GUNDAM TRIANGLE   作:カンキ

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 いつも『GUNDAM TRIANGLE』をお読みいただき、本当にありがとうございます。

 第66話「ロロのガンダム」をお届けします。

 前回は、ジュドとカミュが二人がかりでギンガナムに挑み、手も足も出ずに負けてしまいました。
 ぼろぼろの二機を前に、カロッゾは「今夜は、寝られないぞ」。ロロは「それだけじゃ、だめな気がする」と言って、紙の上に小さな三角形を描きました。
 あの三角形は何だったのか、気になっていた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 今回は、その長い夜の続きから始まります。
 負けを取り返すために、カロッゾとロロは、それぞれ別のやり方を選びました。

 そして、ギンガナムとの再戦です。
 前回の借りを返したい二人の前に、ギンガナムも、とっておきの奥の手を用意していました。
 さらに、この戦いには、思いもよらない人物も加わってきます。

 題名のとおり、ロロにも大きな出来事が起こる回になりました。
 何が起こるのかは、ぜひ本編でお確かめください。

 それでは、第66話をお楽しみください。



第66話 ロロのガンダム

 

 

 

 リーンホースの格納庫に、夜通し明かりがついていた。

 

 カロッゾは、負けた二機を、ただ直すつもりはなかった。装甲を厚くし、出力を上げ、守りも攻めも底上げしていった。

 

 格納庫の奥では、ロロが別の機体に取りかかっていた。

 炎虎よりも、蒼天よりも、ひと回り細い。

 

「ロロ君。そちらは、何だね」

「前に、レオナージさんに話したやつだよ。今ある骨組みを組み替えれば、剣にも盾にもできるんだ」

「……あの、頭の中にしかないと言っていた話か」

「うん。やっと、形にできそうなんだ」

 

 ロロは、工具を握ったまま答えた。

 胸元のペンダントが、ほんのりと青く光っていた。

 

 

     ◇

 

 

 セラさんからも、ジュドやカミュからも、その場にいた人たちからも、幾度となく、その話を聞いていた。

 

「お前、自分がミリアって名乗ってたの、覚えてねえのか」

「ペンダントが、赤く光ったり、白く光ったりしていたそうだ」

 

 ロロは、何も覚えていなかった。

 それでも、みんなが嘘をつく理由もなかった。

 

 だから、自分で試してみた。

 

 工具を床に落として、ちょっとイラッとしたとき。ペンダントは、ほんのり赤くなった。

 図面に夢中になっているとき。青く光っていた。

 セラさんの隣で、ぼんやりお茶を飲んでいたとき。白く光っていた。

 

「……君って、僕の気持ちで、色が変わるんだね」

 

 ロロは、うれしそうに、ペンダントを指でつついていた。

 

 あの日、ラリベラの大きな木の下で、朱麗が首にかけてくれたペンダントだった。

 

「それまでこのペンダントを預かっといてくれ」

 

 そう言われる少し前、二人は、唇を重ねていた。

 

 思い出したとたん、ロロの顔が熱くなった。

 ペンダントが、ほんのりと白く光った。

 

「……もう。今は、そういうのじゃないんだから」

 

 ロロは、ぶんぶんと首を振った。

 

 気持ちで色が変わるのなら。そのときの気持ちに合わせて、そのとき欲しい武器や盾を出せたら。

 フレームの一つ一つが、ちょっと形を変えるだけで、剣にも、銃にも、盾にもなったら。

 

 

     ◇

 

 

 ロロは、機体の胸の真ん中に、ペンダント用の小さなソケットを取り付けた。

 ペンダントがぴたりとはまる形で、ふちには、小さな飾りまで彫ってあった。

 

「……指輪の台座か、これは」

 

 カロッゾが、あきれた声を出した。

 

「だって、大事なものだから」

「フレームの中身も見せてみたまえ」

 

 モニターに映った骨組みを見て、カロッゾの眉が上がった。

 

「……これは、モビルスーツか? サイコフレームの塊ではないか」

「え、そうかな? ちょっと多めに入れただけだよ」

 

 もともと、自分が乗るつもりの機体ではなかった。

 フェニーチェさんか、セラさんか。ニュータイプの力を持つ人が乗って、すぐに動ける機体があれば。そう思って、作っていたものだった。

 

 ロロは、首からペンダントを外し、胸のソケットにはめた。

 カチッ、と音がした。

 機体の目に、ぽうっと青い光がともった。

 

「ロロ君。今夜は、寝られないと言ったが」

「うん。もう、朝だね」

 

