GUNDAM TRIANGLE   作:カンキ

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 いつも『GUNDAM TRIANGLE』をお読みいただき、本当にありがとうございます。

 第41話「赤く光る秘石」をお届けします。

 前回は、夜の小道で思いがけない出来事が起こり、「つづく」で幕を閉じました。あの続きを、ずっと気にかけてくださっていた方も多いと思います。お待たせいたしました。

 今回は、少し賑やかな回になりました。

 見慣れたはずの顔が、いつもと違う表情を見せる。
 周りの人たちは、戸惑ったり、首をかしげたり、あるいは、なぜか嬉しくなってしまったり。同じ一人を前にして、それぞれが受け取るものはまったく違います。その違いを楽しみながら書きました。

 また、前回から登場した新しい仕組みにも、引き続き光を当てています。
 うまく動ける人もいれば、どうしても思うように動けない人もいる。その差がどこから生まれるのか。作者自身、書きながら「なるほど」と思わされた場面がありました。

 賑やかな広場の真ん中で、思わぬ勝負も始まります。
 誰と誰が、どんなふうに向き合うのか。

 詳しい中身は、あえて伏せておきます。ぜひ本編でお確かめください。

 それでは、第41話をお楽しみください。



第41話 赤く光る秘石

 

 

 

 残った男たちが、じりじりと後ずさった。

 

 ミリアが一歩出る。

 一人が舌打ちし、サキを突き放した。

 

「退くぞ!」

 

 男たちは、倒れた仲間を残して走り去った。

 ミリアは足音が遠ざかるまで、その先を見ていた。

 

 ――私、シュウ兄と、燃えている家の中にいたはず……。

 

 頭上で、梁が崩れた。

 シュウ兄が、「ミリア!」と叫んでいた。

 

 そこから先は、覚えていない。

 

 ミリアは、見知らぬ小道を見回した。

 どうして、こんなところにいるのだろう。

 

「……ロロさん、ですよね?」

 

「え?」

 

 はっと顔を向ける。

 助けた少女が、不安そうにこちらを見ていた。

 

「ロロって……私のこと?」

 

 少女が頷いた。

 

 ――ミリア。

 

 ペペ爺の声が、頭をよぎった。

 

「知らぬ相手が親しげに話しかけてきても、すぐに気を許すでないぞ。こちらを知っておるからといって、味方とは限らん」

 

「まず相手の話を聞け。尋ねるのは、少しずつじゃ」

 

 ミリアは、少女の顔を見た。

 

 ――この子は、私を知っている。でも、私は、この子を知らない。

 

「……あなた、怪我はない?」

「私は、大丈夫です。でも、リュネが……」

 

 少女の視線が、石壁の下へ向いた。

 

 サキが、リュネのそばへ膝をついていた。

 呼びかけると、リュネは顔をしかめながら目を開けた。

 

「動ける?」

 

 ミリアがしゃがむ。

 リュネは腕をついて起きようとしたが、途中で息を詰まらせた。

 

「無理しなくていいよ。誰か呼べる?」

「はい。すぐに――」

 

「セラ!」

 

 小道の向こうから、足音が近づいてきた。

 サルガと朱麗が、灯りを持った戦士たちを連れて走ってくる。

 

「兄さん! リュネが、怪我を!」

 

 サルガはそばへ来ると、周囲を見渡した。

 

「クガナ、彼女を頼む。倒れている男たちの武器を取り上げろ。見張りも残せ」

 

 戦士たちが動き出す。

 クガナがリュネへ声をかけ、体を支えた。

 

「ロロ、怪我はないか」

 

 朱麗が、ミリアの腕に手をかけた。

 

 ――この人、ロロとは随分親しいらしい。

 

 ミリアは、するりと腕を引いた。

 

「女の子の腕を、そう気安く掴むものじゃないわよ」

 

 軽くたしなめるように言って、相手の顔を見る。

 

 ドモンは、空になった自分の手を見た。

 

 ――今の抜き方……。

 

『師匠……?』

 

 内側の朱麗が尋ねた。

 ドモンは答えず、ミリアへ目を戻した。

 

「ロロ。お前は、どこか打ったのか」

 

 サルガも、心配そうに顔を覗き込んできた。

 

