レスリングスライムが現れた!【マットの上では格は不要!】   作:ヒツジ(ラム肉

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――前回までの『レスリングスライムが現れた!』!!

第六章!!

拳闘家はなぜロープを走った?

昨日の拳闘祭王者!!

エルフの賢者!!

対する!!

大型スライム!!

ぷるちゃん!!

拳!!

蹴り!!

投げ!!

組み!!

寝技!!

総合対総合!!

だが!!

試合の途中!!

賢者は気づいた!!

追撃できる!!

なのに待つ!!

避けられる!!

なのに受ける!!

止まれる!!

なのにロープを走る!!

「なぜだ?」

現地レフェリー!!

誰にも教わっていない!!

それなのに!!

「ロープ!」

「ワン!」

「ツー!」

場外カウントまで始めたァァァァ!!

賢者
「この試合に場外カウント規定は?」

レフェリー
「……ない」

「では、なぜ数える?」

「分からない」

それでも!!

「フォー!」

観客まで!!

「ファイブ!」

「シックス!」

誰も知らない!!

誰も教わっていない!!

なのに!!

全員が!!

「そういうものだ」

と思っている!!

そして!!

毎回いる!!

木製漏斗の実況!!

賢者
「名前は?」

実況
「…………」

「そんなことよりィィィ!!」

興行主
「誤魔化した!?」

誰が雇った!?

知らない!!

どこから来た!?

知らない!!

それでも!!

試合中は!!

確かにそこにいる!!

賢者。

ついに。

白い先割れスプーンを指す。

「問題は」

「このスライムではない」

「それだ」

だが!!

試合は!!

まだ!!

終わっていない!!


第30話 『ここで負けるのが、一番美しい』

賢者。

 

構える。

 

ぷるちゃん。

 

「ぷる」

 

リング。

 

中央。

 

距離。

 

三歩。

 

賢者の目は。

 

もう。

 

ただの対戦相手を見る目ではない。

 

観察。

 

検証。

 

警戒。

 

そして。

 

それでも。

 

ほんの少し。

 

楽しんでいる。

 

「……厄介だな」

 

ぷるちゃん。

 

「ぷる?」

 

「異常だと分かっている」

 

一歩。

 

前。

 

「それでも」

 

もう一歩。

 

「試合を続けたいと思っている」

 

興行主。

 

リング脇。

 

「それも影響なんですか?」

 

賢者。

 

「分からない」

 

そこで。

 

笑った。

 

「だから確かめる」

 

踏み込む!!

 

右!!

 

ぱん!!

 

ぷるちゃん。

 

ぐに!!

 

受ける!!

 

左!!

 

掌底!!

 

どん!!

 

ぷるちゃん。

 

身体。

 

揺れる!!

 

そのまま。

 

賢者。

 

組む!!

 

ぷるちゃん。

 

巻く!!

 

互いに。

 

重心。

 

探る!!

 

実況。

 

「さあああああ!!」

 

「最後の投げ合いだァァァァ!!」

 

賢者。

 

右。

 

ぷるちゃん。

 

左。

 

賢者。

 

足。

 

入れる。

 

ぷるちゃん。

 

身体。

 

広げる。

 

支点。

 

消す。

 

賢者。

 

「なら」

 

身体。

 

押す。

 

潰す。

 

疑似的な胴。

 

作る。

 

ぷるちゃん。

 

「ぷる!」

 

賢者。

 

抱える!!

 

持ち上げる!!

 

観客。

 

「上がったァァァ!!」

 

ぷるちゃん。

 

空中。

 

身体。

 

伸びる。

 

賢者の背中。

 

回る。

 

「!」

 

賢者。

 

投げる!!

 

同時。

 

ぷるちゃん。

 

巻く!!

 

ぐるん!!

 

二人。

 

回る!!

 

実況。

 

「どっちが投げているゥゥゥゥ!?」

 

ドォォォォォン!!

 

マット。

 

揺れる。

 

賢者。

 

背中。

 

ぷるちゃん。

 

横。

 

二者。

 

転がる。

 

観客。

 

総立ち。

 

賢者。

 

即。

 

起きる。

 

ぷるちゃん。

 

戻る。

 

「ぷるるるる!!」

 

賢者。

 

「まだか!」

 

笑う。

 

前。

 

組む。

 

今度は。

 

ぷるちゃん。

 

先。

 

身体。

 

賢者の腰。

 

包む。

 

ぐっ!!

