レスリングスライムが現れた!【マットの上では格は不要!】   作:ヒツジ(ラム肉

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――前回までの『レスリングスライムが現れた!』!!

エルフ都市国家!!

拳闘大会王者!!

賢者!!

総合対総合!!

投げる!!

返す!!

ロープ!!

観客!!

そして――

賢者は気づいた!!

避けられる!!

なのに受けた!!

止まれる!!

なのに走った!!

勝てる!!

なのに!!

「ここで負けるのが、一番美しい」

そう!!

自分で!!

判断した!!

レフェリーも!!

知らないはずの!!

ロープブレイク!!

場外カウント!!

観客も!!

意味の分からない!!

マイクパフォーマンスを理解!!

そして!!

いつもいる実況!!

名前!!

不明!!

雇用!!

なし!!

宿泊記録!!

なし!!

映像記録!!

姿!!

なし!!

声だけ!!

ある!!

賢者
「これは精神支配ではない」

「世界の側へ」

「どう振る舞うべきかを」

「要求している可能性がある」

白い!!

安物!!

土手で拾った!!

先割れスプーン!!

さらに!!

幕間!!

その材質!!

未知!!

均質!!

大量生産品!!

魔法なし!!

神性なし!!

なのに!!

ぷるちゃんの体内で!!

自己修復!!

研究すればするほど!!

何も!!

分からない!!

そして!!

その研究室へ!!

届いた!!

一通の!!

黒き封書!!

差出人!!

魔王軍!!

最強幹部!!

古竜!!

内容!!

調査命令――

ではない!!

討伐命令――

でもない!!

賢者
「……挑戦状だ」

興行主
「なんで?」

その頃!!

遠く!!

魔王領では!!

一頭の古竜が!!

まさに!!

同じ疑問を!!

抱いていたァァァァァァ!!


第七章 竜はなぜ挑戦状を書いた?
第33話 『これこそが我の意思』


魔王領北部。

 

黒嶺。

 

山ではない。

 

山脈。

 

その最高峰。

 

雲。

 

下。

 

雪。

 

さらに。

 

その奥。

 

巨大な岩窟。

 

入口だけで。

 

城門が。

 

三つ。

 

入りそうな。

 

大きさ。

 

そこに。

 

一頭。

 

いた。

 

古竜。

 

鱗。

 

黒。

 

ところどころ。

 

深い赤。

 

角。

 

後方へ。

 

長い。

 

翼。

 

畳まれているだけで。

 

壁。

 

一面。

 

埋める。

 

年齢。

 

不詳。

 

生きた年月。

 

数百。

 

あるいは。

 

それ以上。

 

魔王軍。

 

最強幹部。

 

魔王本人を。

 

除けば。

 

最大戦力。

 

城塞。

 

一つ。

 

戦線。

 

一つ。

 

場合によっては。

 

国家。

 

一つ。

 

相手に。

 

戦える。

 

存在。

 

その古竜。

 

目の前。

 

小さい。

 

紙。

 

見ていた。

 

正確には。

 

古竜からすれば。

 

小さい。

 

人間なら。

 

両手で持つ。

 

報告書。

 

一枚目。

 

《アルヴェリア拳闘祭優勝者》

 

《大型粘体生物との公開試合に敗北》

 

古竜。

 

「…………」

 

二枚目。

 

《対象個体》

 

《大型スライム》

 

《推定危険度》

 

《測定困難》

 

三枚目。

 

《特徴》

 

《打撃吸収》

 

《局所硬化》

 

《投擲・投げ技》

 

《拘束》

 

《異常な競技適応》

 

四枚目。

 

《付記》

 

《試合中、アルヴェリア賢学院所属賢者に認識変容の疑い》

 

古竜。

 

目。

 

細くなる。

 

「認識変容」

 

側。

 

魔族。

 

一人。

 

長身。

 

軍務官。

 

「はい」

 

「賢者本人が」

 

「研究を開始したとのことです」

 

古竜。

 

「ふん」

 

鼻。

 

一息。

 

熱。

 

紙。

 

少し。

 

揺れる。

 

「自ら敗れておいて」

 

「相手の異常性を疑うか」

 

軍務官。

 

「ただ」

 

「賢者本人は」

 

「精神支配とは異なると」

 

古竜。

 

次。

 

読む。

 

《対象個体所持品》

 

《白色先割れ匙》

 

《異界由来の可能性》

 

《作用不明》

 

古竜。

 

「匙」

 

「はい」

 

「匙で」

 

「賢者を倒したのか」

 

軍務官。

 

「いえ」

 

