タークがやたらと丁寧語になりました今回、バトルが延々とありますがどうぞ。
あと、今回プサンという名が出ますが、その名はマスタードラゴンが人の姿をしてるときの名前です
満月から映し出される光に照らされる緑の大地。
そんな大地を大きく揺らし、二匹の巨大な龍が衝突していた。
「グルグゥ…!ガァ!」
「ガアンアァン!」
恐竜のような黒き身体を持つゴジラは背鰭を輝かせ力を溜める。
それに対して、アンキロサウルス、この世界の魔物デンタザウルスと似た四足歩行のアンギラスは尾を地面へと何度も叩きつけて目の前のゴジラに対し威嚇をする。
「グルガァ!」
先に動いたのゴジラだった。
自らの長太い尾をアンギラスへと向け力強く振る。
「…ッガァ!」
アンギラスは、顔面に直撃しそうになる瞬間に尾に食らいついた。
「グググアオォォォォ!?」
ゴジラは食らいつかれた尾を振ってアンギラスを振り落とそうとするが、かえってアンギラスの牙が尾に食い込んだ。
「…グァッ!」
「…!?」
痛みに耐えるゴジラは、そのままアンギラスを地面や近くの山へと何度も叩きつける。
アンギラスは食らいついてるゴジラよりも自分に流石に痛みが蓄積するだけだと気がついたのか、ゴジラの尾を口から離してゴジラから距離を取る。
「「………」」
ゴジラとアンギラスは殺気を込めた目線で睨み合う。
そんな様子を空高くから観ていた白き竜がいた。
「…あの二匹の龍はこの世界の種ではない…だが、あの異常なまでの力の凄さはこの私にもわかる…エスタークの奴を思い出す…ルビスよ、私も命を懸けるときがきたかもしれん…」
天空の白き竜『マスタードラゴン』はそう呟くと、自らの巨大な翼を羽ばたかせて地上へと向かう。
ゴジラとアンギラスが戦う地上へと…
ちょうどその頃、二匹の龍の戦いから発生される力の流れ感じたティミーは、グランバニアからラインハットへとルーラで跳んできていた。
「お父さん!」
ティミーは、既に目が覚めていたリュカに声をかけた。
「来てたのかティミー…。どうやら、とんでもない戦いが起きてるようだ…しかも、ミルドラース以上のエスタークのような底知れない力を感じる…すぐに向かうが無理はしないでくれよ…」
リュカは余裕のなくどこか恐怖に震えたような声でティミーへと言い、ドラゴンの杖を持って外に出る。
「お父さん、ターク、はぐりん、プオーンも先に向かってるから急ごう!」
ティミーはどこか焦ったような声でリュカに言うと、リュカは背中に背負っていた魔法の絨毯を広げ、ティミーと共に二匹の龍の元へと急ぐ。
『はぐりん』等三匹もリュカ達よりも先に二匹の龍の元へと向かっていた。
それなの動きがある中、二匹の龍の戦いは激しさを増しており、ゴジラにいくつかの傷を付けることができていたアンギラスであったが、動きやすい体格であるゴジラの攻撃の方が激しく、アンギラスの方が若干押され気味になっていた。
「…ガァァア…アァ…」
「…グルルグァァ……」
アンギラスは、荒々しい息を口から吐く。
それに対してゴジラは、少しは息が荒くなっておるもののアンギラスよりかは体力の減りの少なさが見て取れた。
「…グルゥ…ガァ…!」
唸るような鳴き声を上げるゴジラ、そんなゴジラの背鰭は青く輝いていた。
「…ガァァァァァ…!」
アンギラスは動物としての本能か、それとも恐怖心からくるものか、とっさに背中の方をゴジラへと向けて防御態勢を取る。
そんなアンギラスに対し、ゴジラは口を白く輝かせながらアンギラスへと向けた。
「………!!」
ゴジラの口から白く光り輝くもの『白熱光』が吐かれ、その白熱光はアンギラスの背中を包み込むように焼いていく。
「ガガァァァン!?」
予想以上の威力に、アンギラスは悲鳴のような叫び声を上げる。
「…!」
白熱光を吐くのをやめたゴジラは、苦しむアンギラスの首に自身の強靭な牙で食らいつく。
「…ガァァ!?…ガアァンアアァァン!?」
ゴジラの強靭な顎の力により、自身の首に牙が食い込んでいき息すらも苦しくなるアンギラスは、先ほどよりも悲痛な鳴き声を喉から絞り出すかのように吐き出した。
だが、ゴジラはアンギラスの身体を抑えながらどんどん牙を食い込ませていく。
