GUNDAM TRIANGLE   作:カンキ

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 いつも『GUNDAM TRIANGLE』をお読みいただき、本当にありがとうございます。

 第48話「白き魔女」をお届けします。

 前回は、小惑星帯の岩陰に潜む艦隊と、シュウたちの出会いを描きました。少し短めの回でしたが、たくさんの方に読んでいただき、とても嬉しかったです。

 今回は、その続きです。
 補給を受けたら、すぐに立ち去る。そう約束したシュウたちでしたが、岩陰の静けさは長くは続きませんでした。

 前回、静かにお茶を運んでいたあの人にも、出番があります。
 どんな姿を見せるのか、ぜひ楽しみにしていてください。

 詳しい中身は、あえて伏せておきます。ぜひ本編でお確かめください。

 それでは、第48話をお楽しみください。



第48話 白き魔女

 

 

 

 ゼネラル・レビルの通信室は、灯りが落とされていた。

 

 当直の兵が、通路の向こうで欠伸をしている。

 その足音が遠ざかるのを待って、男は扉を閉めた。

 

 連邦の制服の袖口が、計器の光を受けて白く浮かんだ。

 

 男は、手元の端末を回線へつないだ。

 指が、一度だけ止まる。

 それから、短い文を打ち込んだ。

 

 ――こちらゼネラル・レビル乗員。艦は賊に奪われ、小惑星帯を航行中。

 ――現在位置、別送。

 ――付近にネオ・ジオン残党と思われる艦隊あり。サダラーン級一、ムサイ級二。

 ――至急、合流を請う。

 

 送信の表示が灯り、すぐに消えた。

 

 男は端末を外し、袖の中へしまった。

 扉の外を確かめ、何事もなかったように通路へ出る。

 

 遠くで、当直の兵の足音が戻ってきた。

 

 

     ◇

 

 

 翌朝、レビルの格納庫は人であふれていた。

 

 サダラーンから運ばれてきた荷が、次々と下ろされていく。

 弾薬の詰まった箱。食料の袋。医薬品の包み。

 

「そいつは医務室だ! 落とすなよ!」

 

 ガランの声が、格納庫に響いた。

 整備員たちが、木箱を抱えて走っていく。

 

 その奥で、ヨハネス博士が向こうの技術者と端末を覗き込んでいた。

 

「この規格なら、こちらの部品で代わりが利きます」

「ほう。古い型を、よくここまで残しておられる」

「直して使うほかに、手がありませんでしたので」

 

 格納庫の入口に、通信の男が立っていた。

 ミネバの側近だった。

 兵を二人連れ、積み上げられた荷と、並んだ機体を一つずつ見ていく。

 

 ナナイが、端末を手に迎えに出た。

 

「何か、ご不審な点がございますか」

「見て回るよう、言いつかっている」

 

 男は、ヤザンの黒い機体の前で足を止めた。

 次に、ガランの鉄嵐。ミランダの迅雷。金色の百式改。

 

「……数は、少ないな」

「先日の戦いで、多くを失いましたので」

 

 男は、それ以上は聞かなかった。

 しばらく格納庫を見渡してから、ナナイへ向き直った。

 

「分かった。荷の受け渡しは、このまま続けてくれ」

「ありがとうございます」

 

 男が去っていく。

 

 ヤザンが、整備台の上から声をかけた。

 

「なんだ、ありゃ。値踏みに来たのか」

「当然のことです。私たちは、まだお客ですから」

 

 ナナイは、端末に目を戻した。

 

 

     ◇

 

 

 昼過ぎ、シュウとクワトロは、再びサダラーンへ呼ばれた。

 

 謁見の間ではなく、小さな執務室だった。

 卓の向こうにミネバが座り、その後ろに、ハマーンが控えている。

 

 クワトロは、そちらを見なかった。

 

「補給は、三日で済む」

 

 ミネバが言った。

 

「整備の場も、その間なら貸そう。済み次第、この宙域から立ち去ってもらいたい」

 

 シュウは、頷いた。

 

「そのつもりだ。これ以上、そちらに迷惑はかけられん」

「話が早くて助かる」

 

 ミネバは、卓の上で手を組んだ。

 

「そなたらを疑っているわけではない。だが、ここには家族を連れた者もいる。連邦の目を引くものは、一日でも早く遠ざけたいのだ」

「分かっている」

 

 ハマーンが、二人の前へ茶を置いた。

 今日も、指先が少しだけ震えていた。

 

「ありがとう」

 

