黒龍物語   作:一芽

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前回読んで気になった人がいるかもしれないので書いときますと、ニドルが人の姿に戻った時は普通に服を着たまま、大猿みたいに服は破けません。
ウルトラマンに近いです。
クロマの場合は、今は戦闘服着てないので問答無用で元に戻ったら全裸になりますはい。

とてもくだらない前書きになりましたが本編どうぞ!


力の使い方、動き出す世界

「…どこだここ…」

 

 目覚めたクロマが最初に目にしたのは、青い壁に囲まれた豪華な部屋で、そこにある大きなベッドでクロマは寝ていたようだ。

 

「…(ラインハットの宿屋でも、グランバニアですらない…なんだ…こんな空気、雰囲気は初めてだ…)」

 

 部屋の周囲を見渡してベッドから降りたクロマは、ゆっくりと扉を開いて部屋の外へと出る。

 

「…(静かだ…)……」

 

 部屋の外には壁に覆われた廊下があり、近くに人っ子一人確認できなかったが、念のためもあるのでゆっくりと廊下の先にある扉まで歩いていき外に出た。

 

「………嘘だろ…?」

 

 扉を通って外へと出たクロマは、外の光景を観てとても驚いた表情をしていた。

 

「あんなに離れたところに大地…すぐ近くに雲…ここは…この城は空にある…!」

 

 

 

 

 そう、クロマがいる城『天空城』は、大空を高く浮遊していたのだ。

 

 

 

 

「何がどうしたんだよ…」

 

 今の自分が置かれた状況がまるで理解できないクロマは、近くの手すりに黄昏ながら小さく呟いた。

 

 そんなクロマに、一人の男が近づいてきた。

 

「お目覚めになりましたかクロマ殿、マスタードラゴン様、リュカ様は既に玉座にてお待ちになっておられますぞ」

 

「リュカおじさんがいるのか!?」

 

 クロマはリュカの名を聞いた瞬間目の色を変えて反応して男の方を観た。

 男の姿は騎士の法衣を纏い、なによりも目立つのはその背中に生えた大きな翼であったが、クロマはそんなことがどうでもいいように、騎士の服を掴んで顔を近づけた。

 

「…今すぐ案内しろ…」

 

「は、はい、どのみち私があなた様を玉座へと案内することになっておられましたし。………あの、すいませんが手をどけていただけませんかね?」

 

 クロマの強い力で服を引っ張られて、苦しいよりも恐れの方の気持ちが大きい騎士は、冷や汗を垂らしながらクロマへと震え声で言う。

 そんな騎士の様子を見て、クロマは我に返って落ち着きを取り戻す。

 

「…ごめんな…やりすぎた…」

 

「ま、まあ私は大丈夫です。それよりも案内させていただきますよ」

 

 そう言って騎士は、クロマを玉座の方へと案内する。途中、騎士のように翼を生やした人達がいてクロマの方を観たりしたが、特に声をかけてくることはなく、特に何もなく騎士とクロマは玉座へと来た。

 

「クロマ!目を覚ましたんだね!」

 

「…リュカおじさん…」

 

 玉座に来てまず目のあったクロマとリュカは、互いの名前を呼んだ。

 

「…どうやら、その様子だと今は普通のようだな…」

 

「…あ、あんたはいったいなんなんだ……」

 

 玉座に君臨する白き竜神マスタードラゴンの姿を観たクロマは、その迫力を受けてか、どこか小さな声で呟いてしまった。

 そんな小さな声も、マスタードラゴンの耳に入っていた。

 

「私の名はマスタードラゴン、この天空城の主であり、下界の者達には神として崇められた竜だ」

 

 巨体に似合わず物静かにクロマの問いに答えていく。

 

「…マスタードラゴン…?…なんだ、初めて聞くはずの名前なのにどこかで聞いたことのある名前だ…」

 

「「……」」

 

