比企谷八幡と黒い球体の部屋   作:副会長

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比企谷八幡のひとりぼっちの戦争が始まる。


唐突に、比企谷八幡は一人ぼっちで戦場へと放り出される。

 送られた先は、どこかの屋上だった。

 目の前の銀色の柵の向こうにショッピングモールの看板のようなものが見える。

 広さはそんなに広くない。洗濯物やエアコンのヒーターのようなものがあるということは、マンションか? それとも病院?

 

 俺はマップを確認しながら、銀の柵へと向かう。

 

 エリアの広さは田中星人の時と、千手の時の間くらいの面積。

 

 そして、問題の星人の数は――

 

「…………ッ」

 

 そこに映し出されるのは、1つの青点と、10個の赤点。

 

 10――10体。

 

 絶望的、という程ではない。だが、決して油断できない数だ。少なくとも、俺は今まで単独で10体撃破したことなどない。

 

 ……いや、俺は今まで本当の意味で単独で星人を撃破したことなど、ない。

 

 いつだって中坊や陽乃さん、葉山や相模、達海や折本の力を借りて、どうにかこうにか生き残ってきた。

 

 自分だけ、生き残った。

 

 ……だが今回は、まさしく俺一人だ。

 

 俺一人で、俺だけの力で、独力でこの10体を屠らなければならない。

 

 孤軍奮闘。孤立無援。四面楚歌。

 

「…………望むところだ」

 

 俺は口に出してそう言った。そうだ、何を恐れることがある。

 

 いつもの事だ。いつも通りの俺じゃないか。これが本来の在るべき姿だ。

 

 今まで通りだ。

 

 これが、比企谷八幡の戦いだ。

 

「……………」

 

 俺はマップに示される一番近い点の方角を向く。

 

 いた。

 隣のビルの、給水タンクの影。

 

 そこに白い物体がいる。遠目ではっきりとは認識できないが、人型だ。羽のようなものが生えている。星人に間違いないだろう。さすがにこんな時間にあんな場所で佇んでいるコスプレイヤーという可能性よりは高いだろう。宇宙人の方が確率として高いと言えてしまうこの状況になんだが笑えてくる。

 

 笑えるくらいの余裕が出てきた。そうだ。悲観するな。絶望するな。

 

 俺は両手に持つXショットガンを地面に置き、助走をつけようと柵から離れようとする。スーツが万全の今なら、ここから向こうのビルまで飛び移れるだろう。

 

 どうしても高所というのはそれだけで恐怖を起こさせる。万が一失敗してもこのスーツなら大丈夫だと分かっていても、やはり怖いものは怖い。

 

 そこでふと、あることに気づいた。

 

 ……試すなら、相手に気づかれていない、今だな。

 

 

 

 

 

+++

 

 

 

 

 

 その生物はまるで下界を見下す貴族のように、ビルの屋上の貯水タンクの上から人間たちを高みから見下ろしていた。

 

 三角形の頭。両頬と胸の中心には滑稽な渦巻き模様。

 小さなサイズの体躯も相まってコミカルで愛らしさを纏う造形だが、その不釣り合いなまでの筋肉質な両腕と不気味な卵の外殻のようなグロテスクな翼が放つ禍々しさが完全にそれを帳消しにしていた。

 

 その細い瞳からは、下々の者達を、この星の支配者面をして行き交う人間達を見て、どんな感情を抱いているのか、それを伺い知ることは出来ない。

 

 そして、数秒後。それを知ることは、彼の同胞たちですら永遠に不可能となった。

 

 どこからか、青白い光が小さく瞬く。

 それに付随する甲高い発射音の残響が、彼の耳にかすかに届く。

 

 

 それと同時に、彼の体はバラバラに吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

 それを、Xショットガンのスコープから確認した八幡は、ポツリと呟く。

 

「まず、一体」

 

 柵から砲身が飛び出すようにXショットガンを構えた姿勢で、八幡は次のターゲットを探すべくマップを取り出した。

 

 

 

 

