レスリングスライムが現れた!【マットの上では格は不要!】   作:ヒツジ(ラム肉

32 / 57
――幕間。

アルヴェリア賢学院。

第二次観測報告。

件名。

《試合中に発生した認識・判断変容、および周辺現象について》

副題。

《我々はなぜロープを走ったのか》

報告責任者。

アルヴェリア拳闘祭優勝者。

賢学院所属。

賢者。

なお。

報告開始前。

研究員の一人が。

非常に。

嫌な質問をした。

「賢者様」

「何だ」

「この報告書を書くという判断そのものが」

「例の影響ではないと」

「どう証明します?」

賢者。

「…………」

興行主。

「開始三秒で最悪のところ突いたな」


第32話 『我々はなぜロープを走ったのか』

机。

 

中央。

 

記録結晶。

 

紙。

 

証言書。

 

拳闘祭会場の見取り図。

 

そして。

 

白い先割れスプーン。

 

ただし。

 

今日は。

 

透明な箱。

 

その中。

 

置かれている。

 

ぷるちゃん。

 

箱。

 

見る。

 

「ぷる」

 

娘。

 

「今日はちょっと貸してあげようね」

 

「ぷるぅ」

 

賢者。

 

「機嫌を損ねないでくれ」

 

興行主。

 

「なんで研究対象より所有者に気を遣ってるんです?」

 

「返却を要求されて暴れられる方が面倒だ」

 

「賢明です」

 

賢者。

 

紙。

 

一枚。

 

取る。

 

「まず」

 

「昨日の試合中に発生した事象を整理する」

 

研究員。

 

筆。

 

構える。

 

賢者。

 

読む。

 

「第一」

 

「私は有利な状況で追撃を中断し」

 

「相手が立つのを待った」

 

「第二」

 

「回避可能な攻撃を」

 

「意図的に受けた」

 

「第三」

 

「本来必要のないロープ反動を使用した」

 

「第四」

 

「観客の反応を」

 

「勝敗とは独立した価値として」

 

「戦術判断へ組み込んだ」

 

「第五」

 

一度。

 

止まる。

 

興行主。

 

賢者を見る。

 

賢者。

 

続ける。

 

「最終押さえ込み時」

 

「脱出手段を複数認識していたにもかかわらず」

 

「ここで敗北することが」

 

「試合として最も美しい」

 

「と判断した」

 

研究室。

 

静か。

 

研究員。

 

「……改めて聞くと」

 

「かなり異常ですね」

 

賢者。

 

「そうだ」

 

「なお」

 

「敗北願望はない」

 

興行主。

 

「昨日もめちゃくちゃ勝ちに来てましたもんね」

 

「当然だ」

 

「拳闘祭で七試合勝った翌日に出る人が言うと説得力あります」

 

賢者。

 

無視。

 

次。

 

「第六」

 

「現地審判が」

 

「事前説明を受けていない」

 

「ロープブレイクを運用した」

 

「第七」

 

「同じく」

 

「存在しない場外カウントを開始した」

 

「第八」

 

「観客が」

 

「その場外カウントへ」

 

「自然に参加した」

 

研究員。

 

「現地審判本人の証言は?」

 

賢者。

 

別紙。

 

取る。

 

読む。

 

《質問》

 

ロープブレイクという規則を以前から知っていたか。

 

《回答》

 

知らない。

 

《質問》

 

誰かから説明を受けたか。

 

《回答》

 

受けていない。

 

《質問》

 

なぜ宣告したか。

 

《回答》

 

あの場では、そうするのが正しいと思った。

 

賢者。

 

紙。

 

置く。

 

「次」

 

《質問》

 

場外カウントを行う規則は存在したか。

 

《回答》

 

存在しない。

 

《質問》

 

なぜ数えた。

 

《回答》

 

数えるべきだと思った。

 

《質問》

 

何カウントまで数える予定だった。

 

《回答》

 

十。

 

研究員。

 

「……十?」

 

興行主。

 

「俺も教えてない」

 

賢者。

 

「審判本人に」

 

「なぜ十なのか」

 

「理由を問うた」

 

「回答は?」

 

賢者。

 

読む。

 

《分からない》

 

沈黙。

 

研究員。

 

「統一されていますね」

 

「何が」

 

「本人たちは」

 

「理由を知らない」

 

賢者。

 

