と念能力者に護られた王子を暗殺することは難しいが、不可能ではない。

 

 一方で王子を守り抜こうと思うなら、クラピカ並みの知性か、ピトー並みの暴力か、王子自身の力量が問われる。それこそ、配下一人の能力で王子を60日間生存させることを成し遂げるならば、ノヴの『4次元マンション(ハイドアンドシーク)』でも持ってこなければ安心できない。

 

「それはそうだがよ」

 

 練習は死者なく終わった。原作ではミュハン──第4王子(ツェリードニヒ)私設兵で小物っぽいやつが死んでいたはずだが、今日もクラピカに突っかかるばかりで元気旺盛だ。

 そろそろクラピカに追放されるだろうが、その後が読めない。ツェリードニヒに処分されるのが妥当な未来だろうか。

 

 1012号室に戻る前に、オイト王妃に声を掛けられた。

 

「モモゼ王子のご様子は? ……その、お元気ですか?」

 

「お変わりありません。今は念の修行に励んでおられます」

 

「そうですか……」

 

「なにか伝言でも?」

 

「いえ。必ず守って差し上げてくださいね」

 

「何があろうとも。……しかし、オイト王妃は宜しいのですか? ワブル王子にとっては政敵でしょう」

 

「そうだとしても、腹違いの娘です。心配するのにこれ以上の理由が必要?」

 

「……いいえ。個人的には、好ましく思います」

 

 オイト王妃とワブル王子を見守るクラピカの表情は穏やかだ。

 

 俺としても、オイト王妃がモモゼ王子を気にかけてくれているのは都合が良い。今のところ王妃の感情を利用する気にはなれないが、味方が多いに越したことはない。

 

 1014号室を辞し、1012号室に戻る。

 部屋ではモモゼ王子が『練』の鍛錬を続けていた。ストップウォッチは40分を数えている。修練2日目にして、もう中級者程度のオーラ量だ。『発』やオーラを操作する修行に入っても良い水準を超えている。

 

「講習はどうでしたか?」

 

「本日は死者もなく終わりました。トラブルメーカーはいますが、このまま念の修得までは進みそうですね」

 

「トラブルメーカー?」

 

「第4王子(ツェリードニヒ)私設兵の一人です。まあ、とは言え何もできませんよ」

 

 非念使いの受講者全員が団結したとしてもクラピカ一人の方が強い。

 

 それよりも、ピトーが水が入ったグラスを用意し始めたことが気にかかった。観葉植物の若葉を一枚拝借して、水に浮かべる。

 

「もう水見式をやるのか?」

 

「早いに越したことはないでしょ?」

 

「アリの速度で進められてもな……今回に限っては構わないと思うが」

 

 モモゼ王子が首を傾げる。テーブルの上にグラスを置いて、俺は念の系統についての解説を始めた。一度ざっと話はしていたが、こういうのは繰り返し覚えていくのが良いだろう。

 

 強化系、変化系、放出系、具現化系、操作系、そして特質系。大まかな得意不得意と、代表的な能力の例を示す。

 

 強化系は身体や武器の強化。脳を強化すれば思考が早く深くなり、治癒力を強化すれば怪我を治せる。もちろん、筋力を強化することもできるので、最も優れた系統と言っても過言では無い。

 

 変化系の本質はオーラの性質変化だ。火や電気、それから斬撃、摩擦、粘着。強化系や具現化系との相性も良く、正面戦闘とハメや初見殺しを両立しやすいのが長所だろうか。

 

 放出系はオーラを身体から切り離すことを真髄とする。単純な攻撃としては念弾を撃つ、念獣を作り出す、さらには瞬間移動もこの系統の領分である。移動、遠距離攻撃は大抵この系統に掠める。

 

 具現化系は文字通り物質の具現化が得意だ。単に特定の物質を出したり消したりするだけではなく、特殊能力を備えた道具を作り出すことができる。クラピカの鎖、トノグラのサーベル、カイトのピエロ。戦闘には向かないが、操作系に並んでピーキーで、ジャイアントキリングが狙える系統でもある。

 

 操作系はむしろ単純だ。物質や生物を操作するだけ。条件を満たせば格上でも操作することができるし、物質を操って器用な立ち回りもできる。具現化系同様、殴り合いにはあまり強くないが、自己操作系の奥の手で強化系と殴り合えたりもする。