「平気よ」

「……いつもと様子が違うぞ」

「襲われたばかりなんだけど?」

 

 サルガは、一度口を閉じた。

 

「……そうか。すまん」

 

 ミリアは、セラへ顔を向けた。

 

「とりあえず、ここは危ないから。みんな、行くよ。セラちゃんも」

 

 セラが、少し目を見開いた。

 けれど、すぐに頷く。

 

「はい。神殿へ戻りましょう」

「聞いたな。先の道も確かめろ」

 

 サルガの声に、マウノが灯りを掲げた。

 

 ミリアは、歩き出すセラたちについていった。

 その少し後ろを、朱麗が黙って歩いていた。

 

 

     ◇

 

 

 神殿の一室へ入ると、すぐにリュネの手当てが始まった。

 

 セラは世話係に布と水を頼み、サルガは入口で戦士たちから報告を受けている。

 人が出入りするたびに、ミリアはそちらへ目を向けた。

 

「ロロさんも、座っていてください」

 

 セラが椅子を指した。

 

「ありがとう」

 

 ミリアは腰を下ろした。

 隣では、サキが濡らした布を手首に当てている。

 

「そっちも、痛そうね」

「少しひねられただけです。助けてくださって、ありがとうございました」

 

 ミリアは頷き、部屋の中へ目を向けた。

 戦士が一人、セラへ頭を下げて出ていく。

 

「ねえ」

 

 ミリアは、サキへ少し身を寄せた。

 

「セラちゃんって、偉い人なの?」

 

 サキの手が止まった。

 

「……女王様ですよ」

「へえ。そりゃ、狙われるわけだ」

 

 サキの顔を見て、ミリアは口を閉じた。

 

 ――今のは、まずかったかな。

 

 サキは少し間を置き、布を手首へ戻した。

 

「セラ様のことでしたら、何か気になりますか」

「ううん。今は、いい」

 

 ミリアは椅子へ座り直した。

 

 二人の近くに立っていた朱麗には、会話が聞こえていた。

 

『師匠、どうしたんです?』

 

 ――いや、何でもない。

 

 ドモンは、ミリアを見た。

 彼女も、こちらを見ていた。

 

 目が合うと、ミリアは小さく笑った。

 ドモンが目を逸らすまで、その視線は動かなかった。

 

 

     ◇

 

 

 リュネの手当てが終わる頃には、部屋を出入りする者も少なくなっていた。

 

「今夜は、こちらで休ませてもらいなさい。ラセル様には私から伝えます」

 

 サキが言うと、リュネは寝台の上から頷いた。

 サルガは戦士を入口に残し、外の見回りへ向かった。

 

「ロロさんも、お休みになってください。お部屋をご用意します」

「うん。案内してくれる?」

「はい」

 

 セラが立ち上がる。

 ミリアも続こうとしたところで、朱麗に呼び止められた。

 

「ロロ。少し、いいか」

 

 ミリアは振り返った。

 さっき腕を掴んできた男が、こちらを見ている。

 

「では、廊下でお待ちしていますね」

 

 セラが部屋を出ていった。

 ミリアは、開いた扉を一度見てから、朱麗へ顔を戻した。

 

「何?」

「さっきの身のこなし、どこで覚えた」

 

 ミリアは、少し首を傾けた。

 

「助かった女の子より、そっちが気になるの?」

「ああ。気になる」

 

 ミリアは、まばたきを一つした。

 

 言い訳も、取り繕う言葉もなかった。

 朱麗は、答えを待っている。

 

 ミリアは、ふっと笑った。

 

「……正直な人ね」

 

 それだけ言って、背を向けた。

 

「おやすみ」

 

 朱麗の返事を待たず、扉へ向かう。

 

「セラちゃん、待たせたね」

「もう、お話はよろしいのですか?」

「うん。行こう」

 

 二人の足音が、廊下を遠ざかっていった。

 

『師匠……?』

 

 ドモンは、開いたままの扉を見ていた。

 

 ――明日、もう一度話す。

 

 

     ◇

 

 

「ここを広げるなら、隣の空き地まで使えます」

 

 翌朝、ラセルが連れてきたのは、港の作業場の裏手だった。

 セラが建物を見上げ、イーノは外壁に沿って歩いている。

 

