比企谷八幡と黒い球体の部屋   作:副会長

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我々には――『GANTZ』が必要なのです。


Side会見(ミッション)――②

「…………なん……だ……それ、は――」

 

 誰も見ていない場所で、葉山隼人は毒を(あお)ったかのように(うめ)いた。

 

 無数のカメラ、世界中の注目が向けられる、目が潰されんばかりの光の世界の――その、裏側。

 同じ空間にいながら、まるで何処にもいないかのように誰の注目も浴びていない場所で、その男は初めから、この会見を誰よりも近い場所で見学していた。

 

 そう――見学。

 彼はこの会見の出席者でもなく、関係者としてもお呼びがかからず、決して無関係ではないのに、初めから蚊帳の外にいた。

 

 とある一体のパンダの気まぐれにより、大勢の記者達の後ろから、漆黒のボディスーツを着用したジャイアントパンダの横で、総武高校の制服姿で――誰にも気付かれず、気にも留められず、存在を無視されながら、己が関係のないところで明かされる真実に、音を立てて動いていく世界に、ただ衝撃を受けることしか出来ない。

 

 特殊な細工を施しているのか、葉山隼人だけでなく、その隣で屹立するジャイアントパンダにも、背中を向ける記者達は、カメラを向けられている少年少女達は、その存在に気付かない。

 

 パンダは、そんな中で、隣で呻く蚊帳の外に置かれた脇役(エキストラ)に向かって言った。

 

「よく見ておけ――葉山隼人」

 

 未だ衝撃から抜け出せない、おそらくはこの場にいる誰よりも混乱している――自分が陥った地獄の真実(ネタばらし)に、内閣総理大臣と防衛大臣によって語られる世界の裏側に、物語の端っこで打ちのめされている少年に、パンダは渋い声で、静かに語りかける。

 

「世界が変わる瞬間を、物語が動き出す瞬間を――その目で、その心に、焼き付けておけ」

 

 パンダは、今にも目を閉じてしまいそうな少年に言う。

 

 葉山隼人は――そんな言葉を受けて、ゆっくりと。

 

「……………」

 

 目が、心が、潰れてしまいそうな程に眩しい“向こう側”を、しっかりと、その目で見据え、その心で受け止めた。

 

 

 

 

 

+++

 

 

 

 

 

 星人(バケモノ)と戦う特殊部隊『GANTZ』が、どうして少年少女(こどもたち)で構成されているのか。

 

 命を懸けて世界を救う為に戦う――そんな英雄に、どうして子供達がさせられているのか。

 一人の女性記者の、まっすぐ真摯な弾劾に、会見場は沈黙に満たされた。

 

 他のマスコミ達が、そして、テレビ画面の向こう側の国民達が、黙ってその答えを待つ。

 桐ケ谷和人は、新垣あやせは、潮田渚は、東条英虎は――何も答えず、ただ泰然とし。

 

 小町小吉防衛大臣が言葉を発しようしたのを抑えて、蛭間総理大臣は。

 真っ直ぐと女性記者の目を見て、国民に向かって釈明を始めた。

 

「まず、皆様に申し上げたいのは――特殊部隊『GANTZ』は、対星人用に設立された、従来とは全く異なる文字通り()()()部隊であるということです」

 

 これは本当だ。

 自衛隊や警察とは根本から異なる。設立経緯も、形態も、装備も――入隊条件も。

 

「彼等が身に纏っている特殊スーツもその一つです。これは防弾防刃仕様は勿論のこと、身体能力を大幅に上昇させ、超人が如きパフォーマンスを可能にします」

 

 Xガン――撃った対象を内部から破裂させることが出来る拳銃。一度ロックオンすれば銃口を向けずとも対象の破壊を可能にし、複数の標的を同時にロックオンし、同時に一斉破壊することも可能。レントゲン機能により敵の弱点を探すことも出来る。

 

 Yガン――特殊素材によるワイヤーを射出する捕獲銃。ワイヤーネットは地球上のどんな猛獣であろうと千切ることの出来ない程の強度を誇り、こちらもロックオンによる自動追尾機能も搭載している。

