白い少女はただ善く生きたい ――人々の瞳に映る少女は、ひとつではない―― 作:不明さん
マルタが寝具を運び込んだ日から数日が過ぎていた。
礼拝堂脇の小部屋には二人分の寝具が並べられている。
壁際の棚は下の二段だけを空けたままにしてあった。どちらを誰が使うかは来てから本人たちへ尋ねることになっている。
リヴィアは棚の前に座り、手のひらに二枚の小さな布を載せていた。
一枚には短い糸を二本交差させた印。
もう一枚には三本を並べた印がある。
これから来る子供たちが教会の衣服を使う時につけるため、昨日練習しておいたものだ。
「この二つから選んでもらえばいいでしょうか?」
「それでも構いませんが、別の印を希望するかもしれません」
「自分で決めてもらうんですね」
「ええ。本人の服へつける印ですから」
リヴィアは二枚の布を机の上へ置いた。
どちらが分かりやすいかを考え、先に決めておいた方が親切だと思っていた。
だが使う本人が選ぶ方がよい。
持ち物を勝手に動かさないことと同じなのだろう。
「食事の器はもう出してもいいですか?」
「今並べる必要はありません。食事の前で十分です」
「分かりました」
すぐにできることが思ったより少ない。
床は掃除した。
寝具も整えた。
洗面に使う布も洗って乾かしてある。
食事の下ごしらえは昼過ぎから始めれば間に合う。
リヴィアは小部屋を見回した。
何か忘れていないか不安だった。
今日はこの教会で初めて自分以外の子供が暮らし始める。
これまでも礼拝や相談のため多くの人が教会を訪れた。
何日か滞在した者もいる。
だが同じ教会で眠り、同じ食卓で食事をし、明日の朝もここで目を覚ます子供が来ることはなかった。
その様子に気づいたのか、アドリアンが声をかけた。
「緊張していますか?」
「少しだけです」
「何か失敗しても、今日一日ですべてが決まるわけではありません」
「分かっています」
そう答えたところで、自分が失敗を気にしているなら、これから来る子供たちも同じかもしれないと思った。
「来る子供たちにも同じことを言った方がいいでしょうか?」
「必要だと思えば伝えてください」
正面扉を叩く音に、リヴィアは立ち上がって小部屋から礼拝堂へ出た。アドリアンはすでに扉へ向かっていたが、途中で振り返って足を止めた。
「一緒に迎えましょう」
「はい」
二人で正面扉を開くと、外にはマルタが立ち、その後ろに少女と少年がいた。
少女はリヴィアより少し背が高く、両手で布の鞄を抱えていた。
少年は少女よりわずかに小さい。それでもリヴィアよりは少し背が高い。足元には木箱が置かれ、その取っ手を握っている。
「お待たせしました」
マルタがアドリアンへ頭を下げた。
「こちらがノエラ。十二歳です」
布の鞄を持った少女が小さく頭を下げた。
「ノエラです。今日からよろしくお願いします」
「こちらはロラン。十一歳です」
「ロランです。よろしくお願いします」
少年も頭を下げた。
必要な挨拶だけを短く済ませると、すぐに顔を上げた。
十二歳と十一歳。
自分もこの教会へ来てから十年近くになる。正確な年齢は分からないが、二人とそれほど大きく離れているわけではないはずだ。
それでも、二人とも自分より背が高い。
年上ならこれくらい違うこともあるのかもしれない。
「アドリアンです。この教会の司祭をしています」
続いて、アドリアンはリヴィアへ視線を向けた。
「こちらはリヴィアです。私と一緒に、この教会で暮らしています」
「リヴィアです。よろしくお願いします」
リヴィアが頭を下げると、ノエラとロランももう一度頭を下げた。
二人ともすぐには教会へ入らず、開いた扉の向こうを見ていた。
礼拝堂の長椅子。
奥へ続く廊下。
壁に掛けられた女神像。