 

持ち上げる。

 

賢者。

 

「ほう!」

 

ぷるちゃん。

 

後ろ。

 

反る!!

 

ドォン!!

 

賢者。

 

投げられる!!

 

受け身!!

 

背中。

 

マット。

 

だが。

 

そのまま。

 

両脚。

 

ぷるちゃんの身体。

 

挟む。

 

引く!!

 

ぷるちゃん。

 

前。

 

倒れる!!

 

賢者。

 

回る!!

 

上!!

 

「ぷる!?」

 

実況。

 

「返したァァァァ!!」

 

賢者。

 

押さえる。

 

レフェリー。

 

滑る。

 

「ワン!!」

 

ぷるちゃん。

 

身体。

 

薄く。

 

抜ける!!

 

賢者。

 

追う。

 

ぷるちゃん。

 

ロープ。

 

身体。

 

当てる。

 

ばいん!!

 

戻る!!

 

賢者。

 

見る。

 

「……」

 

一瞬。

 

考える。

 

止める。

 

足場固定。

 

カウンター。

 

全部。

 

可能。

 

なのに。

 

自分も。

 

走る。

 

反対。

 

ロープ。

 

ばいん!!

 

戻る!!

 

賢者。

 

もう。

 

驚かない。

 

ただ。

 

記憶する。

 

「やはり」

 

ぷるちゃん。

 

来る。

 

賢者。

 

跳ぶ!!

 

膝。

 

いや。

 

そのまま。

 

身体。

 

捻る!!

 

肩。

 

ぶつける!!

 

ぷるちゃん。

 

ぐにゃ!!

 

観客。

 

「おおおおお!!」

 

賢者。

 

着地。

 

自分。

 

見る。

 

「今の技も」

 

「私は知らない」

 

実況。

 

「知らない技で戦っているゥゥゥゥ!!」

 

興行主。

 

「笑えなくなってきたな……」

 

ぷるちゃん。

 

「ぷる!」

 

反撃。

 

質量打撃!!

 

賢者。

 

受ける!!

 

バァン!!

 

後ろ。

 

ロープ。

 

ばいん!!

 

戻る。

 

今度は。

 

自分から。

 

ぷるちゃん。

 

抱える!!

 

観客。

 

ざわ。

 

賢者。

 

腰。

 

落とす。

 

ぷるちゃん。

 

浮く。

 

「ぷる!?」

 

実況。

 

声。

 

裏返る。

 

「また上がったァァァァ!!」

 

賢者。

 

一歩。

 

二歩。

 

そして。

 

後ろ。

 

反る!!

 

大きく!!

 

大きく!!

 

身体。

 

弧!!

 

実況。

 

「スープレックスゥゥゥゥ!!」

 

ドッッッゴォォォン!!

 

リング。

 

揺れる!!

 

観客。

 

「うおおおおおおお!!」

 

ぷるちゃん。

 

完全。

 

潰れる。

 

賢者。

 

橋。

 

作る。

 

一瞬。

 

そのまま。

 

押さえ込み。

 

レフェリー。

 

「ワン!!」

 

ぷるちゃん。

 

身体。

 

ぶる!!

 

「ツー!!」

 

ぐにゃ!!

 

肩。

 

いや。

 

接地点。

 

浮く!!

 

レフェリー。

 

「ツー!!」

 

賢者。

 

離れる。

 

起きる。

 

観客。

 

大歓声。

 

「賢者様ァァァァ!!」

 

「もう一発!!」

 

ぷるちゃん。

 

ゆっくり。

 

戻る。

 

賢者。

 

その姿。

 

見る。

 

追撃。

 

できる。

 

しない。

 

今度は。

 

もう。

 

理由が分かる。

 

「立て」

 

小さい。

 

声。

 

ぷるちゃん。

 

戻る。

 

「ぷる」

 

賢者。

 

口元。

 

わずかに。

 

笑う。

 

「……なるほど」

 

自分。

 

理解。

 

してしまった。

 

ここで立たせる。

 

その方が。

 