 

「他にも、極めて優れた切断機能を持つ伸縮自在の日本刀型の(ソード)。一時的に己に透明化処置を施すコントローラ等。『GANTZ』の戦士達には、およそ数世代先の科学技術を持って作製された特殊装備を与えています」

「……い、一体、どのようにして、それほどの装備を実現させたのですか? い、いえ、それも勿論ですが、それほどの装備を扱わせるのならば、それこそ幼い子供達ではなく、相応の訓練を受けた大人達が、怪物と戦うべきなのでは?」

 

 少年少女が地球を救うヒーローになる――なるほどフィクションでは定番の、熱いストーリーではあるけれども、それを現代世界で実現させては、只の児童虐待である。

 

 未成年とは――子供なのだ。

 大人が守るべき世界の財産であり、少年兵など己が国を滅ぼす愚行に他ならない。

 

 未来を潰して得られる勝利など、紛れもない大敗だ。

 何も知らない少年に剣を、何も知らない少女に銃を握らせてまで、得られるものなど何も無いのが現実だ。

 

 そんな子供達が笑顔を浮かべている筈がない。

 子供達の笑顔を守るのが――大人の仕事である筈だ。

 

「――無論です。特殊部隊『GANTZ』には大人達の戦士もいます。……ですが、彼等のように、少年少女の身でありながら、怪物との戦争に送り出さなくてはならない戦士がいることも、また事実なのです」

「っ! そんなことが許されるとお思いですか? 彼等がそうしなくてはならない、その明確な根拠とは何ですか!?」

 

 蛭間総理が一度閉口し、再度口を開こうとする――その一瞬を制し、その男は端的に言った。

 

「――才能です」

 

 日本の防衛において最大の責務を負う男は――現職の防衛大臣である、小町小吉は言った。

 

 少年兵を享受する理由を、少女兵を戦場に送り出す根拠を――たった一言の現実を持って説明した。

 

「……さ、……才能?」

 

 女性記者は、思わず職務を忘れて言葉を失う。

 

 そのあんまりと言えばあんまりな言い分に、大臣として、大人としてあんまりな開き直りに――だが、決して、笑い飛ばすことの出来ない二文字に。

 

 蛭間は小吉を見遣る。

 小吉は、ただ一度蛭間と目を合わせ、小吉は前のめりになり、蛭間はパイプ椅子の背凭れに体重を掛けた。

 

 国民に向けて、堂々と、小町小吉は供述する。

 

「先程、蛭間総理が説明した通り、特殊部隊『GANTZ』の装備は数世代先の科学技術によって生み出された特別なものです。その性能、威力は申し分ない――だが、決して完璧ではない。その圧倒的なスペックに対して、武器として致命的な欠点があるのです」

「……欠点とは、どういった?」

 

 女性記者の反射的な問いかけに、小吉も間を入れずに端的に言う。

 

「GANTZ装備(アイテム)は、使い手を選ぶのです」

 

 それは、名刀を扱うには名手でなければならない、というわけではない。

 

 筆が弘法を選ぶ――武器の方が、使い手を、戦士を選別するのだ。

 

「銃が引き金を引けば誰でも発砲出来るように、誰がアクセルを踏んでも車は発進するように――科学技術とは、極端なことを言えば、難しいことを誰もが簡単に行えるようにすることが出来る技術のことです」

 

 遠くにいる誰かと会話をする。火を起こす。長距離を移動する。命を奪う。

 多大な労力、時間、技術を必要とするそれらを、簡単に、短時間に、誰でもお手軽に行うことが可能となる――それが科学の力だ。

 

 無論、より上手に扱うことで、よりスペックを引き出すことの出来る者は生まれるだろうが、格差は生まれるだろうが、電源スイッチを押すことは誰でも可能だ。起動させ、スタート地点に立つことは誰でも許される。

 

 だが、GANTZ装備(アイテム)は、その時点で人を選ぶという。

 

 才能無きものには、スタート地点に立つことすら許さない。

 