「…ガァ…ァァ…」
アンギラスの鳴き声もどんどん小さくなっていく。
ゴジラの牙によってアンギラスの命は奪われるかと思われた。
しかし、竜の神はそれを認めなかった。
「…グルガァ!?」
アンギラスの首に食らいついていたゴジラは、頭上から落ちてきた雷の柱によって地面へと叩きつけられた。
「…ガァァガァ!」
ゴジラから解放されたアンギラスは、とっさにゴジラから距離を取った。
そして、なんとか起き上がったゴジラと首から血を流すアンギラスは、空に浮かぶ白き竜神が目に入った。
「…黒龍…その命貰い受けるぞ!……」
竜神マスタードラゴンは異世界の黒龍と対峙し、攻撃態勢に入った。
「ググル…ググルガァァァァンアァァァァン!!」
「ギャアオォォォアァァァァァン!!」
ゴジラとマスタードラゴンの叫びは互いへとぶつけるように響き、それと同時にゴジラの白熱光とマスタードラゴンの光り輝く息がぶつかり合った。
「…なぁ!?マスタードラゴンだと!?」
「きゅう!?」
空高くから出現し、ゴジラと対峙したマスタードラゴンの姿に、『プオーン』とはぐれメタルの『はぐりん』はとても驚いていた。
「…白い竜と黒い龍の戦い、まるで次元が違う力のぶつかり合いだ…」
プチタークのタークは、目の前で衝突し合う強大な存在に対し、どこか恐怖を感じていた。
「…皆!大丈夫か!?」
「リュカ!ティミーも!」
魔法の絨毯に乗るリュカ達もやっとこの場へと着いた。
「…マスタードラゴンが地上へと降りてくるほどの相手なのかあいつは…!」
リュカは互いの攻撃をぶつけ合うゴジラとマスタードラゴンを観て、冷や汗を垂らしながら呟いた。
「…あんなに必死なマスタードラゴンは初めてだ…ん?あの龍は…?」
少し離れた所に倒れていたアンギラスを観たティミーは、息が苦しそうなアンギラスを観てどこか心配そうな目で観ていた。
「お父さん、あそこにいる巨大なデンタザウルスみたいな龍…助けてもいいかな…?」
「「「!?」」」
ティミーの「助けてもいいかな」という言葉に、その場にいたターク達三匹はとても驚いた表情を見せた。
「正気かティミー!あんな奴を助けたところで面倒くさいことになるだけだぞ!」
「キュイィ!!キュイキュウ!」
「プオーンやはぐりんの言うとおりですよ!かつてのプオーンさんは小さくなって仲間になったらしいですが、あの龍は助けても小さくなって共に戦うなんて保証も無いんですよ!危険なだけです!」
興奮した口調の三匹をティミーはどこか優しさと厳しさを含んだ目で見つめた。
「別にあの龍を無理に戦わせるために助けたいんじゃないよ…ただ、あのまま放っておいたら、ただでさえ死にそうなのにマスタードラゴンと黒い龍の戦いに巻き込まれてすぐに死んじゃいそうで可哀想なんだ…」
「で、ですが…」
父リュカのような純粋な優しさを持つティミーの言葉に、タークは言い返そうとしたが上手く言葉にならなかった。
「リュカはどうなんだ…」
プオーンは焦る口調でリュカに聞く。
「僕は…別に助けてもいいと思う」
「「「!?」」」
「お父さん…」
ティミーと同じく龍を助けようとするリュカに三匹は言葉を失う。
「…だけど、助けるかどうかは僕が決める…これでも僕はモンスターマスターだ、魔物ではないかもしれない龍でも少しでも心を開かせて敵対するのは抑えれるかもしれない…。だけど、僕達や他の生命に危害を加えるような龍ならば、命は助けないし僕があの龍の命を奪う…いいね?」
「…うん…」
リュカの目は本気だった。
ティミー自身がリュカと違ってモンスターマスターではないため、変にアンギラスと関わると興奮させて危険な目に遭うことも考えられるからでもあろう。
そんなリュカの意志は曲げられないと感じた三匹は反論せずに、ティミーと同じようにリュカに任せることにした。
「じゃあ早くしてくださいね…マスタードラゴンも我々の事を気にして戦ってるわけではありませんので!」
「わかった!」
タークに後押しされ、リュカはこの場を彼らに任せてアンギラスの元へと飛んだ。
「…ガァ…ァア…」
喉から血を出して息の苦しいアンギラスは、虚ろな目でゴジラとマスタードラゴンの戦いを観ていた。
「大丈夫か!)