 格納庫の窓の外が、白みはじめていた。

 

 

     *

 

 

 リーンホースの艦橋のモニターに、エヴァンズ大佐が映っていた。

 

『ギンガナムの居場所が、分かりました。そちらの具合は、どうですか。必要なら、こちらからも出しましょうか』

「大丈夫です。今度は、やれます」

 

 アークは、迷わずに答えた。

 モニターの向こうで、エヴァンズが小さくうなずいた。

 

『そちらで大丈夫だとは思いますが……念のため、私のつてで、一人、助っ人を頼んでいます』

「助っ人、ですか」

『腕は、確かです』

 

 通信が切れた。

 アークは、しばらく黒いモニターを見ていた。

 

 

     ◇

 

 

 ゼネラル・レビルの格納庫に、シュウが降り立った。

 

「シュウ様! お帰りなさい!」

 

 元イエロースーツの兵たちが、わっと集まってきた。

 

「大将、その前に、こいつらの話を聞いてやってくれ」

 

 ヤザンが、にやにやしながら腕を組んでいた。

 

「俺たちの名前、まだ決まってないんです」

「ゼネラル・レビルじゃ、連邦の船みたいで、なんか嫌で」

「だから、みんなで決めました。《暁》がいいです!」

 

 兵たちが、いっせいに手を挙げた。

 ナナイが、小さくため息をついた。

 シュウも、あきれたように息をついた。

 

「……まったく」

 

 それから、口の端を上げた。

 

「好きにしろ。今日から、俺たちは《暁》だ」

 

 歓声が上がった。

 シュウはその声を背に、シナンジュ・ヴァリアントの操縦席へ乗りこんだ。

 

 

     *

 

 

「よっしゃあ、行くぜ、カミュ! 今度こそ、ぶちのめしてやる!」

「ああ。借りは、返す」

 

 炎虎と蒼天が、リーンホースから飛び出していった。

 

 そのあとに、細い機体が続いた。

 

「ロロ。分かっているな」

 

 アークの声が、通信に入った。

 

「二人だけで大丈夫だと、私は言ったはずだ」

「うん。でも、この前みたいに、二人とも傷ついて帰ってくるのは、嫌だから」

「……戦わないこと。それが、出ていいと言った条件だ」

「分かってる。後ろで見てるだけだよ。いざとなったら、二人を運んで帰るから」

 

 ロロの試作機は、二機からずっと離れたところで止まった。

 

 

     ◇

 

 

 月の裏側。

 リュー・ブー艦のそばで、トールギスが待っていた。

 

『来たか! 待っておったぞ! ……だが、以前と姿形は変わらんようだな。それで、また無様に負けるつもりか』

 

 この戦いは、連邦の中継で流されていた。

 

 

     *

 

 

「そう思うんだったら、この一撃を受けてみろ!」

 

 炎虎が、正面から斬りかかった。

 腕に収まっていた巨大なビームサーベルが、長く伸びる。

 

『おおっと! これは、予想外!』

 

 トールギスが受けた。

 だが、受けきれずに、後ろへ押し流された。

 

 そこへ、蒼天が飛びこんだ。

 人の形のまま、体ごとトールギスにぶつかっていく。

 

 ドオン、と鈍い音がした。

 トールギスが、大きくはじき飛ばされた。

 

『ぬうっ……こいつは、かなわんな』

 

「効いてるぜ、カミュ!」

 

 炎虎の中で、ジュドが叫んだ。

 

「ああ!」

 

 蒼天のカミュも、短く返した。

 

 ギンガナムが、初めて押されていた。

 

『ならば、これでどうだ!』

 

 トールギスが、炎虎と蒼天のあいだへ飛びこんだ。

 この前と同じだった。間に入られれば、どちらも味方を巻きこむ。

 

 だが、今度はカミュが先に動いた。

 蒼天が、すっと身を引いて、射線を空けた。

 

「ジュド!」

「おうよ!」

 

 空いたところへ、炎虎が踏みこんだ。

 巨大なビームサーベルが、トールギスの肩を斬り裂いた。

 

『ぬうっ……!』

「同じ手は、二度は食わねえ!」

 

 トールギスが、大きく後ろへ下がった。

 

『メリー!』

『はいはい、おじさん。手伝ってあげる』

 

 メリーのオーキスが、横から割って入った。

 二本の大砲が、炎虎と蒼天の間を焼いた。

 

 それで、ようやく五分と五分になった。

 

 

     *

 

