こちらダンジョンマスター。異世界にてソシャゲ式ダンジョン始めました 作:黒雛
――家柄だけの面汚し。
それがアイビス・ベネディクトが騎士団の一部から囁かれている悪名だ。
アイビスの父は、
『剛剣』の異名は他国にまで轟いており、
そんな父の背を見て育ったアイビスが騎士を志したのは、必然と言えよう。
いつか、父のような立派な騎士になる。
そんな大望を抱きながら、ひたすら剣に打ち込んだ。
幸いなことにアイビスは剣の才能に恵まれており、瞬く間に剣の腕は熟達していった。
敬愛する父に『お前は自分を超える騎士となるだろう』と太鼓判を押された日の熱は、今でも心の奥底にある。
父の言葉はお世辞でも何でもなく、事実、領都で行われた武術大会にだってアイビスは優勝して見せたのだ。
同世代の少年少女のみを絞った子ども向けの大会だったが、隔絶した才能を見せつけたのは間違いない。
アイビスの未来はとても明るい――はずだった。
彼女の未来に暗雲が差し込むようになったのは、ダンジョンに潜るようになってからだ。
どれだけのモンスターを倒しても、どれだけ深い階層に潜っても。
どれだけの冒険をしても、碌に身体能力が上がらない。
そんな自分に対し、周りはどうだ?
アイビスより浅い階層で、明らかに格下なモンスターと安全な戦いをした者たちが、アイビスを凌ぐ身体能力を手に入れていた。
武術大会で歯牙にも掛けなかった少年少女たちが、蝶のように舞い、蜂のようにモンスターを駆逐しているのだ。
その事実はアイビスのプライドを甚く傷付けた。
居ても立っても居られず、彼らに模擬戦を挑み――敢えなく敗北。
武術大会のとき、彼らはアイビスの繰り出す一撃に恐怖していた。
程ほどに手を抜いた攻撃にすら、いっぱいいっぱいだった。
そんな彼らに繰り出した本気の一撃。
しかし、それは呆気なく返された。
相手が無造作に振るった剣の威力に、アイビスは木剣を弾かれてしまった。
痺れる手を抑えて愕然とするアイビスに、彼らもまた愕然としていた。
口にこそ出さなかったが、彼らの目は雄弁に物語っていた。
――え? こんな弱かったっけ?
生まれ持った才能にあぐらをかいたつもりはない。
だが、その才能も、コツコツと積み上げた努力と成果も。
全てを否定された気分だった。
当初、ダンジョンは気まぐれとは聞いていたが、アイビスはどこか他人事だった。
周囲の少年少女より努力をしてきた自分には関係ないと思い込んでいたのだ。
だが、これが現実。
アイビス・ベネティクトは、ダンジョンに愛されていなかった。
ダンジョンという外付けの力の前には、個人が持ち得る才能や実力など大した意味を成さなかったのである。
それでもアイビスは、剣の道を諦めることはしなかった。
寧ろ、一層剣に打ち込んだ。
身体能力の違いがなんだ。
そんなものは剣術で覆してやると、より苛烈な鍛錬を課したのだ。
アイビスには、こうすることしか出来なかった。
認めてしまえば、二度と立ち直れないと分かっていたから。
そうしてアイビスが辿り着いたのが――普通の騎士であった。
剣術だけは超一級品。
しかし、総合的に見れば身体能力が足を引っ張りすぎており、やはり普通という評価に落ち着いてしまう。
そんなアイビスを不憫に思い、彼女の父は副団長の席を用意した。
本来一つしかなかった席をもう一つ増やし、そこに彼女を押し込んだのである。
副団長になれば、迂闊な行動など取れるはずもないのだから。
明らかな職権濫用だ。
しかし、それくらいの強権を翳せる程度には、父が積み上げた功績は大きかったのだ。
無論、最初アイビスは烈火の如く拒否をした。
騎士の風上にも置けない愚行であると痛烈に批判した。
しかし、彼女の父にも考えがあった。
何せ、このままではアイビスが大成することはない。
身体を壊し再起不能になるか、もしくは志半ばで命を落とすかは明白であった。
それはアイビスにとって本望だったが、彼女の父は、それを受け入れることができなかった。
