レスリングスライムが現れた!【マットの上では格は不要!】 作:ヒツジ(ラム肉
勇者戦!!
中盤!!
観客!!
壊れた!!
「鎧ずるいぞー!!」
から!!
「肩が丸いぞー!!」
「脚が太いぞー!!」
「背中が広いぞー!!」
「ナイスバルク!!」
そして!!
さらに!!
「受け身いいぞー!!」
「姿勢が綺麗!!」
「声が通る!!」
「笑顔がいい!!」
「汗の量ちょうどいい!!」
勇者
「もう何を評価されてるの!?」
だが!!
勇者!!
気づく!!
これは!!
救いを求める声ではない!!
勝利を義務づける祈りでもない!!
ただ!!
もっと見たい!!
もっとやれ!!
立て!!
魅せろ!!
そんな!!
声!!
勇者
「……これ」
「楽しいね」
そして!!
ぷるちゃんの!!
大粘体!!
フライング!!
ボディプレス!!
勇者!!
自分から!!
受けた!!
べちゃああああああ!!
ワン!!
ツー!!
返す!!
勇者
「こんなに痛いのに」
「こんなに楽しいんだね」
そう!!
勇者!!
とうとう!!
魅せる喜びを!!
知った!!
そして!!
ここから!!
一人の男は!!
一つずつ!!
置いていく!!
勇者という!!
肩書きを支えた!!
その全てを!!
否定するためではない!!
感謝するために!!
そして!!
最後に!!
残るものを!!
見せるために!!
――前回までの『レスリングスライムが現れた!』!!
勇者戦!!
中盤!!
観客!!
壊れた!!
「鎧ずるいぞー!!」
から!!
「肩が丸いぞー!!」
「脚が太いぞー!!」
「背中が広いぞー!!」
「ナイスバルク!!」
そして!!
さらに!!
「受け身いいぞー!!」
「姿勢が綺麗!!」
「声が通る!!」
「笑顔がいい!!」
「汗の量ちょうどいい!!」
勇者
「もう何を評価されてるの!?」
だが!!
勇者!!
気づく!!
これは!!
救いを求める声ではない!!
勝利を義務づける祈りでもない!!
ただ!!
もっと見たい!!
もっとやれ!!
立て!!
魅せろ!!
そんな!!
声!!
勇者
「……これ」
「楽しいね」
そして!!
ぷるちゃんの!!
大粘体!!
フライング!!
ボディプレス!!
勇者!!
自分から!!
受けた!!
べちゃああああああ!!
ワン!!
ツー!!
返す!!
勇者
「こんなに痛いのに」
「こんなに楽しいんだね」
そう!!
勇者!!
とうとう!!
魅せる喜びを!!
知った!!
そして!!
ここから!!
一人の男は!!
一つずつ!!
置いていく!!
勇者という!!
肩書きを支えた!!
その全てを!!
否定するためではない!!
感謝するために!!
そして!!
最後に!!
残るものを!!
見せるために!!
第九章
勇者は、ただ立ち上がる
第49話
『これは全部、僕の旅路だった』
――本文――
勇者。
立つ。
呼吸。
荒い。
鎧。
傷。
多い。
聖剣。
光。
弱く。
揺れる。
祝福。
ぴか。
一度。
灯る。
観客。
今度は。
騒がない。
勇者。
ぷるちゃん。
見る。
「ぷる」
勇者。
笑う。
「……強いなあ」
ぷるちゃん。
「ぷる♪」
勇者。
肩。
回す。
ごき。
鎧。
鳴る。
一歩。
歩く。
そして。
止まる。
聖剣。
見る。
長い。
旅。
ずっと。
横。
あった。
剣。
勇者。
柄。
握る。
「……最初に」
「君かな」
観客。
ざわ。
ぷるちゃん。
「ぷる?」
勇者。
聖剣。
抜く。
しゃぁぁん。
光。
走る。
勇者。
刃。
見る。
「君を」
「最初に持った時」
「重すぎて」
「まともに」
「振れなかった」
仲間。
客席。
笑う。
「三回」
「地面に落としたよね」
勇者。
「言わなくていいよ!」
観客。
笑う。
勇者。
聖剣。
撫でる。
「でも」
「何度も」
「助けてもらった」
「僕だけじゃ」
「斬れなかったものを」