 

+++

 

 

 

 

 

 ……この距離でも問題なく届いた。……まだまだ射程距離は余裕がありそうだな。

 

 

 この新しい戦法――ていうかつなぎさんの丸パクリなんだが――スナイパー作戦は、かなり使えるな。

 

 これだけの距離から狙えるなら、千手みたいにレーザーでも使ってくる相手でもない限り、ほぼ一方的に屠れる。

 

 ……だがそれも、こちらがチームならの話だ。

 

 スナイパーが機能するのも、敵の注意を引き付ける前衛がいてこそ。

 敵にこちらの位置がバレたら、その時点で優位性は激減する。それを承知で作戦を組まなくちゃな……。

 

 あと、敵は9体。どこまでこの戦法で稼げる――

 

――いや、待て。

 

 さっきのアイツの点が、まだ消えていない……?

 

 俺は、もう一度スコープを覗き、アイツの姿を確認する。

 

 アイツは生きていた。かろうじて。

 

 下半身と左半身は吹き飛ばされて、臓物を曝け出すソイツは、まさしく虫の息。

 距離があるため声は聞こえないが、口の動きから必死に何かを叫んでいるかのようだった。おそらく掠れるような声でだろうが。

 

「………………」

 

 放っておいても間違いなく、問題なくあのチビ星人は死ぬだろう。

 俺がこの引き金をもう一度引いても、明確な死が訪れるのが数秒早いかの違いでしかない。

 

 それでも、ソイツは必死に藻掻いていた。足掻いていた。

 おそらく自分の身に起こったことが、訳が分からないのだろう。

 

 なぜ、自分は攻撃されたのか。体が吹き飛んだのか。

 誰が? どこから?

 分からない。何も分からない。だからこそ、分かる。

 

 言葉も分からない。人種どころか種族が違う。生物としての根幹から違う。

 そんなアイツが、そんなアイツでも、それでも、分かる。

 

 怯えている。

 

 恐怖している。

 

 自分の命がこんなにも簡単に失われようとしていることに。

 

 訳が分からず為す術もなく死んでしまうことに。

 

 混乱し、困惑し、恐慌し、絶望している。

 

 俺たちも、これまであんな顔をしていたのだろうか。

 

 彼らも、彼女らも、みんな、あんな顔をして死んでいったのだろうか。

 

 ……………………………。

 

 俺は、引き金を引いた。

 

 青白い発光と、甲高い発射音。

 

 数秒のタイムラグの後――――

 

 バンッ と、呆気なく散った。

 

 まるで駄菓子屋で売っている煙玉のような情けない破裂音と共に、嘘みたいに簡単に止めを刺された。

 

 ……おそらく、慈悲じゃない。同情でも、憐憫でもない。

 

 ただの逃避だ。見ていられなかっただけだ。

 

 嫌なことを思い出すから、排除しただけだ。

 

 くだらない自己保身だ。

 

 自分で勝手に傷つけて、自分で勝手に憐れむなど、自分勝手にも程がある。

 

 それだけは、絶対にしない。それにだけは、絶対にならない。

 

 これもくだらない自己満足なんだろうけどな。

 

 ……とにかく、一体倒した。次は――

 

「――ッ!」

 

 俺はマップに向けた目を、再び前方のビルへと戻す。

 

 スコープを使うことすらせずに、跳ね上げた視線の先には――

 

 

――次々と、続々と、仲間の死体の元に集結する、チビ星人たち。

 

 

 探す手間が省けたぜッ!全員纏めてかかってきなッ!――なんて言える余裕は、微塵もなかった。

 

 

 

 

 

+++

 

 

 

 

 

 俺の目線の先。

 俺がいるビルよりも、二、三階ほど低いビルの屋上。

 こちらとは違い、給水タンクや四面の看板などの遮蔽物が多く立ち並ぶ、広い屋上に。

 

 9体のチビ星人が集結していた。

 

 幸いにも、死んだ仲間の元に集まってきただけのようで、こちらにはまだ気づいていない。

 