そんなアンギラスの目の前にリュカが現れた。
「ガァァア……!」
アンギラスはリュカへと威嚇するが、力の入らない今のアンギラスでは恐怖感を与えることはなかった。
「まあ落ち着いて、僕は君のこれから次第で君を助けたいと思っている…」
「ァアガ…」
アンギラスは恐怖感の抜けた鳴き声をリュカへと返す。
リュカの方は、ドラゴンの杖を両手で持ち構えていた。
「少し頭の中を観させてもらうよ…」
「…ガアァガ!?」
リュカをいきなりドラゴンの杖をアンギラスの頭の上へと叩きつけ、そんなリュカの行動に痛みは感じない者のアンギラスは驚いた様子であった。
「こんなやり方でごめんよ、君みたいな大きすぎる龍の頭の中を覗くにはこれくらいしないといけないんだ」
「……」
頭を下げてアンギラスに謝るリュカであったが、アンギラスはじっとリュカを観て黙っていた。
「…よし、上手くいった…後は邪魔が入らなければ大丈夫…」
そう言って、リュカはアンギラスの額にドラゴンの杖を添え、静かに眼を閉じた。
アンギラスの方も眼を閉じていった。
「ギャオォォォアァァァァ!!」
「グルガァァァァァアガァァァン!!」
その頃、ゴジラとマスタードラゴンの戦いは激しさを増していた。
体格ではゴジラの方がマスタードラゴンよりも明らかに巨大であったが、表には見せないが、ゴジラは先ほどまでのアンギラスとの戦いでかなり体力を消耗してるようで、マスタードラゴン自身も力や大きさではかなわないと思ってたゴジラと互角に戦える状態になっていたのだ。
「……(流石にしぶといな、魔王のように戦闘中に姿を変えてこないだけまだ安心はできるが)」
ゴジラに雷撃を何度もぶつけながらそう思うマスタードラゴンは、ゴジラの頭上へと飛ぶ。
「…グガァ!?」
目にも留まらない速さで頭上へと現れたマスタードラゴンに、ゴジラは顔には出さないがとても驚いてるようであった。
「ハァ…!ギガスラッシュ!」
マスタードラゴンは両足に雷光を纏い、零距離でゴジラに『ギガスラッシュ』をぶつけた。
「グルゴァァァ!?」
ギガスラッシュが直撃したゴジラは、大きく叫びながら地面へと倒れた。
マスタードラゴンはさらに高く飛び、ゴジラを見下ろした。
「ハァ……ハァ……」
荒々しく息を吐くマスタードラゴンの様子は大量の魔力を消費していることを表していた。
かつての勇者が使ったギガスラッシュよりもさらに強く広範囲に攻撃できるギガスラッシュが使えるマスタードラゴンであったが、今使ったマスタードラゴンは通常よりも威力を高めるためにかなりの魔力を消費していたのだ。
ゴジラへと注意していたマスタードラゴンであったが故に出し惜しみできなかったのだ。
「……!」
マスタードラゴンは静かに瞑想し、全開ほどではないが魔力を回復させた。
「…(まだ奴は死んではいない…地上にいるリュカ達に危険を及ばさないためにもトドメを撃たねば!)」
マスタードラゴンはドラゴン斬りの構え取り両足の爪にドラゴン殺しの炎を纏い、目にも留まらぬ早さで地上のゴジラへと向かっていく。
あのような体格でもゴジラはドラゴン斬りで斬れるドラゴンに該当されるとマスタードラゴンは確信していた。
「……(終わりだ!)」
マスタードラゴンは両足の爪を地上のゴジラへと向かい振り下ろす。
しかし、そこにはゴジラはいなかった。
「…!?」
マスタードラゴンは地面へと激突しそうになる寸前に空へと旋回した。
「奴はどこだ…!?」
マスタードラゴンはゴジラのいた周囲の地面を見渡してゴジラを探す。
しかし、ゴジラの姿は見えない。
「プサンさん!真下!!」
