王位を継ぎそうにない好みのショタ第3王子を成長するまで愛でて放流する気だったのに気付いたら王妃にされて囲われてしまったんだけれども(白目) 作:ステラ
歳ですなぁ……
「もう十分だ、俺が愚かだったよ本当に。失望した」
返送されてきた論文の紙束をその辺に投げ捨てる。
この国の魔法士の一員として尽くしてやるのも今日限りだ。俺は全てを見限った。
どいつもこいつも阿呆ばかり。
この国に未来が無いのはとっくの昔に知ってはいたが、上がダメなら下もダメになるものなのだ。
それが改めてよく分かった。
自分達が贅沢をする事ばかりにかまけてる国王。
そのお零れに群がり必死に胡麻をするしか脳のない貴族、市民を守らず暴力で押さえ付けるだけの騎士たち。
どいつもこいつも不平不満をより下へ下へと押し付けて自分たちの都合のいいように世の中を動かしている。
ならばやはり俺が変えるしかない。
この腐った国を俺が……平民出身だという事だけで俺という存在を認めなかったこの国を滅ぼしてやるしかない。
本物の魔法士の力という物を教えてやらなければ。
手始めにこの魔法学園の教師共を支配するところから始めるか、俺を見下していた奴らを従えて国盗りを行う……なんとも唆るシチュエーションだ。
「失礼いたしますわ、こちらにジョンソン教授が居られると伺ったのですが」
「……それは私の事だが、誰だね君は?」
貴族出身の講師達が教鞭を執る本棟からは遠く離れた別棟のにあるこの教室に生徒が来るなど、珍しい事もあったものだ。
カリキュラムの一環として一応授業は組まれているが、俺の授業や講義に参加する者など一部の新入生や平民に下級貴族程度のもの。
しかし今入ってきた少女は、そのどちらにも当てはまる容姿をしていなかった。
「ご挨拶が遅れましたわ、申し訳ありません。わたくしの名はシンシア、シンシア・ダイショスターキでございます」
優雅な一礼を見せふわりとスカートが舞う。
とても絵になる完璧な姿勢だった。
「今日の講義はもう終了だぞ新入生、帰りなさい」
「いいえ帰りません。だってようやく見つけたマトモな授業をしてくれそうな先生なんですもの!」
亜麻色の髪と紺碧の瞳を持ち、家紋の入った朱色のスカーフを首元に巻き付けている。
貴族のくせに友好的な態度を見せてはいるが、それ以外の特徴のすべてが完全に貴族子女の特徴丸出しだった。
面倒な事になった。
魔法学園に通う貴族など魔法の才能はそこそこで経歴に泊をつける為だけに通う者ばかり。
貴族の家名はよく知らないが朱色のスカーフなら恐らくは侯爵家かそれに比する家格の貴族家だ、本当に面倒な事になったものだ。
「貴族の授業は本棟で行われている筈だが、迷子にでもなったのか?」
「違いますわよ! わたくしが習いたいのはあんなお遊戯ではなくて、本格的な魔法なんですの!」
ああ、偶に居るのだ。
自分は魔法の才能に優れていると勘違いして、こうしてわざわざ教師の元にやって来ては教師を困らせるタイプの勘違い貴族が。
おおかた家で雇った家庭教師あたりにでも天才ですね等と褒めそやされ得意気になっているのだろう。
そういう輩は非常に扱いが面倒だ。
本当の事を言って身の程を知ってくれるならば可愛いもの、大体の者はここで挫折を知りその怒りや屈辱の捌け口として教師をありもしない嘘で貶めてくる。
なまじ権力を持っているのだからタチが悪い。
だから対処法は1つしかない。
何でもいいからやって見せろと伝えて、何が起ころうとも『凄いですねさすがは貴族様です』と褒めてやれば良い。
それから本棟の講師に連絡して引き取ってもらえばいいのだ、私には荷が勝ち過ぎており教えられませんとでも付け加えればプライドをくすぐれて尚良いだろう。
「わかった、それじゃあの的に向かって何か得意な魔法を使って見せてみろ」
「はい、質問ですわ! 何を
「ああ、何を
「わっかりましたわぁ!」