騎士団長の座から降り、既に一線からも離れていた彼は、騎士であることよりも父親であることを選び、身を切るような思いで掲示したのだ。
副団長の座に就き、騎士を続けるか。
もしくは剣を置き、貴族子女としての道を歩くか。
酷い二択だったが、彼女の父は強行した。
たとえ晩節を汚し、騎士として失格の烙印を押されたとしても二者択一を迫ったのだ。
アイビスとて、父の思いは理解している。
このような行動を取らせてしまったことに心の底から己を恥じた。
父の顔に泥を塗らないためには、後者を選ぶのが正解だ。
だが、それでも。
――結果、名ばかりの副団長が誕生。
アイビスは面汚しの汚名を着ることになった。
誰も幸せにならない結末だった。
だが、アイビスがダンジョンに愛されていないと判明した時点で、こうなるのは確定路線である。
どんな選択をしたとしても、報われる者など一人もいない。
それが彼女と、その周りの現状だったのだ。
以降、アイビスは過剰なまでに騎士団に尽くすようになった。
それがせめてもの罪滅ぼしと、書類整理を始めとした事務仕事を率先して行うようになった。
不幸中の幸いだったのは、アイビスの境遇に同情した騎士の方が多かったことだろう。
流石は栄えある
こうして大半の騎士からは同情を、一部の騎士からは軽蔑を浴びながら従事すること三年。
アイビスは運命と出会った。
◇◆◇
ソシャゲの良いところは、アプデを重ねるたびにゲームが洗練されていくところだ。
例えば原〇。例えばFG〇。
それぞれの老人会を開催すれば、初期の思い出を語りたい旅人やマスターが怒涛の如く押し寄せ、「今時の若いモンは~」と老害ムーブをかますことだろう。
プレイヤーたちが不便だなと感じていた要素を改修し、より遊びやすい環境を整えるのは、運営にとっての義務である。
これを怠ったソシャゲから脱落していくのがソシャゲ戦国時代なのだ。
つまりどういうことかと言うと。
「恩恵周りをアプデします」
いつも通りシロちゃんを膝に乗せながらカチャカチャカチャ、ッターン!
「恩恵周りですか?」
「そ」
真っ白な頭のてっぺんに顎を乗せる。
丁度良い位置なんよな。
顎でよしよしと撫でるのはセーフだろうか、なんて考えながらシロちゃんに説明する。
以前まで――と言っても、プレイヤーはリンスレットとヤチヨの二人だったが。
二人のときはダンジョンでモンスターと戦わせ、レベルを上げることでホロキャストを付与。
ステータス画面を操作できるようにしていたのだが、これを魔力をリセットすると同時に付与するように変更した。
要は最初からである。
その理由の大きな点は、最初に職業を選べるようにするためだ。
二人のときは使っている武器や戦い方を参照に自動で職業を割り振るようにしていたが、それだと一向に魔法使いやヒーラーが増えないからな。
ちなリンスレットは細剣士。
当然、ヤチヨは忍者である。
後で職業を変えようにも、職業はレベルと紐付けしてっからな。
またレベルを一から上げ直すハメになるわけだ。
ただでさえ魔力をリセットして弱体化を受け入れたというのに、これはあんまりだろう。
そんなわけでアプデ改修にごわす。
幸い、ちょちょっと弄るだけだからほとんどDPも消費しないからな。
そんなやり取りがあったのが数日前。
今のオレは公式生放送ならぬ講演会の真っ最中だ。
吹き抜け構造の二階から一階に集まった騎士や冒険者、総勢百名を見下ろし、諸々の説明を行っていた。
「――という感じだが、何か質問はあるか?」
あらかたの説明を済ませ、階下にいる者たちに尋ねる。
ピシッと真っ先に挙手をしたのは、理知的な印象の少女だった。
「魔法というのは、どういうものでしょうか?」
「ん? ああ、口頭だけじゃ分からんよな」
魔法のない世界だもんね。
でもオレにできるか? いや、そんくらいなら行けるやろ。
「魔法ってのは、こういうチカラだ」
手のひらに火の玉を生み出し、それを誰にもいないところに撃ち出した。
おお、どよめいてるどよめいてる。
どうしよう、かなり気持ち良い。
