白い少女はただ善く生きたい ――人々の瞳に映る少女は、ひとつではない――   作:不明さん

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第20話 今度は、その手を

 六人で街へ出ることになった。買う物は食料と石鹸、それから日用品がいくつか。

 

 ノエラとロラン、さらにミアとテオも加わり、教会で使う物の量も少しずつ変わっている。

 

「今日は全員で行くんですか?」

 

 ミアが正面扉の前で尋ねた。

 

「ええ。必要な物を買う場所も覚えておいた方がよいでしょう」

 

「店も見ていい?」

 

「見るだけなら構いません。ただし、気になる店があっても一人で離れないようにしてください」

 

「分かりました」

 

 ミアはすぐに頷いた。

 

 隣ではテオがすでに開いた扉の向こうを見ている。

 

「テオもですよ」

 

 ノエラが声をかけた。

 

「分かってる」

 

「まだ何も言っていないよ」

 

「一人で行かないって話でしょう?」

 

「そうだけど」

 

 テオは先に理解していたらしい。

 

 ノエラは何か言おうとして、やめた。

 

 リヴィアは外套のフードへ手を伸ばし、髪が外から目立たないように位置を直した。

 

 幼い頃は外へ出るたびアドリアンが整えてくれていたが、今では自分で行うことが増えている。

 

「きつくありませんか?」

 

 アドリアンが尋ねた。

 

「大丈夫です」

 

 リヴィアは笑った。

 

 いつもの返事である。

 

 ロランが買い物に使う空の袋へ手を伸ばした。

 

「これ、俺が持つ?」

 

「今は空ですから、誰が持っても構いません」

 

「じゃあ持つ」

 

 ロランが袋を手にしたところで、アドリアンが声をかけた。

 

「では行きましょう」

 

 アドリアンを先頭に、六人で教会を出た。

 

     * * *

 

 王都の南東地区は、昼を過ぎても人通りが多い。

 

 道の両側には、食料、布、日用品を扱う店が並んでいた。

 

 店先に並んだ品物や魔力石を使う器具から漏れる光が視界へ入るたび、リヴィアは少し目を細める。

 

「これ、何に使うんですか?」

 

 ミアが店先の金属製の器具を指した。

 

「分かりません」

 

「リヴィアも知らないんですか?」

 

「はい」

 

「神父さまは?」

 

「調理に使う器具だと思いますが、私も詳しい使い方は知りません」

 

「じゃあ、あれは?」

 

 ミアが次の物を指して質問を続けている間に、テオはもう別の店の前で足を止めていた。

 

「神父さま、あれ見てきていい?」

 

「皆でそちらへ行く時にしましょう」

 

「今じゃ駄目?」

 

「今日は必要な物を先に買います」

 

「分かった」

 

 不満そうに見えたが、テオは戻ってくる。

 

 ノエラはほっとしたように肩を下げた。テオの隣へ立とうとしたが、少し考え、必要以上に近づかず歩き始めた。

 

 最初に買った保存食の袋を持つロランを見て、リヴィアは尋ねた。

 

「重くないですか?」

 

「まだ大丈夫」

 

「重くなったら言ってください」

 

「うん」

 

 ロランはすぐに頷いた。荷物は途中で交代するよう、アドリアンからも言われている。

 

 人数が増えれば、街へ出るだけでも確認することが増えるらしい。

 

 アドリアンの注意は、自然とミアとテオの方へ向いていた。リヴィアとは昔から何度も一緒にこの道を歩き、人混みで勝手に離れたこともない。

 

 今は、自分より二人の方を見ておく必要があるのだろう。そうなるのが当然だと分かっている。それでも、二人で歩いていた頃を思うと、ほんの少しだけ寂しかった。

 

「テオ、そっちは違うよ」

 

 前からノエラの声がして、リヴィアはそちらへ目を向けた。

 

「見ただけ」

 

「道の端まで行ってたでしょう?」

 

「まだ離れてない」

 

「でも……」

 

「ノエラ」

 

 アドリアンが呼ぶ。

 

「はい」

 

「声をかけてくれたことは助かります。ただ、テオが戻ったなら、それで大丈夫ですよ」

 

「……はい」

 

 ノエラはそれ以上言わず、テオもアドリアンの近くへ戻った。

 

 そのやり取りを見ながら歩いていると、通りの先に店から漏れるものとは少し違う淡い光が見えた。

 

 気になって足を緩めると、何軒か先の薬屋の入口から少し離れた壁際に一人の子供が立っており、その身体の近くで光が揺れている。

 

 古びた頭巾を深く被っている。

 

 服装だけを見れば、痩せた少年のようだった。

 

 片手に小さな布袋を、もう片方に何度も折り畳まれた紙を持っている。

 

 薬屋の入口を見る。

 

 周囲を見る。

 

 また入口を見る。

 

 入ろうとしているようにも見えるが、足は動かなかった。

 

 リヴィアはその子に見覚えがある気がした。顔立ちは以前より大人び、背も高くなっているため、すぐには分からない。

 

 子供が周囲を確かめるように振り返った拍子に、頭巾の端がずれた。

 

 黒い髪が見えた。

 

 リヴィアは立ち止まり、以前同じように古い頭巾から黒い髪が覗いた子供を見たことを思い出した。

 

