そしてとうとう屑レウスの二つ名命名のときが来た…。
この時を待っていた…!
実家の巣に降り立つ。
かつて俺の小さな身体を包み込んでくれていたあの懐かしい空間は、今はただ、冷たい風が吹き抜けるだけの虚しい廃墟と化していた。
お袋の姿は……やっぱり、どこにも無い。
当然だ。あの狂暴で執念深いハンターだ。親父を狩ったのなら、その隣にいたはずのお袋だって、とうに狩られて装備の材料にされているに決まっている。きっと別の羽虫が持っているんだろう…。
「グルル……」
足元に残るかすかな死臭を辿りながら、俺は巣のさらに奥へと進んだ。 幼少期、俺が親父とお袋の大きな翼に挟まれて、ぬくぬくと眠っていた思い出の寝床。
そこに視線を落とした瞬間、俺の心臓はドクンと冷たく跳ね上がった。 そこにあったのは、いくつもの、とても小さな飛竜の骨だった。
(これは……)
まだ鱗もまともに硬くなっていないような、ひどく脆くて小さな骨。
間違いない。あの巣立ちの日、俺を追い出すようにして自立させた後、親父とお袋の間に新しく産まれた……俺の、まだ見ぬ弟や妹たちだ。
骨の周りには、争った形跡も、他の大型モンスターに喰い荒らされた痕跡もなかった。
ただ、寄り添い合うようにして、静かに転がっている。
「……そっか。飯が、来なかったんだな」
親父たちが人間に狩られて、二度とこの巣に戻れなくなった。まだ自分で飛ぶことも、狩ることもできないこの子たちは…ただ、ここで親の帰りをずっと待ち続けていたのだ。
何日も、何日も。 お腹を空かせながら。ひもじくて、寂しくて、苦しくて……それでも親を信じて、ここでじっと鳴き続けて、そのまま餓死していったのだろう。
「可哀想に……」
俺はそっと、小さな骨に自分の大きな翼を重ねた。 この子たちの生涯の短さを考えると、胸の奥が激しく締め付けられる。骨の大きさからして、今の俺の巣で「ママ〜お腹すいた!」と元気に駆け回っている俺の子どもたちよりも、ずっと、ずっと幼い年齢で亡くなったはずだ。
……もし、俺がもっと早く実家の様子を見にきていれば…!
……もし、俺がこの子たちの存在を早く知っていれば!俺が代わりに肉を運んで、いくらでも育ててやれたのに…!!!
「ごめんなぁ……気づいてやれなくて」
喉の奥が熱くなり、俺は小さな弟妹たちの遺骨を愛おしそうに鼻先でつついた。 さっき仕留めたハンターどもへの怒りが再びふつふつと沸き上がり、全身の鱗を逆立たせる。
人間どもめ……貴様らが『クエスト』と称して娯楽のように命を奪った結果、その裏でどれだけの小さな命が、誰にも知られず惨めに消えていくか、想像したことすらないのだろう。
俺はしばらくの間、静まり返った実家の巣で、最期までひもじさに耐えた弟妹たちのために静かに黙祷を捧げた。
………そっと閉じていた瞼を上げ、俺は静かに身を起こした。 黙祷を終えた俺の胸の奥から湧き上がってきたのは、先ほどまでの比ではない、文字通り身を焦がすほどの殺意の炎だった。
親父を殺され、お袋を奪われ、そしてまだ何も知らなかった無垢な弟妹たちを、飢えと絶望の中でなぶり殺しにされた。
これが、人間どもがこの世界に撒き散らしている『生業』の正体だ。
「グルルルルル……!」
喉の奥から漏れる音が、怒りのあまり超高熱の爆音へと変わっていく。
………ドクンっ……ドクンっ……ドクドクンっ……ドクドクンっ!
心臓の鼓動が……止められねぇ……熱い………!
だめだ!俺は……この狂気じみた炎を抱えたまま、愛しい妻たちや可愛い子どもたちが待つあの巣に帰るわけにはいかねぇ!こんな凶悪な殺気を纏って戻れば、子どもたちを怯えさせ、レイアたちに余計な心配をかけるだけだ!
せめて…せめてこの胸の炎を完全に鎮火させてからでないと、俺は我が家へ帰れない…!
だから……鎮火しに行くことにした。
俺の家族の未来を脅かす、汚らわしい人間どもの……
血という名の水によってなぁ!
実家の廃墟を蹴り、俺は猛烈な勢いで大空へと飛び立った。 雲海を切り裂き、向かう先はもう、最初から一つしか残されていない。
あの羽虫どもが群生し、毎日大した理由もなくモンスターの命を奪う作戦を立てている本拠地。人間の街とハンターギルドだ!