「試合後に」

 

「刺したそうです」

 

古竜。

 

「…………」

 

軍務官。

 

「軽く」

 

古竜。

 

「意味が分からぬ」

 

「我々もです」

 

さらに。

 

別紙。

 

観戦記録。

 

《人間》

 

《オーガ》

 

《獣人》

 

《競技ゴーレム》

 

《ゴブリン》

 

《エルフ賢者》

 

古竜。

 

「……種族を選ばぬ」

 

軍務官。

 

「そのようです」

 

「勝率は」

 

「高いです」

 

「通常戦闘では?」

 

「不明」

 

「なぜ」

 

軍務官。

 

一瞬。

 

困る。

 

「……基本的に」

 

「試合しかしておりません」

 

古竜。

 

顔。

 

上げる。

 

「何?」

 

「遭遇した強者と」

 

「競技形式で」

 

「戦っています」

 

古竜。

 

沈黙。

 

「酔狂な粘体だ」

 

軍務官。

 

「本人に」

 

「その自覚があるかどうかは」

 

「分かりません」

 

古竜。

 

「ならば」

 

報告書。

 

置く。

 

「確認する」

 

軍務官。

 

「はい」

 

「対象個体を」

 

「アルヴェリアより」

 

「引き渡させよ」

 

軍務官。

 

頷く。

 

筆記官。

 

前。

 

出る。

 

古竜。

 

言う。

 

「拒否した場合」

 

一拍。

 

「都市上空へ」

 

「我が赴く」

 

筆記官。

 

書く。

 

「抵抗するなら」

 

「威圧をもって」

 

「従わせる」

 

軍務官。

 

「必要であれば」

 

古竜。

 

牙。

 

見せる。

 

「一撃」

 

「地を焼けば」

 

「理解するだろう」

 

筆記官。

 

書く。

 

《対象個体引き渡し要求》

 

《拒否時、現地査察》

 

《必要に応じ武力示威》

 

古竜。

 

「それでよい」

 

一度。

 

目。

 

閉じる。

 

終わり。

 

そのはず。

 

だった。

 

だが。

 

数秒。

 

古竜。

 

目。

 

開く。

 

「…………」

 

軍務官。

 

「何か」

 

古竜。

 

紙。

 

見る。

 

「違う」

 

筆記官。

 

止まる。

 

「は?」

 

古竜。

 

自分で。

 

言った。

 

その言葉。

 

少し。

 

不思議そうに。

 

聞く。

 

「……違う」

 

軍務官。

 

「何がでしょう」

 

古竜。

 

前足。

 

紙。

 

押さえる。

 

「引き渡させたところで」

 

「何が分かる」

 

軍務官。

 

「対象個体を」

 

「直接調査できます」

 

「違う」

 

また。

 

古竜。

 

「我が知りたいのは」

 

「賢者を下した」

 

「その力だ」

 

軍務官。

 

「はい」

 

「拘束され」

 

「運ばれ」

 

「我が前へ」

 

「放り出された個体を」

 

「叩いて」

 

「何が分かる」

 

軍務官。

 

「…………」

 

筋。

 

通っている。

 

古竜。

 

続ける。

 

「自ら」

 

「向かって来させよ」

 

筆記官。

 

「では」

 

「召喚命令に?」

 

古竜。

 

「命令」

 

一瞬。

 

止まる。

 

「……いや」

 

軍務官。

 

今度は。

 

こちらが。

 

眉。

 

寄る。

 

古竜。

 

「命令では」

 

「意味がない」

 

「本人が」

 

「来ると」

 

「決めねばならぬ」

 

軍務官。

 

「なぜです?」

 

古竜。

 

「…………」

 

その問い。

 

空気。

 

止まる。

 

なぜ。

 

古竜自身。

 

分からない。

 

命令。

 

すればいい。

 

来なければ。

 

連れて来ればいい。

 

それが。

 

軍。

 

それが。

 

力。

 

それが。

 

魔王軍最強幹部として。

 

何百年も。

 

やってきた。

 

方法。

 

だが。

 

違う。

 

そう。

 

思う。

 

「……力量を」

 

「測るなら」

 

古竜。

 

ゆっくり。

 

言葉。

 

探す。

 

「自ら来た者と」

 

「正面から」

 

「戦うべきだ」

 

軍務官。

 

「…………」

 

筆記官。

 

軍務官。

 

見る。

 

軍務官。

 

首。

 

わずか。

 

傾げる。

 

「では」

 

「決闘?」

 

古竜。

 

「決闘」

 

その言葉。

 