 

 特質系はなんでもありだ。大抵は具現化系や操作系に並んで近接戦闘能力に欠けるが、身体強化に長けるやつもいる。それこそピトーは特質系と言いながら放出と操作を完璧に使いこなし、肉体強化も得手だ。既存の枠組みに囚われない特異性を持ち、他人の『発』を手に入れたり、与えたりする能力は大概この系統に該当する。

 

「水見式は、これらの系統を大まかに判別する最も簡便な方法です。このグラスに向かってオーラを練ることで、自分が最も得意とする系統に当て嵌る現象が起こります」

 

「能力は自分で設計できるけれど、資質によって制限がかかるということですね」

 

「その認識で間違いありません。ただし制限と言っても、得意とする手段が変わるだけです」

 

 念能力はアイデンティティであり、『手段』だ。目的や結果ではない。ハンターには大抵、目的があり、それを達成するための『手段』として念能力を作るが、目的のために最適な系統ではなくとも、似たような結果をもたらす手段はいくらでもある。

 

 木こりが斧で木を切るのに念能力を作るとして、別に系統はなんだって良いだろう。斧を自動で操作しても良いし、よく切れる斧を具現化しても良いし、斧や身体能力を強化しても、よく切れるオーラを纏わせても、オーラを放出して纏めて切っても良い。

 

 超限定的なシチュエーションに向けて能力を作ることはまずないし、それが必要になった場合は仲間を募った方がよっぽど効率がいい。

 物を運ぶ、調べる、移動する、探す、戦う、作る、手に入れる。その程度の大雑把な目的に対して、解答が一系統しか存在しないなんて状況はまず有り得ない。

 他人の『発』を奪いたい、という目的であればまあ、とは思うが……

 

 戦うのに強化系が最も向いていることに異論は無いが、強化系でなければ戦えないわけではない。全ては考え方と練度次第だ。

 

「強化系が望ましいです」

 

「ボクの予想は操作系かニャ〜」

 

「何故でしょう」

 

「キミの念獣が操作系だから」

 

 俺の予想は具現化系か特質系だが、どうだろう。本人の望みや深層心理と系統は必ずしも一致しない。

 

 モモゼ王子はグラスに手を翳し、オーラを練る。

 結果は──

 

「操作系、ですね」

 

「大当たり。ボクの目も悪くないみたい」

 

 葉がくるくると回っている。特質系の挙動は見られないし、操作系と見て間違いないだろう。

 

 そうなると、操作系能力が渋滞してきたな。俺もピトーも本職は操作系ではないのだが……

 

「……能力は焦らずにゆっくりと決めていきましょう。緊急事態故に無理やり念の修行を進めていますが、能力だけは慎重に決めるべきです」

 

「はい。しかし、操作系ですか……すぐには思い付きません。ピトー様も操作系、ですよね」

 

「ん、ボクは特質系だよ。あと、自分の系統や能力はバラしちゃダメだからね」

 

 思えば、ピトーは特質系らしい能力を何も持っていないな。原作であれば『玩具修理者(ドクターブライス)』がそうだったのだろうが、『幕見夢想(コッペリア)』は放出系が色濃い。

 

「操作系は分かりやすいよね。自動(オート)か手動(マニュアル)か。操るのは物か人か。人なら、自分か他人か。他人なら、心(要請型)か、体(半強制型)か、両方(強制型)か。人以外の動物って手もあるけど」

 

「そうなると、もう操る対象は決まっているようなものですね」

 

 モモゼ王子は箱に押し込まれた作りかけの編みぐるみに視線を落とした。

 今の状況では悪くない選択だ。王になった後に役立つ能力かどうかまで考える余裕は、正直ない。

 

「考えるのは自由ですが、組み立てるのは明日以降です。宜しいですね?」

 

「……わかりました」

 

 食事の用意をするためにキッチンへ移動する。

 能力一つで戦況が変わることはないだろうが、モモゼ王子の能力によってはずっと手が広がる。

 

 冷蔵熟成された魚の半身を取り出しながら、編みぐるみの人形を操ってはしゃいでいる二人の会話に耳を傾けた。

 

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