GUNDAM TRIANGLE   作:カンキ

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今回は、シュウたちの物語です。

手配書に描かれた一つの顔をきっかけに、砂漠の補給拠点で騒動が始まります。
シュウ、ナナイ、そしてヤザン。三人のやり取りも楽しんでいただければ幸いです。


第7話 黄塵の賞金首

 

サハラ砂漠の東のはずれ。

 

岩山の裾に、イエロースーツの補給拠点があった。

岩壁に沿って倉庫が並び、その前を輸送車が行き交っている。

食料。水。燃料。弾薬。

ここから運び出された荷が、砂漠に散らばる部隊へ届く。

 

その食堂の壁に、一枚の手配書が貼られていた。

 

『教主殺し 生死を問わず』

 

紙の真ん中には、人相の悪い小男の顔。

歪んだ口元。卑しい目つき。街の番兵の制服。

 

「……ぷっ」

 

長椅子に足を投げ出していた女が、干したナツメヤシをくわえたまま吹き出した。

ミランダ=スーンだった。

 

「何度見ても笑えるねぇ。あの騒ぎを起こしたのが、こんなのかい?」

「その顔を眺めているだけでは、捕まらんぞ」

 

向かいに座るガラン=ダカランは、食べ終えた料理の皿を脇へ寄せた。

 

「分かってるよ。できれば向こうから歩いてきてくれりゃ、苦労しないんだけどね」

「お前は楽することばかり考えるな」

「はいはい」

 

ミランダは次の実をつまんだ。

そのとき、食堂の扉が開いた。

 

「お二人とも。門へ来ていただけますか」

「何だい、飯の途中だよ」

「賞金首を捕まえたという男が来ています」

 

ミランダの手が止まる。

壁の手配書を見た。

続いて、ガランを見る。

 

「……来たってさ」

 

ガランは黙って立ち上がった。

 

     ◇

 

その少し前。

 

拠点を見下ろす岩陰で、ヤザンは双眼鏡を下ろした。

背後では三十人ほどの兵が、砂色の布の下で待機している。

 

「車が入れる門は一つ。見張り台が二つ。門を抜けた先に荷を下ろす広場がある」

「兵の数は」

 

ナナイが尋ねた。

 

「見えた分だけで、こっちより多い。倉庫の中までは数えられん」

「随分と大雑把ですね」

「見えねえものまで数えてほしいなら、別料金だ」

 

ナナイは答えず、双眼鏡を受け取った。

ヤザンがシュウへ向き直る。

 

「で、正面からやるかい?」

「お前ならどうする」

「俺なら、向こうに門を開けてもらう」

 

懐から折り畳んだ紙を出した。

手配書だった。

シュウは、そこに描かれた顔を見つめた。

 

「……ひどい顔だな」

「自分で選んだんだろ」

「あの街では、あれでよかった」

「今度も役に立つぜ」

 

ヤザンは手配書を指で叩いた。

 

「俺が捕まえたことにする。元治安局の男が、金に困って賞金を取りに来た。どうだ。似合うだろう」

「そこは否定しません」

 

ナナイが双眼鏡を下ろした。

 

「ですが、シュウ様をあなたに預けるつもりはありません」

「俺一人で行っても、門前払いだぞ」

「別の方法を考えなさい」

「ナナイ」

 

シュウが口を挟んだ。

 

「続けさせろ」

 

ヤザンはしゃがみ、砂へ門と広場の位置を描いた。

 

「俺が捕虜を引き渡す。連中が品定めをしている間に、門を押さえる」

「その後は?」

「騒ぎを起こす。外の連中には、その隙に入ってもらう」

 

ナナイの視線が、待機している兵へ向いた。

 

「門を開けただけでは、集中砲火を受けます」

「だから、向こうに門どころじゃなくなってもらうのさ」

 

ヤザンは背後のトラックを示した。

荷台には、弾薬の木箱が積まれている。

 

「手土産だ。元警官が手ぶらで来るより、信じやすいだろう」

 

シュウが木箱を見た。

 

「持ち帰るつもりはないんだな」

「ああ。少々、派手な手土産でね」

 