知らない場所へ入るのだから、何があるか確かめたいのだろう。
「どうぞ、中へ入ってください」
ノエラが先に一歩進んだ。
ロランは足元の木箱を持ち上げようとした。
「ロラン、それも持つよ」
ノエラが鞄を抱えたまま木箱へ手を伸ばしかけた。
「自分で持てる」
「でも、ここまで持ってきたでしょう」
「持てる」
ノエラは一度ロランを見たが、それ以上は何も言わなかった。
「小部屋はすぐ近くです。荷物を置いてから教会の中を案内します」
リヴィアが声をかけると、ノエラは木箱へ伸ばしかけていた手を引いた。
「分かりました」
「その箱は私が持ちます」
アドリアンがロランへ手を差し出す。
「持てます」
「ここまで運んできたのですか?」
「途中からです」
「では、ここからは任せてください。置き場所は私が分かります」
ロランは少し迷ってから取っ手を離した。
「お願いします」
アドリアンが木箱を持ち、リヴィアを先頭に五人で小部屋へ向かった。
小部屋の前でリヴィアは扉を大きく開く。
「ここが二人の使う部屋です」
ノエラとロランは入口で足を止めた。
部屋の中には寝具と棚、小さな机がある。
豪華な物はない。
それでも数日前まで物置として使われていた時よりは子供が暮らす場所に見えるようになっていた。
「寝具は二人分あります。どちらを使っても構いません」
リヴィアは左右に並んだ寝具を示した。
「棚は下の二段を空けてあります。使いやすい方を選んでください」
「ロランは下の段の方が使いやすいと思います」
ノエラは棚へ近づき、そう言いながら抱えていた鞄を下段の前へ置こうとする。
リヴィアは、まず本人へ尋ねるようマルタから教わったことを思い出した。
「あの、ロランにどちらがいいか聞いてからにしませんか?」
「……そうですね。ロラン、どちらがいい?」
「下がいい」
「使いやすいから?」
「荷物を出しやすい」
「分かった。では、下にしよう」
ノエラは鞄を下段へ入れようとしたが、途中で手を止めた。
「この鞄も、棚へ置いていい?」
「いい」
「分かった」
今度は確認してから鞄を収めた。
リヴィアは、ノエラが勝手に決めたいのではなく、ロランが困らないよう先回りしてしまうのだろうと思った。
アドリアンは木箱を床へ下ろし、ロランへ尋ねた。
「中身を確かめても構いませんか?」
「服です」
「すべて出す必要はありません。今日使う物だけを選びましょう」
「自分でできます」
「では、必要になった時に開けてください」
アドリアンは木箱から離れた。
リヴィアは、机の上に置いていた二枚の布を手に取り、交差した糸と三本を並べた糸を見せる。
「教会にある服を使う時は、自分の服だと分かるように印をつけます。この二つから選んでもいいですし、別の印でも大丈夫です」
「今、決めるんですか?」
「今でなくても構いません。服が必要になってからでも大丈夫です」
「私は、三本の方が分かりやすいと思います」
「では、ノエラは三本でいいですか?」
リヴィアが確認すると、ノエラはすぐに頷いた。
「はい。それでお願いします」
「ロランはどうしますか?」
「交差した方」
「分かりました」
リヴィアはそれぞれの名前を布の裏へ小さく書いた。
本来は印だけで見分けるものだが、リヴィア自身が間違えないようにするためである。
「次に、洗面場所を案内します」
小部屋を出ると、リヴィアは二人を廊下の先にある洗い場へ案内した。
「朝はここで顔を洗います。布は一人ずつ分けます。水を温めたい時は神父さまへ言ってください」
「自分で使える?」
ロランが魔力石の器具を見ながら尋ねた。
「最初は神父さまと一緒に使うことになっています。使い方が分かれば、自分で使ってもいいそうです」
「分かった」
「水は俺が運ぶ」
ロランが水桶へ目を向けた。
