本当は金曜か土曜辺りに投稿したかったのですが積みゲーやってたら遅くなってしまった
オーロ・ジャクソン号は穏やかな風に乗り、新世界の荒海を順調に進んでいた。
甲板では、見習いたちが、いつものように騒がしく過ごしている。
「ミラさん! 見てくれよこれ! さっき釣れた巨大マグロだ!」
バギーが自分の背丈ほどもある大きな魚を抱え上げ、得意気に自慢してみせる。
「……ほう、大物だな。今日の晩飯は刺身と炙り焼きか」
ミラが顎に手を当てて応えると、バギーの隣で木刀を振っていたシャンクスが汗を拭いながら笑った。
「ミラさん! さっきの素振り、これで合ってるかな? 腕の引き方がまだ甘い気がするんだけど……」
「どれ……ふむ。悪くはないが、刃の軌道がわずかにブレている。背中と腰の軸を意識しろ。剣は腕だけで振るものではない」
「はいっ!」
シャンクスは嬉しそうに頷き、再び真剣な眼差しで木刀を振り始めた。
ミラはそんなシャンクスの成長をどこか目を細めて見つめていた。ゴッドバレー事件以降、彼に付きまとっていたマリージョアの影を払拭できたことは、この少年の表情を確実に明るくさせていた。
「わははは! シャンクスもバギーも精が出るなぁ! レイリー、酒のおかわりだ!」
船首の特等席で酒瓶を傾けるロジャーが、機嫌よく声を張り上げる。
「たく……少しは静かに飲めんのか、ロジャー。酒の在庫もそろそろ怪しくなってきたぞ」
呆れ顔で溜息をつきつつも、レイリーは煙草に火を点け、穏やかな海を見渡した。
誰もがこの穏やかな航海がしばらく続くと思っていた――その時である。
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バシャァァァンッ!!
「……ッ!?」
突如として、船の右舷数千メートルの海面が爆発したかのように弾け飛んだ。
巨鯨すら一撃で押し潰すほどの凄まじい水柱が立ち昇り、オーロ・ジャクソン号の巨体が大きく揺れ動く。
「な、なんだぁぁぁ!? 敵襲か!?」
バギーが釣ったマグロを放り出し、目を飛び出させて叫ぶ。
ミラは即座に背の『政宗』の柄に手を掛け、視線を水柱の上がった方角へと鋭く向けた。
水平線の彼方から、一隻の超大型海軍軍艦が猛スピードで接近してきていた。
その船首に掲げられているのは、骨を咥えた犬の顔を模した、あまりにも有名な船首像――。
「わはははは! 来やがったか! 相変わらず挨拶代わりにでけぇ弾を投げ込んできやがる!」
ロジャーが酒瓶を甲板に置くと、嬉しそうにニカッと歯を見せて笑った。
その顔には恐怖など微塵もなく、長年のライバルを迎える歓喜の色が満ちあふれている。
「ロジャーあいつは一体誰だ? 海軍の軍艦のようだが、さっきの衝撃……大砲の威力とは到底思えんぞ」
ミラが警戒を解かずに問うと、レイリーが苦笑いを浮かべながら肩をすくめた。
「海軍本部中将……『拳骨のガープ』だ。ロジャーを捕まえるために、東の海から新世界まで何度断っても追いかけてくる、海軍一の分からず屋さ」
「ガープ……『拳骨』か」
ミラはその異名を口の中で呟く。
遠目からでもはっきりと伝わってくる、尋常ではない圧倒的な生物としての「強さ」の気配。1年前の神の騎士団のような不気味で異質な気配とは異なり、純粋な肉体と覇気を限界まで鍛え上げた者だけが纏う、骨太で重厚な覇道。
軍艦の甲板の上に、巨大な犬の頭の被り物をした大柄な男が立っていた。
その腕には、大人の胴体ほどもある巨大な鉄球が握られている。
「ガハハハハ! 見つけたぞロジャーぁぁぁッ!! 今日こそ年貢の納め時だ! おとなしく縄につきやがれ!!」
そう叫ぶや否や、ガープは手に持った巨大な鉄球を、まるで手鞠でも投げるかのような軽々とした動作でブンブンと振り回した。
「喰らいやがれ! **『大拳骨(だいげんこつ)』**ッ!!」
ビュォォォォォォンッ!!