シュウはしばらく考えた。

そしてナナイへ目を向ける。

 

「門が開いても待て。敵が広場へ戻り始めたら動け」

「……シュウ様」

「入る時機は、お前に任せる」

 

ナナイは口を閉じた。

だが、すぐにヤザンを見た。

 

「もし、この男が本当に賞金を受け取ろうとしたら」

「裏切るなら、俺の見える場所で裏切ってもらう」

 

シュウは静かに答えた。

 

「その方が始末が早い」

 

ヤザンが短く口笛を吹く。

 

「怖い大将だ」

 

シュウは荷物から小さなケースを取り出した。

中には、あの醜悪な顔が収められていた。

 

「ヤザン」

「おう」

「縛るなら、痕を残すなよ」

「注文の多い捕虜だねえ」

 

     ◇

 

門の内側で、トラックが止まった。

 

「降りろ」

 

門番の指示に従い、ヤザンは運転席から降りた。

腰の拳銃を抜かれ、上着の中まで調べられる。

 

「ずいぶん丁寧だな」

「元治安局なんだろう」

「元、だから来たんだ。現役なら、もう少し大勢で押しかける」

 

門番は笑わなかった。

荷台の男を引きずり下ろす。

両手を鎖でつながれた小男が、よろめいた。

 

「おい、乱暴にするなよ。そいつは俺の金なんだ」

「確認が済むまで黙っていろ」

 

別の兵が木箱を開けていた。

中身を確かめ、仲間へ頷く。

 

「弾薬です」

「弾薬庫の前へ運べ。車はそこで待たせろ」

 

ヤザンは車の鍵を渡した。

トラックが兵の運転で広場の奥へ進んでいく。

その姿を見送りかけて、囚人の頭が乱暴に押さえられた。

 

「前を向け」

「……ちっ」

 

卑しい声で、小男が舌打ちする。

 

「本物はさらに醜悪なんだねえ」

 

ミランダが近づいてきた。

背後にはガランがいる。

 

「手配書通り、本物さ」

 

ヤザンが答えた。

ミランダは小男の顎を持ち上げる。

 

「あんたが教主殺しかい?」

「だったら、なんだ」

「威勢はいいね」

 

顔を左右へ向けさせ、手配書と見比べた。

 

「どうやって捕まえた?」

 

ガランが尋ねる。

ヤザンは囚人を見た。

 

「飯を食ってるところを、後ろから」

「一人でいたのか」

「俺が見た時にはな」

「仲間は?」

「そこから先は、そっちで聞いてくれ。俺は首を持ってきた。話まで聞き出せとは書いてなかったぜ」

 

ガランは手配書を確認することなく、ヤザンの顔を見ていた。

 

「賞金を受け取りに来たんだな?」

「まず、払える奴と話したい」

「今、話している」

 

ヤザンの笑みが、少しだけ薄くなった。

 

「だったら、早くしてくれ」

 

ガランの目が囚人へ移る。

伏せられた顔。

だらりと垂れた鎖。

その指先は、鎖を握り締めてはいなかった。

 

「そいつを奥へ連れていけ。鎖も替えろ」

 

兵が小男の肩をつかんだ。

小男は動かない。

 

「歩け」

 

肩を押す。

その瞬間だった。

 

じゃらり。

 

鎖の端が地面へ落ちた。

兵が下を見る。

小男の片手が、すでに抜けていた。

 

「おい――」

 

腕を取られる。

身体がひねられ、兵はミランダの前へ投げ出された。

 

「離れろ!」

 

ガランの声と同時に、ミランダが長柄の武器を抜く。

小男が身を引いた。

刃先が、その頬をかすめる。

 

裂けたのは、皮膚だけではなかった。

 

「……ん?」

 

ミランダの動きが止まる。

小男が顔へ手をかけた。

剥がれかけた面を、そのまま取り去る。

 

白い肌。

血のにじむ本物の頬。

そこには、手配書とは似ても似つかない青年が立っていた。

 

ミランダは目を丸くした。

それから、ゆっくりと口元を緩める。

 

