ようこそすべてを見通す者(大嘘)のいる教室へ 作:くりってぃ
明らかに普通とは違う体系をしているこの学校…高度育成高等学校へと入学してから、だいたい一週間ほどの時間が経っていた。
学校生活というものを今までに体験したことがなかったオレこと綾小路清隆も、ようやく慣れてきた今日この頃。
「お隣、失礼させてもらうよ。」
食堂で一人ぼっちで黙々と山菜定食を食べていたオレの隣に見知らぬ男子生徒が隣に座ってきた。
なんでオレの隣に?
他にも席は空いているのに、わざわざオレのすぐ近くに座った理由はなんだ?
もしかしてオレと同じで友だちがいないのか?
だとしたら納得できる!!
「少しばかりキミに聞いてみたいことがあってね、一年Dクラスの綾小路清隆くん。」
「オレに聞きたいこと、ですか?オレが答えられるようなことでよければ…。」
当たり障りのない返事をしながら、オレは考える。
なぜこの男がオレの名前を知っているのかを。
誰かに知られるような有名人になった覚えはない。
だとしたら…オレの過去を知っているのか?
いや、そんなことはあり得ない。
おそらく、たまたま知っただけだろう。
或いは、他クラスとも少なくない交流のありそうな平田とか櫛田から聞いたのか。
どうしてオレなんかと接触しうと思ったのかは分からないが、まぁ話を聞けばその理由も分かるはず…。
「この学校でキミに学べそうなことはあったかい?」
思考が一瞬、ほんの一瞬だけ停止した。
どういう意図の質問だ?
まさかオレの過去を、あの施設のことを知っている?
いや、それをこちらから聞くのは論外だ。
動揺を見せるな。
ただ、どこにでもいるような普通の学生らしい返しをすればいい。
「ここは学校という学びの園なんだから、オレたち学生に学ぶことがあるのは当然のことじゃないか?」
何もかもを見透かしているかのような翡翠の瞳がオレのことを射貫いている。
どこか可笑しそうな、オレの反応を楽しんでいるような雰囲気を纏っているその男は、ゆっくりと次の言葉を言い放った。
「ふふっ…今のは聞き方が悪かったね。────ホワイトルームの最高傑作であるキミがここで新たに学ぶことはありそうかな?」
この男、なぜそのことを…?
まさかあの男…オレの父親からの刺客だったりするのか?
「今、この学校にはキミ以外にホワイトルームの息のかかった人はいないから安心してもらって構わないよ。」
「オレに、その言葉を信じろと…?」
「別に信じてもらわなくてもいいさ。僕は事実しか言っていないけど、それでもキミがホワイトルームからの刺客を警戒するのは自由だからね。すべての人間は道具であり、最後に自分が勝ってさえいればいい。それがキミの…キミたちの理論だろう?僕のことも道具として、上手に利用すればいい。」
コイツはいったい…どこまで知っているんだ?
「あぁそうそう。これ、僕の連絡先だよ。誰かと繋ぎたかったけど、まだ誰ともできてないんでしょ?僕なんかで良かったら、交換するよ。」
雰囲気を掴みづらいものから明るいものへと一転させたかと思えば、ニコニコとしながら学校から配布された端末を差し出してくる。
「えっと…ありがとうございます。誰も交換しようとしてくれなくて、悲しかったんですよね。」
残酷なことにその人の言うことはまったくの事実であったために、オレもポケットから端末を取り出して、連絡先を交換する。
人生においてはじめてである連絡先交換。
オレは今、THE・青春というものをしてるな。
「困ったことがあったなら、なんでも教えてね。僕にできることだったら、いくらでも手伝うからさ。あぁそうだ、自己紹介がまだできてなかったね。────貴理星夏だよ。」
いつの間にか食べ終わっていたのか、貴理は空になった器の乗っているトレーを持って去っていく。
「貴理星夏、か。────アイツはいったい、何者なんだ…?」
近づいてきているであろう嵐の予感を感じつつ、オレはそうつぶやくことしかできないのであった。