佐倉の従兄弟に転生した 作:メガラティアス
スマホの画面をタップすると、クラスLINEに龍園からの短い勝利宣言が躍っていた。Dクラスを完全に追い詰め、毎月膨大なポイントを吸い上げるという極悪非道な「契約」の締結。トーク画面は一瞬でBクラスの連中による歓喜のスタンプとメッセージで埋め尽くされ、お祭り騒ぎの様相を呈している。
まあ、表で威圧感を振り撒いてくれた龍園の功績だ。俺は今日、部活の自主練を休みにして、そのまま男子寮の自室へと向かった。
ガチャリとドアノブに手をかける。
「……ん?」
鍵を差し込もうとした瞬間、ドアがかすかに開いていることに気づいた。解錠されている。防犯意識がザルだったか、あるいは誰かが侵入しているか。警戒しながら静かに扉を開けると――目の前に広がるのは、到底緊迫感とは程遠い、極めて平和でだらけた光景だった。
俺のベッドの上で、自分の部屋のように当たり前に寝転がっている愛里。普段のダテ眼鏡を外し、髪も整えられた「アイドル雫」としての素顔のままだ。
そして、そのベッドの端に上半身をだらんと乗せて、気持ちよさそうにくつろいでいる波瑠加。
「あ、戻ってきた」
波瑠加が顔だけをこちらに向けて、ひらひらと手を振る。
「おかえりー」
愛里に至っては、素顔のまま仰向けになって腕を伸ばし、のんびりと声をかけてくる始末だ。
「……なんで俺の部屋にいるんだ?」
呆れ半分で尋ねると、愛里はニヤリと悪戯っぽい笑みを浮かべ、ポケットから取り出したシルバーの鍵を指先でジャランと揺らしてみせた。視線で『これがあるから』と見せつけてくる。
「私も……作っちゃった」
波瑠加も少し控えめに微笑みながら、どこかおずおずとした手つきで自分のポケットから新品の鍵を取り出してみせた。
ふむふむ。よし、なるほど。
状況は完全に理解した。つまり、波瑠加を巻き込んで合鍵を複製させた発案者――愛里が一番悪いということだな。
「おい」
俺は靴を脱ぐと、迷わずベッドへと向かった。
油断しきっていた愛里の上にそのまま覆い被さり、逃げ場を塞ぐように体圧をかけて動けなくする。
「な、なに? 陽斗君……?」
「俺がいない間に、人の部屋で何やってるんだ」
低い声で呟きながら、だらしない格好で寝転がっていた愛里の両手をつかみ、頭の上へと持ち上げて万歳させた。
無防備に晒された柔らかな脇の下。俺は容赦なくそこに指先を沈め、ワシャワシャと細かく動かし始めた。
「いひゃはははははは♡ ちょっと、何!? 従姉妹にこんな事して良いと思ってんのっ!?」
素顔のまま、一瞬で表情を崩して怒る彼女。身体を折り曲げるようにして必死に悶えるが、上から覆い被さっている俺の拘束からは逃れられない。
「お仕置きだ。我慢できないだろ」
「きゃはははは♡ ううん、全然大丈夫! 決めつけてるけど全然大丈夫だから! 全然大丈夫、うふふふふふふ♡」
強がりを言いながら、愛里はくすぐったさに耐えかねて開いた両腕を閉じようと抵抗してくる。だが、それを許さず、再びぐっと両腕を引っ張り上げて完璧な万歳状態をキープさせる。
「うふふふふふ♡ ねぇ、なんで今こうやって手をあげたのっ? うひひひひっ、ねぇっ!」
眼鏡のない整った素顔で、涙目になりながら大爆笑している愛里。……可愛すぎるだろ。
そんな愛里の惨状(?)を目撃した波瑠加が、
「わぁ……次、私の番……?」
と、どこか顔をひきつらせつつも、期待に満ちた瞳でこちらをじっと見つめていた。