我が意を得たりと言わんばかりの晴れ晴れとした顔で右手を的へと向ける少女。
構築され掛けの魔法式を盗み見るに十中八九は、風の中級魔法。
この歳の貴族の魔法使いならばまぁまぁと言ったところだが、それだけだ。
特に目を見張るようなものはない。
(及第点と言った所か、どちらにしろ俺がわざわざ教える必要性も無いな)
極一般的なレベルの、普通の魔法が放たれる。
面倒な事だがそれっぽく褒めてやらなければな、と思考に耽ようとしたその瞬間───
「
───前提は覆った。
(バカな、何故
素直に驚いた。呆気にとられた。
だからこそ、咄嗟に教室そのものを補強する為に障壁を張れたのは我ながら奇跡に近い。
分析するに、何も考える事も出来なく成る程の衝撃を受けて頭が空っぽになっていたからこそ。
無意識に最高効率で行えたからこそ。
今、原型を留めていない的であったモノの破片や長机だった物が教室中に散乱する程度の被害で済んで居るのだ。
今の魔法が完全に解き放たれていたら、この教室どころか別棟の一部建物ごと彼方まで吹き飛んでいただろう。
威力、規模、それに何より制御能力。
どれをとっても超一級だ。
いや、それよりも何よりも……!
「お前、何故
「何故って? 先生の魔法理論を拝見させて頂いたからに決まっておりますわ、意外と簡単ですのね魔法って」
「……ちょっと待て、お前。魔法を覚えてどの位になる? 5年か? 10年か?」
「入学してから覚えましたから、まだ1週間ですわね! ようやく遠慮なしに魔法を放つ事が出来てテンションぶち上げですわぁ〜!」
(嘘だろう……?)
わたくし初体験ばかりで感動に打ち震えていましてよ〜!
などと呑気にヘラヘラと笑っているこいつは、俺が10年掛けて構成して満を持して発表した論文を。
あまりにも『再現性が無い』等という下手くそ共の下らない理由で魔法院に棄却された魔法理論を、高密度魔力運用法を
何だそれは。
そんな事が出来るやつが居るのか!?
この俺のように幼い頃からひたすら修練を重ねて、それでも才なき者には到達し得ない領域の魔力運用を僅か12歳のガキが。
たったの1週間かそこらで!?
それも貴族のガキなんかが───いや、なんのことは無い。俺も自分に才能があるだなどと自惚れていた阿呆の1人だったという話か。
こいつの話に嘘は感じられない。
居るのか!
この世には本物の天才をも凌駕する、天災とも呼べる人間が……っ!
知らなかった。
ああ、最早この国のことなどどうでも良い。
俺は見つけた。
俺の全てを教えて、それを上回ってくれるかも知れない本物の才能に……ッ!!
「そうか。よし、明日から俺が付きっきりでお前の魔法を見てやろう」
「本当ですの! ありがとうございますジョンソン教授、ご指導ご鞭撻のほど宜しくお願い致しますわ!」
「……いや、俺の事は師匠と呼べ」
「はい? 師匠、ですか」
「そうだ、お前には俺の持つ全てを教えてやる! 今日からは俺を師として崇めるといい」
「よく分かんねぇですけど、分かりましたわ師匠!」
最高の生徒を見つけたと、その日の俺は喜んでいた。
次の日から俺は、どうしてこのアホを弟子にしてしまったのかを日々後悔しながら師匠としての役割を果たしていくことになるが。
それはまた。
別の話だ。
師匠の魔法理論こそが、後世でシンシアの魔法理論として伝わっている物の雛形である。
その特徴は何と言っても魔力“量”そのものを強化する事であり、一般的な魔法士の魔力量を100とした場合その100倍以上の魔力量を擬似的に運用可能にする究極の効率化である。
才なき者には一生使えず。
才ある者の中でもひと握りの存在が半生を掛けてようやく扱えるレベルであり。
これをゼロの状態から10年で魔法理論として構築し体系化した師匠は天才中の天才である。
シンシア「( ˶'ᵕ'˶) 理論を見たら何となく分かりましたわ、魔法って簡単ね♪」←??????