「斬ってくれた」
「届かなかった場所へ」
「届かせてくれた」
聖剣。
光。
ふわ。
勇者。
目。
細く。
「ありがとう」
そして。
リング脇。
静かに。
置く。
観客。
「…………」
興行主。
「置いた」
賢者。
「ああ」
勇者。
腰。
軽くなる。
だが。
まだ。
鎧。
ある。
勇者。
胸。
手。
置く。
白い。
聖鎧。
「これは」
「二つ目の街で」
「貰った」
仲間。
「壊れかけの」
「古い鎧だったね」
勇者。
「うん」
「最初は」
「肩が合わなくて」
「ずっと」
「擦れて痛かった」
観客。
一人。
「今は肩に合ってるぞー!!」
勇者。
「そこは」
「今言う!?」
笑い。
勇者。
留め具。
一つ。
外す。
かちゃ。
「これで」
「何度」
「死なずに済んだか」
もう一つ。
かちゃ。
「胸を」
「守ってくれた」
もう一つ。
「背中も」
「守ってくれた」
鎧。
持ち上げる。
重い。
ずし。
勇者。
「ありがとう」
リング脇。
置く。
ごと。
その瞬間。
観客。
「…………」
勇者。
鎧。
下。
見える。
服。
薄い。
長旅用。
汗。
貼りつく。
肩。
…………太い。
興行主。
「…………」
賢者。
「…………」
魔王。
「ほう」
古竜。
「これは」
勇者。
気づかない。
次。
腕。
護符。
外す。
「これは」
「毒沼を」
「渡った時」
「仲間が」
「作ってくれた」
仲間。
客席。
少し。
目。
潤む。
勇者。
「何度も」
「状態異常から」
「守ってくれた」
「ありがとう」
置く。
首。
聖印。
手。
取る。
「これは」
「小さな村の」
「神官さんから」
「貰った」
「僕が」
「勇者だから」
「じゃなかった」
一拍。
「帰ってきてくれって」
「言われた」
勇者。
少し。
笑う。
「ちゃんと」
「帰ったよ」
聖印。
外す。
「ありがとう」
置く。
指輪。
見る。
「これは」
勇者。
一瞬。
客席。
仲間。
見る。
仲間。
手。
振る。
勇者。
笑う。
「旅の途中」
「僕が」
「怖くなって」
「逃げたいって」
「言った夜に」
「貰った」
観客。
静か。
勇者。
「勇者でも」
「逃げたくなるんだって」
「笑われた」
仲間。
「笑ってない!」
勇者。
「笑ったよ!」
「ちょっとだけ!」
仲間。
「ちょっとだけ!」
勇者。
指輪。
外す。
「でも」
「これを」
「握るたび」
「一人じゃないって」
「思えた」
指輪。
置く。
「ありがとう」
一つ。
一つ。
置く。
魔具。
護符。
小袋。
聖水瓶。
加護札。
腕輪。
全部。
勇者。
言葉。
添える。
「ありがとう」
「ありがとう」
「ここまで」
「連れてきてくれて」
「ありがとう」
観客。
誰も。
ブーイング。
しない。
魔王。
腕。
組む。
黙る。
古竜。
黙る。
賢者。
記録。
手。
止まる。
興行主。
勇者。
見る。
「……全部」
「外すのか」
賢者。
「否定しているのではない」
「?」
「逆だ」
勇者。
最後。
祝福の。
聖別飾り。
胸。
触れる。
光。
ぴか。
いつもの。
後光。
羽根。
鐘。
ジャァァァン。
観客。
静か。
勇者。
光。
見上げる。
「君にも」
「助けてもらったね」
光。
ふわ。
「僕が」
「倒れそうな時」
「何度も」
「支えてくれた」
「傷も」
「癒してくれた」
「怖い時も」
「前を」
「照らしてくれた」
勇者。
聖別飾り。
外す。
「ありがとう」
リング脇。
置く。
その瞬間。
光。
消える。
羽根。
消える。
鐘。
止まる。
静か。
本当に。
静か。
勇者。
何も。
光らない。
王冠。
ない。
聖剣。
ない。
鎧。
ない。
祝福。
ない。
ただ。
服。
そして。
身体。
一人の。
男。
勇者。
深く。
息。
吸う。
肩。
上がる。
胸。
広がる。
そこで。
観客。
ようやく。