やらんわ。……けど、やって欲しいなら遠慮なくやるけどな
と、心の中で静かに呟くのだった。
「きゃ〜ははは♡ いや〜ははは♡ あ、そこ気持ち良い♡ あひゃはは♡」
二の腕の下から脇、そして無防備なお腹周りへと容赦なく指先を這わせると、愛里はベッドの上で跳ね回りながら、甘ったるい悲鳴をあげ続ける。
「あ、嬉しい♡ 駄目♡ 駄目♡ 駄目♡ 駄目っ♡ うひひひ♡ あん♡ 駄目駄目駄目だめえ〜♡ あひゃははは♡ ちょっとぉ♡ あんっ♡」
素顔のまま涙目で顔を真っ赤にし、くすぐったさと喜びが入り混じった最高に愛くるしい表情。その姿を存分に堪能して心底満足した俺は、ようやく拘束を解いて手を止めてやった。
乱れた息を整えながら、愛里は胸元を押さえて起き上がる。
「もう……覚えててよ〜、うふふ♡」
文句を言いつつも、その瞳はこれ以上ないほど愛おしそうに俺を見つめていて、お仕置きというよりは極上のご褒美を与えられたような顔をしていた。
そんな愛里の幸せそうな姿を横目に、波瑠加がどこか不満そうに口を尖らせる。
「え、私の分は〜?」
「犯罪になるからやらんわ。おしまいだよ」
「え〜、ケチ」
肩を竦めて一蹴すると、俺は愛里の上から降りてベッドの縁に腰掛け、二人に向き直った。
「で、今日に限ってどうしたんだ?」
「ん、」
愛里はベッドから脚を下ろすと、少し照れくさそうに微笑んだ。
「いいじゃん。ほら、ここのところずっと重たい空気だったじゃない? 陽斗君、1人で囮になってて辛かったでしょ? だから陽斗君も今日くらい甘えたいんじゃないかって思ったの」
いつもの引っ込み思案な彼女からは想像もつかないほど、温かくまっすぐな笑顔。そのまま愛里はトンと軽やかに足音を立ててキッチンへと向かった。
「手料理、作ってあげる。私、結構自信あるんだよ? 陽斗君がイキって色々教えてくれたからね」
「イキってとは心外だな。親切丁寧に指導してやったんだろ」
「ふふっ、どっちでもいいよ。楽しみにしててね」
エプロンを身につけた愛里が手際よく調理器具を準備し始めると、波瑠加もベッドから腰を上げて袖をまくった。
「ふふふ、私も手伝おうかな。陽斗に最高のご飯食べてほしいしね」
「助かるー、波瑠加ちゃん! じゃあ野菜切ってもらおうかな」
男子寮の狭いキッチンに二人のヒロインが並び、楽しそうに夕食の準備を始める。
さっきまでの激しい知略戦や審議室のギスギスした緊張感が嘘のように、俺の部屋には温かく甘やかな時間が流れていた。
「……って訳だ」
愛里が手際よく作ってくれた料理に舌鼓を打ちながら、俺は今回の審議室の件、そしてDクラスを完全に詰ませた裏の仕掛けについての説明を終えた。
箸を置いた愛里は、どこか感じ入ったように小さく吐息を漏らす。
「そっか……。ちょっとDクラスの真面目な人たちが可哀想だけど、自業自得だし……仕方ないね」
「その真面目な人たちには、後で定期的に何か奢ってあげれば良いんじゃない? あ、きょーちゃん(櫛田桔梗)にでもポイントを預けてさ。ほら、こう間接的に助けてあげる感じで」
波瑠加がスープを飲みながら思いつきを口にする。
それを見て、俺の脳裏には2週間ほど前に教室で交わされた、ある決定的な会話が蘇っていた。
あの日、龍園が教壇の前に立ち、クラス全体を見下ろしながら言い放ったのだ。
『俺たちの悪い噂をDクラスの奴らは積極的に流している。火蓋は切られたってことだ。俺たちもこのままじゃいられねえ。今後Dクラスの奴らとは一切口をきくな。例外は許さねえ。あの平田洋介や櫛田桔梗って奴も無視しろ』
