黒龍物語   作:一芽

11 / 12
投稿が大変遅れて失礼しました。
今回は、戦闘シーンが飛び飛びな感じとなっていますのでお気をつけて。
エスタークは、リュカ達に負けた後、鍛えまくった上に進化の秘法で強くなっていた設定で、さらに今回は、闇で強くなっております。
そして、最初の世界も終わりが近づいてきました。
ではどうぞ。


それぞれの勝利と成長

 闇の世界にて始まった戦いは、クロマにとって一番辛い戦いとなっていた。

 

 

 

「ギィィ……マヒャド!」

 

「ガァ!?」

 

 サモンのマヒャドが炸裂し、防御しようとするクロマ…ゴジラであったが、マヒャドの氷の刃が足や肩に突き刺さる。

 

「…ァ…!(やめろ!…オレはお前とは戦いたくないんだ!)」

 

 手を広げてサモンに戦いを止めるように訴えるゴジラだが、サモンには届かず剣と爪で攻撃してきた。

 

「…バケモノナンダボクハ!…ウグァァア!」

 

「グゥガァァ…!(駄目なのか…!いや、ニドル達がオレを止めたみたいになんとか救い出してみせる!)……ガァッ!」

 

「…ッ!」

 

 サモンの攻撃に耐えながらゴジラは、サモンの巨体を持ち上げ て近くの岩場へと投げつける。

 

「…ァァ!?」

 

「…ガァ…!(クソ!いくら頂上が広くても、デカい奴がこんなにゴロゴロいたら戦うとか以前にマトモに動けない!)」

 

 頂上での戦いは、ゴジラとなったクロマや巨大な異形体へとなったサモン、エスタークやおにこんぼう、そしてギガデーモンなどがいるため、広い頂上も、狭く感じれるほどであった。

 そんな中、ニドル…アンギラスは、ゴジラの方を見た。

 

「クロマ!俺達に任せな!デブ鬼!やっちまえぇ!」

 

「誰がデブ鬼だゴラァ!まあ、わかってるぜ!いっちまいなぁ!」

 

 アンギラスの合図を受けたおにこんぼうは、スラリンやドラゴンマッドなどがしがみついた鋼の巨大棍棒を自らが横に回転することで振り回す。

 

「おいおい!何がしたいんだぁ?馬鹿だろ…グホォアァァァァァァ!!?」

 

 おにこんぼうの棍棒によってラマダは、闇の世界の南東へと吹っ飛ばされた。

 

「馬鹿が!俺達の攻撃にかなうわけない!」

 

 おにこんぼうが自慢げに言う攻撃とは、棍棒にしがみついた魔物達による炎系ブレスによって回転が加速されて、さらに炎も纏うことで二重の意味で強化された棍棒をぶつける技だ。この技により、重量の高く巨大な魔物をも吹っ飛ばせるのだ。

 

「続けてぶっ飛びな!」

 

「「おわぁ!?」」

 

 動きの鈍いズイカクとショウカクも北西へと吹っ飛ばされていき、その場に残されたギガデーモンは、頭に血管を浮かばせていた。

 

「調子に乗るな!お前達などに吹っ飛ばされるワシではない!」

 

「へえ~そうかい」

 

「ぬぅ!」

 

 後ろにいたザイル、グレイトドラゴンのシーザー、パオウ、ベレック、リンガー、もーびんの姿に気がついたギガデーモンであったが、彼等は既にギガデーモンを吹っ飛ばせるだけの力を溜めていた。

 

「いくぞギガデブ野郎!」

 

 ザイルが魔神の斧をギガデーモンへと振ると同時に、他の五匹も攻撃を合わせて放つ。

 

「誰がギガデブじゃああぁぁぁぁぁ!!……」

 

 南西へと吹っ飛ばされたギガデーモンの声はもう聞こえなかった。

 四匹の巨大な魔物達がその場からいなくなった事を確認した魔物達は、各々、吹っ飛ばされた魔物達のいる方角を見る。

 

「今ので半分もいってないだろうが四匹全部にある程度のダメージは与えた!俺様達は散らばってそれぞれケリをつけてくるからそっちは頼んだぜ!」

 

 おにこんぼうはそう言うと周りの魔物達に指示を出して、魔法で四匹が吹っ飛んでいった方へと転移させていく。

 

「オォウ!ありがとよ!じゃあ俺も…オラァ!」

 

 アンギラスはそう言うと、自分とエスタークの立つ場所の地面に向かって強く尾を振り下ろしてぶつける。

 

「何を…した…?……そのようなこけおどしは通用…ッ!」

 

 エスタークは言い切る前に、自分とアンギラスの下の地面が崩壊していくの気がついた。

 

「アンタとの戦いの続きは下でやる!とりあえず一緒に落ちようぜ!」

 

「貴様ァ!」

 

 正気も無いながら、エスタークは目の前のアンギラスの小馬鹿にしたような言動に苛立ちを見せ、そのまま崩れた地面の下へと落ちていった。

 

「後は頼むぜクロマ!これで周りを気にせず動けるだろ!サモンを救ってやれ!」

 

 そう言うとアンギラスも自ら落ちていった。

 

