レスリングスライムが現れた!【マットの上では格は不要!】   作:ヒツジ(ラム肉

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――前回までの『レスリングスライムが現れた!』!!

最弱魔物!!

大型スライム!!

まさかの!!

初勝利ィィィィィ!!

殴られ!!

蹴られ!!

投げられ!!

それでも立った!!

そして!!

《鉄壁のガルド》を!!

巻き!!

投げ!!

回し!!

最後はポールの上からァァァ!!

フライングボディプレェェェェス!!

ワン!!

ツー!!

スリー!!

決着!!

さらに!!

意識を失ったガルドの横で!!

どこからともなく!!

いや売店から!!

お玉を強奪!!

「ぷるるるるるるるる!!」

謎の!!

意味不明の!!

しかしなぜか成立している!!

マイクパフォーマンスゥゥゥゥ!!

誰が教えた!?

知らん!!

何を言った!?

知らん!!

そもそもお玉だ!!

だが観客は沸いた!!

興行主は見た!!

金の匂いを!!

いや!!

可能性を!!

最弱魔物が!!

リングの上では!!

客を!!

沸かせる!!

そして!!

第一試合は終わった!!

だがァ!!

一試合で終わるわけがない!!

次なる相手は!!

人間ではない!!

技術ではない!!

小細工ではない!!

圧倒的な!!

純粋な!!

怪力だァァァァァ!!

第二章!!

怪力対粘体!!

開幕ゥゥゥゥゥ!!


第二章 怪力対粘体
第6話 もっと強ぇ奴を出せ!


ドォォォン!!

 

男が飛んだ。

 

本当に。

 

飛んだ。

 

人間一人が。

 

リング中央から。

 

ほとんど水平に。

 

「うわああああああ!!」

 

ロープへ。

 

バァン!!

 

反動。

 

そして。

 

場外。

 

ドサァッ!!

 

「そこまで!」

 

レフェリーが慌てて腕を振る。

 

鐘。

 

カァァァン!!

 

会場。

 

一瞬の静寂。

 

そして。

 

「うおおおおおおおお!!」

 

大歓声。

 

リング中央。

 

その歓声を浴びる巨体。

 

人間より。

 

頭二つ。

 

いや。

 

三つほど高い。

 

腕は丸太。

 

胸板は壁。

 

赤褐色の皮膚。

 

口元から覗く大きな牙。

 

オーガ。

 

「ガァァァハハハハハ!!」

 

両腕を広げる。

 

胸を叩く。

 

バン!

 

バン!!

 

「弱い!!」

 

観客。

 

「うおおおお!!」

 

「強ぇぇぇ!!」

 

「三人目だぞ!!」

 

「また場外だ!!」

 

リング下。

 

さっき吹き飛ばされた男が。

 

仲間に抱え起こされていた。

 

「……死ぬかと思った」

 

仲間。

 

「でも生きてるな」

 

「あいつ、ちゃんと加減してやがる」

 

「加減であれかよ」

 

リング中央。

 

オーガが。

 

また。

 

胸を叩く。

 

「次ァ!!」

 

興行主。

 

リング脇。

 

困った顔。

 

「え」

 

オーガ。

 

「次を出せ!!」

 

「いや、その」

 

「まだいるんだろォ!!」

 

興行主が。

 

出場者控えを見る。

 

目を逸らされた。

 

一人。

 

二人。

 

三人。

 

全員。

 

目を逸らした。

 

「…………」

 

興行主。

 

汗。

 

オーガ。

 

「どうしたァ!!」

 

リング上から。

 

大笑い。

 

「もう終わりか!?」

 

観客。

 

「次いけー!」

 

「誰か出ろー!」

 

「金払ってんぞー!」

 

興行主。

 

「分かってます!」

 

本日の興行。

 

目玉。

 

怪力オーガによる。

 

勝ち抜き戦。

 

北方からやってきた旅のオーガ。

 

名は。

 

バルガ。

 

本人曰く。

 

「腕っ節で飯を食っている」

 

とのこと。

 

傭兵。

 

荷運び。

 

護衛。

 

賭け試合。

 

力比べ。

 

何でもやる。

 

今回。

 

ラグナで格闘興行があると聞き。

 

自分から乗り込んできた。

 

最初。

 

興行主は喜んだ。

 

オーガ。

 

珍しい。

 

強い。

 

見栄えがする。

 

客も入る。

 

実際。

 

入った。

 

そして。

 

強かった。

 