 マスタードラゴンの名にどこか聞き覚えのある様子のクロマを観て、リュカとマスタードラゴンは複雑な表情を浮かべてクロマを観る。

 どうやら、ゴジラとなった時に聞いたマスタードラゴンの名を微かに覚えているようだ。

 

「…では少年、単刀直入に聞くが黒龍になった時の記憶などはハッキリ覚えてるのか…?」

 

 首を下ろしてクロマの方をじっと観るマスタードラゴンは、どこか警戒してる雰囲気を出しながらクロマに聞いた。

 クロマの方は、黒龍が一瞬なんなのかわからなかったが、すぐにゴジラのことだと気がついた。

 

「…黒龍…ゴジラのことか……あんな姿になっていろいろと混乱して、トゲトゲの龍が出てくる辺りまでの記憶と、なんか身体が冷たかった時に微かに聞こえたリュカおじさん達の話は少しだけど覚えてるよ…」

 

「…そうか」

 

 重苦しそうに言うクロマを観て、黒龍…ゴジラとして戦いをした時の記憶は無いのだとマスタードラゴンはハッキリと感じた。念のためにクロマの心を読んだが、あの激しい戦いの記憶は何一つ見えなかった。

 

「…マスタードラゴン。やはりクロマ君は、あの戦いはこの子の本心と無縁では…」

 

「そうだろう…だが、あの黒龍の動きはただ単に理性を失った者の動きではなかった。もしかしたら、この少年の中に眠る黒龍の意志のようなものに呑み込まれたのかもしれぬ…」

 

 二人(一人と一匹?)の中で会話が進んでいるのを観て、置いてかれような気分になったクロマは口を開く。

 

「いったいオレは何をしたんだ…いや、とんでもないことをしたのはわかる…だからこそ教えてくれよ…」

 

「クロマ君…」

 

 リュカは声を震わせながら言うクロマを観て、ゴジラについて話すべきか迷っていた。

 

「…うむ、では話すとするか…そもそも、君をここへと呼んだ理由でもあるからな」

 

「マスタードラゴン!」

 

 クロマにあの事を話そうとするマスタードラゴンに、ついリュカは怒鳴るような感じで名前を呼んでしまった。

 

「リュカよ…この事は知らぬ方がかえって辛くなるだけだぞ…双方共に」

 

「…で、ですが…」

 

 するとクロマは、リュカの方を観て口を開いた。

 

「いいよ、リュカおじさん…オレは真実は知っておきたい。それにオレも話さなければならないことある」

 

「そうか…じゃあ仕方ないな。……それにしても、話さなければならないことって?…」

 

 リュカは、クロマの話さなければならないという言葉に反応してクロマに聞くが、マスタードラゴンがその問いを遮る。

 

「…リュカよ、まずはこちらが先に説明するべきであろう…」

 

「あ、そうですね…」

 

 リュカは何ともいえない顔で返事をした。

 

「では、昨夜の事について説明しよう。最初に言うが、全て真実であるからな…」

 

「…わかってる」

 

 

 

 クロマがそう返事をすると、マスタードラゴン、そしてリュカが昨夜のゴジラとの戦いの一件についてクロマに全て話した。

 自分がゴジラになってやりたい放題してるのを予想していたクロマであったが、予想とは違い、暴龍アンギラスとなったニドル、目の前にいるマスタードラゴン、ティミーやターク達と戦い傷つけてしまった事に衝撃を受けて言葉を失うも納得した。クロマが意識を失ってる時に観た破壊と殺戮をするゴジラとしての自分の姿と重なるところもあったのである。

 

 そして今度は、クロマの方が意識を失ってる間に観た自分と、双子の少女について説明した。

 都市を破壊し、多くの人々の命を奪う黒龍としての、ゴジラとしての自分について重々しく説明するクロマの様子を観たリュカは、こんな事を子どもに語らせるのが辛くて仕方なかった。

 

 両者共に説明を終えたのだが、ふと、クロマはどうやって自分が人の姿に戻ることができたのかマスタードラゴンに聞いた。

 