 

 そのとき、戦場の外から、一筋の赤い光が走りこんできた。

 尾を引いて流れるその光は、まるで彗星のようだった。

 

『ギンガナム。俺とも戦え』

 

 光の正体は、シナンジュ・ヴァリアントだった。

 

『おお……そこもとであったか』

 

 ギンガナムの声が、うれしそうにはずんだ。

 

『捕らえろと言われてきた。だが、その前に、お前の本質を見極めに来たぞ』

『そこもとに、小生の奥底が見えるか』

 

 炎虎、蒼天、シナンジュ・ヴァリアントの三機と、トールギス、オーキスの二機が、ぶつかり合った。

 光が、いくつも入り乱れた。

 

 ロロは、離れたところで、おろおろしていた。

 助けに入ろうにも、機体が入り乱れて、近づけなかった。

 

 いつの間にか、シナンジュ・ヴァリアントが、すぐそばまで近づいてきていた。

 その手が、ロロの機体の肩にふれた。

 

『そこのモビルスーツ。味方機か?』

「えっ……先生? 僕だよ」

『ああ、ロロ君と言ったか。君だったのか』

 

 シュウの声が、ほんの少しだけ、やわらいだ。

 

『危ないから、下がっていなさい』

「う、うん」

 

 通信を切ってから、シュウは小さくつぶやいた。

 

「先生、か。……悪くない」

 

 シナンジュ・ヴァリアントは、また戦いの中へ戻っていった。

 

 

     ◇

 

 

 三機に囲まれて、トールギスがじりじりと下がっていく。

 

『……ええい! おい、メリー! 例のやつだ!』

『わかった、おじさん!』

 

 トールギスが、両手の大型ビームサーベルを投げつけた。

 炎虎と蒼天が、左右にかわす。

 

 その一瞬に、オーキスが前へ出た。

 オーキスの両側に、巨大な腕が付いていた。

 デンドロビウムの大きさに合わせた、とてつもなく大きな手だった。

 

 トールギスが、オーキスの真ん中へ飛びこんだ。

 ガシン、と重い音を立てて、二つが一つになった。

 

 巨大な両手の指が、ゆっくりと開いた。

 手のひらが、まぶしく光りはじめた。

 

『小生のこの手が、光って唸る!』

 

 ジジジ、と空気が焼けるような音がした。

 光は手のひらからあふれ、ビームとなってあたりにまき散らされた。

 

『これが、シャイニングフィンガーである!』

 

 

     *

 

 

「おい、カミュ……あの手、まさか」

「……ああ。朱麗の技だ」

 

 二人の機体が、一瞬だけ止まった。

 朱麗がどれだけ強いかは、二人とも、身にしみて知っていた。ムーンライトの腕を奪ったあの男が、今度は、その朱麗の技を、何倍もの大きさで使おうとしている。

 

 

     ◇

 

 

 ムーン・ムーンでは、朱麗がモニターの前に立っていた。

 腕の中で、セラが震えていた。

 

「おい、あれって、もしかして……」

 

 朱麗は、セラを抱きしめたまま、モニターから目を離せなかった。

 

「……嘘だろ」

『師匠、あれ……』

 

 内側の朱麗の声も、かすれていた。

 

 

     ◇

 

 

 炎虎と蒼天が、ためらった。

 その横を、シナンジュ・ヴァリアントが抜けていった。

 

 シュウだけは、あの技を見たことがなかった。

 

『面白い。正面から、受けてやる』

 

 巨大な手が、シナンジュ・ヴァリアントへ迫った。

 

「待って! 危ない!」

 

 ロロが、叫んだ。

 

 機体の胸で、ペンダントの二つの三角形が、逆向きにくるくると回り出した。

 一瞬、星の形に重なり、赤くまばゆく光った。

 

 ――次の瞬間、ロロの試作機が、赤い光を放った。

 

 フレームが、ありえない方向へ組み変わっていく。

 ガシャン、ガシャン、と骨組みがうなり、装甲が開き、光が噴き出す。

 さっきまでおとなしく止まっていた機体が、まるで別の生き物のように飛び出した。

 

 巨大な手がシナンジュ・ヴァリアントをつかむ寸前、試作機がその前を横切った。

 シナンジュ・ヴァリアントを抱えて、光の外へ連れ出していた。

 

『……何だ、今のは』

 

 シュウの声が、かすかにゆれた。

 

「また、あんたなの、ギンガナム」

 

 ロロの声ではなかった。

 