次の技が。

 

大きく。

 

見える。

 

観客も。

 

待っている。

 

試合が。

 

より。

 

良くなる。

 

賢者。

 

「…………」

 

理解した。

 

だからこそ。

 

恐ろしい。

 

ぷるちゃん。

 

前。

 

賢者。

 

前。

 

最後。

 

二人。

 

組む。

 

今まで。

 

何十回。

 

投げ。

 

返し。

 

支点。

 

消し。

 

重心。

 

ずらし。

 

やってきた。

 

だから。

 

もう。

 

互いに。

 

簡単には。

 

投げられない。

 

右。

 

止める。

 

左。

 

止める。

 

賢者。

 

足。

 

ぷるちゃん。

 

潰す。

 

ぷるちゃん。

 

身体。

 

賢者の背中。

 

回す。

 

賢者。

 

剥がす。

 

ぷるちゃん。

 

足首。

 

賢者。

 

抜く。

 

実況。

 

「投げられない!!」

 

「二人とも!!」

 

「もう!!」

 

「相手が何をしたいか!!」

 

「全部知っているゥゥゥゥ!!」

 

賢者。

 

「なら」

 

息。

 

吐く。

 

一度。

 

力。

 

抜く。

 

ぷるちゃん。

 

「ぷる?」

 

その瞬間。

 

賢者。

 

前。

 

体重。

 

預ける。

 

ぷるちゃん。

 

反射。

 

受ける。

 

賢者。

 

足。

 

内側。

 

引っ掛ける。

 

ぷるちゃん。

 

重心。

 

変える。

 

賢者。

 

それを見る。

 

「そこだ」

 

腰。

 

入れる。

 

ぷるちゃん。

 

浮く。

 

だが。

 

ぷるちゃん。

 

身体。

 

長く。

 

伸びる。

 

賢者の肩。

 

腕。

 

腰。

 

まとめて。

 

包む。

 

賢者。

 

「!」

 

二人。

 

同時。

 

投げる。

 

また。

 

空中。

 

ぐるん!!

 

ぐるん!!

 

観客。

 

「おおおおおお!!」

 

実況。

 

「回る!!」

 

「回る!!」

 

「回るゥゥゥゥ!!」

 

最後。

 

ぷるちゃん。

 

自分の身体。

 

マット。

 

広げる。

 

賢者。

 

その上。

 

落ちる!!

 

べちゃ!!

 

どぉぉぉん!!

 

ぷるちゃん。

 

反動。

 

身体。

 

跳ねる。

 

そのまま。

 

賢者。

 

覆う!!

 

全身。

 

押さえ込み!!

 

レフェリー。

 

飛び込む!!

 

「ワン!!」

 

観客。

 

「ワン!!」

 

賢者。

 

仰向け。

 

ぷるちゃん。

 

上。

 

身体。

 

広く。

 

押さえる。

 

賢者。

 

冷静。

 

考える。

 

左。

 

身体を捻れば。

 

抜ける。

 

可能。

 

右腕。

 

差せば。

 

隙。

 

作れる。

 

可能。

 

脚。

 

ロープ。

 

近い。

 

蹴れば。

 

届く。

 

可能。

 

魔力。

 

残量。

 

十分。

 

瞬間転移。

 

可能。

 

身体強化。

 

可能。

 

衝撃術。

 

可能。

 

脱出方法。

 

一つ。

 

二つ。

 

三つ。

 

四つ。

 

五つ。

 

ある。

 

レフェリー。

 

「ツー!!」

 

観客。

 

叫ぶ。

 

「ツー!!」

 

賢者。

 

力。

 

入れようとする。

 

左肩。

 

上げる。

 

だけ。

 

なのに。

 

その瞬間。

 

視界。

 

観客。

 

入る。

 

全員。

 

立っている。

 

昨日。

 

自分が優勝した時と。

 

同じくらい。

 

いや。

 

それ以上。

 

熱い。

 

ぷるちゃん。

 

上。

 

必死。

 

押さえている。

 

試合。

 

最初から。

 

思い出す。

 

打撃。

 

投げ。

 

投げ返し。

 

形。

 

作る。

 

ロープ。

 

祭具。

 

マイク。

 

場外カウント。

 

そして。

 