頷く。

 

「だが」

 

「行為そのものには」

 

「疑問を感じていない」

 

娘。

 

「その時は?」

 

「その時は」

 

賢者。

 

「そうだ」

 

「後から考えて」

 

「初めて異常だと分かる」

 

興行主。

 

「……嫌だな」

 

賢者。

 

「非常に」

 

次。

 

祭具。

 

三百年。

 

拳闘祭。

 

優勝祝福。

 

儀礼杖。

 

写真。

 

いや。

 

記録画。

 

置く。

 

「第九」

 

「大型スライムが」

 

「当該祭具を」

 

「発声用器具のように使用した」

 

興行主。

 

「マイクパフォーマンス」

 

賢者。

 

「その呼称を採用するかは後で決める」

 

「もうみんなそう呼んでますよ」

 

「だから困っている」

 

研究員。

 

「問題は」

 

「スライムの行動ですか?」

 

賢者。

 

「違う」

 

「奴の行動は」

 

「以前の試合でも確認されている」

 

興行主。

 

「お玉とか木べらとか」

 

「客の杯とか」

 

娘。

 

「ぷるちゃん、何でもマイクにするよね」

 

「ぷる♪」

 

賢者。

 

「問題は」

 

自分。

 

指す。

 

「私だ」

 

記録。

 

再生。

 

賢者。

 

儀礼杖。

 

受け取る。

 

口元。

 

持つ。

 

ぷるちゃんを指す。

 

『このリングの上で』

 

『貴様を投げ潰す』

 

記録停止。

 

研究員。

 

「……格好いいですね」

 

賢者。

 

「そこではない」

 

興行主。

 

「確かにかなり盛り上がりました」

 

「そこでもない」

 

賢者。

 

深く。

 

息。

 

吐く。

 

「私は」

 

「このような行為を」

 

「事前に知らない」

 

「発声補助器具として」

 

「杖を口元に持つ文化も」

 

「アルヴェリアには存在しない」

 

研究員。

 

「では」

 

「なぜ?」

 

賢者。

 

「分からない」

 

一拍。

 

「だが」

 

「渡された瞬間」

 

「次は私が喋る番だ」

 

「と」

 

「理解した」

 

研究員。

 

手。

 

止まる。

 

「……理解した?」

 

「そうだ」

 

「言葉として」

 

「教えられたわけではない」

 

「だが」

 

「その役割を」

 

「知っていた」

 

賢者。

 

記録。

 

次。

 

観客。

 

ぷるちゃん。

 

「ぷるるるるる!!」

 

観客。

 

『賢者なんぞ敵じゃないって言ったぞ!』

 

『いや、昨日出てたら優勝してたって言った!』

 

記録停止。

 

賢者。

 

「興味深い点がある」

 

研究員。

 

「解釈が違う」

 

「そうだ」

 

「誰一人」

 

「スライムの発声内容を」

 

「正確に理解していない」

 

娘。

 

「たぶんぷるちゃん本人も」

 

興行主。

 

「それはどうだろう」

 

ぷるちゃん。

 

「ぷる?」

 

賢者。

 

「つまり」

 

「翻訳ではない」

 

「意味を共有しているのではない」

 

筆。

 

紙。

 

書く。

 

《言語理解ではない》

 

「では何を?」

 

賢者。

 

少し。

 

考える。

 

「役割」

 

研究員。

 

「役割?」

 

「観客は」

 

「スライムが何を言っているか」

 

「知らない」

 

「だが」

 

「今、このスライムは」

 

「対戦相手を挑発している」

 

「という構造だけは」

 

「理解している」

 

興行主。

 

「……あ」

 

賢者。

 

続ける。

 

「私が祭具を渡された時も同じだ」

 

「何を言うべきかは」

 

「誰にも指示されていない」

 

「だが」

 

「返答する場面だ」

 

「ということだけは」

 

「理解していた」

 

研究員。

 

紙。

 

見る。

 

「つまり」

 

「情報を与えているのではない?」

 

賢者。

 

「もっと」

 

「曖昧で」

 

「もっと深い」

 

「この場面では」

 

「こう振る舞うものだ」

 

研究室。

 

静か。

 

ぷるちゃん。

 

箱。

 

ぺち。

 

「ぷる」

 

娘。

 

「もうちょっと」

 

賢者。

 

次。

 