龍園の強硬な提案に対し、教室からはすぐさま反発の声が上がった。
『え、でも櫛田さんは別で良いんじゃない?』
『そうだ、櫛田ちゃんは特別扱いで良いだろ』
クラスの誰もが親しみを感じている「良い子」の櫛田桔梗。彼女まで拒絶することには抵抗がある様子だった。俺は騒がしくなる教室を見渡し、静かに一言を投じる。
『その件だが、一つ考えてみてほしい。今はもうクラス間の争いが始まっている。現にDクラスも旧Bクラスも俺たちの悪い噂を流しているだろ? これは明確な敵対行為だ。そんな中で櫛田を特別扱いしていれば、Dクラスは彼女を利用して俺たちの足元をすくってくると思う。「良い子」の彼女を上手く誘導してな。これでも信用できるか?』
『佐倉君の言うことは分かるけど、でも……』
山下が困惑したように視線を泳がせる。近藤もそれに同意するように頷いた。
『そうだぜ、折角仲良くなったのに』
俺は椅子の背もたれに体を預け、冷静に彼らの目を見据えた。
『忘れるな、彼女は他クラスの人間だ。彼女だって自分のクラスを勝たせたいことには変わりない。思い出せ、何の為にこの学校に入学した? 希望の進路を勝ち取るためだろ? 彼女は例外だとでも言うのか? 自分の進路を溝に捨てて、俺たちに進路を譲るとでも?』
『……つまり、クラスのためなら俺たちを騙す可能性もあるってことだな』
腕を組んでいた幸村が、鋭い指摘で追随する。
『そうだ。決定的なことを教えてやろう。櫛田は……Dクラスの奴らに勉強を教えようとしているぞ。俺たちの悪い噂を積極的に流している、あの池と山内にだ。これでも彼女が特別だと言えるか?』
言葉を置いた瞬間、教室のざわめきが嘘のようにピタリと静まった。
『櫛田は多分こう思ってるはずだ。お前たちとは繋がっていたいのは確かだが、ポイントの為には背に腹は代えられない。だから自分のクラスメイトに勉強を教えなければならない。けどお前たちには嫌われたくないから交流は続けたい、って感じだ』
『何だか敵だか味方だかはっきりしないね、どっちなんだろ』
真鍋が不信感を露わにしてぽつりと呟く。俺はさらに追い打ちをかけるように言葉を重ねた。
『現に櫛田は俺たちの悪い噂を流しているDクラスの奴らを止められてない。そんな状態でDクラスの奴らから俺たちのクラスを潰す為に参戦しろと櫛田がDクラスの奴らに言われた場合、櫛田が断らないと言い切れるか? 自分のクラスのメンバーを見捨てられないからと言う大義名分がある上でだ』
重苦しい沈黙が教室を包み込む。そこへ、静かに本を閉じた椎名ひよりが柔らかく、しかし極めて合理的な提案を重ねた。
『そうですね。もしこれでも彼女と交流を続けたい人がいるなら、条件をつけた方がいいですね。噂を流しているメンバーと仲良くするなら、私たちは口をきかないと櫛田さんに伝えるのはどうでしょうか』
ひよりの言葉に、幸村が大きく頷いた。
『なるほど、それが一番分かりやすいな。結局どっちの味方なのか判断できる。噂を流してるDクラスか、それとも俺たちなのか。答えられないなら縁を切ればいい』
『ひよりと幸村の言う通りだぜ。お前ら、試しにそう言ってみろ。「噂を流しているDクラスの奴らと仲良くするなら俺たちは口をきかねえ」ってな。ついでに、もう反撃の材料は整っているとでも言っておけ。自分たちの目で、櫛田桔梗がどんな奴か確かめてみろ』
