もはや”雷帝の遺産”なんて言えばなんでも出てくるでしょ 作:らんかん
◻️チーム・シャンバラ
ゴスペル……雷帝の遺産の一つ、遺跡ハンターのAI。
◻️チーム・ザッハーク
◻️センチメンタル・ライン・ネイションズ
エンデライヒ……雷帝の遺産、人工生命の短命種。
ライメイとチーム・シャンバラは、行動を共にすることになった。
楽しいピクニック、と形容することで慰めになると言うレベルで、忙しい戦いの渦中へと踏み込んだことになる。
「こいつらどっか湧いてきてんだ!? ここ連邦生徒会の管理区画だよなあ!?」
「装備が旧式なのもあるのでぇ、きっと誤魔化す気満々でしょうねえ。ただまあ、戦車とかはもっとゲヘナ側の戦場にあると思いまぁす」
「全員倒すしか無いか!」
すでに有無を言わさず殴りかかってきている奴らに、それぞれが対応する。
シシュウへ寄ってくる敵は【雪霰】のストッピングパワーを利用して相手の移動を遅れさせつつ動きを見出してつっかえさせることで対応し、そこに【雷雨】の一撃を撃ち込んで撃破を行う。雷帝政権下で行われてきた偉大なゲヘナの一環、SRTにも負けない軍隊的な動きの教育の少しは覚えている彼女の攻撃は少なくとも愚連隊に堕ちてしまった悪魔や同調する少女達には効果があった。
ナダレへと攻め込む敵は、彼女を甘くみくびっていた。ろくな武器もない上に、トリニティの汚れのない少女は相当弱く映ったのだろうが、ハンターとしてつけた体力は彼女達を優に上回っていて、銃を構えて撃とうとするタイミングには翼が目の前に舞い降りて鳩尾を拳で抉り、喉元を爪で押し込み、えずいたところで回し蹴り。ダウンした相手をそのまま引っ張って即席の鈍器として扱い周辺の人間を蹴散らすことで血反吐の色が付く。
「チーム・シャンバラは遺物頼りのチームじゃなかったのかよぉ!」
「貴様らのせいでそうじゃなくなっただけだ! ありがとうな、踏み台になってくれてよ!」
ゴスペルは表に出ず、カメラについていたフラッシュで惑わすことでサポート。ローエングリンも装甲車から人形形態で飛んできて、10本の対物ライフルで周囲を撃ち牽制とダウンを狙う。
「おいどうするんだよっ! ボスはチーム・シャンバラを狙えって!」
「出来ないなら遺産すら持っていないザッハークの……ッ!?」
「さよぉならぁ」
不躾者の不良達は、ライメイに狙いを変えようとした時点で後悔することになった。
彼女はチーム・ザッハーク。遺産ハンターのチームの中で最大手で悪辣、遺産の奪取さえ厭わないチームの司令官。
そんな奴が遺産を一切持たないなんてことは基本ないが、それでも持たないと言うのであれば______
意味するところはただ一つ。
「私はこう言う武器の方が得意でぇ、あなた達のようにぃ、人数や力任せで戦ってないんですよねぇ」
反論しようとすれば飛んでくるのは対物刀。
いつか彼女自身が口にした通りこれは巨大なギプスカッターみたいなもので、人間の肌を切れるものではない。
逆を言えば人肌以外なら大抵切断できる!
「刀っていうのは随分と古典的ですよねぇ」
太刀筋にある服もネックレスも銃も、全部綺麗さっぱり、切断面に荒れが一切出ないままに斬られては戦力を奪われる。
「なっ?」
「逃げますかぁ?」
「舐めるな、武器が無くなっただけだぁー!」
不良の言い分も合っている。
武器が無くなったところで銃で死ぬ世界でなければ肉体が生きている以上は戦える、これは常識になっていたが常識をしっかりと理解した上で取れるということは相当戦ってきたと伺えた。
が、この話は残念そんな燻銀が活躍するほど老朽化したロマンの上にない。
「あ」
「刀は確かに切れませんけどぉ、じゃあ
ライメイの民主刀と共和刀が襲いくる不良の喉を挟み込むように強打する。
神経に対するダメージが大きく当たった瞬間に視界が白黒になり、その状態で泡吹いて気絶した不良の頭頂部に強く殴打することでダメージを確実に蓄積。
「あなた達は馬鹿なのでぇ、知らないと思うんですけどぉ、あなた達と同じ力を持った人間がぁ、鉄塊を持って殴打すればぁ、全然死の淵までお連れできますよぉ」
刀を持っている人間がいないので分からぬ話だろうが、当然こういった刀剣やそれに近い打撃武器には太刀筋というものがある。
真っ直ぐ振ることができるということはそれ即ち”コントロールが完璧”であり、コントロールの完成度は”心技体の合致”に起因した。
「ひ、ひぃっ!」
「まあ、殺しはしませんけどねぇ」
下手すればチーム・シャンバラの連中に倒されていた方が幸せだったと思うだろうその光景は、もはや鬼神と飾るにはあまりに血生臭く、剣士と名乗るには敵は醜く、そして少女と名乗るにはこの戦いに身を費やす時の顔に優しさがなかった。
さて、戦車を使わないにしろ人海戦術かつゲリラ戦術で追い詰められている彼女達。少数精鋭かつほぼ即席のチームでの電撃作戦は難しいが、突破しなければ状況も改善しない状態。
「どうする、ライメイ!」
「雷帝の遺産も宝具もやっぱりこれを蹴散らすには至りませんねぇ……結局大火力を指向できるのが【雷雨】しかないのでぇ」
困ったところはお互い様。
だが、彼女達の勢いや容赦の無さにこの不良達は恐れ慄いている。