自分の試合。

 

記録。

 

ロープ。

 

走る。

 

ばいん。

 

戻る。

 

質量打撃。

 

直撃。

 

停止。

 

賢者。

 

「この時」

 

「私は」

 

「足場固定術を使用できた」

 

研究員。

 

「魔力残量は?」

 

「十分」

 

「術式異常?」

 

「なし」

 

「発動阻害?」

 

「なし」

 

「なら」

 

賢者。

 

「私は」

 

「使わなかった」

 

「なぜ?」

 

「ロープを使う方が」

 

「適切だと」

 

「判断したからだ」

 

研究員。

 

「戦術的に?」

 

賢者。

 

「否」

 

即答。

 

「戦術的には」

 

「固定した方が有利だった」

 

「では」

 

「試合として」

 

賢者。

 

言葉。

 

止まる。

 

「…………そうだ」

 

自分で。

 

言った。

 

その言葉。

 

嫌そうに。

 

見る。

 

「試合として」

 

「その方が良い」

 

「私はそう評価した」

 

興行主。

 

「先割れスプーンが」

 

「勝つための判断より」

 

「魅せるための判断を上に置いた?」

 

賢者。

 

「可能性はある」

 

「だが」

 

指。

 

上げる。

 

「注意しろ」

 

「勝利欲そのものは」

 

「消えていない」

 

「私は」

 

「最後まで勝とうとしていた」

 

研究員。

 

「矛盾しませんか?」

 

「する」

 

賢者。

 

「だから」

 

「精神支配では説明できない」

 

紙。

 

新しい。

 

項目。

 

《仮説一:精神支配》

 

却下。

 

理由。

 

人格。

 

記憶。

 

意思。

 

判断能力。

 

保持。

 

《仮説二:幻覚》

 

却下。

 

理由。

 

複数人。

 

共通の行動構造。

 

物理的結果。

 

一致。

 

《仮説三:翻訳・意思疎通魔法》

 

却下。

 

理由。

 

解釈内容。

 

不一致。

 

役割理解のみ。

 

一致。

 

《仮説四:呪詛》

 

保留。

 

魔術痕跡。

 

確認できず。

 

《仮説五:局所的認識誘導》

 

賢者。

 

筆。

 

止まる。

 

「不十分だ」

 

研究員。

 

「なぜ?」

 

「審判だけなら」

 

「認識誘導で説明できる」

 

「私だけでも」

 

「説明できる」

 

「観客も」

 

「説明できる」

 

「だが」

 

賢者。

 

ロープ。

 

記録。

 

指す。

 

「試合そのものが」

 

「それに合わせて」

 

「成立している」

 

興行主。

 

「……どういう意味です?」

 

賢者。

 

しばらく。

 

考える。

 

「たとえば」

 

「私はロープへ走った」

 

「審判はロープブレイクを宣告した」

 

「観客は場外カウントを理解した」

 

「スライムは」

 

「審判の命令へ」

 

「即座に従った」

 

「別々の個体が」

 

「別々の判断をしている」

 

「なのに」

 

「結果として」

 

「同じ競技体系を」

 

「完成させている」

 

研究員。

 

「誰も」

 

「全体を教わっていないのに」

 

「そうだ」

 

賢者。

 

紙。

 

中央。

 

大きく。

 

書く。

 

《文脈》

 

全員。

 

見る。

 

「これが」

 

「最も近い」

 

興行主。

 

「文脈」

 

「この場は」

 

「こういう場所である」

 

「この者は」

 

「こういう役割である」

 

「この行為は」

 

「こういう意味である」

 

「個々の知識ではなく」

 

「それらの前提を」

 

「共有させている」

 

研究員。

 

「誰が?」

 

賢者。

 

全員。

 

同時。

 

白い箱。

 

見る。

 

先割れスプーン。

 

ぷるちゃん。

 

「ぷる♪」

 

賢者。

 

「……おそらく」

 

その時。

 

研究員。

 

別の束。

 

持ってくる。

 

「賢者様」

 

「実況者について」

 

興行主。

 

「あ」

 

賢者。

 

顔。

 

さらに。

 

険しくなる。

 

「出せ」

 

紙。

 

一枚。

 

《興行関係者名簿》

 

興行主。

 

娘。

 

設営。

 

警備。

 

現地担当。

 

レフェリー。

 