最後。

 

この大きな。

 

投げ。

 

賢者。

 

頭の中。

 

一つ。

 

思考。

 

浮かぶ。

 

「ここで返すより」

 

一瞬。

 

自然。

 

完全に。

 

自然。

 

「ここで」

 

「私が負けた方が」

 

「この試合は」

 

「一番」

 

「美しい」

 

賢者。

 

「…………」

 

時間。

 

止まる。

 

いや。

 

止まっていない。

 

レフェリー。

 

腕。

 

上がる。

 

賢者。

 

目。

 

見開く。

 

「何だ」

 

今の。

 

何だ。

 

「待て」

 

身体。

 

動く。

 

動ける。

 

「私は」

 

勝ちたい。

 

そのはず。

 

昨日も。

 

七試合。

 

勝つため。

 

戦った。

 

「なのに」

 

なぜ。

 

今。

 

負けることを。

 

良い。

 

と。

 

思った?

 

レフェリー。

 

腕。

 

落ちる。

 

賢者。

 

肩。

 

上げようとする。

 

しかし。

 

ほんの。

 

一瞬。

 

遅い。

 

「スリー!!」

 

バァァァァン!!

 

カァァァァァァァァン!!

 

歓声。

 

爆発。

 

「うおおおおおおおおおおお!!」

 

実況。

 

絶叫。

 

「決まったァァァァァ!!」

 

「昨日の拳闘祭王者!!」

 

「エルフの賢者をォォォォ!!」

 

「大型スライム!!」

 

「投げ合いの末!!」

 

「押さえ込んだァァァァァァ!!」

 

ぷるちゃん。

 

「ぷるるるるるるる!!」

 

レフェリー。

 

「離れろ!」

 

ぷるちゃん。

 

ぱっ。

 

「ぷる」

 

離れる。

 

賢者。

 

仰向け。

 

天井。

 

見る。

 

歓声。

 

降る。

 

身体。

 

動く。

 

肩。

 

上がる。

 

普通に。

 

上がる。

 

賢者。

 

片手。

 

見る。

 

「……間に合った」

 

小さい。

 

声。

 

「返せた」

 

興行主。

 

リング脇。

 

聞く。

 

笑顔。

 

消える。

 

賢者。

 

まだ。

 

天井。

 

見る。

 

そして。

 

口。

 

勝手に。

 

いや。

 

自分の意思で。

 

動く。

 

「……良い試合だった」

 

言った。

 

賢者。

 

固まる。

 

「…………」

 

ゆっくり。

 

自分の口。

 

触る。

 

「私は」

 

「負けたことを」

 

一拍。

 

「喜んだ?」

 

ぷるちゃん。

 

近づく。

 

「ぷる♪」

 

賢者。

 

そちら。

 

見る。

 

「待て」

 

ぷるちゃん。

 

身体。

 

にゅ。

 

賢者の。

 

左耳。

 

つまむ。

 

「……何をする」

 

右耳。

 

つまむ。

 

両方。

 

長い。

 

エルフ耳。

 

ぐい。

 

頭の上。

 

ぴん。

 

観客。

 

「…………」

 

賢者。

 

「待て」

 

ぷるちゃん。

 

「ぷる♪」

 

両耳。

 

頭頂。

 

寄せる。

 

実況。

 

一瞬。

 

息。

 

吸う。

 

「耳をまとめたァァァァァ!!」

 

エルフ観客。

 

「貴様ァァァァァァァァ!!」

 

「賢者様の耳をォォォォ!!」

 

興行主。

 

「最後に民族感情を刺激するなァァァァ!!」

 

娘。

 

「ぷるちゃん、引っ張りすぎないの」

 

ぷるちゃん。

 

少し。

 

緩める。

 

「ぷる」

 

賢者。

 

「今は」

 

「非常に重要なことを考えている」

 

ぷるちゃん。

 

体内。

 

もぞ。

 

賢者。

 

見る。

 

白。

 

「……待て」

 

ぬる。

 

先割れスプーン。

 

賢者。

 

「やはりそれか」

 

ぷるちゃん。

 

片方の耳。

 

頭上。

 

保持。

 

もう片方。

 

自由。

 

先割れスプーン。

 

掲げる。

 