「しつこい男は、モテないよ」

『ほう。また、あの小娘か』

 

 ギンガナムが、鼻で笑った。

 巨大な手が、もう一度、光った。

 

 ミリアの機体が、上へ跳んだ。

 そして、光る手を、真上から叩き落とした。

 

 ズウン、と重い音が、宇宙に響いた。

 

『な……!』

 

 トールギスを抱えた巨大な体が、大きくよろけた。

 

 

     *

 

 

 ミリアの機体が、シナンジュ・ヴァリアントの肩にふれた。

 

「聞こえる?」

 

 シュウは、その声を知っていた。

 

『……ミリア、なのか』

「シュウ兄。二人で、あれを倒そう」

 

 少しの間があった。

 

『……分かった』

 

 ミリアの機体のフレームが、また組み変わった。

 その一部がはずれ、シナンジュ・ヴァリアントの手の中へ飛んでいく。

 それは、シナンジュ・ヴァリアントの背丈ほどもある、巨大なビームサーベルになった。

 

 ギンガナムが、体勢を立て直した。

 両手が、ふたたび光る。

 

『小癪な! まとめて、つかみつぶしてくれるわ!』

 

 ミリアの機体から、ワイヤーが飛んだ。

 

『サイコキネシス!』

 

 シュウが叫んだ。

 その念動に合わせるように、ワイヤーは宇宙を走り、巨大な両腕に絡みついた。

 

 ワイヤーが引かれ、巨大な両腕が、左右へ大きく開かれた。

 トールギスを抱えた胴体が、むき出しになった。

 

『しまっ――』

 

 シナンジュ・ヴァリアントが、まっすぐ飛びこんだ。

 巨大なビームサーベルが、光の尾を引いて、横一文字に振り抜かれた。

 

 閃光。

 

 両腕の付け根が、まとめて断ち切られた。

 オーキスの胴が、火を噴いた。

 

『おじさん! もう無理! 出るよ!』

 

 オーキスの操縦席が、火の中から切り離された。

 トールギスもオーキスから飛び出し、メリーの乗った操縦席を片手でつかんだ。

 燃えるオーキスを捨てて、二人はリュー・ブー艦へ逃げていく。

 

『……ワッハッハッハ! 面白い! 実に面白いわ!』

 

 ギンガナムの笑い声だけが、通信に残った。

 リュー・ブー艦は、岩の向こうへ消えていった。

 

 

     ◇

 

 

 赤い光が、すうっと消えた。

 

 ロロの試作機は、糸が切れたように、動かなくなった。

 胸のソケットのペンダントは、もう青に戻っていた。

 操縦席のロロは、目を閉じていた。

 

 漂いはじめた細い機体を、シナンジュ・ヴァリアントが抱きとめた。

 さっきまで暴れまわっていたとは思えないほど、小さく、軽かった。

 

 炎虎と蒼天が、そばへ寄ってきた。

 

「……ちょっと、あれは、敵ながらずるいよな」

「本当に、その通りだ」

 

 ジュドとカミュは、そろって大きく息をついた。

 ずっと押していたのは、自分たちだったはずなのだ。

 

 シュウは、何も答えなかった。

 腕の中の機体を、じっと見下ろしていた。

 

「さっきまで、俺の横で戦っていた。それが、目を覚ませば、また『先生』か」

 

 つぶやいた声は、誰にも届かなかった。

 

 

                          (つづく)




第66話「ロロのガンダム」、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 まずは、徹夜の格納庫です。
 カロッゾは、負けた炎虎と蒼天を、ただ直すのではなく、守りも攻めも底上げしました。
 ロロは、前からレオナージさんに話していた「今ある骨組みを組み替えれば、剣にも盾にもできる」仕組みを、ようやく形にしました。
 同じ負けを受けて、一人は機体そのものを強くし、もう一人は仕組みのほうを変える。技術屋としての二人の違いが、同じ夜の、同じ格納庫で見えたのではないかと思います。
 ガンダムAGEをご存じの方は、AGEシステムを思い浮かべていただけたかもしれません。もちろん、ロロはそんなものは知りません。自分で考えて、自分でたどり着いた仕組みです。

 ロロは、自分が赤や白に変わっているあいだのことを、覚えていません。
 それでも、みんなから何度も話を聞いて、自分で試してみました。イラッとすると赤、集中すると青、セラさんの隣でほわんとしていると白。
 「……君って、僕の気持ちで、色が変わるんだね」
 ペンダントに話しかけるロロを、かわいいと思っていただけたら嬉しいです。
 そのペンダントは、第6話で、ラリベラの大きな木の下で、朱麗がロロの首にかけたものでした。思い出して顔が熱くなり、ペンダントが白く光る。今は朱麗とセラが結ばれていると分かっているからこその「……もう。今は、そういうのじゃないんだから」でした。