「……!(みんな、サモンを止める事にオレを集中させてくれようとして…ありがとう…!)」

 

 心の中で魔物達にお礼を言うとサモンをじっと見る。

 その目はクロマとして、ゴジラとして、今のサモンと似た変わり果てた存在としての思いが見られ、ゴジラは静かに白熱光を吐こうと口を開く。

 

「……ニ…サン」

 

「……(こんな意味のない戦いなんて終わらせてやる…お前はオレのような化け物にさせはしない!)…ガァァ!」

 

 ゴジラの口から白熱光が放たれ、巨大なサモンを包む。

 

「ウゥ…!」

 

「…(不器用なオレなりのやり方だ、進化の秘法の力も闇もオレの白熱光で消し去ってやる!)」

 

 ゴジラの白熱光は、サモン自身も傷つけながらもサモンの中の闇も消し去っていく。そんな光景をレオは悲しそうな目で見ていた。

 

「……私の力を施したけど、ゴジラの力では先にサモン君の命を奪いかねない…私がちゃんと前線で戦えたら…」

 

 レオはなんとも言えない顔をする。彼女自身弱くはないのだが、戦闘経験が少なく、かえって戦闘に出るとゴジラよりも危険な存在になる可能性が高いのだ。そのため、ゴジラとアンギラスに自らの力を施させたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 そして、それぞれの場所にて戦いが再開されようとしていた。

 

 

 

「お前らぁ!オレ様がグチャグチャにしてぶっ殺してやる!」

 

「…図に乗るなよ、見苦しい哀れな魔人が…ふん!」

 

 南東の森では、怒り狂ったラマダとプオーンを中心とした魔物達が戦っていた。

 

 

 

「ほう、実戦配備で量産されていた魔物かお前…。だか、所詮は完成系であるワシにはかなうはずがない」

 

「やってみるか老いぼれ?」

 

 南西の草原にて、ほとんど同じ容姿であるギガデーモンとおにこんぼうは睨み合い、それぞれの棍棒を相手へと向けていた。

 

「まさか、1対1で挑んでくるとは舐められたものじゃな…では死ねい!」

 

「それはこっちの台詞だ!すぐに終わらせてやる!」

 

 二匹の棍棒が強くぶつかり合った。

 

 

  

 北西の山

 

「ショウカク、こいつらをどうする?」

 

「オォウ!とっとと倒しちまうに決まってるだろ!」

 

 ズイカクとショウカクのコンビは、目の前の魔物達を強く睨む。

 

「脳筋が増えたところで、進化の秘法で強くなろうが我々は負けぬぞ!」

 

「そうだ!我々は貴様を倒してみせる!」

 

 バトラーとタークが前に立ち、後ろに立つ魔物達の戦意を高める。

 

「「では死ねぇい!」」

 

「「こっちの台詞だ!メラゾーマ!」」

 

 巨人二匹の攻撃と、バトラーとタークのメラゾーマが衝突し合い、北西の大地を輝かせた。

 

 

 

 

 

 

 そんな中、デスマウンテン内部の洞窟にて、アンギラスとエスタークが激突していた。

 

「…ッ!」

 

「ガァァ!」

 

 両者の戦いは激しく、最初はアンギラスの方が善戦していたが、徐々に場の環境に適応できるようになったエスタークの方に押されつつあった。

 

「もう楽になれ」

 

「ガァッ…!」

 

 エスタークの二本の大剣が強く振り下ろされ、アンギラスは防御の構えを取るが、堅き床へと叩きつけられた。

 

「ヘヘッ、終わらない進化で凄い強くなる奴とは聞いてたが、せめて倒されるんなら闇に染まってない帝王としての誇りのあるアンタと戦いたかったぜ…」

 

「……遺言はそれまでか、ならば今殺してやろう。他の者ももしかしたら既に倒されてしまってるであろうから寂しくはないだ「おいおい…誰が遺言なんて言った?負ける気なんてサラサラねえよ!」…ッ!?」

 

 顔を上げていたエスタークは顔を下ろすと、床に倒れていたはずのアンギラスがいないこもに気がつく。

 

「どこにいった!「後ろだ!」…なにぃ!そこかぁ!メラゾォォマ!」

 

 エスタークは後ろに立つアンギラスへ向けて巨大メラゾーマを放つが、アンギラスは静かに微笑を浮かべていた。

 

「それを待っていたぜ!オォラ!」

 

 アンギラスは自身の尾を振り回し、尾の先でメラゾーマを打ち返した。

 

「ほう面白い!だがなぁ!」

 

 エスタークは大剣でメラゾーマを受け止める。しかし、その行為はエスタークの隙を生んだ。

 

「隙だらけだ!喰らぁぁえぇぇぇ!」

 

「ッ!脚と腕が…!?…ヌオォ!」

 

 アンギラスが吐いた超低温冷凍ブレスにより、エスタークの脚と腕は凍結させられ、腕が凍結させられたことにより腕に加えられた力がなくなり、メラゾーマは大剣を吹っ飛ばしてエスタークの顔面に衝突したのだ。

 

「ヌ、ヌオォォォ!」

 