「真下…!?」
ティミーの叫び声を聞いたマスタードラゴンは、とっさに真下を向く。
そこには、背鰭を強く輝かせるゴジラの姿があった。
「…っ!」
自分が地上へと現れることをゴジラは予想していたのだと気がついたマスタードラゴンは、ゴジラから距離を取るために空高くへと飛ぼうとする。
しかし、ゴジラはそんなマスタードラゴンの行動すらも読んでいたかのように、マスタードラゴンから目を離さなかった。
「…グルルルグゥ…ガアアアアアアァァァァ!!!」
そして、ゴジラの口から白熱光ではない、青白い熱線が吐かれた。
「「「「!?」」」」
先ほどまで見せなかった攻撃を観たティミー達は驚愕の表情を見せた。
「…グゥ…!避けられない!」
空高くへと飛ぶマスタードラゴンよりも、ゴジラの熱線の方が速度が早かった。
そして、熱線は空を飛ぶマスタードラゴンの身体を包んだ。
「ギャオアアアアアアアァァァンン!?」
大陸中に響き渡るような叫びを上げるマスタードラゴンは、地面へと墜ちていく。
「…あ、ああ…プサンさん…!」
ティミーはあまりの衝撃的な光景に、身体中が震えていた。
そして、熱線によるダメージで意識を失ったマスタードラゴンは、地面へと墜落した。
「…ググルゥ…」
そんなマスタードラゴンにゆっくりと、ゴジラは近づいていった。
マスタードラゴンにトドメを刺そうとしてるようだ。
「やめろぉぉぉ!!」
ティミーは、マスタードラゴンを庇うようにゴジラへと立ちふさがった。
「……」
「プサンさんを殺させはしない!勇者として!男として!」
自身を黙って見下すゴジラに対してティミーは大きな声で言い、天空の剣を構えた。
「我々もいるぞ!」
「舐めるなよ!」
「キュキュウッ!」
ターク達もゴジラへと立ちふさがり、攻撃の構えを取る。
「……グアァ…!」
ティミー達を障害物として認識したのか、ゴジラは尾を横に振ってティミー達を払い飛ばそうとする。
「皆避けろ!」
ティミーがそう言うと、プオーンははぐりんを持って飛び、ティミーとタークは高くジャンプして尾を避けた。
「よし今だ!ギガ…デイン!」
ジャンプした状態でティミーは雷撃の呪文をゴジラの顔面へとぶつける。
「我々も続くぞ!プチスラッシュ!」
「喰らえい!ギガデイン!」
「キュイキュウン!」
タークはプチスラッシュ、プオーンはギガデイン、はぐりんはイオナズンを放ち、プチスラッシュがゴジラの足元へと放たれ、プオーンと引っ付いていたはぐりんのイオナズンはプオーンのギガデインと合わさり、雷の爆発となってもう片方の右足へと直撃する。
「…ググガァ!」
バランスを崩したゴジラは、体勢を崩して地面へと倒れ込む。
「よし!」
地上へと降りたティミーは、ガッツポーズを取る。
しかし、ゴジラはしぶとかった。
「ティミー!ぬわぁ!?」
「プオーン!うわぁぁぁ!?」
地面に倒れ込んでも腕は普通に動かせたゴジラは、右腕を振るってティミー達を吹っ飛ばした。
「…う、うぐぐ…」
少し離れた場所に飛ばされ、近くに生えていた木々の葉がクッションとなって大ダメージは免れたティミー達であったが、ゴジラの方は再びマスタードラゴンへと近づいていた。
「や、やめろぉ!」
しかし、ティミーの叫び声はゴジラの耳に届くことはなかった。
「…おのれ、あんな龍ごときにぃ!」
プオーンは悔しそう目つきでゴジラを睨むが、翼や足を折ってるようで身動きが取れそうになかった。
ティミーや他の二匹もプオーンのように動ける様子ではなく、ゴジラを止める者はリュカしかいないかと思われた。