「ぷる」

 

賢者。

 

「その儀式には――」

 

ぷす。

 

「…………」

 

観客。

 

「ブーーーーーーーー!!」

 

実況。

 

「出たァァァァァ!!」

 

「勝利の!!」

 

「意味不明!!」

 

「先割れスプーンだァァァァァ!!」

 

賢者。

 

無表情。

 

「……後で調べる」

 

ぷるちゃん。

 

「ぷる?」

 

「必ず」

 

レフェリー。

 

「耳を離せ!」

 

ぷるちゃん。

 

「ぷる」

 

ぱっ。

 

耳。

 

ぴょん。

 

賢者。

 

両耳。

 

元。

 

戻る。

 

手。

 

添える。

 

一度。

 

整える。

 

そして。

 

レフェリー。

 

見る。

 

「あなた」

 

「はい?」

 

「命令すると」

 

「このスライムは」

 

「必ず従うのか?」

 

レフェリー。

 

「……そういえば」

 

ぷるちゃん。

 

「ぷる」

 

賢者。

 

今度は。

 

観客。

 

見る。

 

さっきの耳。

 

笑った。

 

怒った。

 

ブーイング。

 

全員。

 

あれを。

 

「敗者へのヒールパフォーマンス」

 

として。

 

即座に。

 

理解した。

 

誰も。

 

そんな作法。

 

知らない。

 

賢者。

 

目。

 

細くなる。

 

試合。

 

終わった。

 

なのに。

 

疑問。

 

増える。

 

その夜。

 

アルヴェリア賢学院。

 

研究室。

 

机。

 

中央。

 

白い。

 

先割れスプーン。

 

ぷるちゃん。

 

机の横。

 

「ぷる」

 

娘。

 

椅子。

 

座る。

 

興行主。

 

その隣。

 

賢者。

 

腕。

 

組む。

 

研究員。

 

数名。

 

先割れスプーンを見る。

 

一人。

 

魔術鑑定。

 

光。

 

走る。

 

消える。

 

「……魔力反応」

 

「ほぼありません」

 

賢者。

 

「材質は?」

 

研究員。

 

困る。

 

「不明」

 

「木?」

 

「違います」

 

「骨」

 

「違います」

 

「角」

 

「違います」

 

「天然樹脂」

 

「……似ていますが」

 

表面。

 

拡大。

 

均一。

 

異常なほど。

 

均一。

 

「天然物では」

 

「この均質性は説明できません」

 

別の研究員。

 

「人工物?」

 

「おそらく」

 

賢者。

 

先割れスプーン。

 

指先。

 

つまむ。

 

軽い。

 

白い。

 

安っぽい。

 

「高度な工芸品?」

 

研究員。

 

「……それも」

 

「形状が」

 

「単純すぎます」

 

興行主。

 

「匙とフォークを一緒にしただけですからね」

 

研究員。

 

「フォーク?」

 

「先の割れた匙です」

 

「なぜ?」

 

「便利だからじゃないですか?」

 

研究員。

 

沈黙。

 

賢者。

 

「製造痕は?」

 

「ほぼ一定」

 

「寸法も」

 

「異常なほど揃っています」

 

賢者。

 

「つまり」

 

「大量生産品の可能性が高い?」

 

研究員。

 

嫌そうに。

 

「……はい」

 

賢者。

 

長い。

 

沈黙。

 

「これほど均一な人工物を」

 

「大量に?」

 

娘。

 

「元の世界だと普通なのかも」

 

賢者。

 

「そして」

 

「これが」

 

先割れスプーン。

 

見る。

 

「捨てられていた?」

 

娘。

 

「うん」

 

「どこに」

 

「土手」

 

研究員。

 

「……遺跡?」

 

娘。

 

「普通の土手」

 

賢者。

 

目。

 

閉じる。

 

「発見者」

 

娘。

 

ぷるちゃん。

 

指す。

 

「ぷるちゃん」

 

ぷるちゃん。

 

「ぷる♪」

 

「発見経緯」

 

「拾ってきた」

 

沈黙。

 

賢者。

 

ゆっくり。

 

紙。

 

取る。

 

書く。

 

《対象物発見地点:土手》

 

《発見者:大型スライム》

 

《発見状況:拾得》

 