(ごめんな、みんな。約束を破って……少しだけ、帰るのが遅くなりそうだ)
俺を待つレイア、サクラ、ミツネ、ゼクス、ナルガ、ティガ、ベリー、そして愛しい子どもたちの顔を脳裏に浮かべ、俺は心の中で深く謝罪した。
……待っていろ、人間ども。
お前たちが俺の逆鱗に触れ、両親と弟妹達を全滅に追い込んだ代償がどれほど重いものか、お前たちの街ごと、その傲慢な歴史ごと、俺の劫火で跡形もなく焼き尽くして教えてやる。
俺は地平線の先にある人間の街を瞳に捉え、大空を滑空し始めた。
◆
パキパキと、静まり返った街の入り口で、装備の革が擦れる音だけが響いていた。 見上げれば、空を埋め尽くすほどの大量の飛行艇と、川を埋め尽くす船の群れが、人々の悲鳴とざわめきを乗せて遠ざかっていく。
避難は完了した。あの一糸乱れぬ撤退劇は、ギルマスの最後の意地だったのだろう。
誰もいなくなったゴーストタウンの境界線。俺は壊れたバリスタの木枠に腰掛け、遥か彼方から飛来するあのリオレウスを見つめていた。
「……はは、結構な人数の大討伐部隊だったはずなんだがなぁ」
奴の後ろの空には、連れ立って飛ぶ7頭の嫁たちの姿はまだない。
つまり、ありゃ全滅だ。それも、あのレウスたった1頭に、だ。 嫁の同族装備で煽られた瞬間、他の雌たちが動くよりも早く、奴が単身で部隊を蹂躙し、文字通り塵一つ残さず消し炭にしたのだろう。
ま、分かりきっていたことだ。
しかし……こうして双眼鏡越しに迫り来る影を見ていると、ふと、数年前のあの出会いが脳裏をよぎる。
巣立ち直後で若く、愚かで弱い小さなリオレウス。それが今や、大討伐部隊を蹂躙し、世界を滅ぼす災厄のオーラを放つほどにデカくなったもんだ。
「二つ名を付けるなら……か」
俺はふと苦笑し、手帳の最後の白紙のページを開いた。 ハンターギルドの慣例だ。
このレベルの驚異には、畏怖を込めた固有の名を付けねばならない。
「『黒炎王』はあいつの父親だから付けるわけにはいかないだろ? 黄金の瞳、『日輪王』…いや、あいつには格好良すぎる。もっと似合う不名誉な二つ名があるはずだ。そうだな………あ。こいつはどうだ?」
俺はペンを走らせ、力強くその名を書き殴った。
「くっ……! 我ながら、最高に傑作なネーミングかもしれん!」
誰もいない戦場で、俺は声を上げて笑った。7頭の狂暴な雌たちを満足させ、終わらない繁殖期を生き抜き、さらに強くなった雄。これ以上の名は世界中どこを探しても無いはずだ!
――ズゥゥゥン……ッ!!
凄まじい風圧と共に、赤黒い炎を吹き荒らすレウスが俺の目の前、わずか十数メートルの距離に轟然と着地した。
周囲の建物がその熱波だけで黒く焦げていく。
レウスの目は、怒りと憎しみで燃え上がり、今にも俺を焼き殺さんと殺意を剥いていた。
時間稼ぎとは言った。
だが、戦った所で俺の実力じゃ1秒も持たない。
…俺は英雄じゃないからな…。
…大剣を構えた瞬間に灰にされるのがオチだ。
だから、俺がここに残って何をしようとしているのか……それは、ハナから一つしかなかった。
俺は背中の大剣を、ゆっくりと地面に置いた。両手を広げ、敵意が無いことを示す。 あの、異常なまでに人間臭いレウスのことだ。家出をして、不倫をして、胃を痛め、妻たちに頭を下げて生きてきた、あの感情豊かな女誑し野郎のことだ。
世界中の誰も信じない、奇跡のような一部の望みを賭けて。 俺は、この『空の王者』と――「対話」をしようとしていた。
俺は一歩、前に踏み出した。奴の鼻先から漏れ出る火の粉が、俺の防具をチリチリと焼く。 俺の…いや、あいつの生涯のファンとしての、命懸けの交渉が幕を開けた。
心臓が、鼓膜を破らんばかりに跳ね上がっていた。
全身の毛穴から冷や汗が噴き出し、指先は小刻みに震えている。
恐怖はある。当たり前だ。
今すぐ逃げ出したい。
死にたくない。
生きて、またあの美味いアイルーキッチンの猫飯を食い、小説の印税で浴びるほど酒を飲みたい。
――だが。 それらの生存本能、生への執着、生物としての恐怖。
その全てを遥かに置き去りにするほどに今の俺の脳を、魂を支配していたものがあった。
それは、どうしようもないほどの……
一方的ではあるが、奴の酸いも甘いも、不倫も修羅場も軟禁も…全てを最前線で見守り続けてきた長い付き合いだからか、それとも、あの狂暴なモンスターの身でありながら、どこまでも人間臭く、不器用で家族をこれ以上なく愛情深く見守り続けてきた『レウス』という一人の漢に、ハンターとして、男として心底惚れ込んでいたからなのか…自分でもよく分からない。
だが、その狂った親愛の情が、この絶望の戦場で奇跡的な最適解を引き当てた。
「よぉ……久しぶりだな」
◆
人間の街が近づくにつれて、俺は奇妙な違和感に気がつき、上空で旋回しながら目を細めた。
おかしい。 無数の建造物がひしめき合う巨大な拠点のくせに、人間の気配が……まるでないのだ。
(嘘だろ……たった一匹しかいない……?)
