砂漠を旅するロロとジュド。
その道中で再びイエロースーツと遭遇し、さらに一人の男が二人の前に現れます。
そして今回は、ようやくモビルスーツ戦も本格的に始まります。
「炎虎のジュド」の戦いぶりと、少しずつ動き始める三人の関係を楽しんでいただければ幸いです。
砂漠を、一台のホバーカーが走っていた。
その姿を、遠く離れた岩陰から覗く者がいる。
その青年の名をニールといった。
デジタルスコープの中で、ホバーカーが小さく揺れている。
運転席には若い女の子。
その隣には、熊のような大男が窮屈そうに乗っていた。
「……本当に、あいつらなのか?」
ニールが呟いた。
イエロースーツに加わって一年。
最初の頃こそ居心地の悪さを感じていたが、今では黄色い服を着ていることにも慣れていた。
「おい、ニール」
後ろから声がした。
「はい?」
スコープを覗いたまま振り向く。
突然、視界いっぱいに男の鼻が現れた。
「うわっ!」
ニールは慌ててスコープを外した。
目の前に立っていたのは、バルガス隊長だった。
「スコープ覗いたまま振り向く奴があるか、バカ」
「す、すみません……」
「で、どうだ?」
ニールはもう一度ホバーカーを見る。
「大男が一人。それと……女の子が一人です」
「女の子?」
「はい。まだ若いです」
バルガスは少し考えた。
「そうか」
周囲には、ほかに二人のイエロースーツが待機している。
「おーい、メッチャ!クッチャ!大男は二人に任せる。俺はホバーと荷物を押さえる」
そしてニールを見る。
「お前は女の方を頼む」
「僕が?」
「ああ」
バルガスは、それ以上言わなかった。
気重だったニールは少しだけ笑顔を見せた。
「はい!」
4人はホバーカー奪取にうごいた。
ホバーカーは砂漠を進んでいた。
運転しているのはロロだった。
ゴーグルの片隅では、小さなハロが目的地までの経路を表示している。
助手席ではジュドが窮屈そうに身体を縮めていた。
「で、例の機体。本当に動かせそうなのか?」
「まだ分からないよ。実物を見てみないと」
ロロは前を見たまま答える。
「ずっと砂漠に置かれてたんでしょ? どんな状態なんだろう」
「……修理だけで動いてくれりゃいいんだがな」
そのときだった。
前方に人影が現れた。
ロロがアクセルを緩める。
「……何?」
三人。
全員、黄色い服を着ている。
ジュドの目が細くなった。
「……イエロースーツか」
ホバーカーが止まった。
バルガスが一歩前へ出る。
「……悪いが、素直に俺たちの言うことに従ってもらいたい」
「な、なに? 誰、この人たち?」
ロロがジュドを見る。
バルガスは続けた。
「ホバーと荷物を置いていってくれ。衣服までは取らん」
腰の武器へ手をかける。
いつのまにかロロはニールの腕で拘束される。
「できれば、殺したくないんでな」
ジュドの口元がわずかに上がった。
「へっ」
――カチッ。
ヒート・グレイブが展開した。
二人のイエロースーツが、ジュドを抑え込もうと襲いかかる。
次の瞬間――。
ヒート・グレイブが一閃した。
二人の身体がまとめて宙を舞い、砂地へ叩きつけられる。
「!!?」
ニールとロロは、大男の圧倒的な武力に揃って目を丸くした。
一瞬、呆然としていたロロだったが――。
「……ちょっと」
「え?」
我に返った途端、自分がニールに羽交い締めにされていることに気づく。
ロロの顔が、みるみる赤くなった。
「あんた、どこ触ってんのよ!」
「ええっ!? お、俺はそんなところ触ってなんか――うわっ!」
慌てたニールの腕から力が抜ける。
「えい!」
ロロは反射的に身をよじり、その腕から抜け出した。
「あっ!」
思いもよらぬロロの行為に出し抜かれたニール。
ジュドが振り返った。
「……おい!!」
その目がニールへ向く。
「俺の仲間に、何してくれてやがんだ」
ヒート・グレイブが振り上げられた。
ニールの鼻先に突きつけられる。
「――危ない!」
横からバルガスが飛び込んだ。
ニールを突き飛ばす。
「え?――」
次の瞬間。
ヒート・グレイブが業火のように振り抜かれた。
バルガスの姿が消えた。
「…………」
ニールは動かなかった。
いや――動けなかった。
「バルガス……さん……?」
ジュドが再びヒート・グレイブを構える。
ニールはその場に座り込んだままだった。
ジュドが一歩踏み出す。
しかしその前に――涙目のロロが立った。
両腕を広げる。
「…………」
「……どけ」
ロロは首を横に振った。
「どけ、嬢ちゃん」
もう一度、首を振る。
「……ったくよう!嬢ちゃんも一緒に死にたいのか?」
ジュドがヒート・グレイブを振り上げる。
それでもロロは動かない。
刃が振り下ろされた。
その瞬間――。
――キィン!