 だが、それも時間の問題だ。

 

 今回のミッションの残り星人数は、9体。

 

 つまり、今見えている全てのチビ星人を殺せば、ミッションクリア。俺は帰ることが出来る。

 

 だが、こちらは一体(ひとり)

 

 そして数というのは、一種の兵器だ。それだけで力となる。

 

 こちらの力が10だとしても、5が3人集まれば、負ける。

 

 さらにこいつらは、仲間が死んですぐさま集結した。

 

 ……俺の予想が正しければ、こいつらは信じられないほど厄介だ。

 

 俺はXショットガンを構え、スコープを覗きこむ。

 

 こちらの存在を気取られる前に、一体でも多く減らす。

 

 しかし、どうする?

 俺がこのまま射撃し、もう一体吹き飛ばした時点で、アイツ等は俺に気づくだろう。そうなると一体しか減らせない。

 それでも十分過ぎるほどの戦果だが、今のような俺に圧倒的有利な状況は、このミッションにおいてもう訪れないだろう。出来るなら、ここで稼げるだけ稼いでおきたい。

 

『――やっぱり、2つあるトリガーの1つはロックオン機能だったか』

 

 ……あの時の葉山の言葉を思い出す。

 

 俺はそれぞれの銃に2つトリガーがある意味に辿り着けなかった。

 ロックオン。

 射撃対象を明確に設定する機能。確かにその機能は必要かもしれない。

 

 同時に押せばこれまで通り“ただ”発射して、発射トリガーだけ押しても意味がない。

 

 なら、先にロックオントリガーだけを押したら?

 

 あの時の葉山のYガン射撃のように、相手を追跡(ホーミング)するのか?

 

 もし、それがXガンだったら?

 

――一度ロックオンできれば、銃口を向けなくても発射トリガーを引けば効果を与えられる、とかか?

 

 ……よし。試してみるか。

 もし違っても、最後の相手は銃口を向けながら発射すれば、最低でもソイツには攻撃出来る。そうすれば最低限の戦果は得られるだろう。

 

 俺はスコープを覗く。

 

 そして、一体に照準を合わせ、2つあるトリガーの内、上トリガーだけを引いた。

 

 カチッ。

 

 ……何も起こらない。ただの射撃失敗か、それともロックオン出来たのか。

 けっこー不安だが、まぁいい。とりあえずこのまま行ってみよう。ロックオンはこれからのことを考えると、覚えておきたい技法だ。Xガン最大の弱点のタイムラグをカバーできるかもだからな。

 

 カチッ。

 

 ……はっ。“これから”、か。ここを生き残らないとこれからもクソもないってのに、悠長なもんだな。

 

 だけど、俺は生き残り続けなければならない。そして、ただ生き残ればいいってもんじゃない。

 

 俺は何百点も稼がなくちゃいけない。

 

 アイツ等を、一人残らず、生き返らせなくちゃならない。

 

 ……こんなふざけたデスゲームなんかで、死んでいい奴等じゃない。

 

 カチッ。

 

 だが、そうなると、俺はどこまで助ければいい?

 

 陽乃さんや中坊、葉山たちはもちろんだが、他の人たちはどうする?見捨てるのか?

 

 ……間藤や坊主といった、正直救う価値のねぇ屑共もいた。

 

 だが、つなぎさんやボンバー達のように、大して会話もしていないほぼ他人だが、一緒に命懸けで戦ってくれた人たちも、確かにいた。

 

 ……それでも、このガンツミッションで100点をとるのは、相当な苦行だ。正直、命が幾つあっても足りないまさしく命懸けの戦いだ。

 

 大した関わりも、繋がりも、……思い入れもないような、そんな人たちの為に、俺は、“命を懸けて”まで戦えるのか?

 

 カチッ。

 

 そもそも、助ける、助けない、なんて。

 

 そんな線引きをするような資格が。

 

 俺にあんのか?

 

 かみ

 

 

《貴様か》

 

 

――ッ!!

