「グラディエイター=サン、不作法を長年直そうとしないザイバツを舐めてるニンジャが評価される事は決してないでヤンス。不作法で自分のメンツを潰しかねない奴なんて、候補に上がっても何か理由を付けて確実に他の候補が推薦されるでヤンス。悔しいだろうが仕方ないでヤンス」
「元ソウカイ・ニンジャ風情が知ったような口を……!」
ニンジャスレイヤーと睨みあうグラディエイターの身体が震え、怒りで顔が真っ赤に染まった。以前から不作法をマスターに昇格した同期や後輩から煽られていた事が窺える。
「怒らないで下さいね、元ソウカイ・ニンジャ風情でもわかる事をやらないなんて、強いだけのバカみたいじゃないでヤンスか」
「お前ェ!」
グラディエイターがニンジャスレイヤーを無視してクチュリエールに吶喊する!その背にニンジャスレイヤーがスリケンを投げ、深々と数発刺さるが、お構いなしにそのまま進む!
「イヤーッ!」
「フンハーッ!」
グラディエイター渾身の一撃をクチュリエールがカラダチ防御!接触した瞬間にクチュリエールの身体を走り抜けた謎めいたカラテ震動がグラディエイターの接触を拒絶しつつ拘束!
「グゥゥゥゥッ!身体が動かん、何をした!」
グラディエイターの背後に立つニンジャスレイヤーの肩の筋肉が縄のように盛り上がった。そしてアフリカ投げ槍戦士のごとく、上体をねじってスリケンを持つ手に力を込める。暗黒カラテ、ツヨイ・スリケンの構えだ!クチュリエールは横に一歩歩いてニンジャスレイヤーの射線から外れる!
「イヤーッ!」
「アバーッ!」
ニンジャスレイヤーの投擲したスリケンが背骨ごと心臓を貫通!ダイミョ・クラスの壁に深々と突き刺さった!
「サヨナラ!」
「インタビューしなくて良かったでヤンスか?」
「大丈夫だ。最終的に全て殺せば良い」
「暴力で解決できる話で良かったでヤンス」
爆発四散するグラディエイターを無視してクチュリエールとニンジャスレイヤーが会話する。一区切りついた所でクチュリエールの目がダイミョ・クラス前方にあるクローンヤクザ達が持ち込んだ大量の密輸品入りスーツケースに向いた。
「アッシは金目の物を持てるだけ持ったらこっそり降りて、キョートでの活動資金にするでヤンス。ニンジャスレイヤー=サンはどうするでヤンスか?」
「私もそうするつもりだ。……ところで、何故オヌシはキョートに行くのだ?」
「アマクダリの依頼でキョートで一暴れしてアッシがいる事を示してから一ヶ月以上潜伏して囮をする予定でヤンス。
……アッシが勘と欲に任せてネコソギ・ファンドの持ち株をスキャンダルがばら撒かれる直前に全て売り払った上に、紙切れ同然になったネコソギ・ファンド株を関連会社の株ごと大量に買い叩いたせいで、ソウカイヤ残党組織のアマクダリからニンジャスレイヤー=サンとの内通を疑われたでヤンス。援護射撃まではバレずに済んだから、首の皮一枚繋がったでヤンスね。
いくらアッシらでもアマクダリにまで命を狙われたら死ぬでヤンスから、禊の為に依頼をやる事になったでヤンス。
難しいミッションだけど、ニンジャスレイヤー=サンのおかげで後は潜伏するだけでよくなって助かったでヤンス!」
「……クチュリエール=サン。私が言えた事ではないが、少しは後先を考えて生きないとダメだろう……」
「アッハイ」
ニンジャスレイヤーはクチュリエールの無軌道な行動に苦言を呈し、クチュリエールはバツが悪そうに答えた。
━━━
「緊急事態ドスエ」
スーツケースを全て漁り、二人が金目の物を持てるだけ持ったタイミングで車内放送のマイコ音声が流れた。サイバー車掌達の尽力で復旧に成功したようだ。しかし、内容が不穏だ。
「列車強盗団によって貨物車両以降の車両が切り離されましたドスエ」
「エッ!?」
「何っ!?」
二人が慌ててダイミョ・クラス車両の上に出ると、既に貨物車両は引き離されている。連結部やドアが斬り刻まれており、ニンジャ同士の戦闘によって切り離されたとわかる状況だ。連結部は壊れており、奇跡的に前方車両に追い付いたとしても再連結は不可能だろう。
「「………………」」