龍園がニヤリと不敵な笑みを浮かべると、納得のいっていなかった生徒たちも力強く頷いた。
あの日以降、近藤や真鍋、木下たちは早速、櫛田に接触したはずだ。
『俺たち、櫛田ちゃんのこと信じてるぜ?』
『あんな酷いDクラスと仲良くしてないよね……?』
『櫛田さんって、結局どっちの味方なの?』
『池とか篠原とか大嫌い。だけど櫛田さんは別だよ。まさかアイツらに勉強教えたりしないよね?』
『櫛田ちゃん、俺たち櫛田ちゃんが味方だって信じてるから。だからさ、アイツらと関わるのやめてくれるか? じゃねえと……俺たちも櫛田ちゃんを信用できなくなる』
『みんなから愛される天使』であり続けたい彼女にとって、これほど強力で逃げ場のない圧はない。
何より、天秤にかけられたものの差は歴然だった。潤沢なプライベートポイントを維持し、人脈も情報網も価値が高い「Bクラス全員の信頼」。そして一方、ポイント0で愚痴と悪い噂を流すことしかできない自滅寸前の「Dクラス(特に池や山内)」。
損得勘定と保身に長けた彼女が、どちらを切るべきか迷うはずもない。Bクラス全員から一斉に拒絶され、価値あるコミュニティから締め出される恐怖に呑まれた櫛田は、結局のところ、Dクラスを見捨てて「Bクラスとの関係」を選び取った。そして、体裁を取り繕いながら池や山内たちの勉強会を辞退するしかなかったのだ。
Dクラスの学習機会と雰囲気を支える唯一の精神的支柱を引き剥がし、自力での救済すら不可能な状態へ追い込むための完璧な封鎖策だった。
「……陽斗君?」
回想から戻ると、愛里が心配そうにこちらを覗き込んでいた。
「ん、悪い。……ま、彼女とはもう一回話しても良いけどな」
食事が終わり、片付けを終えると、愛里が「じゃあ、お風呂借りるね」と言ってバスタオルを抱え、脱衣所へと消えて行った。やがて、カチャリと鍵がかかり、かすかにシャワーの音が響き始める。
その音を見届けて、俺はベッドの縁に腰を下ろした。すると、それまでテーブルの片付けを手伝っていた波瑠加が、吸い寄せられるように歩いてきて、俺のすぐ隣に腰掛けた。
「本当、分かっててもここ2週間は重たかったなぁ……」
波瑠加は小さく息を吐き出し、膝の上で手を組んだ。
「普通はこんな作戦、誰も考えないさ。龍園の脳内が異常なんだよ」
「お、人のこと言ってるけどさぁ、陽斗も大概だからね〜?」
そう言うなり、波瑠加はニヤニヤと悪戯っぽい笑みを浮かべ、俺の脇腹に指先を突っ込んできた。
「うりうり〜♪ 愛里にやってたでしょ? 愛里の代わりにお返ししてあげる♪」
楽しそうに指を動かし、俺の脇腹をくすぐったり揉んだりしてくる波瑠加。だが、俺は微動だにせず、平然とした顔でそれを見下ろす。
「……あれ? ここは駄目かぁ。なら首は〜?」
今度は俺の首筋に手を伸ばし、ワシャワシャと指先を滑らせてくる。相変わらず微動だにしない俺を見て、波瑠加は「え〜、全然効かないじゃん」と悔しそうに口を尖らせた。
「おい、そろそろ終わりにしないとやり返すぞ」
俺がそう告げると、波瑠加は逃げるどころか、むしろ待ち望んでいたかのように瞳を輝かせた。
「うん、好きにしていいよ」
あっさりとそう口にすると、波瑠加は俺の正面へと回り込み、迷いなく俺の膝の上にスッと腰を下ろしてきた。
「ほら、好きにしていいよ?」
