黒龍物語   作:一芽

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今回は飛ばし飛ばし飛ばしに進むのでご注意を
あと、エスタークや神竜の口調に違和感があられるかもしれませんがご了承ください。
双子の少女に関しては、今回の口調とかが素で、クロマと話した時は、事の大きさを伝えるためにあんな感じだったという感じです(ややこしい)。
では、どうぞ。


魔物と怪獣と分かり合う心

 ダーマ神殿にて、それぞれ自分の就きたい職業に就いたクロマ達、それぞれの熟練度を極めるために日々頑張っていた。 

 熟練度を極めて上級職へと転職する者も次々と表れ、皆それぞれに合った職業を見つけていった。

 

 

 

 

 

 

 そんな中、魔物使いとなったクロマはというと…。

 

「リンガー!剣の舞いを俺に見せてみろ…」

 

「御意!」

 

 サンタローズ西の山にて、シュプリンガーの『リンガー』の特訓が行われており、リンガーは鋼の剣を構えて、目の前にある巨大な鉄製の人形へと剣の舞いを決める。

 目にも留まらない速さから放たれる剣技はとても美しかったが、技を出し終えた後、何か不満そうな表情でリンガーに近づく。

 

「…たしかに良い剣技だったけど、どこか変に力が入ってるから、ダメージ自体はちゃんと与えれないからな…それでは」

 

 改良したスカウターによって、リンガーの修行成果を観ていたクロマは、リンガーの技の扱い方などを指摘した。

 

「それは失礼した…以後は気をつけよう」

 

 どこか堅苦しい口調のリンガー、彼を仲間にしたのはルラフェンの近くにある滝の周辺であった。

 元々、ミルドラース直轄の魔物部隊の一匹であったが、その部隊で落ちこぼれであるのが悔しく、ミルドラース死後、やり場のない気持ちが溜まり、自分の弱さをとことん責め、この世界へと流れ着き、ルラフェン近くの滝の周辺でただ剣の腕を磨くために周辺の魔物や旅人に勝負を仕掛けていたという過去を持ち、そんなリンガーを3ヶ月前、魔物使いになりたてのクロマと遭遇し、剣での勝負を挑むも敗北、目標の無い落ちこぼれと自虐するリンガーを観たクロマは、精神的にも、戦闘能力的にも鍛えてやらねばと思って仲間に加えたのだ。

 

「…オレも指導下手なのもあるかもしれないが、お前が強くなれる可能性は強いからな…」

 

「クロマ殿は下手ではあらぬ、齢7のお主様の指導能力はわかりやすく、的確でござりますぞ」

 

「…ありがとうな、リンガー。……これでダーラとも同じ様に接することができたらいいんだけど…」

 

 クロマは近くに留めてある馬車の中を観た。

 

「…何見てんだよお前…光が入るから早く閉じろ」

 

「………」

 

 馬車の中には小さな魔物がいたが、魔物は睨むようにクロマの方を観ており、クロマは黙って馬車から顔を出した。

 

「…ダーラ、拙者よりも前にクロマ殿の同志となったはずであるのに、馬車に閉じこもってばかりであるか…」

 

「…そうだな…元々、リュカおじさんのアドバイスを受けた時に仲間になったんだが、オレにではなく、おじさんに心を開いてたのかもな…」

 

 クロマの馬車の中にいる魔物、ダークスライムの『ダーラ』はクロマが最初に仲間にした魔物である。

 しかし、仲間にした時に一緒にいたリュカの方に心を開いてたらしく、クロマにはまるで心を開こうとせず、馬車へと籠もったままであった。

 そのため、ダーラは一応魔法使いの職業に就いたものの、心を開いてないので、自衛の戦いでしか参加しないため熟練度もそんなに上がっていない。

 その後クロマが仲間にしたパオームの『パオウ』、キメイラの『メイッキー』、そしてリンガーがどんどん自分達の腕や職を極めていく中、仲間になってから一番能力的にも変化は少ないのだ。

 

「パォォォォン!!」

 

「…ギャア~キッキッ♪」

 

「おはよう皆…」

 