空気を切り裂く凄まじい風切り音とともに、山のような巨大鉄球が超音速でオーロ・ジャクソン号目掛けて飛来する! 大砲の砲弾など比較にならない、文字通りの質量兵器。
「ひぃぃぃぃッ!? あんなの喰らったら船が沈むぅぅ!!」
バギーが頭を抱えて悲鳴を上げる。
「ふん……大砲代わりに鉄球を手投げだと? 噂以上の馬鹿力だな」
ミラが不敵に口元を歪め、一歩前へ踏み出した。
「ミラ、手出しするなよ! ガープは俺の獲物――」
「言っている場合か。船に当たればタダでは済まん」
ミラはロジャーの制止を耳半分に聞き流し、跳躍。
飛来する巨大鉄球の正前に躍り出ると、空中にて一瞬で背の『政宗』を抜き放った。
「――**『一閃』**――ッ!!」
ズバァァァァンッ!!
炎と黒紫の覇王色を纏った刀身が、巨大な鉄球を正面から一刀両断する。
真っ二つに叩き斬られた超重量の鉄砲玉は、炎に包まれながら爆発を起こし、オーロ・ジャクソン号の両脇の海へとドカンと落ちて水柱を上げた。
「……ぬ? あの黒い外套の剣士……」
軍艦の船首で、ガープが被り物の目を鋭く光らせた。
「ほう……ロジャーの船に乗り込んだ新人か。初手でいきなり**懸賞金3億ベリー**がついた『黒龍』ミラだな!」
ガープは海軍本部から回されてきた手配書の顔写真を思い出していた。突然現れて高い懸賞金をつけられた異例のルーキー。その実力を一目で見抜いたガープの口元が、猛獣のように釣り上がる。
「噂以上の斬撃じゃねぇか……! だが、懸賞金3億で収まるような玉じゃねぇな!」
ガープが拡声器も使わずに大声を張り上げると、ロジャーが船首に立ち、腰に手を当てて誇らしげに胸を張った。
「わははは! 流石はガープ、もうミラの顔と名前を知ってたか! こいつは俺たちの新しい仲間で、俺の最高の相棒だぞ!」
「ふん……相棒だと? ロジャー、お前がそこまで言うとはな……」
ガープは巨大な犬の被り物を脱ぎ捨てると、ニヤリと笑いを浮かべた。その両拳には、目に見えるほどの濃密な黒紫の覇気がバリバリと音を立てて纏い始める。
「行くぞロジャーぁぁぁッ!!」
「来いガープぅぅぁぁッ!!」
ドンッ!!
待ちきれないと言わんばかりに、ガープとロジャーが同時に跳躍! 空中盤で二人の極限の覇気が激突し、凄まじい衝撃波が天と海を切り割った。
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「オラぁッ! 邪魔だ退きやがれ海軍どもがぁッ!!」
ロジャーとガープが激闘を繰り広げる横で、欲求不満を溜め込んでいた**ダグラス・バレット**が嬉々として海軍の軍艦へ躍り出た。
「ひ、ヒィィィッ!? 『鬼の跡目』バレットだぁぁッ!!」
「能力を使うまでもねぇ! 素手で叩き潰してやるッ!!」
ドガンッ! バカンッ!!