出場者。

 

医療係。

 

実況。

 

なし。

 

「契約は?」

 

「ありません」

 

「報酬支払い」

 

「ありません」

 

「宿泊」

 

「該当者なし」

 

「都市入場記録」

 

「該当者なし」

 

「同行馬車」

 

「記録なし」

 

興行主。

 

「いやいやいや」

 

「毎回来てるぞ」

 

研究員。

 

「氏名は?」

 

「…………」

 

興行主。

 

止まる。

 

「知らない」

 

「出身」

 

「知らない」

 

「年齢」

 

「……知らない」

 

「いつから?」

 

興行主。

 

「最初の試合から……」

 

そこで。

 

また。

 

止まる。

 

「……最初から?」

 

娘。

 

「いたよね?」

 

興行主。

 

「いた」

 

「たぶん」

 

賢者。

 

「たぶん?」

 

興行主。

 

額。

 

押さえる。

 

「声は」

 

「完全に覚えてる」

 

「毎回」

 

「うるさい」

 

「でも」

 

「顔が」

 

言葉。

 

止まる。

 

娘。

 

「……私も」

 

研究員。

 

「記録画」

 

机。

 

置く。

 

第26話。

 

会場。

 

リング。

 

賢者。

 

ぷるちゃん。

 

現地レフェリー。

 

観客。

 

リング脇。

 

興行主。

 

娘。

 

そして。

 

実況席。

 

空。

 

興行主。

 

「…………」

 

「いや」

 

近づく。

 

「ここだ」

 

指。

 

空席。

 

「ここにいた」

 

「木の漏斗持って」

 

研究員。

 

「記録には」

 

「写っていません」

 

別。

 

記録。

 

第28話。

 

同じ。

 

空。

 

第29話。

 

同じ。

 

空。

 

だが。

 

音声記録。

 

再生。

 

『走ったァァァァ!!』

 

研究室。

 

全員。

 

びく。

 

あの声。

 

確かに。

 

入っている。

 

興行主。

 

「ほら!!」

 

「いるだろ!!」

 

賢者。

 

記録画。

 

見る。

 

「声だけ」

 

研究員。

 

「はい」

 

「複数人の証言は?」

 

「あります」

 

読む。

 

《実況の声を聞いた》

 

《試合内容を説明していた》

 

《非常にうるさかった》

 

《顔について》

 

空欄。

 

《服装について》

 

不明。

 

《名前》

 

不明。

 

《試合終了後の行方》

 

不明。

 

娘。

 

「……試合が終わったら」

 

「いなくなってる?」

 

興行主。

 

「帰ってると思ってた」

 

賢者。

 

「誰か」

 

「帰るところを見たか?」

 

誰も。

 

答えない。

 

賢者。

 

「次回」

 

「試合前から」

 

「実況席を継続観測する」

 

研究員。

 

「出現の瞬間を」

 

「記録できますね」

 

賢者。

 

「できればな」

 

興行主。

 

「できなかったら?」

 

賢者。

 

「その時考える」

 

「嫌な答え」

 

賢者。

 

紙。

 

最後。

 

まとめ。

 

《第二次観測報告・暫定結論》

 

一。

 

対象現象は。

 

単純な精神支配。

 

幻覚。

 

翻訳。

 

では。

 

説明困難。

 

二。

 

影響下にある個体は。

 

人格。

 

記憶。

 

思考能力。

 

判断能力を。

 

保持する。

 

三。

 

ただし。

 

「何を適切と評価するか」

 

に。

 

共通した偏りが発生。

 

四。

 

偏りは。

 

勝敗。

 

安全。

 

効率。

 

よりも。

 

「試合の成立」

 

「観客への提示」

 

「役割への適合」

 

を。

 

高く評価する傾向。

 

五。

 

個体間で。

 

具体的知識を共有していないにもかかわらず。

 

同一の競技的構造を。

 

自然に形成する。

 

六。

 

よって。

 

本現象を。

 

暫定的に。

 

《局所世界文脈再定義》

 

と呼称する。

 

研究員。

 

「世界?」

 

興行主。

 

「そこまで?」

 

賢者。

 

「私も」

 

「書きたくはない」

 

筆。

 

続く。

 

七。

 

対象物は。

 

意思へ直接命令するのではなく。

 

対象領域に対し。

 

「ここはリングである」

 