 クロマは近くの森で眠っていて、先ほどこの山へと着いたパオウとメイッキーに微笑を浮かべる。

 

「…さっそくだけど皆…今日は西の方の大陸に行くことにしてるんだ…目的は後で話すけどいいか…?」

 

 クロマの問いに、三匹は頭を下げて返事をする。どうやら、大丈夫なようだ。

 

 そして、馬車ごとサラボナ近くまでルーラで飛んだクロマ達は、ルドマンに船を借り、山奥の村の北の方にある大きな内海を目指していた。

 どうやら、内海に見たことのない小島が現れたらしく、その小島と小島にあることが確認された洞窟の調査をするためにクロマ達は来たのだ。

 

 

 そして、小島へと辿り着いたクロマ達は、さっそく準備を済ませて洞窟の中へと入っていった。

 洞窟の中は薄暗いが、よく観ると、人間達がかつて何かを掘っていたような痕跡が見つかり、そこがかつて鉱山であった事が推測できた。

 

「…キッキィ~リュカ~パオウに留守番任せてよかったのかな~」

 

「大丈夫…あいつは見た目に似合わないけど賢いからな…」

 

「「……(いや、重さが問題じゃ……)」」

 

 リンガーとメイッキーは心の中でツッコミを入れた。

 

「………ケッ…」

 

 クロマに連れ出されたダーラは面倒くさそうな顔を浮かべていた。

 

 そんなこんなで、洞窟…鉱山をどんどん降りていく一同は、とても暗くて広い空間へと出た。

 

「…ハァ!」

 

 クロマはエネルギーの球を光の球へと変換し、辺りを照らした。

 

「…クロマ殿…これは…遺跡……?いや、神殿でござろうか?」

 

「…そうっぽいな…」

 

 彼らの目の前に現れたのは、とても古い時代のものと思われる神殿で、所々が大きく損傷しており、微量ながらも邪気が感じられた。

 

「…どうやらここ、大昔にあった神殿だな…どうやら、魔物が複数いるのは感知できるが、一部のは邪気が強いな…」

 

「…ありゃ~どうやら、戦闘は避けられなさそうだねぇ。まあ、行こう行こう!」

 

 神殿の中に入っていくクロマの後をリンガーとメイッキーは続く。

 

「…ケッ…みんな偉そうに…」

 

 しかし、クロマの事が気に入らないダーラは別の入り口から神殿の中へと入っていった。

 

「なんだあのチビ…?」 

 

 入り口へと入るダーラの姿を、一匹の魔物が観ていた。

 

 

 

 そして、神殿の中に入ったクロマ達であったが、さっそく待ち伏せをしていた魔物達と戦闘になっていた。

 

「ケケカーッ!」

 

「邪魔だ!さみだれ剣!」

 

「ゲケケーッ!?」

 

 襲いかかる骸骨の剣士、魔物名『しにがみ』の群れをリンガーはさみだれ剣で一掃した。

 

「キッキキ~♪」

 

「やめろこっちに来るな!」

 

 メイッキーの方は、大鎌を持つ悪魔『ベレス』達を追いつめていた。

 

「そっちが先にやったのがいけないんだよ♪…クワァ~!」

 

「「「ぎょわーっ!?」」」

 

 メイッキーは激しい炎でベレス達を黒こげにしてしまう。

 

「…あっち~!もうやめてくれよ~!」

 

「…やめろメイッキー…」

 

 他のしにがみを倒したクロマは、メイッキーに攻撃を止めさせる。

 そして、黒こげになったベレス達に尾牙を向けて睨む。

 

「「「ひ、ひぃ!?」」」

 

「…黒こげで済んでよかったな…たんにメイッキーに舐められていただけなのかもだが。……それよりも、お前らの親玉はどこにいる…いるのはわかってるんだ、話さなければ、オレ達がバラバラにして倒した骸骨野郎共と同じ様にするぞ…!」

 

「わ、わかったからよぉ!教えるから!その剣をどけてくれよ~!」

 

 クロマはベレス達に向けた尾牙を下ろす。

 

