ローグライクダンジョンアタックもの   作:いとあと

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聖女 4

 

 

 竜が死んだ。

 振り分けたリソースが戻ってきて、それを知覚した。成る程、迷宮に挑む者達にとって竜のような単体での強者は然して問題にならないらしい。

 

 ──加減が分からん。

 

 かつての迷宮の記憶もあまり当てにはならないものだ。強力な魔物をぶつければ大体の侵入者は排する事ができるのではないのか。いや、こうなるから徒党を組ませないように立ち回っていたのか。 

 いずれにしろ竜を退ける程の英雄が相手であれば、分断させて囲んで叩くというやり方もどうせ意味などないだろう。

 攫ってしまえ、無意味だ、夢を見せて堕としてしまおう、手間ばかりだ、罠を使えよ、自ら相手してこそ主だろう、余計な事を、くどい──

 あいも変わらず煩わしい精神の衝突は、相反する策を浮かべては否定し、否定しては行動を縛ろうとする。

 

 ──次は、少しばかり工夫しようか。

 

 別に奴等が此処に辿り着くならそれはそれで良い。道中で我が血肉になるなら御の字だ。

 こちらが招いた訳ではないのだ。奴等が何を思ってこの迷宮に足を踏み入れたのか、そんな事は預かり知らぬ。

 極上の魂を喰らえと叫ぶ欲求も、ただ玉座に座していれば良いと言う諫言も、等しく我が内でぶつかり合う精神の戯言だ。

 故に、今度は趣向を変えた者を宛てがって機嫌を取ってやろう。

 迷宮の主が己の身の内すら卸しきれんとは度し難いが、偶にはこんな主がいても良いだろう。

 いずれ来る者達には知られたくないものだが。

 

 ──次も抗え。出来るなら其処で大人しくしていてくれ。

 

 組んだ足を解き、玉座の背もたれに身を預けて瞼を下ろした。

 

 

 

 ▶︎

 

 

 

「いえーい、お姉ちゃん!みってるぅー?」

 

 竜が倒れ伏す広場にて、妹ちゃんの元気な声が響く。

 自分の冒険を記録して冒険者君に見せてあげたい。そう言ってペンを手に取った妹ちゃんに、それならこれが役に立つかも知れないと、ぼくが姿映しの魔法を見せてあげたのが事の始まり。

 

 行商人から買ったというお守りを触媒にして、簡易的に組み上げた媒体をすごいすごいと興奮して受け取り、あれやこれやと弄り回したと思ったら我が意を得たりと言った様子で映像を撮りはじめた。

 うん、やっぱりこの子はかなり賢い。

 初めて、というか、未知のものに対して物怖じする様子が全く見られない。詳しい理論はさておき、これをどう扱ったら自分の目的を達成する事ができるのか。それを考えるのがとても上手いし、実行することに躊躇がない。

 それに、さっきまで戦闘が行われていた環境下、しかも下手をすれば命を失いかねない状況だったとしっかりと認識した上で、重くなりがちな空気を変えようとコミカルに振る舞える胆力。

 魔法使いだけじゃない、冒険者としての素養のひとつを幼い身に宿している。

 

「この竜はあたしとこの子で倒した。貴方の妹も、たくさん応援してくれた」

 

 ぼくの肩を組み、妹ちゃんに同調していぇーいと気の抜けた声を上げるエルフ君も楽しそうだ。

 迷宮の中でやることじゃないんだけどなあ、そう思いつつも、悪い気はしない。  

 

『昔も、こうやって勝利のあとは皆で喜んだもの』

 

 ?

 今、ぼくは何を思ったんだろう。

 

「魔法使いちゃん!ほら、こっちきて一緒にピース!」

 

 妹ちゃんに手を引かれて、エルフ君との間に挟まる。ぐいぐいと体を寄せられて、その姦しさに笑ってしまった。

 

「ここであれをやれば完璧。あの、前に迷宮を出る時に見せてくれたやつ」

 

 ああ、エンドロールの事かい?

 思えば、あれをエルフ君は当たり前のように言っていたけれど、ぼくに合わせてくれていたんだろう? 喜ばせるつもりが気を使わせてしまったね。

 

「ううん、それは違う。あれは、知ったかぶりだった。嘘をついてごめんなさい。でも嬉しかったのは本当」

 

 ふふ、そっか。それは良かった。

 あれを教えてくれた子に悪気があったのかは分からないけれど、そうやって喜んでもらえていたのなら幸いだ。

 冒険者君も、騙されてるぞって指摘はしてたけど悪い気はしないって言ってくれたし。

 

「あれってなーに?私、気になる」

 

 じゃあ、折角だからやってみようか。

 今回は階層をクリアした訳じゃないけど、折角の記念だ。迷宮に余計な刺激を与えないように少し控えめだけど、楽しんでおくれ。

 

 そして、ファンファーレが広場に鳴り響いた。

 

 

 

 [ドラゴンを討伐した!]

 

 ◀︎リザルト▶︎

【ダンジョン】

・門の迷宮

 

【ステージ】

・月下の城下街(ノーマル)

 

【キャラクター】

剣士(女) エルフ Lv.100

【装備】

・聖剣II ⭐︎

【技能】

・剣士 Lv.30(MAX)

・魔眼 Lv.25

・達人 Lv.28

・戦上手 Lv.10

・コウボウフデヲエラバズ Lv.15

 

見習い聖女(仮) ヒューマン Lv.5

【装備】

・魔法のお守り ⭐︎⭐︎

【技能】

・女は度胸! Lv.11

・セイレーンの卵 Lv.8

・鉄の意志 Lv.15

・お転婆娘 Lv.7

 

魔法使い 管理者 Lv.???

【装備】

・なし

【技能】

・魔法 Lv.30(MAX)

・管理権限 Lv.???

・迷宮の叡智 Lv.25

 

 

【討伐ボス】

・火を吹く竜(特殊個体)

 

【イベントスチル解放】

・vs.大怪獣

・束の間のお楽しみ

 

【インフォメーション】

 おめでとうございます!

 レアボス《火を吹く竜》を討伐しました。

 報酬として《お守り》を《魔法のお守り》にアップグレードいたしました。是非ご活用下さい!

 

 

 

 

 はぁ、はあ、どうだい。満足したかい?

 地味にこれ疲れるんだよ。魔力はいいとして演出がちょっと苦手でね。

 

「すごい!天才!」

 

「うむうむ、やっぱりこれだね」

 

 束の間の休息は、思わぬ形でそれぞれの距離を縮めてくれたようだ。

 はしゃぐ二人を見て、こんな迷宮探索も悪くはないなって思う。──ここに冒険者君もいたら最高なのになあ。

 少し感傷に浸って、決意を新たにする。

 ここに冒険者君も加えるんだ。その為にぼくの持てる全てを賭けよう。

 今度こそ、ハッピーエンドを迎えるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【Tips】

《ファンファーレ》

・悪名高い門の迷宮、その数少ない帰還者の手記を調べると、ある特定の期間に於いてのみ軽快な音楽が彼等の帰還を祝福していたらしいと知ることができる。

 幾つかの資料によると、門の迷宮に現れる少女の幻影が関係していると思われるが、この少女の正体や目的に関してはあまりに多くの説がある為、ここに明言する事は避ける。

 少女に関しての考察は、迷宮遺構群研究の第一人者、研究家のアルバード・ジョルジュ氏著『門の迷宮と少女』を参照されたし。

 

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