気を良くしたオレは、他にも氷や雷なんかを生み出し、存分に魔法のプレゼンテーションを行った。
「――と、このように魔法ってのは遠距離から攻撃する技のことだ。今のはただの初級魔法だが、中級、上級と位階が上がるたびに威力や範囲は桁違いになる。上級魔法となりゃ中隊を一撃で殲滅することも可能だろうな」
自信満々に胸を張ると、更にどよめきが広がる。
ここに集まった面々は、大多数が駆け出しの騎士や冒険者って話だ。
まだ自分の得物が決まってない奴や、モンスターと接近して戦うことに恐怖を感じている奴もいるだろう。
そういった連中には、魔法がさぞかし魅力的に映ったに違いない。
しかも、前述の通り、この世界には魔法がない。
つまり魔法使いという職業は、圧倒的なブルーオーシャンなのだ。
「とはいえ、もちろん弱点もある」
と、オレはデメリットもしっかり伝えることにした。
「魔法使いってのは、遠距離からの火力に極振りした職業だからな。レベルが上がっても身体能力の成長率は極めて低いってのは留意しとくべきだ」
ほんと紙装甲だからね。
RPGでもSPRGでも、一体何人の魔法使いキャラが乙ったことか。
死んだら生き返れない系は、マジで心に来るぞ。
お前だよエムブレムなのにエンブレムと呼ばれがちな奴。
新作発売おめでとう。
でもオレは懐古厨だから「FEはアドバンスの三部作が至高」と言い続けるよ。ィイイイイイヤッ!!!!
「良いだろうか?」
そんなことを考えていると、また手が上がった。
挙手をしたのは、青い長髪を三つ編みにした女性だ。
確かアイビスという副団長だった気がする。
オレが促すと、意思の強い瞳が真っ直ぐ向けられた。
「話を蒸し返すようで申し訳ないが、貴殿の言葉が真実ならば、このダンジョンに入れば誰でも強くなれるという認識で間違いないか?」
「ああ。他のダンジョンならランダムに振り分ける恩恵を、うちのダンジョンは戦闘面に特化させてっからな。――少なくとも、お前のような事にはならないよ」
安心させるように言うと、アイビスの瞳が微かに揺れて、
「――そうか」
短い返答。
あらゆる感情を噛み締めるような声色だった。
まあ、そうなるのも仕方ないか。
ちょっと調べてみたら、ビックリ仰天。
彼女ってばダンジョンに嫌われてでもいるのか、ちっとも戦闘面に恩恵が割り振られてなかったんだもん。
リンスレットとは別ベクトルで運のない女性だ。
あいつの不幸は、ダンジョンの恩恵に関しては効果を発揮してなかったからな。
ちなみに幸運ステータスは未だ0だ。
まあ成長率が0なんだから当たり前だが。
……これ、ガチャに反映されんのかな?
恩恵と同じパターンならワンチャンあるが。
強く生きろ、リンスレット。
「もう一つ質問を重ねても宜しいだろうか?」
「良いよ。可能な限り誠実に対応するつもりだからな」
「感謝する。では、成長率というのがどういうものかご教授願いたい。おそらく、それが我々の強さに最も直結するモノのはずだ」
「あいあい――」
それから幾つかの質疑応答に対応し、意気揚々と二階層へ赴く若人たちを見送るのだった。
・まっくろくろすけ
アイビスに付与された恩恵の内容を見て涙した。
ああ、好きなだけモンスターを倒せ。うちのダンジョンならめちゃくちゃ強くなれるからな。おかわりもいいぞ
・色々とお可哀そうな副団長
ただ誰よりも努力してるのは周知なため、人望はある
ダンジョンの秘密を知って感情が爆発しそうになったが、寸でのところで我慢した。えらい。
・公爵令嬢
幸運0!!!!!!!!!
・ィイイイイイヤッ!!!!
スマブラでのロイ様。
設定が固まってなかった結果、原作とは似ても似つかない似ても熱血キャラとなっていた。
GBA三部作のリメイク永遠に待ってる
今から原神に追い課金をしてきます
既に半分爆死状態ですが、海賊王の息子さんと鉄華団の団長が後押ししてくれてる気がするので多分負けません
爆死しなければ次の更新は早いです。
前回と同じような更新速度だったら察してください
うおー!!
追記
笑えよ、ベジータ