気づく。
「…………」
一人。
「でか」
勇者。
「え?」
別。
「肩ァァァァァァ!!」
勇者。
「待って!!」
一斉。
爆発。
「肩ァァァァ!!」
「腕ィィィィ!!」
「胸板ァァァァ!!」
「背中ァァァァ!!」
「脚ィィィィィ!!」
実況。
木製漏斗。
震える。
「出たァァァァァ!!」
「鎧の!!」
「下からァァァァァ!!」
「勇者本人ンンンンン!!」
勇者。
「僕本人って」
「ずっといたよ!!」
興行主。
目。
丸い。
「いや」
「待って」
「思ったより」
「ずっと」
賢者。
「鍛えているな」
勇者。
「旅してたんだから」
「当然でしょ!?」
魔王。
目。
細く。
「……良い」
勇者。
「何が!?」
魔王。
「肩」
勇者。
「また肩!?」
古竜。
「背中も」
「見事ですな」
勇者。
「古竜に」
「背中褒められるの」
「どう受け取ればいいの!?」
観客。
「僧帽筋が聖堂建ててるぞー!!」
勇者。
「本当に建ってないから!!」
「大胸筋に祝福残ってるぞー!!」
勇者。
「残ってない!!」
「腹筋が六英雄!!」
勇者。
「人数増やすな!!」
「広背筋が魔王領まで届いてるぞー!!」
魔王。
「届かせるな」
勇者。
「そこは」
「魔王が止めるの!?」
獣人席。
「脚が走れって言ってるぞー!!」
人間席。
「腕が投げろって言ってる!!」
エルフ席。
「姿勢美!!」
魔族席。
「仕上がってるぞ勇者ァァァァ!!」
鉱山。
グラン。
《筋量:高》
勇者。
頭。
抱えかける。
でも。
笑う。
「……もう」
「好きにして」
観客。
「うおおおおお!!」
実況。
「許可出たァァァァ!!」
勇者。
「そういう意味じゃない!!」
ぷるちゃん。
勇者。
じー。
見る。
「ぷる」
勇者。
「君まで」
「筋肉見るの」
「やめてくれる?」
ぷるちゃん。
にゅ。
身体。
また。
筋肉っぽく。
盛る。
勇者。
「張り合うな!!」
観客。
爆笑。
でも。
勇者。
その笑い。
聞いて。
ゆっくり。
胸。
手。
置く。
もう。
鎧。
ない。
硬い。
胸板。
その下。
心臓。
動く。
どく。
どく。
勇者。
「……これ」
自分の。
腕。
見る。
傷。
ある。
古い。
新しい。
筋肉。
盛り上がる。
剣を。
振った。
腕。
盾を。
持った。
腕。
仲間を。
引き上げた。
腕。
落ちそうな。
子供。
抱えた。
腕。
勇者。
脚。
見る。
何千。
何万。
歩いた。
脚。
山。
越えた。
沼。
渡った。
逃げた。
追った。
立った。
脚。
腹。
背中。
肩。
全部。
勇者という。
称号が。
与えた。
ものではない。
勇者。
拳。
握る。
「これだけは」
観客。
少し。
静か。
勇者。
「誰かに」
「もらったものじゃない」
魔王。
目。
上げる。
賢者。
息。
止める。
勇者。
拳。
胸。
当てる。
「この身体は」
「僕が」
「鍛えた」
一歩。
「この技術は」
「僕が」
「覚えた」
もう一歩。
「この痛みは」
「僕が」
「耐えてきた」
傷。
一つ。
指。
触れる。
「この怖さも」
「僕が」
「抱えてきた」
ぷるちゃん。
「ぷる」
勇者。
笑う。
「聖剣も」
「鎧も」
「祝福も」
「仲間も」
客席。
仲間。
見る。
「全部」
「僕の旅路だ」
「全部」
「僕の誇りだ」
一拍。
「でも」
自分。
胸。
叩く。
ドン。
「これが」
「その旅路を」
「歩いてきた」
拳。
握る。
「僕だ」
観客。
静寂。
勇者。
構える。
ただの。
構え。
魔法。
なし。
聖剣。
なし。
祝福。
なし。
でも。
さっきより。
大きく。
見える。
興行主。
「……なんだ」
賢者。
「何が?」
「装備」
「全部」
「外したのに」
勇者。
リング。
中央。
「強そうに」
「なってません?」
賢者。
笑う。
「当然だ」
「今まで」
「隠れていたものが」