あれほどの大部隊を送り込んできた街だ。何千、何万という羽虫どもが巣食っているはずなのに、生命の鼓動がたったの一つしか感じられない。
まさか、俺があの大部隊を蹂躙し、実家で黙祷を捧げている時間に、街の全員が荷物をまとめて逃げ終えたというのか?実家から人間の街はかなり離れていたとはいえ、往復して戻ってくるまでの時間で逃げ去ったというのか?!
「グルルルルル……っ!」
ならば……俺のこの、身体ごと焼き尽くさんばかりの殺意の炎は、一体どうやって鎮めればいいんだ!
怒りの矛先を失った俺の脳細胞が、再び狂気で沸騰しかける。 これ以上、俺の家族の平穏を脅かさせないために、すべてを灰にするつもりだったのに…!
行き場のない憤怒を抱えたまま、俺は街の入り口にただ一匹でポツンと立ち、俺を待ち構えていた最後の羽虫の元へと轟音を立てて舞い降りた。
せめて……こいつの血で、この炎を僅かでも鎮めてやる……!
そう考えて、俺は殺意のすべてをその一匹に集中させ、喉の奥に熱を溜めたにした。いつでも肉片一つ残さず焼き滅ぼせる間合い。
しかし――目の前の羽虫は、俺の圧倒的な威圧を前にしても、逃げ出すどころか怯えもしなかった。
それどころか、おもむろに背負っていた大剣を地面に置き、両手をゆっくりと挙げたのだ。 それは、明確な「敵意がないこと」を示す降伏のポーズだった。
(……だからなんだというんだ! 敵意がなければ殺さないとでも思っているのか!)
俺の家族をめちゃくちゃにした人間に、いまさら情けをかける理由などどこにもない!そう思って劫火を吐こうとした……のに、俺はなぜかピタリと止まり、劫火を吐くことができなかった。
なぜか?
その人間が、あまりにも気の抜けた、それでいてどこか懐かしい声でこう言ったからだ。
「よお……久しぶりだな」
倫
?
絶
王
突如として鼓膜に飛び込んできた、あまりにも意味不明で、かつ不名誉極まりないその単語。
そいつが俺に向けていたのは……死を前にした絶望でも、張り詰めた殺気でもなく、信じられないほどの純粋な「親愛」の情だった。
それと同時に、俺の脳裏に、今までのカオスすぎる光景が浮かび上がる――最初にサクラの腰を倫砕き、次にレイアとミツネの腰も砕いた。その次にゼクスを雌落ちさせ、ナルガを不倫交尾で妊娠させた。そしてティガに俺から襲いかかり、ベリーのヒモになって、ティガとダブルで既成事実を作った。その情景が、その単語一つで一フラッシュバックした。
(待て…絶倫王ってなんだ!誰がそんな恥ずかしい二つ名で呼べと言った……!)
あまりの困惑と羞恥心に、身を焦がしていたはずの殺意の炎が、シュウゥゥ……と音を立てて一気に鎮火していく。
とんでもない角度から飛んできた言葉のせいで、俺の頭には急速に、冷徹なまでの理性が戻ってきてしまったのだ。
「………お前……誰だ?」
俺は喉を鳴らし、両手を挙げたまま苦笑いしているその奇妙な人間の顔を、まじまじと見つめ返した。
結構、語呂が良くないですか?『絶倫王』
最も不名誉で最も似合うと思いませんか?
是非とも皆様でしたらどのような二つ名を付けるか教えて欲しいですね。
それともう一つ…父親の素材で作った装備は王が持っていた。ならば母親の素材を使った装備は誰が持っているか…?
黒炎『王』は王が身につけていた…。
紫毒『姫』は…さぁ、誰が持っているんでしょうね…。なんとなくですけど、ものすご〜くワガママな人物が持っている気がするんですよね〜…。
ではもう一つアンケートを。この中なら次は誰がいいですかね?
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〇欲復活・護龍アルシュベルド
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ジュースにされた・レ・ダウ
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ナニしても起きない・エスピナス
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嫉妬深い・レイギエナ
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体格差・ホロロホルルとトビカガチ