予想以上に。

 

一人目。

 

組み付いてきたレスラーを。

 

持ち上げ。

 

投げた。

 

二人目。

 

拳自慢の傭兵を。

 

真正面から殴り合い。

 

沈めた。

 

三人目。

 

体格自慢の冒険者を。

 

豪快に。

 

場外まで吹っ飛ばした。

 

客は大喜び。

 

問題は。

 

次が。

 

いない。

 

バルガ。

 

「おい興行主!!」

 

「はい!」

 

「まさかこれで終わりじゃねえよなァ!!」

 

「もちろんです!」

 

反射的に答えた。

 

係員。

 

小声。

 

「いるんですか?」

 

興行主。

 

小声。

 

「いない」

 

「どうするんです」

 

「考えてる」

 

バルガ。

 

「聞こえてるぞォ!!」

 

「耳までいい!」

 

観客。

 

爆笑。

 

バルガも笑う。

 

「ガハハハハ!!」

 

悪意はない。

 

ただ。

 

楽しいのだ。

 

強い相手と。

 

殴る。

 

組む。

 

投げる。

 

それだけ。

 

「人間ども!!」

 

バルガが。

 

観客席へ向く。

 

「これで終わりかァ!!」

 

「もっといるだろォ!!」

 

「騎士でも!!」

 

「獣人でも!!」

 

「ミノタウロスでも!!」

 

「誰でもいい!!」

 

両拳を。

 

合わせる。

 

ゴン!!

 

「強ぇ奴を出せェェェェ!!」

 

会場。

 

「うおおおおお!!」

 

興行主。

 

「…………」

 

誰でも。

 

いい。

 

今。

 

そう言った。

 

「……本当に?」

 

バルガ。

 

「あぁ!?」

 

興行主が。

 

リングへ近づく。

 

「今、誰でもいいと?」

 

「言った!!」

 

「種族も問わない?」

 

「問わん!!」

 

「人間じゃなくても?」

 

「構わん!!」

 

興行主。

 

口元。

 

ゆっくり。

 

上がる。

 

「……そうですか」

 

係員。

 

その顔を見た。

 

「その顔やめてください」

 

「何が?」

 

「絶対ろくでもないこと考えてます」

 

「失礼な」

 

「何するんです?」

 

興行主。

 

懐から。

 

小さな。

 

金属製の板を取り出した。

 

魔法文字。

 

淡く。

 

光る。

 

「迎えに行ってくる」

 

「どこへ?」

 

興行主。

 

笑う。

 

「酒場」

 

酒場《跳ね鹿亭》。

 

昼下がり。

 

店内。

 

静か。

 

昼飯時を過ぎ。

 

夕刻にはまだ早い。

 

常連が二人。

 

酒を飲み。

 

店主が。

 

カウンターを拭いている。

 

そして。

 

裏口。

 

日当たりのいい場所。

 

大型スライム。

 

「ぷるぅ……」

 

寝ていた。

 

完全に。

 

寝ていた。

 

身体。

 

平べったい。

 

少し。

 

広がっている。

 

その横。

 

酒場の娘。

 

椅子に座り。

 

豆の筋を取っていた。

 

「ぷるちゃん」

 

「ぷるぅ」

 

「寝てるねぇ」

 

「ぷる……」

 

そのとき。

 

裏庭中央。

 

空間が。

 

ゆら。

 

歪む。

 

娘。

 

「あ」

 

ぼんっ。

 

興行主。

 

登場。

 

「こんにちは!」

 

店主。

 

酒場から。

 

「うるせえ!」

 

「すみません!」

 

娘。

 

「この前の人」

 

「はい!」

 

興行主。

 

服を整える。

 

咳払い。

 

「本日はお願いがありまして」

 

娘。

 

「ぷるちゃん?」

 

「はい!」

 

大型スライム。

 

「ぷるぅ……」

 

寝ている。

 

興行主。

 

少し。

 

待つ。

 

「…………」

 

娘。

 

「起こす?」

 

「お願いします」

 

娘。

 

ぺち。

 

「ぷるちゃん」

 

「ぷる」

 

ぺちぺち。

 

「お客さん」

 

「ぷる?」

 

身体。

 

集まる。

 

ぷるん。

 

いつもの形。

 

興行主。

 

何故か。

 

姿勢を正す。

 

「先日は素晴らしい試合でした」

 

スライム。

 

「ぷる」

 

「本日も是非、一試合」

 

「ぷる?」

 

興行主。

 