 クワトロが言うと、ハマーンは小さく頭を下げた。

 

 そのとき、執務室の扉が開いた。

 

「ミネバ様!」

 

 側近の男だった。

 息が、上がっていた。

 

「哨戒中のギラ・ドーガから緊急通報です。連邦の艦隊が、この宙域へ」

 

 ミネバが、立ち上がった。

 

「数は」

「確認できただけで、巡洋艦が二。……レビルの方角から来ます」

 

 シュウが、席を蹴った。

 

「クワトロ」

「ああ」

 

 二人が扉へ向かう。

 その背に、ミネバの声が飛んだ。

 

「そなたら」

 

 シュウが、振り返った。

 

「……話は、あとだ。まず、自分の艦を守れ」

 

 ミネバの目は、もうシュウを見ていなかった。

 壁の画面へ向き、側近へ次々と命令を出し始めていた。

 

 

     ◇

 

 

「全機、発進! レビルの砲を回せ!」

 

 ナナイの声が、艦橋に響いた。

 

 連絡艇がレビルの格納口へ滑り込む。

 シュウは艇を飛び降りるなり、艦橋へ走った。肩の傷が、一歩ごとに疼いた。

 

「状況は」

「連邦の巡洋艦二隻、正面から接近中。モビルスーツ、十機以上」

 

 艦橋へ入ったシュウに、ナナイが振り返らずに答えた。

 

「狙いは、この艦です。取り戻しに来たのでしょう」

「連邦の操舵手は」

「見張りをつけて、別室へ移しました。操艦は、こちらの者で」

 

 画面の中で、光の粒が広がっていく。

 ジェガンと、ヘビーガン。見慣れた連邦の機体だった。

 

「ヤザン、出るぜ!」

 

 黒い機体が、格納口から飛び出した。

 鉄嵐と迅雷が続く。

 最後に、金色の百式改が宙へ出た。

 

「大将は、そこで見てな! 乗る機体もねえんだからよ!」

「言われなくても、そうする」

 

 シュウは、艦長席の横へ立った。

 腰を下ろすことはしなかった。

 

「主砲、左の巡洋艦へ。機体は、艦に近づけるな」

 

 

     *

 

 

 鉄嵐の両腕から、弾の雨が走った。

 

 突っ込んできたジェガンが、盾ごと弾かれて回る。

 その隙へ、迅雷が滑り込んだ。

 赤熱した刃が、ジェガンの腕を肩から落とした。

 

「一機!」

「数えてる場合か、次が来るぞ!」

 

 ガランの声に、ミランダが機体をひねる。

 ヘビーガンのビームが、さっきまで迅雷のいた場所を焼いた。

 

 ヤザンの黒い機体は、敵の群れの真ん中にいた。

 海蛇の鞭がうねり、二機のジェガンをまとめて絡め取る。

 

「連邦さんよ。取り返しに来たんなら、もう少し数を連れてこいや!」

 

 電撃が走った。

 絡め取られた二機が、火花を散らして動きを止めた。

 

 百式改は、艦の前にいた。

 レビルへ抜けようとする機体だけを、正確に撃ち抜いていく。

 

 ――妙だ。

 

 クワトロは、敵の動きを見ていた。

 

 正面の二隻は、前へ出てこない。

 機体も、レビルを本気で落としに来ているようには見えなかった。

 こちらを、ここへ縫いとめようとしている。

 

「シュウ」

 

 クワトロは、艦橋への回線を開いた。

 

「この連中、足止めだ。本命は、ほかにいる」

 

 その言葉が終わる前に、別の回線が割り込んだ。

 

「――サダラーンより各艦! 岩陰から連邦艦、三! 本艦へ向かってくる!」

 

 側近の男の声だった。

 その後ろで、何かが爆ぜる音がした。

 

 

     ◇

 

 

 サダラーンの艦橋が、大きく揺れた。

 

「右舷に被弾!」

「ギラ・ドーガ三番機、四番機、応答なし!」

 

 ミネバは、艦長席の前に立っていた。

 手すりを握る指が、白くなっていた。

 

 画面には、岩陰から現れた三隻の艦が映っている。

 そこから吐き出されたモビルスーツが、こちらのギラ・ドーガを押し包んでいた。

 

 数が、違った。

 

「ムサイ二番艦、後退します!」

「後ろには、岩の居住区がある。下がらせるな」

 

 ミネバの声は、震えていなかった。

 けれど、側近の男は、その横顔を見て口を閉じた。

 

 ミネバは、振り返った。

 