 そして、胸のソケットにふちの飾りまで彫ってしまうロロと、「……指輪の台座か、これは」とあきれるカロッゾ。
 中身をのぞけば「サイコフレームの塊ではないか」。第51話で、サイコフレームの複製を「徹夜すれば、一日」と言ってのけたロロですから、自分の機体にたっぷり入れるのも当然かもしれません。
 ただ、ロロ自身は、これを自分が乗る機体だとは思っていませんでした。フェニーチェさんか、セラさんのために作っていたものです。

 一方、シュウ陣営では、兵たちが自分たちの名前を《暁》に決めました。
 《暁》は、第45話で沈んだ艦の名前です。その名前を、残った兵たちがもう一度選ぶ。シュウの「……まったく」には、きっといろいろな思いが入っていたと思います。
 エヴァンズ大佐の「私のつてで、一人、助っ人を頼んでいます」。その「つて」が誰だったのかは、読者の皆さんだけが知っています。

 再戦では、ジュドとカミュが、前回やられた手をきっちり返しました。
 トールギスが二機のあいだに飛びこんでくる。前回はお互いを巻きこみそうで手が止まりましたが、今回はカミュが先に身を引いて射線を空け、ジュドが踏みこむ。
 「同じ手は、二度は食わねえ!」
 二人が強くなったことを、感じていただけたでしょうか。

 そこへ、彗星のように飛びこんできたのがシュウでした。
 戦いの中で、ロロはシュウを「先生」と呼びます。通信を切ってから、シュウは小さくつぶやきました。
 「先生、か。……悪くない」

 追いこまれたギンガナムの奥の手は、巨大な両手の、シャイニングフィンガーでした。
 第59話で、ギンガナムはムーンライトの右腕を持ち帰り、「シャイニングフィンガー……覚えておこう」と言っていました。第63話では、ロロが「開けるなら、手首の方からだよ」と、うっかり教えてしまっています。
 その技を、今度はデンドロビウムほどの大きさの両手で打ってくる。モニター越しに見ていた朱麗の「……嘘だろ」は、驚きと悔しさの両方だったと思います。
 『∀ガンダム』をご存じの方は、ターンXのあの技を思い出していただけたかもしれません。そのご先祖が、ここで初めて、自分の手でその技を名乗りました。

 そして、シュウだけが、あの技の怖さを知らずに向かっていきます。
 「待って! 危ない!」
 ロロの叫びに、ペンダントの二つの三角形が逆向きに回り、星の形に重なって、赤く光りました。
 ミリアの登場です。
 「しつこい男は、モテないよ」
 第63話で「威勢はよいが」とあしらわれたミリアが、今度はギンガナムの自慢の手を、真上から叩き落としました。

 「……ミリア、なのか」
 「シュウ兄。二人で、あれを倒そう」
 シュウの問いに、ミリアは「そうだよ」とは言いません。昔の呼び方で、そのまま答えになっています。
 ロロの機体の一部が、シュウの手の中で巨大なビームサーベルになり、ミリアのワイヤーとシュウの念動が、二人で一つの技になりました。ロロが想像していた「剣にも盾にもなる」仕組みは、作った本人の想像を、はるかに超えてしまったわけです。

 三国志がお好きな方なら、虎牢関で、劉備・関羽・張飛の三人が、呂布に挑んだ場面を思い浮かべていただけたかもしれません。あの戦いには、曹操も、連合軍の一人として加わっていました。

 最後は、力を使い果たして眠ってしまったロロと、それを抱きとめるシュウです。
 ジュドとカミュの「……ちょっと、あれは、敵ながらずるいよな」「本当に、その通りだ」には、思わず笑っていただけたでしょうか。
 そして、シュウの最後の一言。
 「さっきまで、俺の横で戦っていた。それが、目を覚ませば、また『先生』か」
 第61話で、シュウはナナイに「さっきまでシュウ兄と呼んでいた。それが、急に先生だ」と話していました。
 「先生」も悪くないと思えたからこそ、「シュウ兄」と呼ばれたあとの「先生」は、少しだけ寂しい。この回でいちばん描きたかったのは、その三つの呼び名でした。

 次回も、どうぞよろしくお願いいたします。
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