説明を試みる。

 

「大きな相手です」

 

両手を。

 

広げる。

 

「こう」

 

スライム。

 

「ぷる」

 

「ものすごく力が強い」

 

力こぶ。

 

作る。

 

「こう!」

 

娘。

 

「何やってるんです?」

 

興行主。

 

「本人への説明です」

 

「伝わってます?」

 

「分かりません」

 

スライム。

 

「ぷる?」

 

伝わっていなさそう。

 

興行主。

 

「ええい」

 

指。

 

スライム。

 

指。

 

遠く。

 

そして。

 

拳同士を。

 

ぶつける。

 

「試合!」

 

スライム。

 

「…………」

 

身体の中。

 

白い。

 

細い。

 

安っぽい。

 

先割れスプーン。

 

僅かに。

 

浮いた。

 

「ぷる」

 

興行主。

 

「お」

 

娘。

 

「行きたいの?」

 

スライム。

 

「ぷるん」

 

「じゃあいいよ」

 

興行主。

 

「ありがとうございます!」

 

店主。

 

酒場から。

 

「晩飯までに返せよ!」

 

「努力します!」

 

「努力じゃなく返せ!」

 

「返します!」

 

娘。

 

「あと無茶させないでくださいね」

 

興行主。

 

一瞬。

 

前回の。

 

ジャイアントスイング。

 

ポール。

 

フライングボディプレス。

 

お玉。

 

思い出す。

 

「……本人が無茶する場合は?」

 

娘。

 

「止めてください」

 

「レフェリーに任せます!」

 

スライム。

 

「ぷる」

 

興行主。

 

魔法板を。

 

掲げる。

 

淡い光。

 

空間。

 

再び。

 

歪む。

 

「では!」

 

娘。

 

「行ってらっしゃい」

 

「ぷるん!」

 

光。

 

会場。

 

バルガ。

 

まだ。

 

リングにいた。

 

観客相手に。

 

腕相撲をしていた。

 

「ぬおおおおお!!」

 

客。

 

「無理無理無理!!」

 

ドン!

 

客の腕。

 

マット。

 

「ガハハハハ!!」

 

「次!!」

 

レフェリー。

 

「試合会場で客と腕相撲するな!」

 

「暇なんだよ!!」

 

そのとき。

 

リング脇。

 

空間。

 

ゆら。

 

観客。

 

「あ?」

 

ぼんっ。

 

興行主。

 

出現。

 

その隣。

 

「ぷる」

 

大型スライム。

 

沈黙。

 

バルガ。

 

「…………」

 

観客。

 

「…………」

 

スライム。

 

「ぷる?」

 

バルガ。

 

興行主を見る。

 

スライムを見る。

 

もう一度。

 

興行主。

 

「……おい」

 

「はい」

 

「俺は」

 

「はい」

 

「強ぇ奴を出せと言った」

 

「はい」

 

「誰でもいいとも言った」

 

「はい」

 

「だからって」

 

指。

 

スライム。

 

「スライムじゃねえか!!」

 

観客。

 

どっと笑う。

 

興行主。

 

平然。

 

「大型です」

 

「そういう問題じゃねえ!!」

 

「強いですよ」

 

「スライムだぞ!?」

 

その瞬間。

 

観客席。

 

一角。

 

男が。

 

立った。

 

「……あ」

 

隣。

 

「どうした?」

 

男。

 

目を見開く。

 

「こいつだ」

 

「何が?」

 

「あのスライムだ!!」

 

別の場所。

 

「おい!」

 

「来たぞ!」

 

「ガルドとやった奴だ!!」

 

ざわ。

 

ざわざわ。

 

第一試合を。

 

見ていた者。

 

それを。

 

人から聞いた者。

 

噂だけ。

 

聞いていた者。

 

少しずつ。

 

声。

 

広がる。

 

「スライム?」

 

「例の?」

 

「お玉の?」

 

「お玉?」

 

「最後にお玉で何か喋った奴」

 

「意味分かんねえよ!」

 

そして。

 

リング脇。

 

どこからともなく。

 

「挑戦者ァァァァァァ!!」

 

興行主。

 

びくっ。

 

振り向く。

 

いた。

 

木製の漏斗。

 

例の男。

 

「お前また来たのか!!」

 

実況。

 

「当然です!!」

 

「雇ってないぞ!!」

 

「客が望んでいます!!」

 

観客。

 

「実況やれぇぇぇ!!」

 

「もっと叫べー!」

 