宝具を容赦なくぶん回して倒してくるやつ、徒手格闘があまりにも強すぎるやつ、刀の扱いが妙に手慣れてる上に凶悪な殴り合いすら辞さないやつ。
このままいけば相手が恐怖で逃走、もし逃げなくても連邦生徒会直下の治安組織が飛んできて包囲戦を仕掛けることも容易だと考えていた。
________ただ、それは否定されることになる。
あちこちから鳴っている銃声は止み、飛んでくる銃弾は消えて、そして静けさを取り戻す頃。
「フハハハハ!」
「なんだ!」
「ようやくピースが揃ったぞ、待たせたな下民共!」
不良達の一斉に沸き立つ声。
ビル街の間を縫うように飛び、降りてきた悪魔。
翼は六つ、角も六つ、尻尾でさえも六股。
そして核に焼かれたような光の焼け付く黄金色の髪をした少女。
「おやぁ? 見慣れない顔ですねえ」
「当たり前だ。敵前に姿を見せるのは、これで初めてだからな」
悪魔は降り立ち、宣う。
「私はエンデライヒ、意訳するなら黄泉の国みたいなものだと思ってもらって構わない」
「首謀者か。なんのつもりか知らないが、さっさと帰ってもらおうか!」
シシュウが【雷雨】の引き金を引き、ビームを撃つが効かない。
彼女の周りで霧散し、その粒子が周りを少し焼き付けるだけ。
「なっ!?」
「雷帝の宝具か、お前のような奴の手に渡る時代……平和になったものだな」
「そう思える理性があって、何故こんなことをする!」
「平和というフェーズを挟まなければ進化できないとは、神というのは随分落ちぶれた。それで世界の創生を欺瞞するとは、熱的死すら人に授けられぬ上に天動説という誤った流布さえする神々にとってはいい末路ではないか。少女の枷というのはな」
言っている意味は分からないと【雷雨】と【雪霰】を向けるシシュウ。
が、己を黄泉と騙る者にそれは恐怖ではないようだ。
「何が目的だ」
「話に入る前には見せておくものがある」
エンデライヒは後ろの不良に抱えさせていたものを渡されて、そのまま転がす。
白い翼に白い髪、そして大人になろうとするほどの大きさ。
「あの人は」
「お姉様ッ!」
虚遣 クズレ。
シシュウにとっては友人の愛すべき隣人であり、ナダレにとってはずっと近くにいてくれた姉。
まだ周りを見れている前者に比べて、歯止めが効かず走り出す後者に鋭い光が一つ。
「はぁい、ストップ」
急いで近寄ろうとするナダレを、刀の鋒を喉に引っ掛ける寸前まで近づけて止める。
「止めるなッ! 自分の、僕のお姉様なんだッ!」
「なら尚更落ち着きなさい」
ライメイの間延びしない声。
「遺産ハンターではなく人として、冷静に周りを確認し、出来ることをやり抜く。シシュウを見習うのです」
ナダレがハンターになった日から、共に戦ってきた親友。
サブアームとメインウェポンをしっかりと構え、若干CQCという格闘寄りの動きに寄せれるようにしてるのは若さが出るところだが、それでも一切の震えはなかった。
「ライメイ」
「ああ、そうだ。落ち着け」
敵であるエンデライヒからも、宥められている。
「なんで貴女までぇ?」
「私と会話するべき人間が落ち着いていないのは困る。それに、当然だが虚遣 クズレは死んでいない。死んでいたら意味はない」
「……話って何」
家族を奪われかけていて気が気でないからか、上流階級出身にしてはえらくぶっきらぼうな態度を取るナダレ。
ただ、視線や体の姿勢は間違いなく臨戦態勢を取り、先ほどまでの焦りによる崩れは感じない。
「お前達に読ませた
「あの水銀を飲ませようとした生簀かない奴ですねぇ」
「様子を見るに飲んでないようだな、誰も。宝具にたどり着くだけはある」
近くにやってきた戦車の砲塔に腰掛け、彼女は続ける。
「あれはナノマシンの計画であり、推測するにお前達は『ナノマシンの管理には設備がないから杜撰』であり『あの手の政治計画書においては保管してある場所が不自然』として偽物と罠を見抜いたと思う。そう仕向けたというのは不快な言い草だが、逆を言えば見ず知らずの人間の意図を分かるほど優秀だった」
エンデライヒは、今目の前にある宝具とそれを持った者達を見下ろす。
「だがあれ自体には意味はない。燃やしてくれても構わなかったものだ、仮にデータが残っていてもそれを再現する技術力もないだろう」
「では何を?」
「何故、虚遣 クズレを攫ったか。それが全ての答えだ」
指したのはナダレ。
「ナノマシンの管理も、計画書も、全ては極秘計画なら露呈しないように一個の場所に置いてあるはずだ。わざわざ別にする意味はない。ならば、だ」
「……」
「それは”すでに”持ち出されたことになる」
「持ち出したのが、ナダレってことなのか……!?」
頷くエンデライヒの顔は、その高慢さの割にはあまり侮蔑を伴ってない。
「ナノマシンは当然遠隔操作をする為のもので、そうして設計されたものを監視できないような状態にする訳はない。しかもあの雷帝が、だ」
「ナダレ!」
「……隠し通せる訳はないと、思ってたんだけどね。まさかそこまでお見通しで、しかも見通せる努力をしてたなんて」
言い当てられた少女は羽を少しばかり動かし、若干の諦観を含んだ笑みを見せる。
「そうだよ、シシュウ」
「自分が