バレットは恐ろしい腕力と武装色の覇気だけで、押し寄せる海軍の将校たちをゴミクズのように薙ぎ払い、副艦の砲塔を力任せに引き抜いては投げ飛ばし、縦横無尽に暴れ回っていた。
「フン……相変わらず粗暴な奴だ」
甲板でバレットの暴れぶりを冷ややかに眺めていたミラ。
その時――ミラの足元の甲板が、凄まじい勢いで白く凍りつき始めた。
「……ぬ?」
「あらら……ずいぶんと物騒な新入りの剣士さんだ」
霜が降りるような音とともに、海軍軍艦の影から一人の背の高い男が姿を現した。
青い海軍のコートを羽織り、アイマスクを額に引っかけた若き海軍将校――ガープの1番弟子である**クザン(のちの青キジ)**だった。
「お前は……」
「海軍本部中将……クザンだ。ガープさんに付いてきたんだが……まさか初手3億の『黒龍』ミラと鉢合わせるとはな。……まあ、お前さんをここで放っておくわけにはいかないんでな」
クザンがハァッと冷気を吐き出すと、その全身が白い氷へと変貌していく。自然系悪魔の実――**『ヒエヒエの実』**の能力。
「冷気使いか……。面白い、手加減はせんぞ」
ミラが『政宗』を構え、刀身に漆黒の炎を滾らせる。
「冷気を散らす炎……噂通りか。――**『アイスサーベル』**ッ!」
クザンが足元の海氷をむしり取り、息を吹きかけて氷の長剣を作り出すと、一気に距離を詰めてミラの首元へ向けて一閃を放った!
キンッ!!
ミラの『政宗』とクザンの『アイスサーベル』が激突する。
だが、その瞬間にミラの刃から放たれた極熱の『炎』が、一瞬にしてクザンの氷剣を根元から溶かし尽くした!
「な……ッ!?」
「生ぬるい」
ミラが間髪入れずに返しの二太刀目を叩き込む!
「――**『黒龍波・氷砕』**――ッ!!」
「ちっ……! **『氷塊・暴雉嘴(アイスブロック・フェザントベック)』**ッ!!」
クザンは即座に腕から氷の巨大な鳥を放ってミラの斬撃を受け止めさせたが、漆黒の覇王色と炎を纏ったミラの斬撃は、氷の鳥ごとクザンの右半身を豪快に削り飛ばした!
ズドンッ!!
「ぐあぁッ……!?」
氷となって砕け散り、後方へ吹き飛ばされるクザン。
自然系の流動化によって死こそ免れたものの、削られた部位から侵食してくる炎の熱と重厚な覇王色の余波に、クザンは冷汗を流して膝をついた。
(何だ……こいつの炎は……!? 普通の火やマグマの熱気とは違う……! 『冷気』そのものを根元から焼き消して絶やすような、異質な熱量……ッ! それに……この覇王色)
「ハァ……ハァ……。……ガープさんの相手(ロジャー)も怪物だが、こっちの怪物も冗談じゃない……。教え子だからって、こんな恐ろしい奴の相手まで任せられたら溜まったもんじゃない」
クザンは苦笑いを浮かべつつも、立ち上がり、再び冷気を練り上げる。
「ほう……俺の炎を喰らって立ち上がるとは、ガープの弟子だけのことはあるな」
ミラが不敵に口元を歪め、一歩踏み出そうとした――その時!
ドカァァァァンッ!!