「…じゃ、じゃあ俺達に付いてきてくれ…」

 

 ベレス達は、クロマ達にビビりながらも神殿の奥にいるらしい親玉の元へと案内した。道中、見当たらないダーラを探したりしたが、反応があるだけで、なかなか見つからないの仕方ないが後回しにする事になった。

 神殿の奥、とても広い部屋へと案内されたクロマ達は、部屋の中央辺りにいる斧を使う強力なサイの魔物『ライノスキング』が目に入った。

 

「…ん?お前らどうしたんだ!……あっ…」

 

 ライノスキングは、ボロボロのベレス達と無傷で堂々としてるクロマ達の姿を観て何があったかを察した。

 

「…情けないなお前ら…まあ、ここでは強い者が絶対だから、俺も変に戦う気はねえよ。それよりも、大将をお探しならもう少し待ちな……あ、どうやら戻ってきたようだ!」

 

「…どうやら来るらしいぞ…」

 

 クロマ達は、周りの魔物達と共に天井の大穴から降りてくる魔物の姿を観ていた。

 とても大きく、赤い体を持つ鬼のような悪魔は、部屋の中央へと降り立つと、その手に持つ巨大な棍棒をクロマ達へと向けた。

 

「ほう!俺様の子分共を倒したようだな!俺様の名前はおにこんぼう!その名の通り、棍棒使いのプロフェッショナルの悪魔よ!ヌハハハハ!!」

 

 部屋中に響くほどの親玉悪魔『おにこんぼう』の笑い声にその場にいる者達は皆耳を押さえた。

 

「それで、俺様達に何の用だぁ?こちとら面倒事は嫌いだが、俺様を倒しに来たってんなら容赦しねえぞ」

 

「…いや、オレ達は急に出現した島、この神殿の地上にある島にある洞窟を調査しに来たんだ…それで、この神殿は何なのか教えてくれないか…?」

 

「あぁ?まあいいぜ。単刀直入に言うと、この神殿はエスターク様、かなり昔に地獄の帝王として崇められてたエスターク様の神殿よぉ!」

 

「「!?」」

 

 エスタークの名を聞き、リンガーとメイッキーは驚愕の表情を見せた。

 

「…ああ~、安心していいぞ、エスターク様はもうここにはいねえから。なんか昔、一回死んだエスターク様を、エスターク様を魔界の連中が連れて行っちまったからよ。一応、仮死状態だったから生き返る事はできたって、前にここに来た魔物連中が言ってたな~なんかいろいろ変わったらしいがエスターク様」

 

「そ、そうなのか…」

 

 クロマは、あえてそのエスタークが記憶を失い、後にリュカ達に敗北したという事実を伝えない事にした。

 

「他に何か用があるのか?」

 

「いや…別に無いな。さっき倒した奴と違って、お前には明確な殺意や邪気が感じれないから、放っておいても大丈夫だろうから…」

 

「…なんか複雑だなおい…。まあ、エスターク様もデスピサロ様も正直、仕えるとか関係なしに変に殺し合いして恨まれたりなんてしたら、落ち着いて眠られやしねえしな…用が無いなら帰ってくれ……って、お前ら…羽を生やした悪魔みたいなスライムいたんだが、お前らの仲間なのか?」

 

「ダーラ!?あいつはどこにいるのだ!」

 

 リンガーは興奮気味だ。自分達よりも明らかに実力が劣り、しかも、切れやすいダーラのことだから、ここの魔物達にと揉めて何かあったのではないかと思ったからだ。

 

「…おいおい、そんなに興奮しなくてもそいつなら大丈夫だって…大丈夫なのはいいんだがなぁ…」

 

 すると、おにこんぼうが降りてきた穴から、小さな魔物が降りてくる。その姿にリンガーとメイッキーは驚いた。

 そう、その魔物は、今ちょうど話していたダーラだったのだ。

 

「親分…クロマ達来てたのか」

 

「親分…?…ダーラどうしたのだ!」

 

 おにこんぼうを親玉と言うダーラに、リンガーを初めとした魔物達は理解に困る感じであった。

 