 エスタークの口から闇が吐き出されており、それを見たアンギラスは、エスタークの体内から一気に闇を放出させて消すために白熱光を吐き出す。

 

「ガァァァァア!(すまねえ…痛いだろうが、少しだけこらえてくれ!)」

 

「ヌゥゥ……ッ!!?ガアアアアアアア!!」

 

 エスタークの体中から大量の闇が溢れ出し、白熱光によって消されていった。

 

「よし!」

 

 アンギラスは、溢れ出た闇に白熱光をぶつけて消し去っていく。

 

「…ガアァァ……わ…我は……」  

 

 闇が身体から消えたエスタークは正気に戻り、疲れ果てながらもアンギラスの方を見た。

 

「…ヘッ、どうやら元に戻ったようだな…」

 

「そのようだな…すまないことをした、王としても武人としても詫びよう」

 

 エスタークは戦いは好きだが、正気を失って戦うのは別で、帝王としての誇り以上に全身全霊で戦ってくれたアンギラスに敬意と詫びの気持ちを表した。

 

「いいって、柄にあわないこと言うなって!それよりも…上の方は特に進展なさそうだが、他の連中の戦いもすぐに終わりそうだな」

 

「…そのようだな…」

 

 二人(二匹?)は上の方を向いて複雑な表情を浮かべた。

 

 

 

 

 南東の森

 

 

 

「グォォ!」

 

「ハァハッハッハッ!数でくるなら先にお前を潰すだけだ!」

 

 プオーン達はラマダに善戦していたが、ラマダが魔物達をまとめているプオーンに集中攻撃をし、プオーンはとてもいしきを失いかけていた。

 

「ヘッヘッへ!」

 

「グゥ…!」

 

 ラマダは自身の巨大な手でプオーンの身体を掴み、そのまま握りつぶそうとする。

 

「やめろぉ!」

 

 リンガーは剣を構えてラマダの手に切りかかるが、防御呪文により防御力の上げられたラマダにはかゆい程度であった。

 

「おのれ…」

 

「大丈夫だリンガー…ここから逆転してやる」

 

「「…?」」

 

 プオーンのどこか余裕の感じれる発言にラマダとリンガーは顔をしかめる。

 

「おい…ここから逆転ってなぁ、オレ様には進化の秘法が「それを利用させてもらう」…ハァ?なに言って………?」

 

 ラマダは、プオーンに進化の秘法など利用できないと思っていたが、掴んでいるプオーンの力が急激に増大していくのに気がついた。

 

「なぁぁ!?」

 

「自分から掴みにくるなんてな、これで進化の秘法の力を直接手に入れれる…感謝するぞ!」

 

「グガァァア!」

 

 プオーンはけたたましいおたけびを放ってラマダの手から解放され、ラマダも近くの大木に身体をぶつける。

 

「も~?」

 

「プオーン…?……いや、あれはまさか…!」

 

 リンガーは、目の前のプオーンの姿がどんどん巨大化していく姿を観て冷や汗を垂らし、他の魔物達と共にプオーン……

 

 いや、『ブオーン』から離れた。

 

 

 

「ブオォォォォオオオオオンンンン!!」

 

 

 

「あれがブオーン…」

 

 ラマダは自分よりも遥かに巨大なブオーンの姿に驚愕するが、すぐに攻撃しようと構えをとる。

 

「いや!こっちは進化の秘法で強くなってる!負けるわけ…「その秘法の力なら儂が元に戻るのに使わせてもらった」ナァァァア!!?」

 

 ラマダは愕然とする。ブオーンは、元の姿に戻るためだけに進化の秘法の力を使っているが、プオーンの時に鍛えてるため、しかも、ラマダは進化の秘法の力まで吸収されてしまい弱体化してるため、力の差は歴然となっていた。

 

「フゥン!」

 

「ゲェェ!?」

 

 ブオーンは手をラマダに叩きつけ、ラマダは地面へとめり込んでいた。

 

「観るにも耐えんな…儂は先に戻る…こいつは煮るなり焼くなり好きにしてしまえ」

 

 ブオーンはデスマウンテンへと飛んでいった。

 

「あの野郎~!…ゲェ!?」

 

 ラマダは、後ろに立つ恐ろしい形相のリンガー等魔物達を見て変な声を上げてしまう。 

 

「見逃してもらえると思ったか…?残念だっな、お前が大神殿でやっていたことは知っているのだぞ」

 

「えぇい!こうなったらビッグバー」

 

「ジゴスパーク!」

 

「ーガハァ!?」

 

 ビッグバンを放ってリンガー達を倒そうとしたラマダは、リンガーの放ったジゴスパークに貫かれた。

 

「…クソ…が…!またいつか…蘇って…やる…か……ら…な!」

 

 ジゴスパークにより大きなダメージを受けたラマダは、呪いを唱えるような声でリンガー達へ言い、身体が崩壊して消えてしまった。

 

「哀れな魔物だ…」

 

 リンガーは剣をしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 南西の平原

 

「ガァァァア!まさかワシが貴様のような旧式の魔物にぃ!」

 