横から飛び込んできた一本の刀が、ヒート・グレイブを受け止めた。
笠をかぶった男だった。
「なぜ、その子を斬ろうとした?」
ジュドが男を見る。
「だったらどうするってんだい、お前さん」
二人が離れる。
再び刃がぶつかった。
――キィン!
そして――。
パキン。
銀色の刃先が、くるくると宙を舞った。
ザクッ――。
砂地に突き刺さる。
笠の男の持っていた刀が折れていた。が
男は退かない。
「……まだやるのかい?」
刃のかけた刀を向ける。
「…………」
ジュドはしばらく男を見つめた。
やがて何かを察したのか急にヒート・グレイブを下ろした。
「……やめた、やめた。興ざめだ」
ロロがほっと息を吐いた。
ジュドは男をもう一度見る。
「お前さん、なんだ……その。この嬢ちゃんの用心棒として雇われねえか?」
「分かった。引き受けよう」
「おいおい、早えな。即答かよ」
ジュドが笑った。
「……そういや、お前さん。名前は?」
「朱麗だ」
「朱麗か。俺はジュド」
そしてロロを指す。
「こっちの嬢ちゃんはロロだ」
名を聞いた朱麗の顔が止まった。
ほんの一瞬、目が見開かれる。
「おい、何ぼーっとしてんだ?」
「……いや。なんでもない」
「?」
ロロは首を傾げた。
そして折れた刀を見て、朱麗へ言った。
「さっきは助けてくれてありがとう。おかげで助かった」
「気にしないでいい」
「でもこんなこと言えた義理じゃないけど、今度から、ジュドさんには喧嘩ふっかけない方がいいよ。たぶん勝てないから」
「そうだな。自分の実力も分からず、つい助けに入ってしまった」
「うん。気をつけた方がいいよ」
「…………」
ジュドは黙って朱麗を見た。
出発の準備を終えたロロは、座り込んだままのニールを見る。
近くに落ちていた通信装置を拾った。
「これ、使えるかな」
ゴーグルを操作する。
――ピッ。
通信装置の小さなランプが点灯した。
「よし」
救難信号と現在位置を設定する。
ロロはそれをニールのそばへ置いた。
「これで仲間が気づいてくれると思うよ」
「おい!よせ。」
ジュドの言うことも気にしないロロ。
さらに水筒をニールの首へかけ、パンを口へ押し込んだ。
「むぐっ」
「よし!」
ロロは満足そうに立ち上がった。
「じゃあ、生きてまたいつの日か会おう。バイバイ!」
三人がホバーカーへ戻っていく。
ニールは何も言わなかった。
ただ、その視線だけが――ジュドの背中を追っていた。
ホバーカーが砂煙の向こうへ。
残された通信装置の小さな緑色のランプだけが点滅していた。
……ピッ。
……ピッ。
……ピッ。
旧スーダン地方。
砂漠の片隅に、そのジャンク屋はあった。
無数の部品や機械の残骸。
その奥に――一機のモビルスーツが立っている。
「…………」
ジュドとロロが揃って見上げた。
RGM-89――ジェガン。
長い年月、砂漠に放置されていた機体だった。
「おお……」
ロロの目が輝く。
「こいつぁ……」
ジュドも同じように目を輝かせていた。
二人はすぐに機体へ近づいた。
「この型、まだ残ってたんだ!」
「懐かしいな。ここの部品なんか、今じゃまず見ねえぞ」
「でもこれなら現行品で代用できそう」
「いや、待て。そこ替えるなら、こっちも合わせねえとダメだろ」
「あ、本当だ!」
「だろ?」
「でも、だったらこっちを――」
二人の会話がどんどん速くなる。
「…………」
少し離れたところでは朱麗が顔を覆って会話に入っていけなかった。
そこへ店主から声がかかった。
「おい。で、どうするんだ?」
ロロとジュドが顔を見合わせる。
にやりと笑った。
「買う」
ジェガンは近くのレンタル工場へ運び込まれた。
しかし――。
「おい、電源が入らない。」
「…………」
ジュドが腕を組む。
「まあ、そうだよな」
部品を集めればどうにかなる。
だが、この状態では一度アルフレッドへ相談した方がいいかもしれない。
ジュドがロロを見る。
「こいつ、アルさんに一度相談した方が――」
「ちょっと待って。今いいところだから」
「お……おう」
ロロは機体の内部へ頭を突っ込んでいる。
ジュドは待った。
しばらくして――。
「よし、できた」
「は?」
ロロがスイッチを入れる。