「…いやぁさ、こいつ…ダーラがよ、なんか主面してる奴が気に入らないから、あんたの子分になるなんて変な事言ってよぉ…」

 

「オイラは本気だぜ親分!こんな奴らと一緒にいるよりも、親分の元にいる方が百倍マシだ!」

 

「………」

 

 ダーラは本気のようで、クロマはなんとも言うことができなかった。

 

「ダーラ!我々はいいとして、クロマ殿に失礼だぞ!」

 

「…いや、いいんだリンガー。オレが悪いんだ」

 

「…キキッ!?違うってクロマ~!」

 

「…あ、あのぉ~」

 

「「うるさい!」」

 

「は、はいっ!」

 

 揉めてるクロマ達には、ベレスもライノスキングも声をかけられなかった。

 

「ダーラ…俺様の所いるより、やっぱりあの人間の所にいた方がいいんじゃねえか?」

 

「いぃや!親分はあいつのウジウジした感じを知らないから言えるんだ!」

 

「お、おいダーラ!いい加減にしないか!……ってクロマ殿…?」

 

 クロマは、どういうわけか出口の方へと歩き出していた。

 

「クロマ殿!ダーラはどうするつもりで!」

 

「…リンガー、もういいんだ。ダーラのやりたいようにさせてやれ…」

 

「ええ~!本当にいいのクロマ~!」

 

「…メイッキー、同じ事は言わないからな…もう帰るぞ、ここは用はない。……おにこんぼう、失礼をしたな」

 

「お、おう…」

 

 おにこんぼうは複雑な表情でこの神殿を去ろうとするクロマ達と、ダーラの姿を交互に観た。

 

「早く帰れ!もう二度と顔を見せるな!」

 

「……」

 

 ダーラに対して返事をするわけでもないクロマは、リンガー達と共に神殿を去ってしまった。

 

「おい、ベレック…」

 

「はい…?」

 

 おにこんぼうは、先ほどまでクロマ達の近くにいたベレス達のリーダーである『捻れ角のベレック』を近くに呼ぶ。

 

『…あいつらの後を追え…見つかったら、適当に一時的な仲間のふりをしていろ…』

 

『ハ、ハァ……珍しいですな、親玉…人間の心配なんて…』

 

「バッカヤロウ!そんなわけねえだろ!」

 

「「「「!?」」」」

 

 急に大声で叫んだおにこんぼうを観て、ダーラを含めた魔物達は、心臓が止まるかと思えるくらいに驚いた。

 

『ま、まあ行ってきますわ…(あ~あ、あのメイッキーって奴にまた焼かれたりしねえよな…)』

 

 ベレックはどこか面倒くさそうだが、おにこんぼうが棍棒で床を何度も突くので急いでクロマ達を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で、僕達に付いてきたわけね…別にだいたいの事は察するけどさ~」

 

「いやぁ、アハハハ」

 

 ベレックは、クロマ達が乗っている船に静かに忍びこもうとしたが、見張りをしていたパオウにはバレバレで、呆気なく見つかって鼻に掴まれて、捕らえられたのであった。

 

「まあ、貴公のところの親玉はクロマ殿が感じてたように悪しき者では無いようであるから、貴公は話してくれたとおり、我々と共に行動するということでよろしいかな?」

 

「パオ…!」

 

「は、はいぃ!」

 

 そんなこんなでベレックは、クロマ達と共に行動することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 そして、一週間ほど過ぎたある日の夜。サンタローズの村の川の辺をクロマは散歩していた。

 

「………」

 

 クロマは、ダーラとわかり合えなかった、いや、わかり合おうと頑張れなかった自分が情けなくて、仕方なかった。

 

「………魔物使いの熟練度を極めたからなんだ…!…結局、ダーラの事をわかろうとせず、わかり合えたリンガー達ばかりを観てただけじゃないか……これじゃ、あいつらと変わらないじゃないか…」

 

 クロマは、惑星ベジータにいた頃に自分に嫌がらせをしたり、傷つくような事を言ったサイヤ人の子ども達を思い出し、今の自分と重ねていた。

 そんな自分が鏡のように写る川の水面に、ただ文句を飛ばすようなことをする、それが情けなかった。

 