「ああ、その事についてだが、どうやら、君は満月から特殊な何かを取り込んであの姿になったと力の波長の流れからわかったので、その波長を私が一時的に絶ったのだ。そしたら、案の定君は元の姿に戻ったというわけだ」

 

 マスタードラゴンの話を聞いたクロマは、自分がゴジラになる条件が同じサイヤ人の大猿と似たようなものだと気がついた。

 そして、マスタードラゴンは続けて話し、元に戻ったクロマをリュカと共にこの天空城へと運んで今へと繋がってるらしい。

 

「さすがに月を消すわけにはいかないからな、君があの姿にならないために、君自身に特殊な処置をした。わかりやすく説明すると、満月から発せられる何かを取り込むこともなくなり、あの姿にならなくて済むという処置だ。今回のは術式であったが、これからはこの輪を頭に装着して抑えてくれ、あの姿になってもほとんどの力が抑えられるから危険性も低なっている」

 

 マスタードラゴンはそう言って、小さな宝石の付いた輪っかをどこからともなく召喚し、念力によってクロマの頭に装着させた。

 

「…これでどうにかなるのか…」

 

 クロマは、このような小さな輪っかでゴジラの力が抑えれるか疑問であった。

 

「大丈夫だ。その輪っかは君が会ったと思われる双子の少女から渡され、私の力も加えたものだからだ(しかし、こんな都合のいいタイミングでこれを渡してくるあたり、ゴジラについてよく知ってるのだな彼女達は…)」

 

「…あんたもあいつらに会ってたのかよ…次はいつ現れるんだあいつら…」

 

 クロマは怠そうに溜め息を漏らした。

 

「それにしても、本当なら尾を切れば解決しそうだったのだが、その黒い尾を切ると君の命まで失われてしまう事がわかり、結局それに頼らざるを得なかったのだよ…」

 

 それを聞いたクロマは顔が真っ青になった。

 

「…おいおい、オレは死にたくねえよ………(にしても、オレが死んだ方があのドラゴンにとってはかえって都合が良いと思うんだよな…どうして、オレを助けたのか…)」

 

 クロマは心の中で、リュカと共に自分を助けてくれたマスタードラゴンの行動に疑問を感じた。

 

「…まあ、大丈夫だろう…(あの輪、もしもこの少年の力が暴走するような事になったら命を奪うこともできるとあの双子の娘達は言っていたが、今は黙っておくべきか…ゴジラの姿に慣れるための修業もするかもしれないからだろうが)」

 

 輪に仕掛けられた仕組みについてマスタードラゴンはクロマとリュカに説明するのを見送った。なぜなら、そんな危険な輪を付けられたことを知って輪を破壊されでもしたら、元も子もないからだ。

 マスタードラゴンにとっても、かつては人類に冷たく裁きを与えたりしたので、どこか気まずい気分であった。

 

 

 

「にしても…これから、オレはどうしたらいいんだ…」

 

 クロマは、自分のこれからについて大きく悩んでいた。

 とりあえずはティミー達に謝りたいが、その後にグランバニアで暮らしていいのか気になり、いっそのことバーダックを探しに旅に出るべきか、いろいろな考えが頭の中で交錯していた。

 

 そんなクロマを見たリュカは、優しくクロマに声をかけた。

 

「クロマ君がいろいろ戸惑うのはわかるよ…それで、さらに戸惑わせることを言うようで申し訳ないけど、クロマ君はまず心の療養が必要だから、サンタローズという村で暮らしてもらうってのをマスタードラゴンと話して考えていたんだ」

 

「…え?」

 

 クロマはリュカの言ったことを聞いて、自分は危険だからグランバニアでは暮らしてはいけないのかとも思ってしまい、どこか辛そうな表情を浮かべた。

 

「今回の事について知ってるのはあの戦いに巻き込まれた者とクロマ君と関わりの多いサンチョ達だけで、グランバニアで知ってるのは僕とティミー達の三人と三匹しかいないから、事情を知らない皆が今の精神状態のクロマ君に接触するのはかえってクロマ君にも辛い事だと思ったんだ…」