ギュイーン!!

 

 

 俺がスコープで覗いた5体目のターゲット――他の個体よりも一回り大きく角が生えていた――をロックオンしようとした時、その個体は俺の方を向き、目が合った。

 

 それと同時に、脳内に響いた、重々しい声。

 

 反射的に俺は2つのトリガーを同時に引いてしまった。

 

「――な!?」

 

 だが、衝撃はそれで終わらない。

 

 その個体は俺が射撃した時には、すでに宙へと飛んでいた。

 

 背中の羽は使っていない。単純な跳躍。

 

 俺はバンッバンッと響く音――おそらくロックオンしていた敵の破裂音――に構うことなく、とにかく柵から離れ、途中地面に置いておいたもう一丁のXショットガンを拾いながら、距離をとる。

 

 ガンっ! と、そいつは先程まで俺が張り付いていた柵に荒々しく着地し、俺を見下ろす。

 

 そいつは一度後ろを向いて佇むと、ゆっくりともう一度、俺と向き合う。

 

 俺はそいつから目を離せない。それぐらい威圧感のある眼光を放つ個体だった。

 

 ダンッ ダンッと、俺を囲むように着地音が響く。

 

 囲まれた。

 俺がそう認識した時には、すでに残る5体のチビ星人は、俺の包囲を完了していた。

 

 そんな中で、やはり一際強い殺気を放つ、俺の正面の個体――おそらく、コイツがボスだ――が、俺を睨み据えながら、言った。

 

 俺の脳内に、直接、響かせた。

 

《許すまじ!》

 

 ご丁寧に、日本語で。俺にも分かる言語で。

 

 それに呼応するように、四方から、おそらく俺を囲んでいる他のチビ星人たちが。

 

 次々と。続々と。

 

 俺の脳内に、直接叫ぶ。

 

 恨み節を。呪詛を。

 

 仲間を殺された、悲痛の叫びを。

 

《同胞は二度と動かない!》

《死んだ!》

《殺された!》

《お前が殺した!》

《アイツも!》

《コイツも!》

《みんな死んだ!》

《お前に殺された!》

《許すまじ!》

《許すまじ!》

《かけがえのない同胞!》

《破壊しろ!》

《殺してしまえ!》

《四肢をもげ!》

《首も引き千切れ!》

《解体しろ!》

《破壊しろ!》

《潰せ!》

《殺せ!》

 

《殺された、かけがえのない同胞のように》

 

《コイツも》

 

 

《徹底的に殺害しろ!!》

 

 

「……………………っ」

 

 脳内に直接響く、圧倒的な悪意、害意、殺意。

 

 思わず奥歯を噛みしめてしまう程の、悲痛な思い。

 

 これがテレパシーって奴か。まさか現実(リアル)に体験出来る日が来ようとは。

 いや、今はそんなことはどうでもいい。今更、驚くに値しない。

 

 注目すべきは、コイツ等の仲間意識。そして、予想以上の知能の高さ。

 

 敵がただ数が多いだけの群れなら、まだ希望があった。

 

 だが、コイツ等は違う。仲間の死にすぐさま駆け付けた時から嫌な予感はしていたが、見事に当たった。

 

 コイツ等は、群れじゃなくてチームだ。連携し、互いに補完し合い、数の力を足し算ではなく掛け算で増大させる。

 

 ぼっちの天敵だ。

 

 ……加えて、言語を巧みに操り、その上テレパシーときたもんだ。人間よりもはるかにチームワーク、コンビネーションのレベルが高いのは、容易に想像できる。

 

 …………最悪の敵だな。

 

 脳内に響き渡る罵詈雑言の嵐の中で、そんなことを考察していると、それがピタリと止む。

 

 リーダーらしきボスが、片手を上げて他の奴等を制したんだ。

 

 そして、俺に鋭い視線を突き刺し、柵から飛び降り、俺の目の前に着地する。

 

《気をつけろ!》

《同胞を摩訶不思議な術で破壊した奴だ!》

《殺せ!》

《壊せ!》

《潰せ!》

《解体しろ!》

 

 ……一対一って、ことか?