 艦橋の入口に、ハマーンが立っていた。

 両手を胸の前で握り、画面を見つめている。

 

「ハマーン」

 

 ハマーンの肩が、小さく跳ねた。

 

 ミネバは、一瞬だけ言葉を探した。

 この先に何が起きるかを、知っている顔だった。

 

「やれるか」

 

 艦橋が、静かになった。

 

 ハマーンは、ミネバを見た。

 それから、画面の中で押し込まれていくギラ・ドーガを見た。

 その向こうの、岩の居住区の灯りを見た。

 

 握っていた手が、ほどけた。

 

「はい」

 

 細い声だった。

 それでも、まっすぐだった。

 

「ミネバ様のためならば」

 

 

     *

 

 

 サダラーンの奥の格納庫で、整備台の拘束が外れた。

 

 白と灰色の機体だった。

 

 大きく張り出した肩。

 細く絞られた腰。

 そして、肘から先の、異様に大きな手。骨のように長い指が、ゆっくりと開いて、閉じた。

 

 キュベレイダムド。

 

 操縦席で、ハマーンは操縦桿を握っていた。

 手のひらが、汗で湿っていた。

 

「……怖い」

 

 誰にも聞こえない声で、そう言った。

 

 計器が、次々と灯っていく。

 ハマーンは、一つずつ表示を確かめた。

 

 最後の表示が灯ったとき、指の震えが止まった。

 

 伏せていた目が、ゆっくりと上がる。

 さっきまでの怯えは、どこにもなかった。

 

「……ふん」

 

 唇の端が、わずかに吊り上がった。

 

「ハマーン。キュベレイダムド、出る」

 

 白い機体が、宙へ出た。

 

 

     *

 

 

 ジェガンが二機、サダラーンの艦橋へ迫っていた。

 

 ギラ・ドーガが一機、その前へ割り込もうとして、肩を撃ち抜かれて弾き飛ばされる。

 

 白い影が、その間へ入った。

 

「キュベレイ……!?」

 

 ジェガンの乗り手が叫んだ。

 ビームライフルの銃口が、白い機体へ向く。

 

 巨大な手が、その銃身をつかんだ。

 

 握り込む。

 銃身が、紙のように潰れた。

 そのまま腕を引き寄せ、もう片方の手が、ジェガンの胴をつかむ。

 

 装甲が、軋んだ。

 長い指が、ゆっくりと食い込んでいく。

 

「脆いな」

 

 ハマーンの声は、冷たかった。

 

「この程度で、ミネバ様の艦に近づこうとしたのか」

 

 指が、閉じた。

 ジェガンの胴が、内側へ潰れた。

 

 手を離す。

 動かなくなったジェガンが、ゆっくりと岩の方へ流れていった。

 

 もう一機のジェガンが、後ずさった。

 

 白い機体の背から、小さな影がいくつも飛び出した。

 

 ファンネルだった。

 

 光の線が、四方から走る。

 逃げようとしたジェガンの両腕と脚が、同時に撃ち抜かれた。

 

 レビルの艦橋で、シュウが息をのんだ。

 

 画面の端に、サダラーン側の戦いが映っていた。

 白い機体の周りを、小さな砲台が自在に飛び回っている。

 

「……あの動きは、クワトロ……」

 

 ナナイが、シュウを見つめた。

 シュウは、画面から目を離さなかった。

 

 

     *

 

 

 それでも、数は減らなかった。

 

 岩陰の三隻から、新しい機体が次々と出てくる。

 ギラ・ドーガは、一機、また一機と下がっていく。

 

 ダムドは、ムサイ二番艦の前にいた。

 

 その後ろに、居住区へ続く岩の入口がある。

 小艇が、慌てたように中へ逃げ込んでいくのが見えた。

 

 ヘビーガンが三機、同時に銃口を向けた。

 

 ハマーンは、逃げなかった。

 両腕を広げ、ムサイの前に立ちはだかった。

 

「この艦に、指一本触れさせるものかよ!」

 

 ヘビーガンのビームが、白い機体へ走った。

 

 ダムドは、避けなかった。

 ビームを、機体の正面でまともに受け止めた。

 

 装甲の表面で、ビームが弾けて散った。

 白い機体は、傷一つなく、そこに立っていた。

 

 ヘビーガンの乗り手たちが、動きを止めた。

 

 その一瞬に、ファンネルが三機の脚を撃ち抜いた。

 

 ハマーンの肩が、大きく上下していた。

 額に、汗が浮いている。

 

