『世界くらい救ってこい!』と送り出した子分、十年経ったら様子がおかしい 作:べべべたろう
待つことには慣れていると思っていた。
が、テオを見送ってからの数日は一日千秋の思いだった。ガチで長かった。
テオは「すぐ帰るよ」なんて言ってたくせに全然帰ってこなかった。ガチでキレそう。
遅くなるならなるで手紙出すとかさ、ありますよね? 社会人としてさあ。ホウレンソウがないよ、ホウレンソウが。
ええ加減にせえと思い始めたころ、馴染みの行商人がビッグニュースを持ってきた。
『勇者、魔王討伐に成功!』
マジでどういうこと。夢?
☆☆☆
魔王討伐の報が飛び込んできてからすぐ、テオは飛んで帰ってきた。文字通り、飛んで。
俺はそんなでかい魔法の行使を初めて見たから正直感動した。すげー魔法を見せてくれたという一点でここのところの音信不通を許してもいいかなって気がしていた。
が、テオはティアを伴って帰ってきた。俺の機嫌が若干悪くなる。
テオに連れられたティアが、上空から俺を発見して指を指してきた。
「リタちゃん! テオドール、すっごかったんだから!」
「はぁ……」
気のない返事をすると、ティアが俺の目の前に着地する。
「もんのすごかったの! リタちゃん、あなた何したの!?」
「何もしてないデス……」
「嘘! 王都の研究者たち、『真実の愛パワー』の研究をガチりはじめてるよ!? 」
「何それ知らん……怖……」
俺は震え上がった。それからテオの顔を見た。
そこで察した。
またテオが王都であることないこと吹かしてきたんだなと……。
はしゃぐティアを押しのけてテオも着地する。
「お前、何言ったんだよ」
俺は他の村人の目を考えて小声で囁いた。テオの耳は無駄に高い位置にあるので限界まで背伸びをしている。
「えっと……あは」
「ごまかすな」
「……リタちゃんに、き、キスされてからなんか調子が良くて。お伽話の真実の愛の力みたいだって言ったら……なんか……」
「……本気にされたのか?」
テオが少しの沈黙の後頷く。
「うん……」
俺はスパァン!と音が出るくらいの勢いでテオの頭を叩いた。
「テオの大馬鹿! 変なこと言いふらすな!」
「だ、だってうれしくて……。それに、数値的にもほんとに魔力は増えてたし……」
「うれしくてもダメなもんはダメだ!」
俺とテオがぎゃいぎゃいやってると、ふと周りの沈黙に気がついた。ハッと辺りを見回すと、周囲からの生あたたかい視線。
『ああ、こいつらイチャコラしてるわ〜』みたいな生あたたかさ。
俺は顔面に血が集まるのを感じた。
は、恥ずかしすぎるッ!
俺は逃げた。
☆☆☆
俺は逃げて、十年前もこの間もテオと話した丘に来ていた。ちなみにテオはずっと並走してついてきていた。やめてくれる? どんな顔で村に戻ればいいわけ?
「……リタちゃん」
テオがおもむろに俺の名前を呟いた。
だから応じた。
「……おう」
「僕、帰ってきたよ」
「……おかえり」
『……えっ、と。お帰りなさい、テオ。私のこと、覚えてる?』
あの日、村に帰ってきたテオに俺はこう言った。それがテオをどれくらい傷つけたか、今はもうわかっているつもりだ。
テオはきっとこう言ってほしかったんだろう。それを言ってやろうと思った。が、こいつは俺がこいつを慮ると『解釈違いです』とか言い出すめんどくさい男だ。あくまで、俺が俺の意思で言ってやらないと。
ニッと笑う。子どもの頃のあの日みたいに。
それから手を伸ばして——届かないのでジェスチャーで指示して屈んでもらって——頭を撫でてやる。ぐしゃぐしゃと。
それから言う。
「——よくやった! さすが俺の子分だ!」
「……うん!」
テオは泣きそうに笑った。
それから二人並んで腰掛ける。
「リタちゃん、その、僕……」
テオがもじもじし始めた。
「……返事は、いらないって言ったけど。その……」
俺はついとそっぽを向く。
「……
「えっ……」
「私たちの間には、真実の愛パワーがあるんでしょ?」
とか言いながら、俺はテオを試したつもりだった。
十年、テオに会っていなかった間の俺も俺自身だ。テオのことは嫌いじゃないが、この期に及んでこの『俺』は受け入れられない、解釈違いだと抜かすのであれば考えなおさねばならんだろう。
……果たして、テオは。
「うん。……リタちゃんは、どんな風でも、僕のリタちゃんだ」
そう言ってうっとり笑った。
……やっぱりちょっとキモい。
隣に座るテオの頬を引っ張る。
「いひゃいよ、リタひゃん……」
「そういう顔がお似合いだよ」
お付き合いいただきありがとうございました。
明日21時から「TS娘と情緒をぐちゃぐちゃにされる相棒」の更新を予定してます。TS娘と親友の精神的BLものです。よろしければ。