至近距離で見つめ合わさる顔と顔。正面から覆いかぶさるように密着した波瑠加の美しすぎる豊かな胸が、服越しに俺の胸元に柔らかく押し当てられる。さらに彼女はしなやかな両脚で俺の腰回りをぎゅっとホールドし、自分から両腕を頭上に高く掲げて無防備な体を晒してみせた。
「それじゃ遠慮なく」
波瑠加の脇の下に手を伸ばしてサッサッと指先を動かした。
「うひゃはははっ♡」
一瞬で顔を崩し、波瑠加は声を上げて体を大きく仰け反らせた。あまりの反応の良さに、俺は可笑しくなって手を止める。
「なんだ、案外弱いんだな」
「ぜ、全然っ! そういう訳じゃないよ。愛里にされたことあるけど、愛里のは全然効かないもん」
髪をかき上げながら、波瑠加は負けず嫌いそうに口を尖らせる。
「愛里のは手加減が強すぎて弱すぎるだろ。あんなのノーカンだ」
「ん〜? じゃあもう一回やってみてよ。私、今度はちゃんと耐えるから」
そう言うと、波瑠加は片腕をぐっと上に持ち上げ、無防備な脇腹をガラ空きにしてみせた。強がりを言っているものの、その頬はうっすらと朱に染まっている。
「良いのか?」
「ん〜……さっきも触ったでしょ。早くしてよ、なんか……恥ずかしいじゃん」
モジモジしながら視線を泳がせる波瑠加。その素直じゃない態度が可愛らしくて、俺は「それじゃ」と呟き、差し出された彼女の脇腹を優しく指先でくすぐり始めた。
「ん〜、ん〜……///♡ んふふふ///♡」
耐えようと必死に口を真一文字に結んでいるものの、隙間から漏れ出す可愛らしい笑い声。
「やっぱり弱いじゃんか」
「ううんっ、全然大丈夫! 全然平気だからっ」
「それじゃ、本気でいくぞ」
俺は波瑠加の脇腹にある快感のツボを探り当て、そこをピンポイントで揉みほぐすように刺激した。
「んう〜♡ ああああああ///♡ ひゃはははははははは///♡」
耐えきれなくなった波瑠加は大爆笑を破裂させ、たまらずギュッと脇を閉じて身体を丸めてしまった。耳まで真っ赤に染まっている。
「駄目じゃん、閉じちゃ」
「んう……今度は閉じないから! 大丈夫っ!」
「それじゃ、開いたまま固定するからな」
俺は波瑠加の肩を掴むと、そのままベッドの上へ仰向けに押し倒した。反動で揺れる柔らかい身体。間髪入れずに彼女の両手を万歳させ、俺の片手でその二つの手首をまとめて頭上でしっかりと押さえ込む。
「え///、え///……っ」
急激に接近した距離と、逃げ場のない体勢に、波瑠加は顔を真っ赤にして俺を見上げてきた。胸が大きく上下している。
浴室から聞こえるシャワーの音が、愛里がいつ戻ってくるか分からない絶妙なスリルと緊張感を煽ってくる。
「ねえ/// ちょっと体勢あれじゃない……? 私、もうヤバいんだけど/// 愛里、上がってきちゃうよ……?」
「大丈夫だ。本当に強いかどうか確かめるだけだからな」
「あ///」
俺は空いた方の手で、波瑠加の脇腹を優しく、しかし確実に揉みほぐした。
「んふふふ♡ 気持ち良い……♡ あ///」
体から力が抜け、吐息を漏らす波瑠加。そのまま無防備な脇の下へと指先を滑らせ、優しくくすぐり始める。
「んふふふ♡ ひゃん♡ 駄目♡ 無理ぃ♡」
「あひゃひゃひゃひゃ///♡ うひひひひ///♡」
波瑠加はベッドの上で身悶えしながら、今までに見たこともないほど幸せそうで、物物しく照れた表情で大爆笑した。
「……そんなにされたかったのか?」
尋ねると、波瑠加は涙目のまま、照れくさそうに俺の耳元へ吐息を吹きかけてきた。
「うひひひ♡ だってぇ……愛里のされてるの見たら、私だって、もう……///」