「まだだ……まだ、終わらせん」

 

 計器の端で、警告が灯った。

 ファンネルの充電が、尽きかけている。

 岩陰からは、まだ無数のモビルスーツが次々と出てきていた。

 

 

     ◇

 

 

「左の巡洋艦、機関部に命中!」

 

 レビルの艦橋に、歓声が上がった。

 

 画面の中で、連邦の巡洋艦が、ゆっくりと傾いていく。

 艦腹から脱出艇が次々と離れていった。

 

「残る一隻、後退していきます!」

「追うな」

 

 シュウが言った。

 

「全機、サダラーンへ回れ。本命は、あっちだ」

 

 ナナイが、操舵へ告げた。

 

「レビル、針路変更。サダラーンの援護へ」

 

「聞いたな、野郎ども!」

 

 ヤザンの声が、回線に響いた。

 

「お隣さんの家が燃えてるってよ。消しに行くぞ!」

 

 

     *

 

 

 最初に飛び込んだのは、金色の機体だった。

 

 ダムドの背後へ回り込もうとしたジェガンを、百式改のビームが貫いた。

 

 ハマーンが、振り返った。

 

 金色の機体が、白い機体の隣に並んでいた。

 

「誰だ。邪魔をするな!」

 

 回線から、鋭い声が飛んできた。

 

 クワトロの手が、一瞬止まった。

 

「味方だ」

 

「こちらも、サダラーンをやらせるわけにはいかないんだ。ここは、共に戦おう」

 

 短い舌打ちが、回線に混じった。

 

「……前衛を、任せたぞ」

 

 ダムドが、わずかに後ろへ下がった。

 その前へ、百式改が出る。

 

 その背後から、白い機体のファンネルが飛んだ。

 百式改の死角へ回り込もうとしたジェガンが、横から撃ち抜かれる。

 

 ――悪くない。

 

 クワトロは、照準を合わせた。

 

 その横を、黒い機体が駆け抜けていった。

 

「おらおら、どけどけ! お客様のお通りだ!」

 

 鉄嵐の弾幕が、岩陰の艦へ降り注ぐ。

 迅雷が、その陰から敵機の群れへ斬り込んでいく。

 レビルの主砲が、岩陰の一隻を捉えた。

 

 ミネバのギラ・ドーガ隊が、息を吹き返した。

 

 挟まれた形になった連邦の機体が、ばらばらに下がり始める。

 岩陰の三隻が、一隻、また一隻と、向きを変えた。

 

「連邦艦、後退していきます!」

 

 サダラーンの艦橋に、声が上がった。

 

 ミネバは、手すりから手を離した。

 指の跡が、くっきりと残っていた。

 

 

     ◇

 

 

 戦いが終わって、半日が過ぎた。

 

 レビルの格納庫には、傷ついた機体が並んでいた。

 整備員たちが、休む間もなく走り回っている。

 

 シュウは、格納庫の上の通路から、整備台を見下ろしていた。

 

「大将」

 

 ヤザンの声がした。

 

 振り返ると、ヤザンが一人の男の襟首をつかんで立っていた。

 連邦の制服を着た男だった。

 口の端が切れている。

 

「こいつだ。通信室の記録に、外への発信が残ってやがった」

 

 男は、顔を上げなかった。

 

「おまけに、ネオ・ジオンの艦隊のことまで、ご丁寧に知らせてくれてたぜ」

 

 シュウは、男の前へ歩いた。

 

「顔を上げろ」

 

 男が、ゆっくりと顔を上げた。

 怯えてはいなかった。

 

「……俺は、連邦の軍人だ」

「知っている」

 

 シュウは、男を見ていた。

 

「連邦にも、忠義を示す人間がいたんだと言いたいところだが、そうもいかない」

 

「君のおかげで、ここも甚大な被害を被ったんだ」

 

 シュウの後ろに立っていたクワトロが、静かに言った。

 

 シュウは、ヤザンへ顔を向けた。

 

「連れてこい。サダラーンへ行く」

 

 

     ◇

 

 

 シュウは、連れてきた男を卓の前に立たせた。

 

「この男が、連邦にこちらの位置を流した。そちらの艦隊のことも含めてだ」

 

 ミネバは、男を見た。

 男は、黙って立っていた。

 

 シュウは、言い訳をしなかった。

 

「こちら側の落ち度である以上、この男の身柄については、そちらに権利がある。好きに調べてもらって構わない」

 

 ミネバは、しばらく黙っていた。

 それから、側近へ目を向けた。

 

