今回のお話は私ではありませんよ、ふふふ…おや?
どこからか皮肉の声がどうぞお楽しみください。
生徒「先生、もし不幸体質な人がいたらどうしますか?」
先生「一緒に散歩をしたいかな。その不幸を味わってみたい」
生徒「先生…Mなんですか?」
先生「君は何か誤解をしているようだね、先生はSだよ!」
生徒「先生はTですよ?」
先生「よく、舌の回る生徒だね。」
生徒「先生が変なことばかり言うからですよ。」
先生「そうか。なら、先生は君の言葉を引き出すために、あえて変なことを言っているのかもしれない。」
生徒「絶対違いますよね。」
先生「……まあ、九割くらいは違う。」
生徒「一割は認めるんですか。」
先生「先生にも計画性というものがあるからね。」
生徒「その計画性、今どこにあります?」
先生「さあ?」
生徒「ないんじゃないですか。」
先生「手厳しいね、君は。」
生徒「それで、結局なんで一緒に散歩したいんですか?」
先生「さっきも言っただろう? その人の不幸を味わってみたいんだ。」
生徒「やっぱりMじゃないですか。」
先生「だから違うって!」
生徒「じゃあ、どういう意味なんです?」
先生「……不幸な人っていうのはね、自分の不幸を誰にも理解してもらえないと思っていることが多いんじゃないかな。」
生徒「……」
先生「だから、一緒に歩いてみたいんだ。」
生徒「歩くだけで何か変わります?」
先生「変わらないかもしれない。」
生徒「じゃあ意味ないじゃないですか。」
先生「そうだね。」
生徒「……」
先生「でもね。」
先生は少しだけ笑った。
先生「意味がないことでも、一緒にしてくれる人がいるだけで、少し楽になることはあるんだよ。」
生徒「……先生。」
先生「だから先生は、その人の不幸を消してあげたいわけじゃない。」
生徒「じゃあ?」
先生「不幸な日に、一人にしないだけだよ。」
生徒「……それって、結構いい先生みたいなこと言ってません?」
先生「当然だろう。先生だからね。」
生徒「さっきまで『Sだよ!』とか言ってた人とは思えません。」
先生「人間、幅が広いんだよ。」
生徒「幅が広すぎます。」
先生「まあ、君もいつか分かるさ。」
生徒「何をです?」
先生「人生というのは、不幸をなくすことより――」
先生は歩き出した。
先生「不幸なときに、誰と歩くかのほうが大事だってことをね。だから、もう少し君は快楽主義者になっていい」
生徒「……じゃあ先生。」
先生「ん?」
生徒「今日、散歩しません?」
先生「いいよ。」
生徒「先生が不幸を味わいたいって言ったから。」
先生「……君、まだ根に持ってるの?」
生徒「もちろんです。」
先生「本当に、よく舌の回る生徒だ。」
生徒「先生ほどじゃありませんよ。」
先生「それは褒め言葉として受け取っておこう。」
二人は並んで歩き始めた。
その日の空は、少しだけ曇っていた。
先生「……雨、降りそうだね。」
生徒「傘あります?」
先生「ない。」
生徒「不幸体質なの、先生じゃないですか?」
先生「……君、今日一番いいこと言ったよ。」
生徒「褒めても何も出ませんよ。」
先生「じゃあ、雨が降ったら二人で濡れようか。」
生徒「風邪引きますよ。」
先生「……そうだね。傘を買おう。」
生徒「最初からそうしてください。」