――ブゥン。
死んでいたジェガンに電源が入った。
モニターが次々と点灯していく。
「…………」
ジュドは唖然とした。
「あ、ジュドさん。ごめん、待たせたね」
ロロが振り返る。
「それで、さっきは何の話だった?」
「……いや。なんでもねえや」
そこからは早かった。
ロロは不具合のある箇所を調べ、必要な部品だけを洗い出していく。
やがて店主が台車を押して戻ってきた。
「おーい。頼まれてたやつ、持ってきたぞ。これでいいのか?」
ロロがゴーグルで部品番号を確認する。
「うん、これで大丈夫」
再び作業へ戻る。
やがてジュドが呆れたように言った。
「嬢ちゃん、飯でも食ってこいや」
「あ、そんな暇ない。ジュドさん、パン買ってきて」
「俺がかよ」
「朱麗、そこのスパナ取って」
「……これか?」
「それそれ」
朱麗がスパナを渡す。
「ったく、しょうがねえな。じゃあパンでも買ってくるわ」
ジュドは工場の出口へ向かった。
「朱麗、頼んだぞ」
「ああ」
「ジュドさん、早く!」
「分かったよ!」
工場を出たジュドは、歩きながら通信端末を取り出した。
『はい』
「よう、レオナージ。俺だ」
『ジュドさん。どうでした、例のジェガン?』
「ああ、そのことなんだがな。どうにかなりそうだ。ありがとな」
『どうにかなりそうって……あれ、電源も入らなかったでしょう?』
「それが入ったんだよ」
『え?』
「一緒に来た嬢ちゃんが、ちょいちょいっと弄ったらな」
電話の向こうが、しばらく静かになった。
『……誰です、その子?』
「アルんとこのロロって嬢ちゃんだよ」
『アルフレッドさんの?』
「ああ」
『整備士なんですか?』
「見習いだろ。まだ十代のガキだぜ」
『ちょっと待ってください』
レオナージの声色が変わった。
『その子が、あのジェガンの電源を復旧させたんですか?』
「そう言ってんだろ」
『故障箇所は?』
「知らねえよ。俺が話しかけてる間に直しちまったんだから」
『…………』
「なんだよ」
『ジュドさん』
「あ?」
『その子、作業が終わったら一度こっちへ連れて来られませんか?』
ジュドの眉が上がった。
「なんでえ。女の子に興味でもあんのか?」
『違いますよ!』
思わずジュドが笑う。
「冗談だよ」
『僕は、その子がどうやってあれを直したのか知りたいんです』
「へえ……」
ジュドは工場の方を振り返った。
中では今頃、ロロが朱麗をこき使いながら、ジェガンを弄り回していることだろう。
「まあ、後で本人に聞いてみるさ」
『本当にですか!是非お願いします!!』
「はいはい。じゃあな」
通信を切る。
ジュドは端末をしまうと、今度こそパンを買いに歩き出した。
数時間後。
ジェガンは、どうにか動かせるところまで復旧していた。
店主が腕を組んで機体を見上げる。
「動くようになるのはいいけど、武器と弾薬はどうする気だい?」
「使えそうなのはねえのか?」
ジュドが尋ねる。
「古いバズーカなら倉庫にある。弾も少し残ってる。頭のバルカンなら弾を用意できるぞ」
「それで十分だ」
やがて、古びたバズーカが運ばれてきた。
そして操縦席には、ロロが追加した一つのスイッチがあった。
「なんだ、こりゃ?」
「あ、それ?」
ロロが顔を出す。
「最終兵器」
「最終兵器?」
「うん」
ロロは何でもないことのように答えた。
「ものすごくエネルギー使うから、使ったらモビルスーツが動けなくなっちゃうんだよ」
「へえ」
「だから、どうしてもって時まで押しちゃダメだぞ」
「分かった、分かった」
ジュドはスイッチから手を離した。
修理が終わる。
ジュドはジェガンを見上げた。
「嬢ちゃん、ちょっとチェックお願い」
「分かった」
ロロがコクピットへ乗り込む。
ジェガンがゆっくりと歩き出した。
「うん……大丈夫そう」
操縦桿を動かし、機体の反応を確かめる。
「ハロ、どう?」
『各部、異常ナシ!』
「よし!」
ロロは満足そうに頷いた。
その頃、ジュドは店主が持ってきたバズーカを手に取って眺めていた。
「へえ……こいつか」
「年代もんだから安く手に入った」
「こいつは、いくらで――」
ジュドが店主に問いかけた、そのときだった。
――ドカァン!!