「お父さん…!プサンさんを…マスタードラゴンを助けて!」
そうティミーがリュカへと祈った瞬間だった。
「ガァァァァアンアアァァァァァン!!」
リュカの手によって回復したアンギラスがそこにいた。
その眼は、先ほどまでのただ暴れ回るような獣の眼ではなく、戦う意味を持った者の眼になっていた。
「グルゥガアァァァ!!」
自身が痛めつけたアンギラスの登場に、ゴジラは目標をマスタードラゴンからアンギラスへと変え、一撃で葬る気か、熱線をいきなりアンギラス目掛けて放った。
「ッ!」
アンギラスはとっさにジャンプしてかわし、ゴジラに体当たりしてゴジラを地面へと叩きつけた。
「グルルグガァ!」
ゴジラは、倒れた状態からアンギラス目掛けて熱線を吐こうとする。
だが、ゴジラは周りが見えていなかった。
「ギャアァオォォォン!!」
ゴジラが離れてなんとか目覚めたマスタードラゴンが、ゴジラ目掛けて冷たく輝く息を吐いたのだ。
「グガ、ガガァ!?」
ゴジラの背鰭の輝きが小さくなっていく。
その隙を、アンギラスは逃さなかった。
「ガァァンガアァァァァァンン!!」
アンギラスは口から銀色に光り輝く息を吐き、ゴジラの身体を凍らせていく。
「グガガァ…!…ガァァ…!」
ゴジラは背鰭を輝かせて必死に抵抗するが、マスタードラゴンの冷たく輝く息も合わさって、ゴジラの身体はみるみるうちに凍っていった。
「…グ、グルガァ…」
ゴジラが小さく鳴くと、そんな鳴き声を放った口まで凍りつき、ゴジラは見事なまでに凍結してしまった。
「…や、やったのか…」
「おい、そんなこと言うなよ溶けちまいそうだ…」
タークの呟きに、プオーンは気の抜けた声でツッコミを入れる。
「キュイイ?)
「ああ、はぐりん…あの龍はもう動かないよ…ひとまずはどうにかなったんだ…」
ティミーは優しくはぐりんを撫で、実感のない戦いの終わりを味わった。
そして、アンギラスの方は…。
「命を落としたかと思ったが、まさか、こちら側の味方になるとはな…」
リュカに傷を癒されるマスタードラゴンは、黙ってゴジラを見つめるアンギラスを観てリュカに向かって呟く。
「…僕もびっくりしましたよ…理性を失ってたとはいえ彼の正体が…)
「ガァァァァン…」
リュカの言葉をアンギラスの鳴き声が遮る。
すると、アンギラスの身体は銀色の輝きに包まれてどんどん縮んでいき、姿が変わっていった…。
「…やっと元に戻れた…」
アンギラスは人間の男になる…いや、正確には戻っていた。
リュカはその見覚えのある姿、呆れた顔で溜め息を漏らす。
「…まさか、彼の正体が『ニドル』なんてね…」
「いやあ!流石竜神様だ!マスタードラゴン様だ!あんたの力が無ければあいつにまた返り討ちに遭ってたぜ!」
「「………ハァ…」」
アンギラスの時の戦いぶりが嘘のように、馬鹿みたいにテンションが高いニドルの様子に今度はマスタードラゴンも一緒に溜め息を漏らした。
「………」
「それよりも、ゴジラ……いや、あの子をどうやって戻すか…」
リュカは、ゴジラの正体…クロマについて知ってしまっていた。
どうやら、アンギラスの時のニドルの頭の中にあった記憶、ゴジラへと変貌するクロマの姿の記憶を観ていたからだ…。
「…ん?もしかしたら元に戻せるかもしれない…」
「なんだって!?何をどうしたらクロマは元に戻るんだよ!」
興奮したニドルは、リュカへと迫ってくる。
「まあまあ落ち着いて、これについてはマスタードラゴンの力が必要だ…聞いてくれますか…」
「うむ…あの黒龍については葬るべき存在ではあるが、黒龍のもう一つの姿である子どもには何も罪はないからな…聞かせてくれ…」