「機体を出し入れする場所は、こっちがいいかな。今の入口だと、すれ違えないから」

「では、こちらの壁を広げる案ですね」

 

 ラセルが紙に線を引いた。

 その向こうに、モンドたちの機体が並んでいる。

 

「ロロさん。昨夜の図面も、見せていただけますか」

 

 セラに声をかけられ、ミリアは振り返った。

 

「図面?」

 

 ――ああ。そういう約束もしていたのね。

 

「あはは、ごめん。昨夜は寝ちゃって」

「そうでしたか。無理もありませんね」

 

 セラはそれ以上、聞かなかった。

 ミリアは皆の持つ紙へ目を落としてから、作業場の方へ顔を向けた。

 

 あちらにも、こちらにも、知らない顔がいる。

 昨夜の男も、少し離れた場所に立っていた。

 

「ロロ。俺の方も、動かしてみるぞ」

 

 サルガがジムの足場から声をかけた。

 ミリアが返事をする前に、隣でラセルが顔を上げる。

 

「その前に、私にも試させてください」

 

 ラセルは紙をセラへ預け、残るヘッドギアを手に取った。

 

 

     ◇

 

 

 イーノが、ジェガンの接続を確かめていた。

 足場の下で、エルが腕を組んで見上げている。

 

「無理しなくていいからね。変だと思ったら、すぐ止めて」

 

 エルが声をかけた。

 

「分かっています。右足を出すなら、右足を動かせばいいんですよね」

「はい。最初は、一歩だけにしましょう」

 

 ラセルは、ヘッドギアの位置を直した。

 

 前に進むには、操縦桿を――。

 いや、自分の足を出すんだった。

 

 ジェガンの膝が、不意に曲がった。

 

「あっ」

 

 伸ばしかけた腕が止まり、今度は上体だけが後ろへ反る。

 エルが、思わず一歩前へ出た。

 

「ちょっと! 倒さないでよ!」

「倒すつもりはありません!」

 

 ラセルは両足を踏ん張った。

 ジェガンも、脚を開いたまま止まる。

 

「……なぜ、こうなるんです」

 

 イーノが端末を見た。

 

「いつも歩くときと、同じでいいんですよ」

「分かっているんですが、つい……」

 

 ラセルが息をつく。

 隣で、ジムが動き始めた。

 

 サルガのジムが、広場の端に積まれた鉄骨を一本持ち上げた。

 腰を落とし、剣のように構える。

 

「もう慣れたもんだな」

 

 モンドが、感心したように言った。

 

 ミリアは顔を上げた。

 ジムが踏み込んだ。

 巨大な鉄骨が風を裂き、地面すれすれでぴたりと止まる。

 返す一撃が横へ走り、引いた足が、もう次の構えを作っていた。

 

 ミリアは、ジムの動きを目で追っていた。

 操縦席で動かしているはずなのに、まるで人が剣を振っているようだった。

 

「ねえ。どうして、あんなに人間みたいに動けるの?」

 

 イーノが、端末から顔を上げた。

 

「操縦桿を使わないんだ。頭や体の動きに、機体がついてくるようになってる」

「へえ。それ、すごいね」

 

 イーノは、思わずミリアの顔を見た。

 

 ――作ったのは、ロロなのに。

 

 口を開きかけたときには、ミリアはもう、足を止めた機体へ近づいていた。

 

「ねえ。今の、あなたが動かしてるの?」

「そうだが」

「ちょっと降りてきてよ」

 

 サルガのジムが止まった。

 

「何かあったのか」

「降りてきて、私と試合してみない?」

 

 モンドが、ミリアへ顔を向けた。

 

「……相手してってことか?」

「うん。さっきの動き、いいなと思って」

 

 足場へ戻ってきたサルガは、ヘッドギアを外すと、急いで降りてきた。

 

「昨日、襲われたばかりだろう。怪我はないのか」

「だから、平気だってば。相手してよ」

「いや、しかし――」

 

「おいおい、そいつで相手する気かよ」

 

 モンドが、サルガの腰へ目を向けた。

 作業場へ引っ込むと、稽古用の木剣を二本持ってくる。

 

「ほら。やるなら、こっちだ」

 

 ミリアが、先に一本を取った。

 軽く振り、握り具合を確かめる。

 