筆。

 

止まる。

 

「……研究報告として」

 

「非常に格好がつかない」

 

興行主。

 

「事実ですから」

 

「分かっている」

 

その時。

 

研究員。

 

「あ」

 

先割れスプーン。

 

表面。

 

見る。

 

「ここ」

 

微細。

 

傷。

 

試合中。

 

どこかで。

 

付いた。

 

賢者。

 

「記録しておけ」

 

ぷるちゃん。

 

「ぷる」

 

先割れスプーン。

 

返せ。

 

と言わんばかりに。

 

身体。

 

伸びる。

 

賢者。

 

「待て」

 

ぷるちゃん。

 

「ぷる?」

 

「数時間」

 

娘。

 

「ぷるちゃん、貸してあげて」

 

ぷるちゃん。

 

「ぷるぅ」

 

しょんぼり。

 

賢者。

 

「……そんな顔をするな」

 

数時間後。

 

研究。

 

終わる。

 

先割れスプーン。

 

ぷるちゃん。

 

戻る。

 

ずぶ。

 

体内。

 

賢者。

 

見る。

 

「……収納?」

 

娘。

 

「いつもこうしてるよ」

 

「常時?」

 

「だいたい」

 

翌朝。

 

もう一度。

 

取り出す。

 

ぬる。

 

研究員。

 

見る。

 

「…………」

 

賢者。

 

「どうした」

 

「傷が」

 

「昨日より」

 

「浅い」

 

賢者。

 

先割れスプーン。

 

取る。

 

見る。

 

確かに。

 

微細な傷。

 

減っている。

 

「自己修復?」

 

研究員。

 

「単独保管中は」

 

「変化ありませんでした」

 

全員。

 

ぷるちゃん。

 

見る。

 

ぷるちゃん。

 

「ぷる?」

 

賢者。

 

「……君」

 

「何をしている?」

 

ぷるちゃん。

 

「ぷる」

 

娘。

 

「たぶん何も」

 

賢者。

 

「だろうな」

 

ため息。

 

そして。

 

紙。

 

新しい。

 

一枚。

 

上。

 

題。

 

書く。

 

《臨時観測報告》

 

《白色先割れ匙、および試合中に発生した認識異常について》

 

興行主。

 

覗く。

 

「もう研究する気満々ですね」

 

賢者。

 

「当然だ」

 

筆。

 

止めない。

 

「私は」

 

一度。

 

リング。

 

思い出す。

 

ロープ。

 

場外カウント。

 

祭具。

 

マイク。

 

観客。

 

そして。

 

最後。

 

「ここで負けるのが」

 

「一番美しい」

 

そう。

 

思った。

 

自分。

 

賢者。

 

顔。

 

険しい。

 

「私は最後まで」

 

「自由だった」

 

興行主。

 

黙る。

 

「思考能力も」

 

「判断能力も」

 

「失っていない」

 

「誰にも」

 

「負けろとは命令されなかった」

 

筆。

 

紙。

 

走る。

 

「私は」

 

「自分で考え」

 

「自分で選び」

 

そして。

 

手。

 

止まる。

 

「負けるべきだと」

 

「判断した」

 

研究室。

 

静か。

 

ぷるちゃん。

 

「ぷる?」

 

賢者。

 

白い匙。

 

見る。

 

「これは」

 

「意思を奪う道具ではない」

 

興行主。

 

「では?」

 

賢者。

 

ゆっくり。

 

答える。

 

「意思が」

 

「何を良いと判断するかを」

 

「書き換えている」

 

その瞬間。

 

遠く。

 

街。

 

大広場。

 

昨日のリング。

 

もう。

 

撤去。

 

始まっている。

 

誰もいない。

 

リング脇。

 

実況席。

 

空。

 

椅子。

 

一つ。

 

興行主。

 

ふと。

 

窓。

 

外。

 

見る。

 

「……そういや」

 

賢者。

 

「何だ」

 

「あの実況」

 

「今日、どこに泊まってるんだ?」

 

沈黙。

 

賢者。

 

顔。

 

上げる。

 

興行主。

 

「いや」

 

「そもそも」

 

「昨日の夜」

 

「どこにいた?」

 

誰も。

 

答えられなかった。

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