 

「…リュカおじさん…」

 

 リュカとマスタードラゴンが勝手に決めたような事ではあるが、リュカはグランバニアの王であり、今のどこか安定しない精神状態のクロマに付きっきりということはできないのだ。

 リュカ自身も、自分が責任を持つと言いながらしこんなことになった自分が情けなく許せなかった。

 

「…ティミー達は特に怒ってはいないということはわかっていてくれ…それにティミーは、サンチョと一緒にサンタローズで君と暮らすことになったんだ…」

 

「…ティミーが…」

 

 自分の意志ではないとはいえクロマは、ティミーを傷つけた自分が許せなかった。

 サイヤ人としての誇り以上に、絆を重んじるクロマだからこそだ。

 

 そして、今回クロマがサンタローズで暮らして心の療養をするべきだと最初に言ったのはサンチョであり、本来なら一緒に暮らすとクロマに辛さを与えると思っていたティミーもサンチョと共にサンタローズでクロマと共に暮らすことになった理由も、サンチョがお互いの絆を壊さないためにもあえて共に暮らすべきだと進言していたのだ。

 その事については、サンチョからはクロマに教えないでくださいとリュカは言われていたので伏せていた。

 

「…それで、クロマ君は大丈夫かな…?…こちら側勝手に決めたような事だから…」

 

 気まずさを隠そうとするリュカに対し、クロマはリュカの顔を観て答えた。

 

「うん…大丈夫だよ…サンチョ達が一緒にいるからなおさら…」

 

 クロマはどこか優しそうな顔で答えた。

 

「…急かしたようですまないな少年、詫びになるかはわからんがこの武器を与えよう…」

 

 先ほどまで黙っていたマスタードラゴンは、どうやらクロマに与える武器を用意してたようだ。

 そして、用意した武器を念力によってクロマの前へと置く。

 

「…これは剣…?…いや斧…?」

 

 置かれた武器は、一見剣にも見えるのだが、刀身の片側に大きな斧の刃が付いているのだ。

 

「それは元々は破壊の剣という剣で、斧の部分も元々付いていたのだ。その武器を改良して保存していたのだが、神並みの龍族にしか使えないほどの性能になってな…それで黒龍の力を持つ少年になら使いこなせると思ったのだ」

 

「はぁ…とりあえず使えるか試すか…」

 

 クロマは剣を握り締める。とても重い剣であったが、サイヤ人であるクロマからするとそこまで重いと感じれる剣ではなかった。

 

「とりあえず持てたか…では、使いこなせるか見定めるために私に剣を振るってくれ。大丈夫だ…昨夜の戦いに比べたら、その剣の一撃など平気だ」

 

「…そうか」

 

 マスタードラゴンの方に向かって振るっても大丈夫だと確信したクロマは剣を握り上へとかがげ、斧の方ではなく尾を模したような刀身をマスタードラゴンへと向ける。

 

「…りゃあ!」

 

 そして、力を込めて剣をマスタードラゴンへと向けて一気に振り下ろす。

 すると、剣から青い炎を纏った衝撃波のようなものが放たれ、マスタードラゴンの両足へと当たる。

 

「ほう…!予想してた以上の力を発揮しおった」

 

「マスタードラゴン!大丈夫ですか!?」

 

 横で観ていたリュカは、慌ててマスタードラゴンへと駆け寄る。

 

「大丈夫だリュカ…。それよりも、その剣の名はどうするんだ少年?」

 

「剣の名前…か…」

 

 マスタードラゴンに今は名の無い剣の名を決めるように促されたクロマは、黙って剣を見つめて数分ほど考える。

 

「……よし決めた、こいつの名前は尾牙(オーガ)だ…」

 

尾牙(オーガ)か…良い名前だな、では少年…いやクロマよ、その剣と共にお前の道を切り開け。さすれば、いつかゴジラの力を使いこなせる日が来るかもしれん」

 