「これは試合である」

 

「この者はレフェリーである」

 

「これは挑発である」

 

「これは見せ場である」

 

といった。

 

前提。

 

役割。

 

意味付けを。

 

優先させている可能性。

 

八。

 

この仮説が正しい場合。

 

現象の対象は。

 

生物の精神。

 

だけではない。

 

興行主。

 

「…………」

 

研究員。

 

「それは」

 

賢者。

 

筆。

 

止まる。

 

「まだ」

 

「証明していない」

 

そして。

 

最後。

 

一文。

 

書く。

 

《対象物は》

 

《世界の中で機能する道具ではなく》

 

《世界の側へ》

 

《どのように機能すべきかを》

 

《要求している可能性がある》

 

静寂。

 

誰も。

 

すぐには。

 

口。

 

開かない。

 

ぷるちゃん。

 

箱。

 

前。

 

「ぷる」

 

娘。

 

「もう返していい?」

 

賢者。

 

長い。

 

ため息。

 

「……返そう」

 

箱。

 

開く。

 

ぷるちゃん。

 

嬉しそう。

 

にゅ。

 

先割れスプーン。

 

取る。

 

ずぶ。

 

体内。

 

「ぷる♪」

 

研究員。

 

見送る。

 

「賢者様」

 

「何だ」

 

「危険物として」

 

「隔離すべきでは?」

 

賢者。

 

ぷるちゃん。

 

見る。

 

娘。

 

見る。

 

興行主。

 

見る。

 

「現時点で」

 

「この物体による」

 

「直接的な死傷者は」

 

「確認されていない」

 

興行主。

 

「むしろ」

 

「殺し合いになりそうな相手まで」

 

「試合して帰ってますね」

 

研究員。

 

「なら」

 

「有益なのでは?」

 

賢者。

 

その言葉。

 

聞いて。

 

ゆっくり。

 

振り向く。

 

「……それが」

 

「最も」

 

「気に入らない」

 

研究員。

 

「?」

 

「我々が」

 

「この現象を」

 

「好ましい」

 

「と思っていること自体」

 

「影響ではないと」

 

賢者。

 

白い匙。

 

入った。

 

ぷるちゃんを見る。

 

「誰が」

 

「証明できる?」

 

誰も。

 

答えない。

 

沈黙。

 

その中。

 

興行主。

 

机。

 

紙。

 

見る。

 

「ところで」

 

賢者。

 

「何だ」

 

「次の興行」

 

「もう決まってるんですけど」

 

賢者。

 

眉。

 

動く。

 

「どこだ」

 

「まだ交渉中ですが」

 

「相手側から」

 

「問い合わせが来てまして」

 

「誰から」

 

興行主。

 

封書。

 

出す。

 

大きい。

 

黒い。

 

封蝋。

 

そこに。

 

翼。

 

角。

 

王冠。

 

魔王領。

 

軍務印。

 

賢者。

 

「…………」

 

興行主。

 

「賢者様に勝った」

 

「大型スライムについて」

 

「調査したいそうです」

 

研究員。

 

「軍?」

 

「まあ」

 

興行主。

 

封書。

 

裏。

 

見る。

 

「差出人」

 

読む。

 

「魔王軍最強幹部」

 

一拍。

 

「古竜」

 

研究室。

 

静まり返る。

 

ぷるちゃん。

 

「ぷる?」

 

賢者。

 

目。

 

閉じる。

 

「……調査」

 

興行主。

 

「はい」

 

賢者。

 

ゆっくり。

 

封書。

 

取る。

 

開く。

 

読む。

 

最初。

 

数行。

 

顔。

 

変わらない。

 

途中。

 

眉。

 

寄る。

 

最後。

 

長い。

 

沈黙。

 

興行主。

 

「何て?」

 

賢者。

 

紙。

 

机。

 

置く。

 

「都市への」

 

「査察でも」

 

「対象個体の引き渡し要求でもない」

 

「では?」

 

賢者。

 

封書。

 

指。

 

「挑戦状だ」

 

興行主。

 

「…………」

 

研究員。

 

「なぜ?」

 

賢者。

 

先割れスプーン。

 

見る。

 

ぷるちゃん。

 

「ぷる♪」

 

賢者。

 

小さく。

 

答える。

 

「それを」

 

「これから」

 

「調べることになるらしい」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。