「GANTZ装備(アイテム)において、最も重要になるもの。それは(Xガン)ではなく、(ガンツソード)でもなく――(ガンツスーツ)なのです」

 

 そう小町小吉は、自身の隣に座る四人の少年少女達を指し示した。

 真っ黒な、光沢のある、近未来的なSF映画のようなスーツを纏った――選ばれし戦士達を。

 

「――桐ケ谷」

 

 小吉はそう小声で呼びかけると、和人は一度瞑目した後、ゆっくりと立ち上がった。

 

 途端、複数回のフラッシュが瞬く。

 和人はそれを意に介さず――手品のように一本の黒剣を取り出した。

 

 記者の海からどよめきが生まれるが、和人はそれに構うことなく、剣を横にし――目を細めながら――剣の柄から、手を放した。

 

 剣が落下し、机に衝突すると――異音が響いた。

 その細身の剣からは想像もつかないような、重いダンベルを落としたかのような音が。

 

「――この通り、GANTZ装備(アイテム)は総じてかなりの重量を誇っています。つまり、ガンツスーツが機能を発揮しなければ、彼等は先ほどの映像のように超人的なスピードで動くことも、怪物の熾烈な攻撃に耐えることも勿論ですが、武器を持って戦うことすら困難になる」

 

 和人が労わるように剣を拾って仕舞う横で、小吉は記者達に向かって語り掛ける。

 

「つまり、ガンツスーツは只の部隊のユニフォームではなく、彼等を――人間を、地球人を星人(かいぶつ)に立ち向かう戦士にする為の、必要不可欠な装備(アイテム)なのです」

 

 だが――そんな夢のようなアイテムにも、欠点がある。

 

 岩に刺さった剣が勇者以外には決して引き抜くことが出来なかったように。

 

 戦士になる為の初期装備(スーツ)は、己に袖を通すに相応しい才能を要求する。

 

「このガンツスーツは、相応しい才能の持ち主でなければ、効果を発揮しないのです。強靭な肉体も、驚異の運動能力も提供しない――只の黒い服になってしまう」

 

 人間を、地球人を――戦士へと変えてくれない。

 

 戦士になれる人間しか、戦士になれない。

 

 凡人に希望を抱かせずに、現実を突きつける――夢のようなスーツだった。

 

「……その才能とは、具体的にどのようなことを指しているのですか? 熟練の大人よりも何も知らない子供達の方が、その才能が溢れていたと?」

 

 大人よりも子供の方が才能に溢れている――なるほど、一つの至言ではある。

 

 少なくとも、子供の方が可能性に満ちているのは確かだ――それを何かになれる、何かを成し遂げることが出来る才能と呼ぶのならば、生きるということが才能を消費するということであるならば、それは一つの答えとなり得るだろう。

 

 大多数の子供達がその才能を無為に消費し、そこら中に有り触れる才能のない大人に成り果てるのだとしても、若く幼い現時点においては、才能はあるだろう。残っているというべきか。

 

 だが、だからといって、そんなことを根拠に、子供の方が大人よりも戦士に相応しいと言われるのは納得が出来ない。

 

 そんな基準で己に袖を通すものを選別しているのだとすれば、その黒服の目はとんだ節穴だと言わざるを得ない――何処に目を付けているのか分からない。

 

「そのガンツスーツとやらは、どのような基準で人を判別、選別しているのですか? AIでも搭載しているのですか?」

「そもそも、大人には着ることが出来ずに子供にだけ反応する、そんな兵器自体に問題があるのでは? そんな兵器を採用する国にこそ、問題があるのでは?」

 

 段々と質問が詰問へと代わっていき、疑問が批判に傾いてくる。

 

 それは蛭間や小吉だけでなく、和人やあやせ、渚も感じ取った。東条は徐々に眠くなってきていた。

 

 小吉はマイクを握り答える。

 

「ガンツスーツがどのような基準で着用者を選別しているか、それは現時点では不明です。ですが、決して少年少女だからこそクリアするといったものではなく、先程申し上げた通り、戦士には大人も大勢含まれています」