ロジャーの『神避』とガープの『頑骨』が炸裂し、両者の激突による規格外のショックウェーブが二人とバレットの間に割り込んだ。
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数時間後――。
周囲の海域は、ロジャーとガープの喧嘩、バレットの破天荒な破壊、そしてミラとクザンの熱気と冷気の衝突によって、完全に滅茶苦茶になっていた。
「ハァ……ハァ……! やるなロジャーぁ……!」
「ガハハハ! お前こそ……相変わらず頑丈な奴だ……ッ!」
両者ともボロボロになりながらも、満足気な顔で海を見つめている。
一方、バレットに艦隊を半壊させられ、ミラに冷気を完封されたクザンも、肩をすくめながらガープの隣へと歩み寄った。
「ガープさん……もう限界ですよ。これ以上やったら、うちの艦隊が全滅します」
「ぬぅ……クザン、お前も『黒龍』相手に手を焼いたようだな」
ガープは汗を拭いながら、オーロ・ジャクソン号の甲板で平然と佇むミラを見つめた。
(『黒龍』ミラ……初手で懸賞金3億がついた理由がよく分かった。クザンの『ヒエヒエ』の冷気すら根底から焼き消す炎に、あの圧倒的な覇気……。本部に戻ったら、あいつの手配書の額を跳ね上げさせてやらんとアカンな……)
「おいロジャー! 今日のところは見逃してやる! だが次は必ずお前らを檻にぶち込んでやるからな!」
ガープが肩を怒らせて叫ぶと、ロジャーは豪快に手を振った。
「わははは! 次も返り討ちにしてやるよ! 気をつけて帰れよ、ガープ!」
「全艦、撤退だ! 面舵いっぱい!」
クザンの指揮のもと、半壊した海軍の軍艦がゆっくりと反転し、夕闇の迫る水平線へと去っていくのだった。
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数日後――世界政府本部および海軍本部。
ガープとクザンからの報告、そして神の騎士団ソマーズ聖の追撃部隊全滅の報を受けていた海軍元帥センゴクたちは、顔を蒼白にさせていた。
「もう1年近く前になるが、神の騎士団とCP0を全滅させ、今回は、ガープの鉄球を両断し、クザンの冷気すら完封しただと……!? この『黒龍』ミラという男、もはや野放しにはできん……!」
「バレットの奴も軍艦を半壊させおった……! 二人の手配書を直ちに改訂せよッ!!」
そして、一羽のカモメ(ニュース・クー)によって世界中に新しい指名手配書がバラ撒かれた。
オーロ・ジャクソン号の甲板で、バギーが新しく届いた新聞と手配書を手に取った瞬間、目玉が飛び飛び出さんばかりに絶叫した。
「ギ、ギャァァァァァァッ!! ミラさん! バレット!! 大変だぁぁぁッ!!」
「やかましいぞバギー、朝から大声を出すな」
ミラが呆れ顔で手配書を受け取ると、そこに書かれた数字を見てふむと呟いた。
**『WANTED(指名手配)』**
**“黒龍” ミラ**
**懸賞金:15億ベリー(1,500,000,000-)**
「ほぅ……3億から一気に**15億**か。だいぶ跳ね上がったな」
「げぇっ!? じゅ、じゅうごおくぅぅぅ!? ルーキーの金額じゃねぇよ!!」
バギーが失神しそうになる横で、バレットも自分の手配書をひったくって不敵に鼻で笑った。
**“鬼の跡目” ダグラス・バレット**
**懸賞金:12億ベリー(1,200,000,000-)**
「フン……**12億**か。ミラより低いのは気に入らんが……まあいい。海軍の雑魚どもを痛めつけた甲斐があったというものだ」
「わはははは! 15億に12億か! これでお前らも立派な大海賊の仲間入りだな!」
ロジャーが腹を抱えて大笑いし、レイリーも苦笑いしながら煙草を吹かした。
「神の騎士団を沈め、ガープの1番弟子を退けたんだ。世界政府も相当肝を冷やしただろう15億は妥当な評価さ」
「だが、神の騎士団を潰したのは、もう1年近く前だぞ何故それが今更」
「奴らを知る者は限られてるからな、出来るだけ隠して置きたかったんだろう」
「奴らも面倒なことをするな」
「15億……すごいよミラさん! 世界中に名が知れ渡る額だよ!」
シャンクスが目を輝かせて手配書を見つめる。
ミラは背の愛刀『政宗』の柄を叩いて不敵に口元を歪めた。
「ふん……金額などどうでもいい。賞金稼ぎや海軍が群がってくるなら、まとめて斬り捨てるだけだ」
「さあ野郎ども! 15億と12億の大海賊誕生を祝って、今夜は大宴会だぁぁぁッ!!」
ロジャーの威勢の良い叫び声とともに、オーロ・ジャクソン号に再び歓声と祝砲が響き渡る。
『黒龍』ミラの威名が世界中に轟く中、ロジャー海賊団は秘境を目指して力強く航海を続けるのだった。