そのままじっと下から俺の顔を見つめる。
「ねえ、陽斗……」
「なんだ?」
「来てもいいよ」
波瑠加はどこか熱を帯びた瞳でそう呟くと、俺を優しく受け入れるようにそっと両手を広げた。下から俺をそのまま抱きしめようとする、無防備で甘やかな姿勢。
極上の密着感と耳元で囁かれる甘い言葉に耐えきれなくなり、俺は我慢できずにそのまま彼女の上へと覆い被さった。お互いの吐息が触れ合うほどに距離を極限まで縮めて――。
「上がったよ〜」
ガチャリと浴室のドアが開き、パタパタと軽やかな足音が脱衣所から響いた。愛里の声だ。
「っ!?」
ガハッと俺は横へ跳ね起きるように倒れ込み、ベッドの上で激しく転がった。波瑠加も慌てて体勢を整え、真っ赤な顔で胸元を押さえる。
「次、波瑠加ちゃんいいよ〜。あれ? 2人でベッドに寝てたの?」
濡れた髪をタオルで拭きながら、部屋に戻ってきた愛里が首をかしげる。
「愛里〜……もっとゆっくりしてても良かったのに〜」
波瑠加は名残惜しそうに唇を尖らせ、恨めしそうにため息をついた。
「え? 無理無理! これ以上入ったら茹でダコになっちゃうもん」
無邪気に笑う愛里を横目に、俺は気まずさのあまりベッドに顔をうずめて突っ伏していた。
「もう……しょうがないか。じゃあ、私入ってくるね」
波瑠加は少し名残惜しそうに俺の背中を一瞬だけ撫でると、バスタオルを手にして浴室へと向かった。
入れ替わりで、ホカホカの湯気を纏った愛里がベッドの縁に腰掛ける。パタンと浴室のドアが閉まる音が聞こえた直後――ドサッと身体に重みが加わった。
愛里が突っ伏している俺の身体の上に、チョコンと乗っかってきたのだ。
「……どうした?」
首だけを少し捻って見上げると、愛里は素顔のまま、至近距離で俺の顔をじっと見下ろしていた。
「……どこまで行ったの?」
「何も始まってないさ」
「本当に? なんか……すっごく可愛い声が聞こえてきた気がしたんだけどな〜」
愛里は意地悪そうに目を細め、ニヤリと小悪魔的な笑みを浮かべる。
「波瑠加ちゃんの顔、可愛くてやめられなかったんでしょ? 私には分かるよ」
バレてるじゃないか……
流石に今回は調子に乗りすぎたか、と心の中で冷や汗をかく。
「ねえ……されてみたら? 女の子の気持ちが分かっちゃうかもよ?」
「……俺はそういうフェチじゃない」
「いいから試してあげる。ほら、手あげて」
愛里は俺の反論を軽やかに受け流しながら、ゆっくりと指先で俺の身体をなぞり始めた。首筋の皮膚を、上からスーッと指の腹で撫で下ろしてくる。
「っ……」
そのまま、胸元、無防備な脇の下、そして腰回りの脇腹へと、なぞるような手つきで指先が滑っていく。くすぐったいような、それでいてゾクゾクとするような、今までに味わったことのない妙な感覚が全身を駆け巡る。
見上げると、愛里は上から愛くるしい笑顔で見下ろしていた。照明の影になり、普段の大人しい印象とはどこか違う、妖艶でミステリアスな影が彼女の素顔に落ちている。
あれ……? 愛里って、こんなに魅力的だったっけ……?
思わず息をのむ俺の耳元で、愛里は悪戯っぽく囁いた。
「波瑠加ちゃんをいじめた罰だよ。ちゃんと受けてね?」
細い指先が、絶妙な力加減で俺の肌を刺激していく。俺は必死に歯を食いしばり、声が漏れ出さないよう耐えるしかなかった。
結局、波瑠加がお風呂から上がってくるまで――愛里による甘くて刺激的な「お仕置き」という名の遊びは、たっぷりと続けられたのだった。