「必要な時に、みんなで分ければいいと思います」
「これくらいなら持てる」
ロランが桶の取っ手を握る。中は空で、持ち上げるだけなら難しくはなさそうだった。
「水が入ると重くなります」
「持てるか確かめる」
「では、少しだけ水を入れてみましょうか」
リヴィアは空の桶を置くように伝えて、ロランはそれを聞き、桶を床に置く。
リヴィアの腰より高い台に置かれている洗い場の水瓶を手に取り、水をすくって桶へ移す。
一杯。
二杯。
三杯目を入れたところで、リヴィアは桶の取っ手を握った。
試しに持ち上げると、床から少し離れたところで腕が下へ引かれた。持てないほどではないが、このまま歩けば水をこぼしそうだった。
「少し重いですね」
「持つ」
ロランが反対側の取っ手を握った。
二人で持ち上げると、桶は安定した。
洗い場の端まで数歩運び、床へ下ろす。
「ありがとうございます」
「二人の方が早い」
ロランの返事に、リヴィアは頷いた。無理をして運ぶより、安全に運べる方法を選べばいい。
「次は炊事場です」
リヴィアは二人を案内し、食料庫の鍵と食器の置き場所、食べ物や薬は勝手に使わず必要な時はアドリアンへ尋ねること、食事が足りなければ遠慮せず伝えてよいことを順に説明した。
ノエラは、一つずつ頷きながら聞いていた。
ロランは返事をしなかったが、リヴィアが示した棚や器具へ視線を向けている。
「何か私たちにできることはありますか? 掃除や洗濯ならできます。料理も少しは手伝えると思います」
「荷物なら運べる」
リヴィアは何と答えるべきか迷った。
自分もマルタへ似たことを尋ねた。掃除や洗濯、食事の手伝いならできる。そうしてアドリアンの仕事を少しでも減らしたいと考えていた。
マルタに言われた言葉を思い出す。
「手伝えることはあります。でも今日は教会の中を覚えて、荷物を片づけるだけでいいと思います」
「今日は何もしなくてもいいんですか?」
「何もしなくていいというより、今日しなくてもいいことは明日からでいいんだと思います」
うまく説明できているか、自信がなかった。
ノエラがまだ何か言いたそうにしていると、後ろにいたマルタが口を開いた。
「初日にすることは、ここで困った時に誰へ話せばよいかを知ることです」
ノエラとロランがマルタを見る。
「掃除の仕方は明日でも覚えられます。今日二人だけで困り事を抱えたまま眠ることのないようにしてください」
「分かりました」
ノエラは丁寧に答えた。
ロランも小さく頷く。
「分かりました」
案内が終わると、アドリアンは礼拝堂では朝と夕方に祈りを行うこと、信徒や相談者が訪れることを二人へ説明した。礼拝中でなければ長椅子へ座っていても構わないが、相談者がいる時は執務室へ近づかず、話の内容を聞こうとしないよう伝えた。
最後の説明を聞いた時、ノエラがリヴィアへ一度視線を向けた。
リヴィアは普段自分がしていることと同じだと思い、頷いた。
昼を過ぎてから、マルタは二人の健康状態やこれまで暮らしていた教会での生活、食べられない物、夜に気をつけることについてアドリアンと書面を確認した。
リヴィアは詳しい内容を聞かず、炊事場で夕食の準備を始めた。
今日はいつもより大きな鍋を使い、これまでアドリアンと二人で食べていた量の倍を作れば少し余るはずだった。
足りないよりはよいが、最初から器へ多く入れない方がよいとマルタに教わっている。鍋の量を増やすことと、最初に盛る量を増やすことは別だった。
野菜を切り、肉を小さく分ける。
アドリアンが火を使い、リヴィアが味を確かめる。
夕食の準備が進み日が暮れてくると、マルタはノエラとロランに近づき声をかけた。
「数日後にまた様子を見に来ます」
「困ったことはアドリアン司祭かリヴィアへ話してください。次に私が来るまで待つ必要はありません」