「…おや、クロマ坊ちゃん?」 

 

「…サンチョか…」

 

 偶然橋の上にいたサンチョと目が合った。宿屋の葡萄を貰いにアルパカへ行っていたため、帰りがこんな夜になったのだろう。

 そして、サンチョはクロマの元へと歩いてきた。

 

「元気が無いようですがいったい…あ、ダーラ…」

 

「ああ…元々、リュカおじさんの仲間になりたがっていたのを、オレが仲間にしてしまって、いろいろと分かり合えなかった…いや、分かり合おうとしなかったんだよな…オレ…。育てる覚悟が足らなかった…おじさんのような優しさが足らなかったのか…」

 

「いいえ…クロマ坊ちゃんの優しさは素晴らしいものですよ。それに、リュカおじさんと同じ優しさを手に入れてもダーラが心を開いたとは限りません。ですが、あなた様なりの優しさの表現をすればダーラはあなた様を認めましょう…。私は、意地が強すぎてかえって迷惑をかけたりしますから、あまり当てにはなりませんが…ですが、周りの皆様が優しくしてくれたからこそ、帰るまいと決めたこの村へと帰ってこられた。優しさには素直さと純粋さがあるのだとわかりましたね」

 

「……」

 

 クロマは黙って頷く。

 

「正直言いますと、意地っ張りな私は無理でも、仲間を大切にするクロマ坊ちゃんなら大丈夫。厳しさと優しさを上手く持ち合わせてます。ただ、失礼を承知で言いますと、絆について見ていけばダーラが戻ってくるかもしれませんよ」

 

「絆…か…」

 

 クロマは、魔物に優しくしたり、戦闘を任せたりするが、それは戦闘面の中での都合の良さに直結してしまい、心からの絆というにはどうも違う感じが観られた。

いや、出逢った頃はあった絆が、どんどん薄くなっていたのが正確なのかもしれない。そもそも、戦闘民族サイヤ人の生まれなので仕方ないのだ。むしろ、クロマのように優しいサイヤ人は珍しいくらいなのであった。

 

「…サンチョ、ありがとう。いろいろ頑張れる気がしたよ」

 

「それはそれは…私のような者でよければいつでも相談に乗りますよ」

 

 そして、サンチョは荷物を持って家に帰っていった。

 

 クロマはまず、リンガー達が仲間になった時の事を思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 リンガーが仲間になった時は、雨が降る夜であった。

 

 

「貴様…拙者を殺せ!今すぐ殺せ!魔王様のいない、こんな世界で生き恥を晒せと言うのか!」

 

 クロマに剣技で負け、剣を地面へと突き刺し、なんとか立ち上がっているリンガーは、クロマを睨んでいた。

 

「……ハァ馬鹿らしいな…」

 

「なぁ!?馬鹿らしいとはなんだ馬鹿らしいとは!」

 

「………お前さ…生き恥って、お前命に喧嘩売ってるのか…?…お前のような奴があの世に来たら、魔王ミルドラースも迷惑だろうな…」

 

「…貴様ぁ!」

 

 顔に血管が浮かぶほどに頭にきたリンガーは、目にも留まらぬ速さでクロマの首もとに剣を突きつける。

 

「…なんだよ…体力減ってるのにそれだけの動きができて、本当に死にたいのかよ。…むしろ、生きて…とことん生きて強くなってからあの世に行った方が、魔王も鼻が高いだろ…どうせ棄てる命なら、オレに使わせてくれないか…?」

 

 リンガーは剣を下ろして、クロマを観た。

 

「…貴公はどうしてそんな事を…?」

 

「…ふん、ただの子どものワガママなのはある…。だけど、それ以上に目の前にある可能性、強くなれる可能性を失うのは戦闘民族として…一人の男として見過ごせないんだ…もったいないって」

 

「………もったいない…そうか。…………ふふふふ…はははははは!!」

 

「!?…どうしたんだ…?」

 