 

 いや、コイツらが多対個のアドバンテージを手放すとは思えない。

 

 先鋒?様子見?視察?

 

 だが、とにかくチャンスだ。

 

 一番強いであろうコイツをやり過ごし、その間に一気にこの包囲から脱出する。

 

《おまえを》

 

 ……いや、まて。

 

 そういえば。

 

《解体する》

 

 

 チビ星人(こいつら)って、一体どういった攻撃を――

 

 

 瞬間。

 

 俺の視界を、真っ暗な空が占めた。

 

(――は?)

 

 それが敵のアッパーカットにより、顔を跳ね上げられたのだと悟ったのは、顎に走る激痛が脳に達した直後。

 

 混乱から醒める前に、続いてがら空きのどてっ腹に、チビ星人の渾身のボディブローが入る。

 

「――がはっ!」

 

 俺はたまらずに右手に持つXショットガンを無我夢中で投げつける。

 まさしく苦し紛れ。

 チビ星人は、そんな俺の拙い攻撃ともいえないような反撃にまるで取り合わず、身を最小限だけ屈めるお手本のような回避と共に、俺の懐に潜り込む。

 

 そして、再び右アッパーカットの動作。

 

「――っ!」

 

 俺は反射的に右手のXショットガンも手放して、両手で顔を守る動作をする。

 

 だが、衝撃が走ったのは左横腹だった。

 

「――かっはぁ……」

 

 体内の空気を強制的に排出させられながら、吹き飛ばされる。

 

 俺の目がかろうじて捉えたのは、左膝を突き出すボスチビ星人の姿だった。

 

――コイツ等、肉弾戦に特化しているのか……っ。

 

 網フェンスやコンクリートの地面に叩きつけられながら、俺はそんなことを思う。

 

 ついさっき、チームというものの恐ろしさを考察したばかりだというのに。

 

 チビ星人の本当の恐ろしさは、決して肉弾戦ではなかった。

 

「――あがッ!」

 

 吹き飛ぶ俺の後頭部に衝撃が襲う。

 

 視界にチカチカと火花が走る。

 

 そんな風に視界が真っ白に染まったかと思えば、首の根元――右肩と首の付け根当たりにハンマーのような衝撃が襲い、そのまま下に向かって急降下する。

 

「――ッ!!」

 

 そして、その着地点には、2体のチビ星人。

 

 それぞれ左拳と右足を引き、体を開いている。

 

 次の瞬間、当然のように俺は再び天高く跳ね上げられる。再び俺の視界を占めるのは星が見えない都市部の真っ暗な空だった。

 

 

 もう、体のどこが痛いのかすら分からない。

 

 

 でも、一つだけはっきりしている。

 

 

 チビ星人(こいつら)は、強い。

 

 

 このままでは、俺は殺される。

 

 

 重力に任せて落下する中、ボスチビ星人の冷たい目が、俺を貫き続けていた。

 

 

 

 

 

 ドンッ! と背中から落下する。

 

 その反動で再び浮き上がり、二度目の着地で完全にコンクリートの屋上に倒れ込む。

 

「!!」

 

 そして、すぐさま2体のチビ星人が俺の両腕を掴む。

 

 俺はそのまま投げ飛ばされるのかと思ったが――

 

《解体せよ!》

「な――」

 

 再び、脳内に響くテレパシー。

 

 

《解体せよ。――――我らが同胞のように、ソイツの四肢を引き裂け!!》

 

 

 俺が顔を上げた先には、給水タンクの上から、絶対零度の視線で俺を見下ろす、ボスの姿。

 

 そのリーダーの言葉に従うように。

 

「……や、やめ――」

 

 俺の両腕を掴む2体のチビ星人は、渾身の力でそれぞれ逆方向に俺の体を引いた。

 

 

 

「がぁ――ぁあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

 

 

 




 いつだって孤の敵は多による数の暴力だ。

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