「ああ…」

 

 尾牙(オーガ)と名付けられた剣を握り締めたクロマは、まっすぐな目でマスタードラゴンへと返事をした。

 

「クロマ君、無理はしないでくれよ」

 

「ああ…」

 

 クロマとリュカは小さく握手をした。

 

「では私がリュカ達をそれぞれの居場所へと連れて行ってあげよう。では、先に行っておるぞ!」

 

 マスタードラゴンは大きく叫ぶと、翼を広げて羽ばたき、天空城の入り口へと飛んでいった。

 

「じゃあ行こうかクロマ!」

 

「…ああ…!(君付け無しって事はオレを信頼してくれてるのか…)」

 

 二人は外に出てマスタードラゴンの元へと向かった。

 

 

 その後、マスタードラゴンに乗った二人は、それぞれの場所へと連れて行ってもらった。

 

 

 

 

 

 

「あそこに見えるのがサンタローズか…」

 

「そうだ、君はこれからあの村で暮らすことになっている。大丈夫だ、リュカが子どもの頃に住んでいた村であるから、すぐに慣れる」

 

 サンタローズ周辺に降り立ったクロマとマスタードラゴンは、少し離れた所に見えるサンタローズの村をじっと観ていた。

 

「…そうだな…とりあえず、剣とかいろいろありがとう…」

 

 クロマは、どこかぎこちなくマスタードラゴンへと礼を言う。

 

「礼を言うなら、村に待つティミーやあの男に伝えるといい…それでは、さらばだ」

 

「…じゃあ…」

 

 マスタードラゴンは再び空へと羽ばたき、天空城へと飛んでいった。

 

「……にしても、マスタードラゴンの言っていたあの男って…いや、サンチョではないか…」

 

 いろいろと考えながらも、クロマはサンタローズの方へと走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 サンタローズに着いたクロマは、その落ち着いた静けさ、どこか気の安らぐような空気を身に感じながら、村の中へと入っていった。

 

 

 かつて、このサンタローズの村は、デール王即位以前のラインハットによって見る影もないくらい破壊され、村人達が散り散りになったという重い過去があるが、そんな過去を乗り越えて、散り散りになっていた村人達やその家族が中心となり、かつての自然豊かで平和な村へと復興させたのが現在のサンタローズの村である。

 

 

 

「…サンタローズの村に着いたはいいが、ティミー達はどこにいるんだよ…」

 

 村の中を見渡しながらティミー達を探すクロマであったが、なかなか見つける事はできずにいた。

 

 そして、10分ほどクロマは村の中を探していると、教会から出てくるサンチョの姿を見つけた。

 

「おいサンチョ!」

 

「おお!クロマ坊ちゃんではありませんか!やっとお着きになられたのですね!」

 

 興奮気味でクロマに近づいてくるサンチョであったが、クロマはなんとか落ち着かせて、この村について、これから住む家について聞いた。

 どうやら家のある場所は、昔リュカ達が暮らしていた家のあった場所の少し北にあるらしい。

 

「それでは坊ちゃん、私は先に戻っておきますが、坊ちゃんも一緒に?」

 

「…いや、まずはティミーに会うつもりだ。どこにいるか知っているかサンチョ…?」

 

「ティミー様ならば、村外れの洞窟におられます」

 

 そう言ってサンチョはクロマを、ティミーのいる村外れの洞窟近くまで案内した。

 サンチョの方は、自分が預かっていたスカウターをクロマに渡して家の方へと帰っていった。

 

 クロマはとりあえず洞窟の中に入る。中はやたらとじめじめしており、よく観るとたくさんの魔物が隠れているのがスカウターで感知した。

 

「……ティミーは下の方にいるのか…(それにしてもなんか強い戦闘力をティミーの近くに感じるが誰だ…?…)」

 

 ティミーの近くにいる強い戦闘力の持ち主が気になりつつも、クロマは洞窟の下の方へと降りていく。

 