 急に笑い出すリンガーの姿に、クロマは日頃見せないような驚きの表情を見せた。

 

「なぁに、剣士リンガー。貴公に棄てるはずだったこの命を拾ってもらいたいと思っただけだ」

 

 その言葉を聞き、クロマは心の中で笑顔になる。

 

「…ふ、ならば拾ってやるよその命…このクロマがな」

 

 

 

 

 死に場所を探し、ただ、死にたかったリンガーを仲間にしたクロマ。

 よく考えたら、こんな会話があったからこそ、絆なのかはわからないが、目に見えない堅い繋がりがリンガーとクロマの間に生まれたのかもしれない。

 

 その後に仲間になったメイッキーやパオウは、ただ、クロマが面白そうで懐いたみたいな、一方的なものもどこかあった。

 今はお互いに信頼してるようなものはあるかもしれないが、それはどちらも一方的なのだろうとクロマは今、思っていた。

 

 

 

 クロマは、思い出した感覚でダーラと話したら仲間に戻ってくると思ったが、さすがに早いと思い、もう少し時間を置いてみることにした。

 

 

 

 

 翌日の朝、クロマはニドルに戦闘服を着た状態で呼び出され、二人だけでエルヘブン南の草原へと来ていた。

 

「ニドル、いったいどうしたんだ…」

 

「いやさ、お前のゴジラの力、どれだけ制御できるか確かめてやろうと思ってな。パワーボールを頼む」

 

「…ああ。だが、どうなるか知らないからな…」

 

「大丈夫だ…そのためのお前の輪っかだろう」

 

「…そうだな」

 

 クロマは一度、輪が正常か確認する。そして、パワーボールを作り出し、空へと打ち上げる。

 

「はじけて混ざれ!」

 

 そして、打ち上げられた『パワーボール』は、人口満月へと姿を変える。

 

「ググゥ…ガァ!」

 

 人口満月を観たクロマの姿は、ゴジラへと変化を始める。

 

「じゃあ、俺も!…ハァァァァ…!」

 

 ニドルの身体は銀色の光に包まれて、光はどんどん大きくなり、アンギラスの姿へとなっていく。

 

 

 

 

 

「「………」」

 

 そして、二匹の怪獣が再びこの世界にて出現した。

 前と違い、ゴジラは背鰭や尻尾が出ても大丈夫なようになっている戦闘服を身に纏い、額に力を抑える輪をつけていることだ。

 

「……(それで、あいつは意識保ててるのか?)」

 

 ニドルの意識を保つアンギラスは、ゴジラへと意識を保ててるか確認するためのサインを送る。

 

「…グ、グガァ…」 

 

 かなりギリギリだが、クロマの意識を保っているゴジラはあらかじめ教えられたサインを返した。

 

「…ガアァンアッ!(よし!)」

 

 アンギラスはどこか嬉しそうな表情だ。ちなみに、意識を保っている怪獣同士は、どういうわけか会話が成立しており、この仕組みについてはよくわかっていない。

 

 そしてアンギラスは、ゴジラの意識を保てるようにさせる特訓、及びゴジラの力を使いこなせれらようにする特訓をゴジラへと指導を始めた。

 

 

 

 

「……ッ!グガァ!」

 

 ゴジラは、目の前に投擲された複数の岩を熱線で破壊した。

 

「……(熱線は威力が高いが、高射程、長めに使うなら白熱光の方が良さげだな…にしても、クロマのゴジラ、俺を「殺した」ゴジラと見た目や雰囲気がいろいろ違うんだよな…)」

 

 ゴジラの様子を観るアンギラスは、いろんな思いがある中、ゴジラを鍛えていった。

 

「…グガァ…(意識も保てないんじゃ、ダーラにもきっとどこかで生きているバーダックおじさんにも顔向けできない…)…グガッ!?」

 

「…ガァ…(はいはい、よけいなこと考えない…むしろ、考えるほど離れていくもんだぜ、今のお前じゃ…)」

 

 

 アンギラスは、他のことを考えているゴジラの尻尾を踏みつけた。

 

「…ググゥ…ガァ」

 