 おにこんぼうとの棍棒のぶつけ合いに負け、棍棒の一撃を喰らったギガデーモンは、腹を押さえながらおにこんぼうを睨みながら言った。

 

「こちとら500年以上鍛えてたんだ。テメエのような卑怯な事で有名な魔物とは違うんだよ」

 

「お、おのれ…!…デェェアァ!」

 

 やけを起こしたギガデーモンは、自身の棍棒に魔力を注入しておにこんぼうへと投擲する。

 

「チィ…!」

 

「なにぃ!」

 

 おにこんぼうは棍棒を自身の棍棒で打ち返し、打ち返された棍棒はギガデーモンの腹へと突き刺ささる。

 

「グフォ…!おのれぇ、このワシがまた弱者などにぃ!」

 

 ギガデーモンの身体は徐々に消滅し始めていた。

 

「テメエは進化の秘法でしか強くなろうとしなかった。結局、努力が足りなかったんだよ、わかりな」

 

「努力…じゃと…フハハ……!努力か!そんなものをした奴等に昔も負けたのか!グフハハハハ!!」

 

 ギガデーモンは、謎の大笑いと共に完全に消滅した。

 

「…新しい生でも受けたら努力して強い奴になれよ」

 

「……ダーラ…テメエも努力したんだしな」

 

 おにこんぼうはギガデーモンの消滅を確認し、ブオーンよりも早く着きそうな勢いでデスマウンテンへと飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 北西の山

 

「「ウオオオオオ!!」」

 

「「「「ハアアァァァァァ!!」」」」

 

 ズイカクとショウカクと戦うターク達は正面からぶつかり合い閃光を上げた。

 

「どっせぇぇぇぇい!」

 

 ショウカクは自らの重い足で地面を強く踏み、地面が裂けるほどに大きく揺らした。

 

「みんな跳べ!」

 

 ターク達はジャンプや飛ぶことで、ショウカクの攻撃をかわした。

 

「よし、なんとか「バァカ!」…なぁ!?」

 

 ショウカクはなんと、地面を揺らしながら大量の岩をターク達へと向けて投げていた。ぶつけられた魔物達はバランスを崩しながら落ちていく。

 

「ならば先に貴様を!」

 

 バトラーは地獄のサーベルでショウカクに斬ろうとする。

 

「フゥゥン!」

 

「なっ!」

 

 しかし、ズイカクがショウカクの壁となり立ちふさがる。

 進化の秘法で防御力が高められたショウカクに対して、バトラーの斬撃のダメージはほとんどなかった。

 

「せぇぇい!」

 

「ぐぅ!」

 

 バトラーにズイカクの拳が決まり、バトラーは一度ズイカク達から距離をとる。

 

「ターク、ベレック、頑丈な奴から倒すべきだ…」

 

「だけどさ、どうするんだバトラーさんよぉ…あいつ、当たったり吹っ飛んだりするけど、ダメージが入らないじゃねえか、俺はパワー重視とかじゃねえし…」

 

「ベレック、頑丈な奴にダメージを与えるどころか消滅ほどの呪文が使える彼がいるじゃないか」

 

 タークの言葉に、二人はタークの後ろにいる魔物を見た。

 

「…そうか、お前がいたな…頼むぞダーラ」

 

「…ああ」

 

 ダークスライムのダーラは静かに返事をした。

 

 

 

 

 

 

「おいおい~!早くこねえんなら一気に潰すぞ!……ん?なんだありゃあ?」

 

 ショウカクは、自分達の方へと飛んでくるダーラを見て、気が抜けた声を出す。

 

「チビじゃねえか。おいズイカク!」

 

「まったく…あんなチビくらい自分でどうにかしてほしいが仕方ない」

 

 ズイカクは高速で飛ぶダーラを軽々と片手で掴んだ。

 

「簡単に捕まったな…このまま押しつぶしてやろう」

 

「やっちまえ!見せしめだ!…あぁ?なんかそいつ光ってないか?」

 

「なに?」

 

 二匹は、ズイカクの手の中で青く光り輝くダーラをじっと見、嫌な予感がしたズイカクはショウカクへと向けてダーラを投げる。

 

「おいズイカク!こっちに投げるな!」

 

「うるさい!こっちだって不死身じゃない!」

 

 二匹はダーラを押しつけ合うが、既に時遅しであった。

 

「マダンテ!」

 

「「ッ!!」」

 

 ダーラから放たれたマダンテの輝きは二匹の身体が小さく見えるほどの規模で、二匹を完全に包んだ。

 

 

「ギィアアアアアァァァァァ!!?俺がこんな所で!よりにもよってこんなチビにぃぃぃ!……」

 

 光の中からショウカクの断末魔が聞こえ、マダンテの輝きを観たターク達は、その威力に驚いていた。

 

「前に見せてもらったマダンテよりも威力が高まっている…」

 

「ターク、どうやら彼も魔力をかなり高めていたようだな…」

 

「そうなのかいダーラ…」

 

 タークとバトラーは静かに言葉を交わす。

 闇の世界へと来る前にダーラの成長した姿を観たダーク達は、あえてダーラをもしもの時の隠し玉としてなるべく力を温存させていた。ダーラの成長には、かつて共に行動していたクロマも気がついていたが、仲が改善されたわけではないのであえてクロマは触れなかった。