「いいじゃない。これでやろうよ」

「お前ら、煽るな」

 

 サルガは渋い顔をしたが、もう一本を受け取った。

 

「おい、ロロ。本気か? 無茶すんなよ」

 

 ジュドが、心配そうに声をかけた。

 

「平気よ。軽くやるだけだから」

 

 ジュドは眉をひそめたまま、サルガへ目を向けた。

 クガナは何も言わず、皆を少し後ろへ下がらせる。そのまま、自分も見物の位置に立った。

 

「クガナ」

「はい。周りは空きましたよ」

 

 サルガは、口を閉じた。

 

 

     ◇

 

 

 ミリアは木剣を下げたまま、サルガを見ていた。

 

「構えないの?」

「ああ。いつでもいい」

 

 ミリアが動いた。

 

 木剣が、サルガの肩へ走る。

 サルガは受け止め、押し返す力を途中で緩めた。

 

 ミリアの目が、細くなる。

 

「……手加減してるでしょ」

「怪我をさせるわけにはいかん」

「当ててから言いなさいよ」

 

 踏み込む。

 サルガの木剣が横へ動いた。

 

 ミリアは刃を合わせず、その下へ潜った。

 前へ出ていた足を払い、柄を握る手首へ左手を伸ばす。

 

 サルガの足が、さっと引かれた。

 手首を返してミリアの指を外し、木剣の柄で、その腕を押し止める。

 

 足払いを空振りしたミリアの体が、横へ流れた。

 

 サルガの手が、背へ回った。

 倒れかけた体を支え、踏みとどまらせる。

 

 ミリアは顔を上げた。

 サルガの方が、驚いた顔をしていた。

 

「……できるじゃない」

「だから、無理をするなと言っただろう」

 

 ミリアは体を起こし、木剣を持ち直した。

 

「今の、もう一回」

 

「まだやるのかよ!」

 

 モンドが声を上げた。

 ミリアはもう、サルガとの間合いを取り直している。

 

 今度は、サルガも足を引いた。

 木剣の先が、ミリアを追う。

 

 打ち合う乾いた音が、続けて響いた。

 

 

     ◇

 

 

 ラセルは、操縦席から人の輪を見下ろしていた。

 兄の木剣を、ロロが身をひねってかわしている。

 

 膝の上のヘッドギアへ目を落とした。

 もう一度、かぶり直す。

 

「イーノさん」

「はい」

 

 足場には、イーノが残っていた。

 

「……兄上みたいな運動馬鹿の方が、向いているわけですか」

 

 イーノは、ちょっと困ったように笑った。

 

「サルガ様は、操縦の仕方を知らないから。自分の体を動かしているだけなんだと思います」

「私は、少しかじった操縦の知識が、かえって邪魔になっている……と」

「はい。機械を動かすことばかり、考えてしまうんじゃないでしょうか」

 

 ラセルは、眼下の兄へ目をやった。

 それから、ヘッドギアの位置を直す。

 

「……もう一度、お願いします」

 

 

     ◇

 

 

 サルガが木剣を止めた。

 

「ロロ。息が上がっているぞ」

「これくらい、平気……」

 

 ミリアは、続きの言葉を飲み込んだ。

 握っていた指を、一度開く。

 

 ――こんなに、疲れたっけ。

 

 息を整えるつもりが、肩が大きく上下した。

 サルガは打ち込まず、こちらを待っている。

 

 ミリアは、木剣を下ろした。

 

「……今日は、ここまでにしてあげる」

「お前が言うのか」

 

 モンドが吹き出した。

 ジュドも、声を上げて笑っている。

 

「続きは、また今度ね」

 

 ミリアは木剣をモンドへ返した。

 サルガが何か言う前に、人の輪から抜け出す。

 

 サルガは、その背中を目で追っていた。

 

 ――あんな顔も、するのか。

 

「顔が緩んでますよ」

 

 いつの間にか、クガナが隣にいた。

 

「……緩んでなどおらん」

「鼻の下が伸びてるだけですよね」

 

 反対側から、マウノが口を添えた。

 

 セラが、水筒を差し出した。

 

「無理はなさらないでくださいね」

「……ありがとう」

 

 ミリアは水を飲んだ。

 その向こうで、ジェガンが一歩、前へ進む。

 