ノエラが頷くと、マルタはロランへ視線を向けた。
「ロランも、何かあればすぐに話してね」
「分かりました」
マルタが帰ると、教会には四人だけが残った。広さは先ほどまでと変わらないのに、礼拝堂へ二人分の気配が増えたことはすぐに分かった。
夕食の前に、リヴィアは食卓へ器を並べた。
一つ。
二つ。
いつもなら、ここで終わる。
今日はさらに二つ置く。
匙も四本。
水の入った杯も四つ。
卓上が狭くなった。
「座る場所は決まっているんですか?」
「決まっていません。好きな場所へ座ってください」
ノエラはロランが座るのを待った。
ロランは入口に近い椅子を選んだ。
ノエラはその隣へ座る。
アドリアンが向かい側へ座り、リヴィアは鍋に近い場所へ座った。
リヴィアは、教わったとおり最初は少なめに食事を分けた。
ロランは器の中を見たが、何も言わなかった。
ノエラはリヴィアが全員へ配り終えるまで、匙へ手を伸ばさなかった。
アドリアンが胸元で両手を組んだ。
リヴィアも同じように手を組む。
食事を始める前に女神が育んだ命と今日の糧を得られたことへ感謝する。幼い頃からアドリアンと二人で繰り返してきた短い祈りだった。
ノエラとロランも、少し遅れて手を組んだ。
「女神の恵みと、今日の糧に感謝します」
いつもはアドリアンとリヴィアの二人の声だけで唱えていた。
今日はそこへ二人分の声が加わった。
同じ言葉が四つの声で重なり、リヴィアは食卓に人が増えたことを改めて感じた。
祈りを終え、四人は匙を取った。
しばらくの間話す者はいなかった。
ロランは食べるのが早く、ノエラは一口ずつゆっくり食べている。
「味は大丈夫ですか?」
「はい。とてもおいしいです」
「おいしい」
ロランはそれだけ答えて食事を続けた。
先に食べ終えたのはロランだった。
空になった器を前に置いたまま、ロランは鍋へ一度視線を向けた。
「もう少し食べられますか?」
「もう少し食べる」
「では、入れます」
「ありがとう」
ロランは短く礼を言うと、再び食べ始めた。
ノエラの器にも、残りは少なかった。
「ノエラも、もう少し食べられますか?」
「私は大丈夫です」
返事は早かったが、その後で鍋へ視線を向けた。味が合わずに断ったようには見えない。
「鍋にはまだあります」
「でも、ロランの分が足りなくなるといけませんから」
「俺の分はある」
「そうです。全員がもう少し食べても残ると思います。少しだけ入れましょうか?」
ノエラは迷った後、頷いた。
「少しだけ、お願いします」
リヴィアは最初より少ない量を入れて、ノエラに器を返した。
「足りなければ、また言ってください」
「はい」
ノエラは追加された食事を先ほどより少し早く食べた。
リヴィアは自分の器へ目を落とした。
自分は最初に盛った分でもう十分だった。ロランもノエラもそれより多く食べている。
幼い頃、アドリアンから食事が足りているか何度か確かめられたことを思い出した。あの頃から自分はあまり多く食べなかった。
もしかすると自分が小さいことには、昔から食べる量が少ないことも関係しているのかもしれない。
そう思っただけで、それ以上は気にならなかった。今は二人が困らず食べられているかを見る方が大事だった。
食事の途中、ノエラが水の杯へ手を伸ばした。
袖が器の端へ触れる。
杯が傾き、水が卓上へこぼれた。
ノエラの身体が固まった。
「すみません」
すぐに立ち上がりかけたが、動きを止めて不安そうな顔でアドリアンの方を窺っている。
「大丈夫です。器は割れていません。それより、服が濡れていないか先に確かめてください。卓上は拭けば済みます」
「服は大丈夫です」
「では、何も問題はありません」
リヴィアは近くに置いていた布を取り、ノエラへ一枚渡した。