 ゴジラも、今は特訓のことだけを考えて集中することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、クロマはニドルの元で、ダーラはおにこんぼうの元で、自分の弱さを無くすためにとことん鍛えていった。

そして、月日が流れていき、最初にダーマ神殿でクロマ達が職業に就いてから7ヶ月が経過した。

 

 

 

 

 

 

「…神竜様のために天空の塔を修繕したが、神竜様はどこにいるやら…」

 

 天空の塔の周りを飛んでいたマスタードラゴンは、ダーマ神殿の後に修繕された天空の塔を観て静かに呟いた。

 

 元々は天空城へと行くための塔であったが、修繕されてさらに高くなった塔の役目は別にあった。

 

 願いを司り、竜族の中でも少ない神の名を与えられた『神竜』を迎えるための塔となったのだ。

 

 しかし、肝心の神竜がどこにいるかは、同じ竜の神であるマスタードラゴンすらわからなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 どこかの世界、どこかの部屋。  

 

 様々な色に覆われた部屋にある物は、部屋の中央辺りにある12の椅子で、その内の4つには、既に誰かが座っていた。

 

「今回のこの場は、海の聖獣を統括する私が話を進めます」

 

「頑張ってねお姉ちゃん」

 

 二人の少女が椅子から立ち上がった。そう、ゴジラにいろいろ教え、マスタードラゴンを経由して力を抑制する輪を与えたあの双子の少女達であった。

 

「ンッホ~、それで、例のゴジラはどうなったウホか~」

 

「…コング…真面目にしろよ」

 

「わかってるウホよメガっち~♪」

 

 猿人のように毛深い男を、額の髪が逆立っている美形の男が注意した。

 

「なんで今回集まったのがあなた達なのですか…」

 

「お姉ちゃん…仕方ないよ。他の聖獣の席も埋まってないんだし、今は他の世界にいる方だっているんだし…」

 

「…そうよね…うん。…とりあえず、ゴジラについて話をします、マスタードラゴンが治める世界にどういうわけかゴジラの力を持つ子どもが現れたのは知ってますね?」

 

「おう!しかも、俺っち達もよく知らない個体の力だったウホね?」

 

 コングは、変わった口調ながらも、モスラの話はちゃんと聞いていた。

 

「はい。しかも、とある世界の戦闘民族の生まれのため、元々持つ力が強く、その力を抑えるためにあの世界へ彼が現れてすぐに力のほとんどを封印させました。ただ、力を抑えこんでもゴジラになったとなったら、その封印の一部も解けて強大な力で暴れてしまったのは想定外でした…」

 

「レインお姉ちゃん…」

 

「それで、彼の意識の中にレオと共に入り込んで接触し、そして、さらなる施しとして、マスタードラゴンにゴジラの力を抑えこむ封獣の輪を渡すように頼みました。ちゃんと渡してくれたようで今は安全ですね…」

 

「まあ、それはわかっていることだが、今回はその封印について話があるんだろ?」

 

 メガっちと呼ばれていた男は、グラスに入った水を飲んでそう言った。

 

「はい…実はその封印について、彼の様子、成長次第では解こうかなと思っているんです」

 

「「「!?」」」

 

 その場にいた三人は、少女『レイン』の発言に驚いた。

 なぜなら、彼…クロマの力の封印されている力は強大過ぎるからだ。他の世界に行っても、サイヤ人やゴジラの力は危険過ぎる。それを皆恐れていたからレインが力を封印したのに、封印した本人がそれを解くと言うのだから大事である。

 

「別に一気には解きませんよ、少しずつ少しずつ解くんです。彼の近くには怪獣としての意識を保てる頼もしい存在がいますし、あの方ならば彼にゴジラの力を制御させれるように鍛え上げるでしょう…(実はもう解き始めてたなんて言えない…)」

 

「なんかクロマ君が振り回されてるみたいで可哀想…」

 

 そんな事を呟くレオを観たコングは、「レオも振り回してるウホよ」とつい口が滑りそうになったが、メガっちがそれを止めて特に揉める事はなかった。

 