「あら。動いてる」

 

 セラの顔が、ぱっと明るくなった。

 操縦席へ向かって手を振ると、ラセルが片手を上げた。

 機体の手も上がり、少し遅れて、慌てたように下がった。

 

 ミリアの隣へ、朱麗が来た。

 

「肩に、力が入りすぎだ」

 

 水筒から口を離し、ミリアは朱麗を見た。

 

「見てたの?」

「ああ。自分が思ってるほど、体は動いてくれないものだ」

 

 ミリアは、昨夜と同じように首を傾けた。

 自分では気づいていなかったが、その時初めて素直に笑えた。

 

「全く、その通りだわ」

 

 ミリアは、水筒をセラへ返した。

 

 

                         (つづく)




第41話「赤く光る秘石」、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 今回は、トライアングルペンダントが赤く光り、ロロの中から現れた少女――ミリアが主役の回でした。

 ミリアの記憶は、燃える家の中で、シュウ兄に名前を呼ばれたところで止まっています。本人にとっては、眠って目が覚めたら、見知らぬ場所に立っていたようなものです。
 それでも彼女は、慌てて誰かにすがったりはしません。
 「知らぬ相手が親しげに話しかけてきても、すぐに気を許すでないぞ」
 ペペ爺の教えを思い出し、相手の話を聞きながら、少しずつ様子を探っていく。気さくで、強気で、けれど人を簡単には信じない。そんなミリアの姿を、楽しんでいただけたなら嬉しいです。

 もっとも、うまく取り繕えたとは限りません。
 サキに「セラちゃんって、偉い人なの?」と尋ねてしまったり、図面のことを聞かれて「昨夜は寝ちゃって」とごまかしたり。モビルスーツの仕組みに「それ、すごいね」と感心して、作った本人のはずなのにと、イーノを困惑させたり。
 周りの人たちが、少しずつ「何かが違う」と気づき始めています。

 そして、今回いちばん描きたかったのが、サルガとの手合わせです。

 ジムで鉄骨を振るうサルガを見て、目を輝かせたミリア。
 「降りてきて、私と試合してみない?」
 好きな相手から突然そう言われたサルガの戸惑いは、いかばかりだったでしょうか(笑)。

 最初は怪我をさせまいと手加減していたサルガも、懐へ潜り込まれた瞬間、戦士としての体が先に動いてしまいました。それでも、崩れたミリアを、とっさに支えてしまう。戦う腕と、大切に思う気持ちが、同じ一つの動きの中にある。サルガらしい場面になったと思います。
 「当ててから言いなさいよ」
 「お前が言うのか」
 二人のやり取りも含めて、楽しんでいただけたなら幸いです。手合わせのあと、クガナとマウノに挟まれたサルガには、少し同情してしまいますが。

 一方で、ラセルはヘッドギアに苦戦しました。
 機械の知識を少しかじっていたことが、かえって邪魔になる。何も知らない兄の方が、体を素直に動かせる。
 「……兄上みたいな運動馬鹿の方が、向いているわけですか」
 皮肉まじりのひと言ですが、その奥にある悔しさも感じていただけたらと思います。皆が手合わせに夢中になる中、一人でもう一度ヘッドギアをかぶり直したラセル。ジェガンが踏み出した一歩は、小さくても、彼にとって大きな一歩でした。

 そして、最後の場面。

 「肩に、力が入りすぎだ」
 「自分が思ってるほど、体は動いてくれないものだ」

 朱麗の何気ない言葉に、ミリアは、この日初めて素直に笑いました。
 昔の感覚のまま動こうとして、思うように動かない体に戸惑うミリア。そして、ドモンもまた、自分のものではない体で戦っています。同じ言葉が、言った側にも、言われた側にも、それぞれの重さで響いている。そんな場面になっていれば嬉しいです。

 題名の「赤く光る秘石」は、ミリアを呼び覚ましたトライアングルペンダントから取りました。あの小さな石の中には、まだ誰も知らない秘密が眠っています。

 昨夜の身のこなしを見て、何かを感じ取ったドモン。
 ミリアとの「明日、もう一度話す」は、まだ終わっていません。
 そして、捕らわれたままのサラサは――。

 次回も、どうぞよろしくお願いいたします。
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