 

 

 そして、地下二階まで降りてきたクロマは、大きな岩の近くにいるクロマと見覚えのある男の姿を見つけた。

 

「クロマ!もう大丈夫なんだね!」

 

「……ああ、心配かけてごめん…」

 

 ティミーはクロマへと駆け寄り、クロマが元気で嬉しいのか、優しい笑顔を見せる。

 

「…それにしても、あそこにいるのってニ「おぉ!おぉ!元気になったかクロマよ!心配かけやがってこの馬鹿かまま~!」…ニドル…」

 

 岩の近くにいたのはニドルであった。

 ニドルはなにか作業をしてたらしいが、その手を止めてクロマの元へと駆け寄って、なぜかクロマを抱っこえる。

 

「……やめろ」

 

「駄目だな!心配かけた罰だ!ほ~れほ~れ!」

 

「ニドルさん、クロマ怒るよ…」

 

「平和だって~!

 

 皆に心配をかけた罰と言いながらも、どこか楽しそうにクロマを赤ん坊のように「たかいたかい」するニドルの姿に、クロマとティミーは呆れた様子であった。

 一分ほど抱っこされたクロマはやっと降ろされ、ジト目でニドルを観たあとに、二人がいた岩の方を観た。

 

「…何してたんだ?」

 

「これだよこれ!」

 

 ニドルは何か小さい物をクロマへと投げ、クロマが手を広げると、それは小さな青い原石であった。

 

「…?」

 

「まあ、わかんねえか。それはこの洞窟で取れる原石でよ、一時期全然採れなかったらしいけど、俺はプロよ!小さな原石ぐらい簡単に見つけてやったぜ!」

 

「…30分くらい探してね…」

 

「時間は気にすんな!」

 

 ティミーのツッコミも持ち前の高いテンションで返すニドルに、二人はさらに呆れた様子だ。

 

「とりあえずよ、早く家に帰って飯にしようぜティミー、クロマ」

 

「……おい…まさか、お前も一緒に暮らすのか…?」

 

 面倒くさそうな事を直感的に感じたクロマは冷や汗を垂らす。

 

「イエス☆」

 

「……クロマ、残念かもだけど事実だよ」

 

「……本当かよ…」

 

 仲は良くなったクロマとニドルであったが、一緒に暮らすのは話が違うのでクロマとティミーは怠そうな様子であった。

 

「早くしねえと俺が夕飯全部食っちまうぞ~!」

 

 ニドルはそんなことお構いなく、洞窟の出口を目指して走っていった。

 

「「……ハァ…」」

 

 洞窟に二人の溜め息が響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなでクロマ、ティミー、サンチョ、ニドルという四人の先の見えない暮らしが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 修業をしたり、ニドルの冒険ごっこに付き合わされるクロマ達の時間はどんどん過ぎていき、サンタローズで暮らし始めてから169日が経ったある日。

 

 

「ダーマ神殿に行くの?皆で?」

 

「おおよ!皆が力を合わせてやっと完成したダーマ神殿に行こうってデール王から誘われてよ!」

 

「ダーマ神殿には既に職を司る神官の方々が集まってるそうですね。私めは留守番をしておりますが、クロマ坊ちゃんも連れて私の分もダーマ神殿を目に焼き付けてくださいませ」

 

「…面白い…」

 

 クロマ達は、家の中で完成したばかりのダーマ神殿にていて話をしていた。

 クロマやニドル達が手伝ったおかげで、完成がかなり早くなったのだ。魔物や人間達の力を合わせた結晶に、二人の力も加われば当然だろうとラインハットのヘンリーは言っており、今回、クロマ達にぜひとも来てほしいとデール王から伝えられていた。

 

「じゃあ準備終わらせたら早く行こうぜ!」

 

 ニドルは子どもの様にはしゃいでる様子であった。

 

「アハハ…」  

 

「…うるさいが、オレも早く行きたいからなとっとと準備をしよう」

 