地面が揺れた。
「なんだ!?」
町の一角から黒煙が上がる。
続けて別の場所でも爆発。
――ドォン!
「イエロースーツだ!」
誰かが叫んだ。
ロロがコクピットから町を見る。
黄色い機体が、建物の間を進んでいた。
「……また?」
ジェガンの手が動く。
「おい、嬢ちゃん!」
ジュドが振り返った。
「ロロ!」
だが――。
ジェガンはすでに走り出していた。
「……あ?」
店主が指をさす。
「もう行ったぞ」
「一人で俺のジェガン持ってって、どうする気だぁ!?」
戦場へ飛び込んだロロは、すぐに後悔していた。
「来たのはいいけど……私、どうしたらいいの……?」
『敵機接近!』
「分かってる!」
一機の黄色い機体が近づいてくる。
その操縦席には――ニールがいた。
「……あのジェガン。モビルスーツなんていないんじゃなかったのかよ!」
ニールは武器を構えた。
ロロも慌ててバルカンを撃つ。
――ガガガガガッ!
「当たって!」
弾丸は敵機の横を抜けていった。
「もう! 全然当たらない!」
『照準ヲ修正シテ』
「分かってる!」
ニールも撃ち返す。
だが、こちらも外れる。
「くそっ!」
互いの射撃が砂漠に穴を開けていく。
しばらくして、ニールが気づいた。
「……あれ?」
またジェガンの弾が大きく外れた。
「こいつ、俺より素人なんじゃないか?」
「なんだよ。思い切りの悪いパイロットだな」
ロロはバズーカを構えた。
照準の先に敵機。
だが――。
その中には人間がいた。
指が止まる。
「…………」
思い切って撃つ。
――ドン!
砲弾は大きく逸れ、遠くの砂地で爆発した。
ニールの口元が緩んだ。
「……俺の方が、できるじゃないか」
そこへ――。
「おーーい、ロロォ! 何やってやがる!」
聞き覚えのある声。
「えっ、ジュドさん!?」
ロロが下を見る。
ジュドと朱麗が走ってくる。
その瞬間、敵の砲弾が二人へ向かった。
「危ない!」
ロロは反射的にコクピットの中へ身を伏せた。
その一瞬――。
――スパァン!
――ドカァン!!
砲弾が空中で炸裂した。
朱麗が、大剣で斬ったのだ。
「おいおいおい……あん時アイツと、本気でやり合わなくてよかったぜ」
ジュドが冷や汗で呟いた。
爆発で煙が立ち込める。
ニールからジェガンの姿が見えなくなった。
「……やったか?」
ニールが慎重に近づく。
その煙の中――。
「嬢ちゃん!」
「ジュドさん!?」
「代われ!」
「え?」
「いいから早くしろ!」
ロロが慌ててコクピットから降りる。
入れ替わるようにジュドが飛び込んだ。
「朱麗! 嬢ちゃん頼んだぞ!」
「ああ」
朱麗がロロを連れて離れる。
やがて煙が晴れた。
ジェガンが立っている。
「まだ生きてたのか!」
ニールが突っ込んだ。
勝てる。
そのはずだった。
次の瞬間――。
ジェガンが消えた。
「え?」
気づいたときには懐へ入られていた。
「な――」
ニールの武器を奪い振るった。
――ズバン!
頭部が飛んだ。
続けて脚部。
――ズバン!
――ズバン!
黄色い機体が崩れ落ちる。
胴体だけを残して、砂地へ転がった。
コクピットは無傷だった。
「…………」
ニールは何が起きたのか分からなかった。
ジェガンの中で、ジュドが鼻を鳴らす。
「……まあ、嬢ちゃんのこともあるしな」
倒れた機体を見下ろす。
「今回は見逃してやるよ」
そして残るイエロースーツへ向かって走り去った。
静かになった。
ニールは恐る恐るハッチを開けた。
「……助かった……?」
外へ身体を出す。
そこに――。
朱麗が立っていた。
大剣を手にしている。
「……え?」
朱麗はニールを見た。
「お前は、あの娘にとって災いの根となる」
「え……?」
大剣が動く。
「待っ――」
――スパン。
朱麗は剣を収めた。
そして何事もなかったように、ロロのところへ戻っていった。
「ロロさん」
「朱麗?」
「ここは危険だ。行こう」
「あ、うん」
ロロは朱麗についていった。
その頃――。
黒煙の立ち昇る砂漠の向こうから、十機のイエロースーツが迫っていた。
「へっ」
ジュドは笑っていた。
ジェガンを真正面から突っ込ませる。
――ガガガガガッ!