「そのような不透明な装備を戦士に与え、戦場へ送り出すことは問題ではないのですか?」

 

 間髪入れずに批判が飛び出してくる。

 あやせや渚、和人はその言葉に込められた見え見えの刃に(己が向けられたわけでもないのに)冷たいものが走ったが、小吉はまるで動じずに言葉を返す。

 

「確かに、余りに最先端技術を追い求めたが故に、未だ全て解明された技術とは言えません。把握しきれていない部分、制御(コントロール)しきれていない部分もあります。本来であるならば、実用化に踏み切ってはならない段階の未来技術であると、こちらもそう判断しています」

「ならば、どうしてそんな制御不可能な兵器を、子供達に持たせて戦場へと送り出したのですか?」

 

 小吉の言葉を思い切り強い言葉へと変換し、明確な悪意を持って紙面を脚色することを前提とした言葉に、和人達は思わず寒気を感じる。

 

(……何となく、分かってはいたけれど……ここはそういう場で、あの人達はそういうことを仕事としている人――大人達なんだよな)

 

 真実を虚実に変えることはなくとも、真実から虚像を作り出すことは出来る。

 嘘を吐かずに、真実を膨れ上がらせる。都合の悪い部分を引き出し、引き延ばし、読み手に自分達の作品を提供する。

 

 和人は、真面目な表情の中、瞳だけが嗤っているその男を注視する。

 

(……真実を追い求めるジャーナリズムを掲げる記者の人もいるんだろうけど……)

 

 ああいった娯楽を提供する感覚でジャーナリストを騙る人間が増えたのも確かだ。誰でも情報を得ることが出来るネット社会だからこそ、その情報が商品になるようになってしまったが故の弊害だろう。

 

 だが、そういった人間達に一挙手一投足を監視されるような生活の中、常に戦い続けるのが――政治家だ。

 

 和人は横目で見る。蛭間一郎と小町小吉は揺るがない。

 

「――これは、昨夜の東京湾近郊の映像です」

 

 映し出されたのは、これまでのような動画ではなく、天から撮影したような航空写真だった。

 

 倒れているのは、怪獣と表現する方が相応しい異形の、魚のような頭に人間のような体の怪物。

 

 そして、その周辺に海のように広がる――夥しい死体群。

 

「っ!?」

 

 モザイク処理をされているが、だからこそ余計に、その中身が想像出来てしまう。

 

 息を呑む記者、そして目を見開く和人達に、小吉は感情の篭らない声で告げた。

 

「――昨夜の池袋大虐殺事件に置いて、事件発生後からしばらくして、現場となった池袋駅周辺に二体の巨大な怪物が乱入するという事態が発生しました。内一体はここに座る桐ケ谷和人が、もう一体はここにいないGANTZ戦士が討伐しましたが……巨大怪物は三体目が存在していました。残る一体は空からではなく東京湾から上陸後、陸路を持って池袋へと進撃を試みていた為、自衛隊及び警察隊を派遣し、足止めからの討伐を試みました」

 

 GANTZ部隊は池袋へと派遣していた為、自衛隊及び警察隊の通常装備のみでの対応をやむなくされたのですが――小吉はそこで言葉を区切り、低い声で言った。

 

「……結果は、ご覧の通りです。怪物の――『星人』の討伐には成功しましたが……生存者の数のおよそ数倍もの犠牲者が、生まれることとなってしまいました」

 

 記者達は、何も言えない。和人も、あやせも、渚も何も言えなかった。

 

(……池袋の外で、そんな戦争があったのか)

 

 何も――知らなかった。

 

 自分の知らない所でも、怪物退治は行われていた。

 

(あのミノタウロスもどきよりも、遥かに巨大――)

 

 この映像の中で倒れ伏せる魚人が、もし昨夜の池袋に上陸していたら。

 

 そう考えるだけで、この魚人討伐を果たした――大人達に。

 勇敢に、果敢に、戦ってくれた戦士達に、和人は胸の中に温かいものを感じた。

 