妙に。

 

しっくり。

 

来る。

 

だが。

 

少し。

 

違う。

 

「……いや」

 

「もっと」

 

筆記官。

 

「もっと?」

 

古竜。

 

報告書。

 

見る。

 

《公開試合》

 

《観客》

 

《レフェリー》

 

《リング》

 

「……試合」

 

軍務官。

 

「はい?」

 

古竜。

 

顔。

 

上げる。

 

「試合だ」

 

沈黙。

 

軍務官。

 

「対象個体と?」

 

「そうだ」

 

「古竜様が?」

 

「そうだ」

 

「公開で?」

 

古竜。

 

少し。

 

考える。

 

「その方が」

 

「よい」

 

軍務官。

 

「何が」

 

「よいのでしょう」

 

また。

 

止まる。

 

古竜。

 

胸。

 

奥。

 

妙な。

 

違和感。

 

ある。

 

だが。

 

嫌ではない。

 

むしろ。

 

何かが。

 

合う。

 

何百年も。

 

忘れていた。

 

戦う前の。

 

高揚。

 

自分と。

 

相手。

 

力。

 

ぶつける。

 

どちらが。

 

立つ。

 

それを。

 

皆が。

 

見る。

 

古竜。

 

翼。

 

少し。

 

開く。

 

風。

 

起きる。

 

「見届ける者が」

 

「いるべきだ」

 

軍務官。

 

「……観客を」

 

「呼ぶと?」

 

「そうだ」

 

「人間側も?」

 

「呼べ」

 

「エルフも?」

 

「好きにさせろ」

 

「魔王領側は?」

 

古竜。

 

鼻。

 

鳴らす。

 

「我が戦うのだ」

 

「見たければ」

 

「来ればよい」

 

軍務官。

 

「……古竜様」

 

「何だ」

 

「楽しんでいませんか?」

 

古竜。

 

「調査だ」

 

即答。

 

軍務官。

 

「顔が」

 

「調査だ」

 

筆記官。

 

必死。

 

笑い。

 

堪える。

 

古竜。

 

気づく。

 

睨む。

 

「書け」

 

「は、はい」

 

筆。

 

走る。

 

《大型粘体生物へ告ぐ》

 

古竜。

 

「いや」

 

「そこからか」

 

《大型粘体生物へ告ぐ》

 

《我は魔王軍最強幹部》

 

《黒嶺の古竜――》

 

古竜。

 

名。

 

告げる。

 

筆記官。

 

書く。

 

《アルヴェリアの賢者を下したという》

 

《その力》

 

《我が眼前で示せ》

 

軍務官。

 

「……完全に挑戦状ですね」

 

古竜。

 

「調査書だ」

 

「冒頭で名乗ってます」

 

「必要な情報だ」

 

筆記官。

 

続ける。

 

古竜。

 

「指定の日時」

 

「指定の場所」

 

「互いに」

 

「全力を尽くす」

 

軍務官。

 

「全力」

 

古竜。

 

「問題か」

 

「いえ」

 

古竜。

 

「ただし」

 

一瞬。

 

考える。

 

「都市部への」

 

「無差別攻撃は禁止」

 

軍務官。

 

「…………」

 

古竜。

 

「何だ」

 

「いえ」

 

「古竜様ご自身が」

 

「それを書くとは」

 

古竜。

 

「観客を」

 

「巻き込めば」

 

「調査にならぬ」

 

軍務官。

 

「……なるほど」

 

古竜。

 

「リング」

 

止まる。

 

「リング?」

 

軍務官。

 

「はい?」

 

古竜。

 

「報告書では」

 

「四方を縄で囲った」

 

「競技場を使うとある」

 

「そうですね」

 

「用意させろ」

 

軍務官。

 

「古竜様の重量に」

 

「耐えられるものを?」

 

「当然だ」

 

「飛行空間は」

 

「確保」

 

「炎熱対策」

 

「必要」

 

筆記官。

 

書く。

 

書く。

 

書く。

 

そして。

 

途中。

 

止まる。

 

「古竜様」

 

「何だ」

 

「これ」

 

紙。

 

見る。

 

「完全に」

 

「興行の要件書です」

 

古竜。

 

「…………」

 

軍務官。

 

「調査では?」

 

古竜。

 

紙。

 

見る。

 

確かに。

 

おかしい。

 

ほんの少し。

 

何か。

 

ズレている。

 

引き渡し要求だった。

 

都市威圧だった。

 

必要なら。

 

焼く。

 

そう。

 

考えていた。

 

はず。

 

なのに。

 

今。

 