 

 

 そうこうターク達がダーラの成長に驚いている間にマダンテの輝きも消えていた。

 

 そこには、魔力を使い果たして疲れが顔に出たダーラと多大なダメージで身体中がひび割れたズイカクがいた。

 

「……チッ…一匹しとめ損なった…」

 

「ハァハァ…なんとか助かった…だが、回復すれば良いものー「させはしない!」ーがぁぁ!?」

 

 回復を仕様と手を広げるズイカクに向けてタークは二本の剣から真空波を放ち、両腕を斬り落とした。。

 

「グオォォ…おのれぇ!」

 

 ズイカクは進化の秘法の力を使い、近くの岩などを集めて形が不安定ながらもとても巨大な両腕を構成した。

 

「許さん!そのスライムも貴様等も今すぐに殺してやる!」

 

 ズイカクはそう言って両腕を振り下ろし、ダーラやターク達を潰そうとする。だが、決して速くない攻撃であったため、バトラーとベレックは武器を構えて振るう。

 

「「ハァ(オォラァ!)!」」

 

「グフォ!?」

 

 岩でできた両腕は二匹の剣により破壊され、さらにそのダメージはズイカク自身にも届いて身体中のひびが大きくなる。

 

「今だダーラ!魔力を使い果たした君の攻撃でもあの魔人を倒せる!」

 

「あ…ああ!やってやるよ!」

 

 ダーラは残った力を振り絞って、ズイカクに捨て身の体当たりをする。

 

「や、やめ…ろ…ガァァ!?」

 

 ダーラの捨て身の体当たりはズイカクの身体を貫通し、ズイカクは倒れ込む。

 

「まさか俺もやられるのか…!……グ、ガアアアアアアアアアアアア!!」

 

 ズイカクの身体中から光が噴き出して、崩れるように消滅した。

 それを見たターク達の目線はダーラへと向けられた。

 

「やったなダーラ!これでクロマに胸を張れるんじゃないか!(頭と羽しかないけど)」

 

「あ…ああ…そうだな」

 

 ダーラは途切れ途切れながらも嬉しそうに返事をした。

 

「だてに親分の所で鍛えてないぜ…!ヘヘッ!」

 

 ダーラはニカっと笑った。

 

 

 

 

 そして、ダーラ達も魔人を倒したことにより四匹全てが倒され、皆は再びデスマウンテンへと向かっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「四匹共やられたか、しょせん実験的に強化したに過ぎんからな」

 

「おい!戦いの最中によそ見をするな!」

 

「おおっとすまないな」

 

 コード.Xはティミーとポピーの二人を相手に紫のレーザー剣や光線銃などで戦っていた。

 

「しかし、私にそれほどの余裕を与える時点で、お前達の実力も大したこと無いのだな、魔界の王を倒したといっても数でどうにかなっただけだろう」

 

「なにを!」

 

 コード.Xの発言にカチンときたティミーは、目にも留まらない速さでコード.Xに接近して天空の剣を振り下ろす。しかし、コード.Xの紫レーザー剣が防ぐ。

 

「そんなにすぐに怒るところ、やはりまだ子供か…」

 

「うるさい!ギガデイン!」

 

「ぬっ…!」

 

 天空の剣からギガデインが放たれ、コード.Xに炸裂した。

 

「どうだ!」

 

「いいえお兄ちゃん!まだピンピンしてるわ!」

 

 ポピーの発言通り、ギガデインを喰らったコード.Xは先ほどのように平気な顔で立っていた。

 

「どうやらお前の妹の方が優秀なようだ…ん?」

 

「「あ…」」

 

 コード.Xは、自身の左腕の皮膚の一部が剥がれていることに気がついた。

 そんな剥がれた箇所を見たティミー達二人は、青ざめた顔をしていた。

 なぜなら…

 

「気持ち悪いものを見たような目で見るとは失礼だな。確かにお前達地球人とは違う生命体なのには変わりはないが、これくらいの白さおかしいものか?」

 

 そう、剥がれた箇所に浮き出た中身は白かったのだ。ただし、それは人間の骨とは違う何か別の異質さを感じる白さで、二人は心のどこかで恐怖していた。

 

「お前はいったい何者なんだ…」

 

 ティミーは静かに問い、コード.Xはどこか不気味な微笑を浮かべて答える。

 

「地球とは違う別の星の種族…X星人、別の世界の地球人にはそう呼ばれている。本当の名などお前達には言葉にすらできんよ」

 

「X…星人…?まさか、サイヤ人のクロマみたいな他の星の人だって言うの!?」

 

 ポピーは目の前の男の人間離れした戦いと高度な技術が作り出したと考えられる武器などから納得はできたものの、サイヤ人であるクロマ以外に見たこと無いためとても驚いていた。

 

「そうだな。だが、あのサイヤ人とは別の世界の宇宙の種族というのが正確だ」

 

「…そんなにベラベラと僕達に素性を明かして平気なのか…」

 

 ティミーの声は強い警戒心のせいかどこか震えていた。

 