どこか命を大切にする考えを強く持つマスタードラゴンは、リュカの力になることにした。
クロマを元の姿にした後で、ゴジラの姿にならないようにする事も考えれたからでもあるのだろうが。
「……!…(やめろ…!オレはこんな姿で力を使うなんて嫌だ…!…うわあああああ!)」
ゴジラの姿で炎に包まれた都市を蹂躙しているクロマは、目の前で逃げ惑う人々を熱線で焼き尽くしていた。
「…!…………(違う…こんなの…こんなのオレじゃない!)」
自分の意思で身体をコントロールできず、言葉も出せずに破壊と殺戮の限りを尽くすクロマは、心の中で叫ぶしかなかった。
「……ガァァ!…(うわあああああ!オレは!オレはぁぁぁ!!)」
やっとの思いで出た声も、小さな龍の鳴き声にしかならず、クロマはただ目をつむることのできない惨劇を観ることしかできなかった。
「…………………あ…?…」
都市全体が日に包まれた瞬間、クロマの周りは闇に包まれた。
「…今度は何だよ……って言葉が…!?」
ゴジラの姿のまま人の言葉が発せられて、クロマは驚いた。
そんなクロマの左手の上に、クロマと同じくらいの大きさのスを身に纏って額から触角の生えた双子の少女が現れた。
「…芹沢のおっさんじゃねえな…当たり前か…」
左手を顔の前に持ってきたクロマは、目の前の双子の少女を睨む。
「「ゴジラ…貴方は遂にその姿を取り戻してしまった」」
「…ゴジラ…?…この姿はベシータ王の言っていたというあの黒龍のサイヤ人の姿だというのか!?」
クロマはどこか興奮気味に叫ぶ。
そんなクロマの叫びを耳にしても、双子の少女は顔色一つ変えずに真顔でクロマを観ていた。
「いえ、その姿としてのゴジラと」
「サイヤ人の王の言う黒龍のサイヤ人としてのゴジラは別物です」
「「本質的には同じですが…」」
「…本質的には同じ?」
双子の少女の言う「本質的には同じ」ということがクロマにはよく理解できずに引っかかっていた。
「それについては」
「今は置いときましょう」
「「それよりも、これから貴方には生きていく道を選んでもらわないといけません」」
「…ハァ…?」
急に生きていく道を選べという双子の少女に、ゴジラは反応に困る。
「「では、単刀直入に聞きます」」
「おい待てよ!」
勝手に話を進める双子の少女に、カッとなったクロマは叫ぶ。
しかし、双子の少女はやはり表情一つ変える様子もない。
「別に今では無くても」
「考える猶予は与えます」
「…猶予って」
クロマはゴジラの状態で面倒くさそうな顔になる。
そして、双子の少女はじっとクロマを見つめて口を開いた。
「聖獣になって様々な世界を護るか」
「サイヤ人「クロマ」として様々な世界を護るか」
「どちらかを選んでください」
「………ハァ…?」
クロマの口から気の抜けた声が漏れる。
先ほどまでのゴジラの様子とは大違いだ。
「ではクロマさん」
「また後日に会いましょう」
「「サヨナラ~」」
「いや待てよ!」
クロマはその巨大から放たれる大声で双子の少女を呼び止めようとするが、双子の少女は光の粒子のようになって消えてしまった。
「…いったい…何が起こって何が始まるんだよ…」
そう小さく呟くと、クロマの意識がどんどん遠のいていった。
「…もうこの姿は嫌だ…」
クロマは自らの腕を観て、小さく呟いた…。
クロマはゴジラというもう一つの姿に覚醒した自分についてどう向き合うのか。
目覚めた先のクロマには何が待っているのか、クロマはまだ知らない…。
双子の少女、正体は小美人ではないとあらかじめ書いときます。
触覚と双子がヒントです。