「連れていけ。手荒にはするな」

 

 兵が、男を連れていく。

 扉が閉まった。

 

「補給は、ほぼ済んだ。またこういうことが起きないとも限らない。俺たちは、ここをすぐに出る」

 

 シュウは、頭を下げた。

 

「世話になった」

 

 背を向けようとした、そのときだった。

 

「待て」

 

 ミネバの声だった。

 

 シュウが、振り返った。

 

 ミネバは、窓の外を見ていた。

 岩の間に、傷ついたムサイが浮かんでいる。

 その向こうで、壊れたギラ・ドーガが、作業艇に曳かれていた。

 

「今日、三機を失った」

 

 ミネバの声は、静かだった。

 

「兵はいるが、モビルスーツの数が圧倒的に足らぬ。そして、その操縦者もだ」

 

 ミネバは、シュウへ向き直った。

 

「そなたらが来なければ、ムサイが一隻沈んでいた。居住区も、無事では済まなかったであろう」

「俺たちが来たから、連邦も来た」

「それも分かっている」

 

 ミネバは、はっきりと言った。

 

「それでも、今日、私の艦隊を救ったのは、そなたらだ」

 

 部屋が、静かになった。

 

 クワトロが、ミネバを見ていた。

 

「シュウとやら」

 

 ミネバは、卓の上で手を重ねた。

 

「我らと、手を組まぬか」

 

 シュウは、すぐには答えなかった。

 

「そなたらには、帰る場所がない。我らには、戦える者が足りぬ。足りぬ者同士が、また別々に連邦から逃げ回るのは、愚かであろう」

 

 シュウの口元が、わずかに動いた。

 

「……いいだろう」

 

 シュウは、卓の前へ戻った。

 

「その話、受けよう」

 

 ミネバが、立ち上がった。

 卓越しに、手を差し出す。

 

 シュウは、その手を取った。

 細い手だった。

 けれど、握り返す力は強かった。

 

「よろしく頼む。ミネバ・ザビ」

「こちらこそ。シュウ」

 

 クワトロは、手を握り合う二人を見ていた。

 

 ――ミネバ・ザビ。随分と、大人に成長したものだ。

 

 だが、あの幼い頃と比べて、あまりにも違いすぎる。

 それが、少しだけ気にかかった。

 

 

                          (つづく)




第48話「白き魔女」、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 冒頭、夜の通信室で、レビルに残っていた連邦の兵がこっそり連絡を送りました。
 彼にとっては裏切りではなく、連邦の軍人としての務めです。シュウも「連邦にも、忠義を示す人間がいたんだと言いたいところだが、そうもいかない」と、その立場だけは認めていました。

 そして、ハマーンの出撃。
 ミネバの「やれるか」に、細い声で「ミネバ様のためならば」と答えた彼女は、操縦席で「……怖い」とつぶやきます。
 けれど、計器がすべて灯った瞬間、その震えは止まりました。
 「脆いな」
 ΖΖのキャラ・スーンや、強化されたあとのマシュマーを覚えている方には、少し懐かしい変わり方だったかもしれません。普段はおどおどしているのに、キュベレイに乗ると別人のようになる。記憶が戻ったわけではありません。ただ、体のどこかに、昔のハマーンが残っているのかもしれません。

 彼女の乗る機体は、キュベレイダムド。
 巨大な手でジェガンを握り潰し、ビームを正面から受け止める。前回、震える指でお茶の器を置いていた手と、同じ人の手だとは思えない姿でした。
 ちなみに、この機体は『ガンダムビルドダイバーズ』の公式外伝に登場するガンプラを元にしています。この作品では、小惑星帯の艦隊が長年手を入れてきた機体として登場させました。

 救援に飛び込んだのは、クワトロでした。
 「誰だ。邪魔をするな!」と言われて、「味方だ」とだけ返す。白い機体に誰が乗っているのか、クワトロはまだ知りません。

 戦いのあと、シュウは約束どおり出ていこうとします。
 それを引き止めたのは、ミネバでした。
 「俺たちが来たから、連邦も来た」
 「それも分かっている」
 原因を承知したうえで、それでも手を組もうと言う。ミネバのまっすぐさが、シュウにも届いたのだと思います。

 最後に、クワトロが抱いた小さな違和感。
 「随分と、大人に成長したものだ。だが、あの幼い頃と比べて、あまりにも違いすぎる」
 この引っかかりを、どうぞ覚えておいてください。

 次回も、どうぞよろしくお願いいたします。
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