「ちょっと、なんだい。中身は私好みの男じゃないか!? 意外だねえ」

 

手配書を放り捨て、長柄の武器を構え直した。

 

「そんな顔を隠してたなんてねぇ。逃がさないよ」

「ミランダ、遊ぶな!」

「分かってるよ!」

 

刃がシュウへ迫る。

その横で、ヤザンは門番の銃を奪い、詰所へ飛び込んだ。

二発の銃声に続き、重い門が再び開き始める。

 

     ◇

 

ミランダの刃が、木箱を砕いた。

シュウは身をかわし、荷車の陰へ回る。

 

「逃げるばかりかい?」

 

追いかけたミランダの肩を、銃弾が叩いた。

防護服が弾を止める。彼女はよろめきながらも、長い柄でシュウの腕を払った。

拳銃が地面へ飛ぶ。

 

(今、どこで拾った?)

 

だが、考えるより先に踏み込んでいた。

シュウの背後には壁。もう下がれない。

 

「捕まえた」

 

ミランダが笑う。

シュウは、武器を握る彼女の手を見ていた。

 

――鍛えられないところを狙え。

 

そう教えた時の、ミリアの真剣な顔がよぎる。

 

刃が迫った。

シュウが身をずらす。足元で鎖が鳴り、ミランダの引く柄に何かが引っかかった。

さっきまで、シュウの手首をつないでいた鎖だった。

その一瞬に、シュウが懐へ入った。

 

「ぐっ!」

 

手首を打たれ、ミランダは武器を落とす。

それでも首へ伸びた手を振り払い、彼の腹を蹴って突き離した。

シュウが片膝をつく。

 

「すごいじゃないか……顔だけじゃないんだねぇ」

 

痺れる腕を押さえながら、まだ笑っていた。

 

     ◇

 

ガランは門へ向かいかけ、足を止めた。

弾薬庫の前で、兵たちがまだトラックから荷を下ろしている。

騒ぎに気を取られ、木箱を抱えたまま広場を見ていた。

 

囚人。

賞金稼ぎ。

わざわざ運び込んだ手土産。

 

「その車から離れろ!」

 

兵が振り返った。

 

「荷を下ろすな! 離れろ!」

 

シュウが顔を上げた。

門の脇で、ヤザンが片手を振っている。

 

「おい! まだやるのか!」

 

シュウは立ち上がった。

ミランダが落ちた武器へ手を伸ばす。

 

「待ちな。逃がさないよ」

 

その背後で、鈍い音がした。

 

一拍。

 

トラックの荷台が、炎に包まれた。

 

――ドォォォン!!

 

爆風が木箱を吹き飛ばす。

弾薬庫の戸が内側へ倒れた。

続けて、別の爆発。

 

「伏せろ!」

 

ガランがミランダを引き倒した。

頭上を、燃えた板が飛んでいく。

 

シュウは石積みの陰へ滑り込んでいた。

その肩へヤザンが手をかける。

 

「遅えよ!」

「門は?」

「開いてる!」

 

黒煙が広場を覆う。

火は倉庫へ入り込み、中から細かな破裂音が続いた。

 

     ◇

 

爆炎を見て、門の兵が広場へ駆け戻った。

 

「見張り台を押さえなさい。前へ!」

 

ナナイは援護の銃声を背に、兵を率いて門を抜けた。

中では消火の指示と、迎撃の怒号が入り乱れている。

 

「武器を置け! 投降した者には撃つな!」

 

煙の向こうにシュウが見えた。

無事だ。

そう思った瞬間、横から腕を引かれた。

 

「よそ見してる場合か!」

 

頭のあった場所を、刃がかすめる。

ガランだった。

ヤザンはナナイを背にかばい、続けざまに撃った。

一発がガランの腿を裂き、その足が止まる。

 

「ガラン、こっちだ!」

 

ミランダが荷車を倒した。

砂埃が舞う中、彼の腕を肩へ回す。

 

「走れるかい?」

「……行け」

「行ってるだろ!」

 