 

 

 

そして、出発の準備を済ませた三人は、ルーラを使ってダーマ神殿へと跳んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「「おおぉぉぉ!!」」

 

 歓喜の大声を上げるニドルとティミーが見たのは、神々しくそびえ立つ巨大に神殿『ダーマ神殿』であった。

 

「よく来たな!待ってたぜ!」

 

「…ヘンリーおじさん」

 

 クロマ達は、ダーマ神殿の前にいるヘンリーが目に入った。近くにはリュカ、サラボナの大富豪『ルドマン』がいた。

 

「よく来たね皆!もうすぐしたら来ると思って、ヘンリーとルドマンさんと一緒に待ってたんだよ」

 

「いやはや初めましてだねクロマ君、ニドル君、私はルドマンだ」

 

「ルドマン!大富豪の!?」

 

 大富豪のルドマンが目の前にいることにニドルは大変驚いていた。リュカ達の知り合いであるということは既に聞いていたのだが、まさか、本人に会えるとは思っていなかったのだ。

 

「まあまあ、いろいろ話したいことはあるのだろうが、とりあえず中に入ろうではないか!」

 

 ダーマ神殿に入るのを待ちきれないルドマンの様子は、先ほどのニドルそっくりであった。

 その場にいる者達は、苦笑いを浮かべながらも、一緒にダーマ神殿の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 ダーマ神殿の中に入った一同は、美しくも迫力を感じさせる壁や階段、装飾、なによりもその広さに観てとても驚いていた。

 ニドルとルドマンは、目を輝かせながら辺りを見渡す。

 

「凄いねお父さん!ここまで凄い神殿になってるなんて!」

 

 ティミーも目を輝かせながらリュカを見る。

 

「なんたって、たくさんの人達や魔物が協力し合って作ったんだからね!こんなに凄いのは僕も嬉しいよ」

 

 周りがいろいろと盛り上がり、既に神殿に着ていた人達とも盛り上がったりする中、ヘンリーが口を開く。

 

「おい君達…それで、なんの職業になるのかは決めてるのかね…?」

 

「「「「「あ………」」」」」

 

「おいおい…」

 

 ダーマ神殿に来たのに、何の職業に転職するか決めてなかったリュカ達は、言葉に詰まる。

 

「せっかくダーマ神殿が完成したんだ、なんかの職に就こうぜ…別に本職に悪い影響が出る職業なんてそんなに無いし(遊び人はともかくな…)」

 

「そうだねヘンリー…とりあえず、何の職業になるか皆で話し合うよ。大神官にも失礼だからね」

 

「そうだぞリュカ、早くしろよ~。じゃあお先に」

 

 職業に悩む者達を背にし、既に職を決めていたヘンリーは大神官の元へと行き、『武道家』の職にしてもらった。

 なぜ武道家になったかというと、息子コリンズ筋肉の衰えを馬鹿にされたのが原因らしい。『戦士』でも良かったが、素早さは落としたくなかったヘンリーとしては武道家の方がバランスが良かったのだろう。

 

「ありがとう大神官、後から一気に来るかもしれないから気をつけてな」

 

「ホッホッホ、むしろ、やりがいを感じるというものだよ」

 

 大神官の優しい笑みに、ヘンリーも笑みを浮かべ、その場を後にする。すれ違いでリュカ達が大神官の元へと急ぎ足で行っていたが、あえて無視をした。

 

「まったく…」

 

 ヘンリーは静かに溜め息を漏らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんだかんだで、ルドマンも入れた五人は無事、職業を決めて、その職へと就いたのだった。

 ちなみに就いた職は、リュカが『魔法使い』、ルドマンが『笑わせ師』、ティミーは『盗賊』、ニドルは『戦士』、そして、クロマは『魔物使い』である。

 クロマが魔物使いに就いたのにリュカやニドルは驚いていたが、ティミーがまさかの盗賊というのには父リュカはなんとも反応に困っていた。

 ティミー曰く、盗賊の便利な特技を会得したり、アイテム集めがしたいという理由なのだが。

 