「一緒に拭きましょう」
「……はい」
二人で卓上に広がった水を拭き取る。食事の器へは入っておらず、床にもほとんど落ちていなかった。
「もう大丈夫です」
リヴィアが言うと、ノエラは濡れた布を見た後、もう一度アドリアンを見た。
アドリアンは食事を再開している。
ノエラは椅子へ座り直し、袖を少し上へ折ってから杯を持った。
リヴィアには水をこぼしたことより、ノエラがすぐにアドリアンの顔色を窺ったことの方が気になった。
失敗を隠さなくてもよいと思わせる方が大切だとマルタは話していた。
ノエラが次からも、何かあればすぐに言えるようになればよい。
食事が終わると、ロランが全員分の器を重ねようとした。
「器は重ねすぎると運びにくいです」
リヴィアは二つずつに分けた。
「俺が運ぶ」
「では二つお願いします。私も二つ持ちます」
リヴィアとロランが器を炊事場の洗い場へ運ぶと、ノエラも後から来た。
「私は、何をすればいいでしょうか?」
「今日は拭くところをお願いしてもいいですか?」
「はい」
リヴィアが洗い、ノエラが拭く。
ロランは水を替えようとしたが、アドリアンから今日は場所を覚えるだけにするよう言われた。
「明日は替えていいですか?」
「水の量と運び方を確認してからにしましょう」
「分かりました」
ロランは桶を見たものの、無理に持とうとはしなかった。
三人で器を片づけ、ノエラはリヴィアが戻す棚を見ながら同じ場所へ器を並べた。
「リヴィア」
「はい」
「リヴィアは、ここの修道女なんですか?」
リヴィアは手を止めた。
「いいえ」
「違うんですか?」
「私もこの教会で神父さまに育ててもらっている子供です」
ノエラは少し驚いたようにリヴィアを見た。
「でも教会のことを何でも知っているように見えたので」
「赤子の頃からここで暮らしています。二人より長く知っているだけです」
「掃除も料理もしていますよね」
「手伝っているだけです。できないことは神父さまが行っています」
水の入った桶を一人では安全に運べなかったことを思い出す。
「私も、何でもできるわけではありません」
「そうなんですね」
ノエラは乾いた器を棚へ置いた。
リヴィアはマルタの言葉を思い出した。
子供が生き、育っていくのを助けることも女神へ仕えること。
司祭にならなくても人を助ける仕事はできる。
修道女には子供を守り、育てる仕事もある。
これまで修道女は教会で祈り、司祭の仕事を助ける者だと思っていた。
だがマルタは自分で仕事を選び、子供たちの近くで働いている。
リヴィアは自分が将来何をするのかをまだ考えたことがなかった。
前世の記憶があっても、この世界で自分の仕事を選んだことはない。
それでも修道女になれば、今日のように新しく来た子供を迎え、暮らし方を教え、困った時に手伝う仕事を続けられるのかもしれない。
「どうかしましたか?」
リヴィアは顔を上げた。
「いいえ。少し考えていました」
「何を考えていたんですか?」
「修道女の仕事についてです」
「修道女になりたいんですか?」
「まだ、分かりません。今日初めて考えました」
「そうなんですね」
ノエラはそれ以上尋ねず、残っていた器を棚へ戻した。
片づけを終えると、ノエラとロランは小部屋へ戻っていった。小部屋にはまだ見慣れない二人分の荷物があり、洗い場には四人分の器が並んで乾いていた。
明日の朝になれば、起きる時間も洗面の順番も食事の量もこれまでとは変わる。暮らしてみれば、今日決めたことを変える必要も出てくるかもしれない。
それでも空いていた小部屋には二人がいる。
二人分だった食卓には四つの器が並んだ。
リヴィアは乾きかけた器を見ながら、修道女として子供たちの近くで働く自分の姿を初めてわずかに思い浮かべた。