二人は倉庫脇の細い通路へ逃げ込んだ。

その先には、人が通れるほどの整備口がある。

兵が追いかけようとした時、倉庫の屋根が軋んだ。

 

「追うな! 離れろ!」

 

シュウの声に、ナナイが兵を下がらせる。

燃える梁が通路の入口へ落ちた。

屋根が崩れ、熱風が広場を走り抜けた。

 

     ◇

 

夜。

 

炎が小さくなっても、倉庫には誰も近づかなかった。

門の外には投降した者たちが座らされ、その横へ負傷者が運ばれている。

火の届かなかった場所から、水や食料が少しずつ持ち出されていた。

 

「シュウ様」

 

ナナイが駆け寄った。

 

「頬に傷が」

「かすり傷だ」

「血が出ています」

「かすり傷だ」

 

ナナイは返事をせず、布を取り出した。

シュウの頬へ当てる。

彼も、それ以上は何も言わなかった。

 

少し離れたところで、ヤザンがその様子を眺めていた。

 

「俺も肘を擦りむいたんだがね」

「自分で手当てしなさい」

「扱いが違うなあ」

 

ナナイは布を下ろした。

ヤザンへ向き直る。

 

「……先ほどは助かりました」

 

ヤザンの眉が上がる。

 

「ほう」

「二度は言いません」

「一度で十分だ」

 

ヤザンは笑い、抱えていた帳面をシュウへ渡した。

 

「事務所に残ってた。荷の受け取りと出荷の記録だ」

 

シュウが開く。

日付。数量。受領の印。

何枚かめくり、顔を上げた。

 

「金もあっただろう」

 

ヤザンは黙った。

ナナイの目が細くなる。

 

「……帳面だけとは言ってねえぞ」

 

ヤザンは上着から札束を出した。

もう一つ。

さらに、もう一つ。

 

「随分と膨らんだ懐ですね」

「俺の首より、こいつの首の方が高かったんでね」

 

ヤザンが親指でシュウを示す。

 

「賞金だと思って、少しぐらい」

「運び出しが終わってからにしろ」

 

シュウは帳面を閉じた。

 

「誰がどれだけ働いたか、お前も見ていただろう」

 

ヤザンは門の方を見た。

兵たちが、荷を担いで行き来している。

 

「……分かったよ」

 

札束を帳面の上へ置いた。

 

「で、合格かい。俺は」

「二人逃がした」

「そりゃあんたも同じだろ」

 

シュウは答えなかった。

帳面と金をナナイへ渡す。

 

「次に動く時は、先にこいつの話を聞け」

 

ナナイは一瞬だけヤザンを見た。

 

「……承知しました」

 

ヤザンが口元を緩める。

 

「そいつはどうも」

「ただし、帳面は私が預かります」

「信用されねえなあ」

 

ナナイは取り合わず、兵たちの方へ歩いていった。

シュウも、その後に続く。

 

ヤザンは一人残り、開いたままの門を見上げた。

 

「……忙しくなりそうだ」

 

そう呟いて、二人を追った。

 

     ◇

 

拠点から離れた砂漠を、一台の小型ホバーカーが走っていた。

ミランダが片手で操縦桿を握り、もう片方の腕を膝に乗せている。

隣ではガランが、腿に巻いた布を締め直していた。

 

「ああ、痛い。腕も肩も、ひどいもんだよ」

「前を見ろ」

「見てるよ」

 

車体が跳ねた。

ガランが顔をしかめる。

 

「……少し落とせ」

「はいはい」

 

速度が緩む。

しばらく、エンジンの音だけが続いた。

 

「あの色男さ」

 

ミランダが口を開いた。

 

「銃を拾うところ、あんた見たかい?」

「見ていない」

「そうかい」

 

彼女は痺れの残る手を開いたり閉じたりした。

 

「いつ拾ったんだろうね。目は離してなかったつもりだけど」

「つもり、だろう」

「……まあね」

 

ガランは背後を振り返った。

岩山の上に、まだ赤い明かりが見える。

 

「次は、あの手には乗らん」

「私は、もう一度会いたいねぇ」

 