書いているのは。

 

日時。

 

会場。

 

観客席。

 

リング強度。

 

安全対策。

 

そして。

 

挑戦文。

 

古竜。

 

沈黙。

 

長い。

 

軍務官。

 

待つ。

 

筆記官。

 

待つ。

 

やがて。

 

古竜。

 

低く。

 

笑う。

 

「……ふ」

 

軍務官。

 

「?」

 

「何を」

 

「迷っている」

 

古竜。

 

翼。

 

大きく。

 

開く。

 

岩窟。

 

風。

 

唸る。

 

「誰かに」

 

「命じられたか?」

 

軍務官。

 

「いえ」

 

「魔王陛下から」

 

「この形式を」

 

「指定されたか?」

 

「いいえ」

 

「ならば」

 

前足。

 

床。

 

どん。

 

岩。

 

震える。

 

「我が考え」

 

「我が選び」

 

「我が決めた」

 

軍務官。

 

「…………」

 

古竜。

 

牙。

 

見せる。

 

完全に。

 

戦士。

 

顔。

 

「ならば」

 

「これこそが」

 

翼。

 

ばさあああ!!

 

「我の意思だ!!」

 

風。

 

報告書。

 

舞う。

 

筆記官。

 

押さえる。

 

軍務官。

 

目。

 

細く。

 

そして。

 

苦笑。

 

「承知しました」

 

「では」

 

「挑戦状として」

 

古竜。

 

一拍。

 

「…………」

 

「調査書だ」

 

軍務官。

 

「はいはい」

 

「返事が軽いぞ」

 

その日の夕刻。

 

黒い。

 

封蝋。

 

翼。

 

角。

 

王冠。

 

魔王軍。

 

軍務印。

 

一通の書状。

 

アルヴェリアへ。

 

飛ぶ。

 

内容。

 

《大型粘体生物へ告ぐ》

 

《我は魔王軍最強幹部》

 

《黒嶺の古竜》

 

《賢者を下したというその力》

 

《我が眼前で示せ》

 

《来るか否かは》

 

《貴様自身が決めよ》

 

《来るならば》

 

《我も》

 

《全力で応えよう》

 

《互いの力》

 

《余さず》

 

《示す場を》

 

《用意する》

 

《逃げぬ》

 

《隠さぬ》

 

《我が炎》

 

《我が翼》

 

《我が牙》

 

《すべて受けてみせよ》

 

最後。

 

筆記官。

 

書いた。

 

古竜。

 

見る。

 

「よい」

 

軍務官。

 

「ずいぶん」

 

「格好よくなりましたね」

 

「事実を書いただけだ」

 

「最初は」

 

「『対象個体を引き渡せ』でしたが」

 

古竜。

 

「忘れろ」

 

「はい」

 

封。

 

される。

 

送られる。

 

古竜。

 

一頭。

 

岩窟。

 

残る。

 

夜。

 

遠く。

 

魔王城方面。

 

見る。

 

そして。

 

ほんの。

 

少し。

 

考える。

 

「……なぜ」

 

自分。

 

声。

 

聞こえる。

 

「我は」

 

「試合など」

 

「したいと」

 

「思った?」

 

沈黙。

 

胸。

 

奥。

 

違和感。

 

小さい。

 

だが。

 

確か。

 

ある。

 

古竜。

 

目。

 

閉じる。

 

次。

 

開く。

 

「ふん」

 

鼻。

 

熱。

 

漏れる。

 

「考えるまでもない」

 

翼。

 

畳む。

 

「強者が」

 

「いる」

 

「ならば」

 

「己の力で」

 

「確かめる」

 

それだけ。

 

そう。

 

思う。

 

そう。

 

信じる。

 

そして。

 

その判断に。

 

何の不自然も。

 

感じなくなる。

 

遠く。

 

アルヴェリア。

 

賢学院。

 

同じ頃。

 

賢者。

 

黒い封書。

 

読む。

 

最後まで。

 

そして。

 

長い。

 

長い。

 

沈黙。

 

興行主。

 

「……どうです?」

 

賢者。

 

紙。

 

置く。

 

「本人は」

 

「完全に」

 

「自分の意思だと」

 

「思っているだろうな」

 

興行主。

 

「まあ」

 

「挑戦状ですし」

 

賢者。

 

見る。

 

興行主。

 

笑み。

 

消える。

 

賢者。

 

静かに。

 

言う。

 

「私も」

 

「そうだった」

 

その横。

 

ぷるちゃん。

 

体内。

 

白い。

 

先割れスプーン。

 

「ぷる♪」

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