「これくらいの事くらい話したところでお前達にどうこうできるわけではないからな、………それにしても、興が冷めた、ここはあの二名の戦いでも観るとしよう 」

 

「待て!」  

  

 ティミーが叫ぶと、コード.Xは二人の方を見た。

 

「後々に、またしつこく関わられても気味が悪くなる、こいつを返してやろう」

 

 コード.Xはそう言って、リュカの魂の入った壺をポピーへと向けて投げる。

 

「うわわ!」

 

 ポピーは慌てながらもなんとか取り、その間にコード.Xは二人から離れた場所へと跳び、距離をとった。

 

「やった!父さんが戻ってきた!……だけど、サモンの問題が残されている…」

 

「うん…」

 

 二人はサモンとゴジラの衝突を悲しそうに見る。

 

 

 

 

 

「ガァァァァァァ!!」

 

「ウワァァァァァ!!」

 

 ゴジラとサモンの衝突は何度も何度も繰り返され、ゴジラは何度もサモンに白熱光を当てて闇をサモンの体外へと放出させるが、一向にサモンの様子が変わったような気配が感じれなかった。

 

 

 

 

 

「……キュウゥ!!」

 

「「!!」」

 

 二匹は、突如聞こえた鳴き声に上空を見る。

 上空を飛んでいたのは、色鮮やかな美しい翼を持つ巨大な蛾のような生き物であった。

 

「……(レオ……それがお前の本当の姿…モスラか)」

 

「(はい…サモン君を元に戻すために私も力を貸します)」

 

 ゴジラの脳内に直接レオ…『モスラ・レオ』の声が響く。

 

「…(頼む…)」

 

「…(はい!)」

 

 レオは返事をすると、ゴジラの横まで降下してくる。

 

「…アア…!」

 

 まともに言葉も発せられないサモンは、二匹を強く睨む。

 

「…(どうするレオ…サモンの身体も心もこれ以上は保たないぞ…!)」

 

「(あの子を救い出すには次のあなたの行動にかかってます…あなたがサモン君になんとか取り付いて白熱光を零距離で放ってください)」

 

「(!?大丈夫なのかそんな危険なことをして!)」

 

「(大丈夫です。私が横であの子の防御力を上げ、一緒に闇を取り払います。そして、あなたにはあの子の精神内に入ってもらい、内側からあの子を救い出してください)」

 

 ゴジラは大きく口を歪ませてレオを見る。

 サモンの方は体力の消耗が激しいのか、息を荒くしながら二匹を睨んでいた。

 

「!?(おいレオ!そんな事オレなんかにできるわけ…)」

 

「(あなただからできるんです。あの子のように人あらざる姿を手に入れ、愛する同族を失ったあなたしか…!だから…頼みます!)」

 

「(………わかった…!)」

 

「(ではいきます!)」

 

 二匹は二手に分かれ、レオはサモンを攪乱させるように飛行する。

 

「…ギギィ!」

 

 サモンの口から息による攻撃が放たれるが、レオは軽々と避ける。

 そんなサモンの真後ろから、ゴジラが掴みかかった。

 

「!!…ガガアァ!」

 

「グゥ…(レオ!)」

 

「(はい!)」

 

 レオは光り輝く粉を飛ばし、粉によってサモンの防御力を上げる。そひて、抵抗に耐えながらレオの粉がサモンへと効いてることを確認したゴジラは、零距離で白熱光を放つ。

 

「…グゥゥ!」

 

 サモンの身体から先ほどと比べほどにならないほどの闇が溢れ出てきた。

 

「(よし!これだけ出たら大丈夫です!頼みますクロマ!)」

 

 レオから青く輝く光線がゴジラへと向けて放たれ、光線を浴びたゴジラ…クロマは自身の意識をサモンの精神内へと飛ばす。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…僕がみんなを傷つけたんだ…それに、今度はクロマお兄さん達を……父さん…母さん…」

 

 精神の深き底、とても暗いその場において、おびえるように傷つくのを恐れているように丸まったサモンの姿は目立っていた。

 

「…いなくなりたい。僕、いなくなりたいと思ったよ…だけど、母さん達のおかげで生きてる…やっぱり死にたくない……みんなと一緒にまた暮らしたいよ…」

 

「大丈夫だ、オレがそうなるように手伝ってやる…」

 

「!」

 

 サモンは、突然聞こえた自分ではない者の声の方を見る。そこにいたのは気難しそうながらも、サモンに笑顔を向けるクロマであった。

 

「クロマお兄さん…」

 

「サモン、オレはお前の過去を知ったが、お前の心を全部知ってるわけではない…だけど、だからこそオレに聞かせてくれないか?オレだけじゃない。皆お前の事をちゃんと聞いてくれる!」

 

「だけど…だけど…僕は化け物なんだよ!」

 

 クロマは必死に訴えるが、サモンは臆病になりクロマから離れようとする。

 

「待ってくれ!お前は化け物じゃない!お前は優しい心を持つ子どもだ!」

 

「う、うぅ…」

 

 サモンは目に涙を浮かべてクロマを見る。

 