ガランがミランダを見た。

彼女は前を向いたまま、にっと笑う。

 

「あんなに私好みの男、そうそういないよ」

「殺されかけたんだぞ」

「だから、次はこっちが捕まえるのさ」

 

痺れる手を、ゆっくり握る。

 

「今度は逃がさないよ。あの色男」

 

ガランは呆れたように息を吐き、座席へ背を預けた。

ホバーカーは、暗い砂漠の先へ進んでいった。

 

     ◇

 

一方、ロロたちはケニア宇宙港に到着していた。

大きな窓の向こうに、月へ向かうシャトルが見える。

その下を、荷物を積んだ作業車が忙しそうに行き交っていた。

 

「ようやく着いたな。嬢ちゃん、あれに乗るんだぜ」

 

ジュドが窓の外を指さす。

ロロは顔を上げた。

けれど、すぐにまた目を伏せてしまう。

 

「……うん」

 

朱麗と別れてから、ずっとこの調子だった。

つい、隣を見てしまう。

そのたびに、もうそこには誰もいないのだと思い出す。

 

そこへ、情報を集めに行っていたカミュとファが戻ってきた。

 

「カガチの行き先が分かった」

 

カミュが声を落とす。

 

「月のグラナダへ逃げたらしい」

「グラナダ? なんだ、俺たちと同じ月じゃねえか」

「ああ。向こうで足取りを追う」

 

ファも頷いた。

 

「だから、もうしばらく一緒ね」

「そりゃ心強い。なあ、嬢ちゃん」

 

ロロは少し遅れて振り向いた。

 

「……え?」

「カミュたちも、同じシャトルに乗るんだとよ」

「あ……そうなんだ。よかった」

 

小さく笑ったところで、搭乗を知らせる放送が流れた。

一行は荷物を手に、乗船口へ向かった。

 

     ◇

 

シャトルの窓際の席で、ロロは膝の上に手を重ねていた。

通路を行き交う乗客の声も、どこか遠くに聞こえる。

 

――用事が済んだら、すぐ追いかける。

 

髪を撫でてくれた手。

別れ際の声。

思い出すと、また会いたくなった。

 

「ロロさん」

 

通路をはさんだ席から、カミュが声をかけた。

 

「ベルトは締めたか?」

「……あ、うん」

 

そう答えてから、まだ留めていないことに気づく。

慌てて金具を差し込むと、隣のジュドがそっと息を吐いた。

 

「そんなにぼんやりしてると、月に着いたことにも気づかねえぞ」

「ごめん……」

「謝ることじゃねえけどよ」

 

ジュドは座席に背を預けた。

 

「アナハイムに着いたら楽しみだな。お前、見たいもんが山ほどあるんじゃねえか?」

 

ロロが、少しだけ顔を上げる。

 

「……工場、見られるかな」

「頼んでみようぜ。俺も見てえしな」

「何でも触っていいわけじゃないぞ」

 

カミュがくぎを刺した。

ジュドは肩をすくめる。

 

「分かってるって。なあ?」

「僕、勝手には触らないよ」

 

ロロの口元が、ほんの少しゆるんだ。

 

「でも……どんな機械を使ってるんだろう。アルさんの工房にあったのとは、全然違うのかな」

「そういうのは、着いたらお前が俺に教えてくれ」

「うん」

 

ロロは窓の外へ目を向けた。

整備員が手を上げ、機体から離れていく。

 

「……楽しみだね」

 

今度は、ジュドにもはっきり聞こえた。

やがて、座席に細かな振動が伝わってくる。

ロロはベルトをぎゅっと握りしめた。

シャトルは、月へ向けて飛び立った。




第7話をお読みいただき、ありがとうございます。

ヤザンが加わり、シュウたちの間にも少しずつ変化が出てきました。
一方、負けても懲りないミランダ。彼女に目をつけられたシュウは、厄介な相手を増やしてしまったかもしれません。

そして、朱麗との別れを胸に、月へ向かうロロ。
寂しさの中にも、ほんの少し楽しみを見つけての旅立ちとなりました。

次回もお付き合いいただければ嬉しいです。
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