「見えるようになった」
ぷるちゃん。
「ぷる」
勇者。
腰。
落とす。
足。
肩幅。
膝。
柔らかい。
背。
真っ直ぐ。
圧倒的。
muscle。
だが。
見せ筋。
ではない。
旅路。
そのもの。
何万回。
剣を。
振った。
筋肉。
何千回。
倒れて。
起きた。
筋肉。
荷物。
背負った。
筋肉。
仲間。
背負った。
筋肉。
走った。
登った。
泳いだ。
戦った。
生き残った。
全部。
積み上がった。
身体。
魔王。
低く。
笑う。
「なるほど」
古竜。
「陛下?」
魔王。
勇者。
見る。
「勇者だから」
「強いのでは」
「ないのだな」
賢者。
答える。
「ええ」
「強い者が」
「歩き続け」
「その結果」
「勇者と」
「呼ばれたのでしょう」
勇者。
聞こえる。
「いや」
少し。
笑う。
「最初は」
「全然」
「強くなかったよ」
仲間。
客席。
「本当に弱かった!!」
勇者。
「そこは」
「もう少し」
「言い方あるでしょ!?」
観客。
笑う。
勇者。
でも。
構え。
崩れない。
「だから」
ぷるちゃん。
見る。
「ここから」
一拍。
「僕自身で」
「行く」
ぷるちゃん。
沈む。
「ぷる」
勇者。
手。
招く。
「来い」
ぷるちゃん。
走る。
勇者。
待つ。
質量。
一発。
来る。
勇者。
避ける。
半歩。
だけ。
二発目。
勇者。
受ける。
ドン!!
胸。
真正面。
でも。
足。
動かない。
観客。
「おおおおお!!」
勇者。
ぷるちゃん。
身体。
硬化。
する。
瞬間。
見る。
手。
差す。
掴む。
腰。
入れる。
背中。
一気。
張る。
観客。
「背中ァァァァァ!!」
勇者。
「今は」
「技を見て!!」
持ち上げる!!
魔法。
なし。
祝福。
なし。
ぷるちゃん。
完全。
浮く。
興行主。
「……上がった」
賢者。
「純粋に」
勇者。
一歩。
踏む。
身体。
反る。
ドッッッッン!!
ブレーンバスター!!
ぷるちゃん。
マット。
潰れる!!
勇者。
そのまま。
立つ。
ロープ。
走る。
速い。
鎧。
ない。
さらに。
速い。
反動。
戻る。
跳ぶ。
両脚。
伸びる。
ドッッッ!!
ドロップキック!!
ぷるちゃん。
吹っ飛ぶ!!
勇者。
着地。
転がる。
即。
立つ。
観客。
総立ち。
実況。
叫ぶ。
「速い!!」
「軽い!!」
「いや!!」
「違う!!」
「余計なものが!!」
「何もないィィィィ!!」
勇者。
ぷるちゃん。
追う。
倒れた。
ところ。
肘。
落とす。
ドン!!
フォール!!
レフェリー。
「ワン!!」
ぷるちゃん。
返す!!
勇者。
すぐ。
離れる。
立つ。
待つ。
ぷるちゃん。
戻る。
「ぷる……」
勇者。
呼吸。
荒い。
でも。
笑ってる。
観客。
誰か。
叫ぶ。
「勇者ァァァァ!!」
次。
「いい身体だァァァ!!」
次。
「いい技だァァァ!!」
次。
「いい顔してるぞォォォ!!」
勇者。
「ありがとう!!」
今度は。
迷わない。
そして。
勇者。
拳。
握る。
「さあ」
「ぷるちゃん」
「ここからは」
一歩。
「勇者でも」
「聖剣使いでも」
「祝福された者でもない」
胸。
叩く。
「僕と」
ぷるちゃん。
指す。
「君だ」
ぷるちゃん。
「ぷる」
観客。
静か。
勇者。
笑う。
「それで」
「十分だろ?」
ぷるちゃん。
身体。
大きく。
揺れる。
「ぷるるるるるる!!」
観客。
爆発。
そして。
リングの脇。
静かに。
並ぶ。
聖剣。
鎧。
護符。
指輪。
聖印。
祝福。
それらは。
捨てられたものではない。
勇者が。
歩いてきた。
道のり。
その証。
そして。
その隣。
何も。
身につけず。
立つ。
一人の男。
彼自身もまた。
その旅路が。
積み重なって。
できていた。
筋肉。
技術。
傷。
心。
全部。
自分のもの。