あまりの光景に二人揃って絶句する。貨物車両が離れて視界から消えて行く様を二人は呆然と眺めていた。
━━━
「ニュースの時間です。ヨリトモ&ベンケイ・レールウェイ社のキョート行きNS893便が列車強盗団の襲撃により、貨物車両以降の車両を喪失するという事件が発生しました。
ヨリトモ&ベンケイ・レールウェイ社は担当部署の責任者一同を集めてケジメ会見を開き……」
武装新幹線襲撃から数日後、ネオサイタマ内を走るリムジンの中で、アマクダリが手配したチケットで武装新幹線に乗り込んだクチュリエールがザイバツニンジャ四名を殺害し、列車強盗団による貨物車両以降の喪失に関わったと思われるという報告を受けたチバはニュース番組を聞きながら頭を抱えた。隣に座るアガメムノンも顔が若干引き攣っている。チバを挟んで反対側に座るネヴァーモアはクチュリエールの戦果に驚愕している。
クチュリエールがキョート入りした事を示唆する為、騒ぎを起こしてから潜伏するよう指示を出したが、チバとアガメムノンはここまでやると予想していなかったのだ。ネオサイタマに派遣されるザイバツニンジャの数が減り、目標は達したが、ザイバツからアマクダリへの目が想定以上に厳しくなった。
「アガメムノン=サン、やはりぼくが直接依頼して、やり過ぎないよう釘を刺すべきだったんじゃないか?」
「申し訳ありません、チバ=サン。私の想定が甘かったようです……」
気まずい空気が流れ、チバは深くため息をついた。
━━━
同日、キョート城内部、観戦の間を重苦しいアトモスフィアが支配していた。
武装新幹線でネオサイタマから帰還する四名のザイバツニンジャの死、列車強盗団による貨物車両以降の喪失、密輸品盗難、車内のスリケン痕から推測される下手人〝ネオサイタマの死神〟クチュリエールがガイオンに侵入した疑惑。
通信を遮断された上に監視カメラの映像を全て削除された為、情報自体がほぼ無い現状、少なくとも解っているのは……サイクロプス、グラディエイター、ヘッジホッグ、フォビアの四ニンジャが爆発四散し、どのような最期を遂げたのかすら不明な事と捕獲したゾンビーニンジャ、ジェノサイドの脱走、密輸品の一部を盗まれた事、ヨリトモ&ベンケイ・レールウェイ社が貨物車両以降の車両を失った事だった。
「大失態に御座います、マイロード」
パラゴンは恐れおののきながらドゲザしている。
「まさか、あの様な事が起きるとは。一体いかなるカラテやジツを使ったのか……」
それを聞いたロードは、恐ろしいほど長い沈黙の後、ワイングラスを置き、平安時代の高貴な言葉で失望を表した。
「……ヤンナルネ……」
「ミャオーウー」
ロードの静かな怒りを感じたのか、バイオ三毛猫も膝から離れ、どこかに隠れてしまった。
「パラゴンよ、ガイオンにおるザイバツ・ニンジャに通達せよ。ガイオンに潜入したと思われる下手人を捜し出し、ここに連れて来るのだ」
「御意! 御意! マイロード!」
「ムフォーフォーフォー……ウェルカム・トゥ・キョート・リパブリック!」
━━━
ヴァレイ・オブ・センジンを越えた先、キョート共和国を走る鉄道橋の側をタケヤリやロケットランチャーで武装した二台のバイクが走っていた。
前を走るバイクをボロボロのカソックを纏い、ウエスタンハットを被って顔にウエスタン・バンダナを巻いた大柄の男が運転し、男の後ろからユリコが掴まっている。
後ろからは紫髪のサイバーゴスが運転するサイドカーにピンク髪のサイバーゴスを乗せたバイクが追いかけていた。
「ジェノサイド=サン」
「どうした?ユリコ=サン」
ユリコの呼びかけにジェノサイドと呼ばれた男が答える。
「……呼んだだけよ」
「……そうか」
夕日に照らされながら、二台のバイクはガイオンに向かって駆け抜けて行った。
原作とは比べ物にならない失態にロードもブチ切れです。
今回、パラゴン=サンは全く悪くありませんが、八つ当たりで怒気をぶつけられました。
良い感じの空気で終わったけど、マケグミの皆さんは列車強盗団をジェノサイド=サンにゼツメツして貰ったから直接殺される事はありませんが、数少ない生き残った列車強盗団の車両を取り合う事になりました。何人生き残れるのでしょうね?