頭部バルカンが火を噴いた。
先頭の一機が砂地へ転がる。
「ひとつ!」
バズーカを構える。
――ドォン!
二機目が爆炎に包まれた。
「ふたーーつ!」
三機目が迫る。
ジュドはそのまま懐へ飛び込んだ。
「おらぁ!」
ジェガンの拳が敵機の頭部をぶち抜く。
「みっつぅ!」
四機目が武器を振り上げた。
その腕を掴む。
「こいつ、借りるぜ!」
強引に武器を奪い――。
――ズバン!
そのまま叩き伏せる。
「よおおっつ!」
さらに奪った武器を振りかぶる。
「ほらよ!」
投げる。
――ズドン!
武器が五機目へ突き刺さった。
「いつつ!」
残る五機のイエロースーツが足を止めた。
「な、なんだよ……こいつ……」
「こんなのに勝てるわけねえ!」
たった一機、旧式のジェガン相手のはずが、仲間の半数が倒されている。
「ば、化け物かよ……!」
ジュドは次の一機へバズーカを向けた。
「へっ!ななああつ!!」
引き金を引く。
――カチッ。
「……ちっ。弾切れかよ。しょおがねえなあ」
ジュドは例のスイッチへ指を伸ばした。
(ジュドさん、このボタンは最終兵器なんだよ。モビルスーツが動けなくなるぐらいのエネルギーだから、どうしてもって時に使うんだぞ)
ロロがかわいらしくウィンクした言葉を思い出す。
「どれほどの威力か、見せてもらおうじゃねえか」
ジュドがどす黒く笑った。
「いっくぜぇ!さいしゅうへいき!!!」
――ポチッ。
『自爆シーケンスを開始します』
「…………は?」
残る五機のイエロースーツも、一瞬動きを止めた。
「……え?」
「は?」
次の瞬間――。
――ドッカァァァァァン!!
ジェガンを中心に凄まじい爆発が巻き起こり、残る五機のイエロースーツをまとめて呑み込んだ。
爆煙の中から、一つの物体が飛び出した。
機体から緊急分離されたコクピットポッドだった。
黒煙を引きながら空を飛び――。
町へ向かって落ちていく。
「……ん?」
ロロが空を見上げた。
朱麗も足を止める。
何かがこちらへ落ちてくる。
――ボスッ!
二人の目の前の砂地へ、コクピットポッドが突き刺さった。
「……何かね、これ」
ロロが首を傾げる。
「もしかして……」
――パカッ。
ハッチが開いた。
「あっ…………」
煤だらけのジュドが、ふてくされた顔で這い出してくる。
「あっ!」
ロロの顔が明るくなった。
「無事だったんですね、ジュドさん!」
「…………」
「よかったぁ」
「……お前なあ!」
ジュドのこめかみが、ぴくりと動いた。
やがて――。
夕日が砂漠を赤く染めていた。
その中を、ロロ、朱麗、そして煤だらけのジュドが歩いていく。
「……俺の機体が……」
ジュドが、がっくりと肩を落とす。
「でも勝ててよかったじゃん」
「そういう問題じゃねえ!」
ジュドが振り返った。
「いったい、あのジェガンにいくらつぎ込んだと思ってんだ!」
「でも、そんなにかかってないじゃん。ほとんどジャンクだし」
「ジャンクでも金は金だ!」
「でも最終兵器、ちゃんと役に立ったでしょ?」
「自爆じゃねえか!!」
「だから最後の最後まで押しちゃダメって言ったでしょ!」
「意味が違うだろうがぁぁぁ!!」
二人の声が、夕暮れの砂漠に響いていた。
その少し後ろを歩きながら、朱麗は二人のやり取りを眺めていた。
そして――。
ほんの少しだけ、笑った。
三人の影が、夕日の中へ長く伸びていった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
今回から、ロロ、ジュド、朱麗の三人旅が始まりました。
そして「炎虎のジュド」も本領発揮。
……したはずなのですが、最後はあんなことになってしまいました(笑)。
一応、ロロの言った「最終兵器」は嘘ではありません。
敵はちゃんと全滅しましたので。
ジュドと朱麗。
二人ともロロを守ろうとしていますが、その考え方や方法はかなり違うようです。
そしてロロの技術力にも、新たな人物が興味を持ち始めました。
三人の旅は、ここからさらに大きく動き始めます。
次回もよろしくお願いいたします。