「なんで……なんでクロマお兄さんは…僕をそこまでして助けようとするの…?…僕は魔族の王様の子どもでもあるんだよ…」

 

「そんなの関係ない。オレにとってお前は本当の弟のような存在で、お前にはいろんな人や魔物と共に明るい未来へと歩いてほしい…」

 

 クロマはどこか恥ずかしげに言うも、サモンには確かに伝わってた。

 

「あ、あぁ…僕…僕……こんなに大事に思ってくれる人がいるのに…心を閉ざして……あっ」

 

 涙を流すサモンをクロマは不器用ながらも優しく抱きしめた。

 

「無理するな…一人で抱え込むな…子どものオレが言えた立場じゃないかもしれないけど、お前もまだ子どもだ。まだ、自分を決めつけるには早いだろ?それに、たとえお前が何であろうとも皆はお前を笑顔で迎えてくれる…だから、帰ろう…」

 

「うぅ…お兄さん…」 

 

 クロマの優しい言葉を聞き、サモンはクロマの胸の中で泣く。

 そんな中、クロマの目線はその場に現れた二人へと向けられた。

 

「……アンタ等はいったい…?……いや、誰かわかる…アンタ等がサモンの…」

 

 そう、サモンの目線の先にいたのは、サモンの両親である

 

 ロザリーとピサロであった。

 

「…ありがとう、そしてすいません…私がこの子を置いて逝ってしまったせいであの子に寂しい思いをさせた」

 

 ロザリーは悲しげに言うが、サモン自身には聞こえていなかった。

 

「そう抱え込まないで…サモンにはたくさんの家族がいますから」

 

 クロマは慣れない丁寧語で言う。

 

「君は強いな…魔族の王という立場で様々な事を急ぎ、周りをちゃんと見ていなかった私とは違う」 

 

 ピサロはじっとサモンを見て言った。

 

「いえ、あなたは愛する人のために怒り、行動をした。たとえ、それが間違ったことでもあなた自身はロザリーさんを愛したことには変わりはない」

 

「まさか、君のような子どもにそんなことを言われるとはな…これならサモンを任せられる…」

 

 ピサロの発言に、クロマは難しい顔をする。

 

「すいません…もしかしたら、オレはずっとサモンに一緒にいられないかもしれません…この件が終わってすぐに、別の世界へと行かないといけ「いいんだ、君も無理して悩んではいけない」…え?」  

 

 クロマの発言から、どこか悩んでいるのを感じたピサロは、クロマに優しく声をかけた。

 

「サモンと君は、本来出逢うはずのない存在、君と生きる世界が違うのはわかっている。私が言ったのは、君ならばサモンの目指す目標になりえるという意味なんだ。それに、君は家族を探していることはサモンの記憶からわかっている」

 

「そ、そんな…オレが目標なんて」

 

 戸惑うクロマを見て、黙っていたロザリーも再び口を開く。

 

「あなたも子どもだからそう思ってるのかもしれません。ですが、だからこそ、常に成長を重ねているあなたがサモンにとって一番の目標になるんですよ」

 

「ロザリーさん…」

 

「ですから、あなたにはサモンの家族であって目標であってほしい。ワガママみたいなことを言ってすいません」

 

「いいえ、むしろ強くなることに前向きになれますよ…自分も、寂しがりやですから」

 

 照れくさそうに言うクロマを見て、ロザリーとピサロは微笑を浮かべる。

 

「やっぱり、あなたとサモンは本当の兄弟のように見えますね……では、そろそろお別れのようです」

 

「ッ!」

 

 ロザリーとピサロの身体は徐々に消え始めていた。

 

「ロザリー…せめて、あの子にも…」

 

「ええ、あの子をこれ以上苦しませないために…クロマさん…」

 

「はい…サモン、そろそろ泣き止んであっちを見てくれないか?」

 

 クロマはサモンを泣き止ませ、サモンの顔をロザリーとピサロの方へと向かせる。

 サモンの瞳にはハッキリと両親の姿が映し出されていた。

 

 

 

「…母さん…?」

 

「ええ」

 

 ロザリーは優しく応える。

 

「…父…さん……?」

 

「ああ、初めて見る顔だろうが、私がお前の父だ」

 

 ピサロも優しく応える。

 

 

 

「…う、ううぅ…うわぁぁぁぁぁぁん!!」

 

   

 

 再び涙を、大量の涙を浮かべるサモンは、両親の方へと飛び込んでいき、両親は優しくサモンを抱きしめた。

 

「母さぁん…父さぁん…会いたかった…会いたかったよぉ…」

 

「私も会いたかった…今まで寂しい思いをさせてごめんなさい…」

 

「うんうん!お兄ちゃん達がいたから大丈夫だったよ!」

 

 サモンは涙を流しながらも、今までにないくらいの笑顔で応える。子どもとしての本来のクロマの姿なのだ。

 

「私を倒した彼等がサモンを、後で彼等に会ったら礼を言わねば…」

 

「どうしたの父さん…?」

 

 サモンは不思議そうに聞くと、ピサロは優しくサモンの頭を撫でた。

 

「大きくなったなサモン…ロザリーから聞いてはいたが、これなら安心だ。私以上の男になる」

 