「彼等もまた、英雄です。……ですが、そんな彼等をもってしても、これだけの犠牲を払わなくては、怪物には――『星人』には勝てない。通常兵器では、限界があるのです」

 

 最早、限界まで、我々は追い詰められているのです。

 

 小町小吉の、日本の防衛の頂点の言葉に、記者達は何も言えない。

 

 何も言えない彼らに、何も知らない彼らに、小町小吉は堂々と言ってのける。

 

「我々には――『GANTZ』が必要なのです」

 

 

 

 

 

+++

 

 

 

 

 

 息を呑み、その言葉を受け止める彼らに。

 

 桐ケ谷和人は、今日何度目かの感想を、再び抱いた。

 

(……よくもまぁ、堂々と――)

 

 顔色一つ変えず、心拍数一つ乱さず。

 

 これだけの人の前で。どれだけの国民の前で。

 

(――嘘を、吐けるもんだ)

 

 ()()――いや、『GANTZ』が必要だということは、嘘ではない。

 

 嘘なのは、嘘だらけなのは――戦士になるのに、才能が必要だということ。

 

 戦士を選ぶのは黒服ではない――黒球だ。

 そして、黒球は人など選ばない。奴等が選ぶのは死人だけだ。そして、死人だったら、奴等は誰でも構わない。

 

 大人だろうが子供だろうが構わない。

 少年でも少女でも、老爺だろうと老婆だろうと、英雄にしかりクズにしかり、等しく誰でも歓迎する。犬だってパンダだって選り好みはしない。

 

 他人のガンツスーツは着用しようと反応しないが(というがそもそも着ることさえまず出来ないが)、黒球は全員分を専用装備(オーダーメイド)で用意してくれる。戦士であろうとそうでなかろうと、差別はしない。

 

 誰だって、スタートラインには立てる――その後、何もしてくれないだけで。

 理不尽な地獄のど真ん中に置いてけぼりにして、そのまま放っておくだけで――放置するだけで。

 

(……本当に、大人って奴は)

 

 だが、分かってきた。

 ここ数日で、分からされてきた。

 

 きっと――こうならざるを得なかったのだろう。

 

 大人になるということは――子供ではなくなるということだ。

 大人になるということは――矛も盾も、どっちも併せ持たなくてはならなくなるということだ。

 

 矛盾を呑み込むのだ。

 

 正義の為には、悪にならなければならないように。

 誰かを助ける為には、誰かを見捨てなければならないように。

 

 何かを手に入れる為には、何かを手放さなければならない。

 

(化物を殺す為には――人間を捨てなければならないんだ)

 

 蛭間一郎。そして、小町小吉。

 宇宙を見たことがあるという彼らは、果たして、どれだけのものを見て見ぬふりをしてきたのだろう。

 

 どれだけの『星人(ばけもの)』を殺し、どれだけの『戦士(にんげん)』を見殺しにしてきたのだろう。

 

 此処まで『大人』にならなければ――地球を守ることなど出来ないということか。

 

(……俺に、ここまでの覚悟があるのか?)

 

 英雄になる為には――果たして、何を捨てればいい?

 

「……総理。……大臣。……質問が、あります」

 

 静まり返った記者会見場で、再びか弱い声が響く。

 

 その女性記者は、手を震わせながらも、真っ直ぐに二人の大人を見ていた。

 

「……どうぞ」

 

 小吉が促して、女性が起立する。

 

 女性記者は、己に注目が集まる中、祈るような気持ちで問い掛けた。

 

「……ここまでのお話で、総理と大臣の意向は理解しました。……それでも、これだけは問わせてください。未だ、子供である身で、大人達がやるべきことを肩代わりして、怪物と戦うことに――」

 

 彼女は、真っ直ぐに――四人の少年少女を見詰めながら言った。

 

「――彼らは、本人は、どうお考えなのでしょうか?」

 




遂に、語る。

日本中が、世界中が注目する眩光の世界で、四人の少年少女が――その胸の内を、語る。


そして、世界は――英雄を知る。

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