「それとレオ。貴女にはあちらの世界へ行ってもらいます」

 

「えぇ!?なんでレオだけ!?お姉ちゃんがいないと固まっちゃうよ…」

 

「双子一緒にいないと一人前ではないとか言われるのは嫌でしょ?それに、例の者達があの世界に現れたのが確認できましたし…」

 

「…っ!」

 

 レオやコング達は、例の者達というレインの言葉に反応した。

 

「…うぅ…わかりましたよお姉ちゃん…どうせ、バト兄のいないお姉ちゃんなんて役に立つか…「…あらレオ、どうやらお仕置きが必要なようね…?」ご、ごめんなさい!」

 

 レインはドス黒い笑顔でレオを見つめ、レオは涙目で震えていた。コングがレインをなんとかなだめて話は再開される。

 

「同じ双子でも、見た目とか以外はかなり違うよなお前ら…」

 

「「ん?」」

 

 メガっちは呆れ顔で、目の前の面倒くさい双子を観た。

 

「じゃあ、行ってきますお姉ちゃん」

 

「行ってらっしゃいレオ」

 

 レオは背中から翠色に輝く綺麗な配色の虫の翼を広げ、天井に開いた空間の穴へと突っ込む。

 

「頑張ってくるウホ~!」

 

「無理すんじゃねえぞ~」

 

 他の二人もレオに手を振って見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ~…あれからもう、2ヶ月か…(特にやることないし、お姉ちゃんからの連絡ないな~)」

 

「どうしたのレオちゃん?」

 

 近くにいたポピーが、レオに寄ってくる。

 

「大丈夫、何でもないよポピーちゃん。それよりも、新しい魔物さんが仲間になるといいね」

 

「うん!お父さんみたいにたくさんの魔物さんと友達になれるように頑張るよ!」

 

「私も応援してるからね」

 

「ありがとうレオちゃん♪さあ、出発だよ~」

 

「おぉ~!」

 

 花畑にいたレオ、そして、リュカの娘であり、魔物使いの職に就いたポピーは、二人仲良く魔物探索へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな中、エルヘブンの遥か北に出現していた洞窟の最下層に、とても長い身体を持つ竜…神竜と、リュカ達に敗北し、眠っていたとされるエスタークの姿があった。

 なぜ、神竜がこの場にいるかは、エスタークですらよくわかっていなく、気がついたら目の前にいたのだ。

 

「……どうだ?記憶の方は」

 

「…なんもなくだが思い出せてきた。だが、かつての導かれし者達との戦いやマスタードラゴンとの戦いなど、戦いに関するものばかり……息子と名乗ったあの者についてはまだ思い出せぬ…」

 

「そうなのか、ならばその記憶も思い出せるように手伝ってやろう」

 

「…ふっ…かつての地獄の帝王も堕ちたものだな…」

 

「何を言うか、未だに強くなるために進化を続けてる奴が言うことではないであろう」

 

「…そうだな……それで、記憶が完全に戻ったならば、魔物達を統制するのもいいが、例の黒龍と闘ってみたいものだ…」

 

 エスタークは、爪で自分の持つ大剣の刀身をなぞりながら言う。

 

「ハハハ、頼むからメチャクチャにはしないでくれよ。お主ほどの者と例の黒龍が闘いでもしたら、我がボロボロになった世界を直すことになるのだから」

 

「…そんなにメチャクチャに戦わぬわ…まったく…」

 

 かつての自分なら、このような相手と言葉を交わし合うことはなかっただろうなとエスタークは心の中で思っていた。

 

 

 

 

 

「…神竜ってのはもう目覚めてんだな、まあ、もう少し観察しないといけないだろう…もうすぐで拝ませてもらうぜ神竜さんよ、あんたの願いを叶える力を」

 

 洞窟の外から神竜の存在を確認していたコード.Mは、その場を立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それぞれが変わる、強くなっていく中、彼らの戦いが迫っていた。

 

 




レオ、レイン、コングが誰かはわかるかもですが、メガっち(あだ名)の方は意外な方でわかりつらいかもです。
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