興行主。

 

「…………」

 

実況。

 

胸を張る。

 

「ほら!」

 

「くそっ!」

 

バルガ。

 

「何なんだこの興行は!?」

 

実況。

 

構わず。

 

叫ぶ。

 

「前回!!」

 

「《鉄壁のガルド》との激闘を制した!!」

 

「謎!!」

 

「正体不明!!」

 

「人語不明!!」

 

「しかし!!」

 

「なぜか客には通じる!!」

 

「大型スライムゥゥゥゥ!!」

 

観客。

 

「うおおおおおお!!」

 

スライム。

 

「ぷる?」

 

バルガ。

 

一瞬。

 

眉を上げる。

 

「……ガルド?」

 

観客席。

 

「勝ったぞ!」

 

「最後はポールから飛んだ!」

 

「ガルドを回してた!」

 

「お玉で煽った!」

 

バルガ。

 

「…………」

 

スライムを見る。

 

さっきまでの。

 

呆れ。

 

少し。

 

消える。

 

代わりに。

 

興味。

 

「ほう」

 

リングから。

 

身を乗り出す。

 

「お前」

 

スライム。

 

「ぷる」

 

「本当に」

 

牙。

 

見せる。

 

笑う。

 

「やるのか?」

 

スライム。

 

一拍。

 

身体の中。

 

先割れスプーン。

 

ぬるり。

 

外へ。

 

出る。

 

観客。

 

「あ」

 

「出た」

 

「来るぞ」

 

スライム。

 

先割れスプーンを。

 

掲げる。

 

バルガへ。

 

向ける。

 

「ぷるるるるるるる!!」

 

観客。

 

「うおおおおおおお!!」

 

実況。

 

「出たァァァァァ!!」

 

「謎の!!」

 

「先割れ!!」

 

「スプーンだァァァァァ!!」

 

バルガ。

 

「…………」

 

一瞬。

 

ぽかん。

 

そして。

 

腹を抱えた。

 

「ガァァァハハハハハハ!!」

 

笑う。

 

大笑い。

 

「いい!!」

 

胸。

 

バン!!

 

「面白ぇ!!」

 

もう一発。

 

バン!!

 

リング中央へ。

 

立つ。

 

両腕を。

 

広げる。

 

「上がってこい!!」

 

スライム。

 

縮む。

 

ぼよんっ!

 

リングへ。

 

べちゃ。

 

ロープを。

 

ぬるり。

 

抜ける。

 

バルガ。

 

真正面。

 

「最初は」

 

自分の胸を。

 

親指で。

 

指す。

 

「お前からだ」

 

スライム。

 

「ぷる?」

 

「聞いたぞ!!」

 

「ガルド相手に!!」

 

「妙な連打をやったらしいじゃねえか!!」

 

観客。

 

「あれだ!」

 

「ぷるぷるコンボ!」

 

「やれー!」

 

実況。

 

「バルガ選手!!」

 

「まさかの!!」

 

「挑戦者の攻撃を!!」

 

「真正面から受ける構えェェェ!!」

 

バルガ。

 

胸板を。

 

突き出す。

 

腕を。

 

大きく。

 

広げる。

 

「来いやァ!!」

 

バン!!

 

胸を叩く。

 

「スライム!!」

 

バン!!

 

「お前の全部!!」

 

バァン!!

 

「この俺が!!」

 

「受けてやるゥゥゥゥ!!」

 

観客。

 

立つ。

 

スライム。

 

じっと。

 

バルガを見る。

 

そして。

 

身体が。

 

右へ。

 

ゆっくり。

 

傾く。

 

第一試合を見ていた客。

 

気づく。

 

「来る」

 

左へ。

 

「来るぞ!!」

 

右。

 

左。

 

身体。

 

揺れる。

 

反動。

 

溜める。

 

実況。

 

絶叫。

 

「出るかァァァァ!!」

 

「《鉄壁のガルド》を苦しめた!!」

 

「右!!」

 

「左!!」

 

「反動!!」

 

「質量!!」

 

「粘体式連続打撃ィィィ!!」

 

スライム。

 

「ぷるるるるるる!!」

 

バルガ。

 

「ガハハハハ!!」

 

両者。

 

リング中央。

 

動く。

 

「さあ!!」

 

実況。

 

「第二試合!!」

 

「怪力!!」

 

「対!!」

 

「粘体!!」

 

「始めろォォォォォォ!!」

 

鐘。

 

カァァァァァァン!!

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