「どういうこと?」

 

「いや、たいした意味はない。それよりも、その明るさを貫いてくれ。優しく、家族思いなサモンを」

 

「うん!……あれ…母さんと父さんの身体…」

 

 サモンは、両親の身体が消えかかっていることに気がつく。

 

「私達はもうこの世の者ではないからな…この場にいられる時間が限られている。お前と話す前から時間はほとんどなかった」

 

「そんな…!母さんと父さんと一緒にいろんなこと話したいよ!父さんとはやっと話せたのに…」

 

「すまないサモン。だけど、あの世からでもサモンを見守っている」

 

「そうですよサモン、あなたのお父さんと一緒に私も…。それに、あなたにはたくさんの家族がいますから大丈夫ですよ」

 

 笑顔で言う両親を見て、サモンは泣くのを止めた。

 

「う、うん…!クロマお兄さんだけじゃない。ティミーお兄ちゃんやたくさんの家族がいるんだ。…だから、心配かけてごめんね」

 

「何を言いますか。子が親に心配をかけるのは当たり前ですよ。それに、今のあなたに出会えてたくさんの希望を見れました」

 

 優しくサモンの顔を撫でるロザリーの眼から、ルビーの涙が零れた。

 

「これは…?」

 

 ルビーの涙を手に取ったサモンは、その涙から母の温かさを感じた。

 

「それはあなたの御守りのようなもの、私達の代わりだと思ってください」

 

「私はロザリーのルビーの涙と違って、ろくな物を持ってないが、ロザリーがお前に託したという魔界の装備を使いこなせるようになってくれ。あれは私ではなく私の父の、お前の祖父の片見なのだがな」

 

 サモンとクロマは、ピサロの言う魔界の装備が、クロマが持っていたとされる包帯に巻かれた武器や防具の事だとすぐに察した。

 

「ありがとう…!」

 

 サモンは悲しみを堪えながら両親に礼を言う。

 

「いいえ、これくらいの物でも喜んでくれたら母として嬉しいです。……どうやら、もうお別れのようですね」

 

 ロザリーの身体はほとんど消えていた。

 

「母さん…」

 

「ロザリーさん…」

 

 悲しげに見つめてくる二人に、ロザリーは笑顔を見せる。

 

「悲しい顔をしないで。あなた達は一人じゃないのだから……ピサロ様、先に逝ってきます」 

 

「ああ。私もすぐに逝く」

 

 ピサロの笑顔は、かつての憎しみを感じさせないほど清々しいものであった。

 

「…では、サモン」

 

「なに母さん?」

 

 サモンはロザリーに近づく。すると、ロザリーはサモンの顔を撫でた。

 

「優しく、たくさんの命に愛を持って接してね…。そしたら、あなたを愛する人や魔物が増えるから……じゃあさようなら…」

 

「母さん!」

 

 サモンは母に呼びかけるが、もうロザリーの姿はなかった。

 そんな寂しげな様子のサモンの肩に、ピサロは手を置いた。

 

「すまなかったなサモン…お前とロザリーを地獄のような運命に巻き込んで」

 

 息子であるサモンともういないロザリーに謝罪するピサロを、サモンは優しい顔で見つめた

 

「うんうん、父さんがいたから僕は産まれてきた。それだけでも父さんにありがとうと思ってるよ」

 

「サモン……私の方こそありがとう…」

 

 二人は手を握り合う。

 

「父さんが魔族の王様だったことには驚いたけど、だからこそ決めたよ僕の将来」

 

「まさか…」

 

 ピサロの顔は複雑な表情となる。

 

「僕は魔族の王様となる。それと王様になる前に、いろんな所を旅したりしていろんな事を知って強くなる」

 

「サモン…頑張れよ」

 

 ピサロは涙を堪えてサモンの髪や顔を撫でた。

 

「うん。遠い場所からでも見ててね…。父さんをいつか越えれるように頑張るから!」

 

 サモンは気合いを入れた声で言った。

 

「そうか、ならば安心だ。……では、私もロザリーの元へと逝こう…さらばだサモン…クロマくん」

 

 ピサロは二人に期待を込めた目で見た。

 

「はい…」

 

「父さん。ありがとう!」

 

 二人はどこか笑顔を浮かべて応えた。

 

 

 

「ハハハ…。では、後は任せたぞ」

 

 

 

 そして、ピサロの姿も消えていった。

 

 

 

 

 

「サモン、皆が待っている。帰ろう」

 

「うん!」

 

 二人が手を繋ぐと、二人の意識は現実世界へと戻っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「サモン!クロマ!大丈夫か!?」

 

「二人共!大丈夫!」

 

 二人が目を覚まして最初に見たのは、大声で自分達を呼ぶティミーとポピーであった。

 

 

 

「「ただいま」」

 

 

 

 手を握り合った二人は同時に言う。

 

 

 

 

「「「「「「おかえりなさい」」」」」」

 

 

 

 その場にいた者達は笑顔で言葉を返した。




今回は、家族というものをいろいろと考えながら書きましたが、実はその辺りが一番執筆が速かったりしました(汗)
活動報告なども書いておりますので、そちらもよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。