 

「それでクロマ、魔物使いになったのはわかったが、お前魔物好きなの?」

 

 ニドルは興味深そうな様子だ。クロマは基本的に戦いは一人で行い、連携は求めないのもあってか、仲間を増やす、それも魔物の仲間を増やすような職業に就いたのが気になったのだ。

 

「…別に良いだろ…それに、最近は見たこともない魔物が増えたというし…」

 

 クロマの言うとおり、最近は見たこともない魔物、正確にはかつてはいたとされる魔物、異世界に出没するとされる魔物が現れるようになったのだ、特に人間達に大きな被害を出す魔物がいないからかこの事はあまり話題に挙がらない。

 

「まあな~、とりあえずはさ!誰が先に職業の熟練度を極めるか競おうぜ!」

 

「お、それは面白そうだな!)

 

 ニドルの提案に、ヘンリーが乗っかる。

 

「まあ、ゆっくり自分のペースでもいいけど、それも良いかもね。上級職に早くなりたいし」

 

 リュカもどうやらその気のようだ。クロマはどうてまもよさげで、ルドマンは戦闘以外で熟練度を極めるためパスした。

 

「…とりあえず、魔物探しに行ってくるから…先に出とく」

 

 クロマは五人を置いて外に出ていった。

 

「クロマは魔物を仲間にするのは初めてだから、僕が教えてあげないとね」

 

 リュカも続いて外に出ていく。

 

「ヘヘッ!これから面白くなってくるぜ!」

 

「待ってよニドルさん!」

 

 ニドルとティミーも、走って外へと出ていった。

 

「やれやれ、元気ありますねルドマンさん」

 

「そうだなヘンリー君」

 

 二人は苦笑いしながらも、どこか未来へと突き進む者達を応援したくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな明るい未来へと突き進む者達とは別に、遥か地下深く、かつて、魔族の王が勇者達と戦ったと言われる世界にて大きな動きがあった。

 

 

 

 

「…コード.M、例のものは見つかったか…?」

 

「ああ、魔界から逃げ延びた奴らから頂いてきたぜ、抵抗されたが、楽に倒せたさコード.X」

 

 かつて、勇者達に討ち倒された魔王の玉座に座る謎の男、『コード.X』と呼ばれた棒サングラスを掛けた男は、帽子を被った『コード.M』と呼ばれた男から古い書物をいくつか受け取る。

この二名の服装は、明らかにこの世界の物とは思えない銀色のスーツと黒い服で、どこか文明の発達した所の者と思われる。

 

「この世界の古代語のようだが、解読は楽だな……さあ、進化の秘法、闇の夢、神竜…そして、ブラックオーブ……進化の秘法とブラックオーブの破片を手に入れわ闇の夢の出現条件を揃えたが、全てを我々は手に入れねば安心できない」

 

 コード.Xはコード.Mの方を見る。

 

「…コード.M、スラッグ…あのナメック星人の老いぼれにも伝えておけ、貴様に永遠の若さを与えられるのも近いと」

 

「わかった、そう言っておこう、俺もこんな世界とはとっととオサラバしたいからな」 

 

「…まったくだ…陛下直々の命令とはいえ、骨が折れる」

 

 コードを持つ二人は、それぞれ愚痴のような会話をした。

 そして、コード.Mはというと、ナメック星人の『スラッグ』という者の所へと行ってしまった。

 

「…さあて、天空の竜神…そして、二匹の怪獣よ…貴様らには面白いものを観ることとなるだろう……クククク…クハハハハハ!!」

 

 コード.Xの笑い声が暗き世界に響き渡る…。

 

 

 




コード.Xとコード.Mの正体は、わかりやすいかもですね。
スラッグはドラゴンボールZの映画のあいつです。
そろそろ、次の世界に移る予定となっております。
ドラクエ世界を短く感じた方には本当に申し訳ございません
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