 硬貨を持っていた。

 

 食料を買おうとしていた。

 

 それなのに、何も売ってもらえなかった。

 

 自分は止められなかった。

 

 正確には、止める前に子供が逃げた。

 

 目の前の子供が薬屋から視線を外し、リヴィアたちの方を見る。その視線がアドリアンで止まったように見え、身体がわずかに強張って一歩後ずさった。

 

 リヴィアが振り返ると、アドリアンは少し離れたところでテオへ何かを説明し、ミアも隣から話しかけていた。ノエラは二人を気にし、ロランは荷物を持ったままアドリアンのそばにいる。

 

 神父さまへ話してから行く。

 

 普段なら、それでよい。

 

 けれど。

 

 もう一度前を見る。

 

 黒髪の子供が薬屋から離れようとしていた。

 

 今から神父さまを呼んでいたら。

 

 また、行ってしまう。

 

 考え終わるより先に、リヴィアは歩き出した。人の間を抜けると、子供もこちらに気づいて足を速める。

 

「待って」

 

 声をかけても止まらない。あの時と同じだった。

 

 追いついたリヴィアは手を伸ばし、子供の手をつかんだ。

 

「――っ」

 

 相手が大きく身体を引いて振り払おうとし、リヴィアは自分が何をしたのかに気づいた。

 

「ごめんなさい」

 

 手を離す。

 

「急につかんでごめんなさい」

 

 子供は数歩離れた。

 

 逃げるかと思ったが、今度は止まった。

 

 つかまれた手とリヴィアを交互に見る。

 

 先ほどまで振り払おうとしていた腕から、急に力が抜けたように見えた。

 

 けれど、それがなぜなのかは分からない。

 

「何」

 

 低い声だった。

 

 警戒しているように聞こえる。

 

「ごめんなさい。逃げると思ったから」

 

「逃げたら駄目なの」

 

「駄目ではないです」

 

 言ってから、少し違う気がした。

 

「でも、前にも逃げたから」

 

 子供の目がわずかに動いた。

 

 リヴィアは頭巾の奥を見る。

 

 やはり、あの時の子だと思う。

 

 向こうが自分を覚えているかは分からない。

 

「何の話」

 

「前に、食べ物を買おうとしていたでしょう?」

 

 子供は答えず、リヴィアのフードを見たあと、その背後へ視線を移した。アドリアンたちがいる方向だった。

 

 また逃げるかもしれない。

 

 リヴィアはそれ以上以前のことを聞かず、代わりに子供が持つ小さな布袋と紙、それから使い終わったらしい薬の包みを見る。

 

「薬がいるの?」

 

 子供の指が動いた。

 

「……なんで」

 

「薬屋の前にいたから」

 

 リヴィアは入口を見る。

 

「それに、それは前の薬ですか?」

 

 子供は古い包みを隠さなかった。

 

 しばらく黙った後、小さく頷く。

 

「買いに来たの?」

 

「……うん」

 

「入らないんですか?」

 

 答えはなかった。

 

 それだけで、以前の店を思い出した。

 

 黒い髪だから。

 

 硬貨を持っていても、売ってもらえなかった。

 

「代わりに買ってきましょうか?」

 

 子供が顔を上げた。

 

「……あんたが?」

 

「はい」

 

「なんで」

 

 また同じ問いだった。

 

 リヴィアは少し考える。

 

「薬が必要なんですよね」

 

「そうだけど」

 

「私は店に入れます」

 

 それ以上の理由は必要ないように思えた。

 

 子供はリヴィアを見ている。

 

 すぐには何も渡さなかった。

 

「お金はありますか?」

 

 尋ねると、布袋を少し持ち上げた。

 

 中から硬貨の触れ合う音がした。

 

「ある」

 

「薬は、その包みと同じ物ですか?」

 

「これ」

 

 子供は折り畳まれた紙を示した。

 

「これを見せれば分かるって言われた」

 

「見てもいいですか?」

 

 子供は少し迷ってから紙を渡した。

 

 何度も折られているため、端が柔らかくなっている。

 

 リヴィアは開いた。

 

 紙には薬の名前、一度に使う量、使う回数が書かれていた。リヴィアには読めるが、この子も同じように読めるのかは分からない。このまま同じ薬を買って渡すだけでよいのか気になった。

 

「この紙に書いてあること、読めますか?」

 

 子供の表情が硬くなったように見えた。

 

「……少し」

 

「全部は?」

 

「分からない字もある」

 

「薬の使い方は分かりますか?」

 

「前に使った」

 

「誰が使うんですか?」

 

 また一瞬、返事が遅れた。

 

「妹」

 

「妹さん」

 

「息が苦しくなる時がある」

 

 子供の手が空になった薬の包みへ触れる。

 

「これがないと駄目だって」

 

 声が少し強くなった。

 

 誰からそう聞いたのかまでは分からない。

 

 リヴィアも尋ねなかった。

 

 必要なのは、その薬を間違えずに持ち帰ることだ。

 

「分かりました」

 

 紙を一度折る。

 

「この紙と前の薬の包みを借りてもいいですか?」

 

「……うん」

 

「お金も預かります」

 

 子供は布袋を握ったまま少し迷ってから差し出し、リヴィアは両手で受け取った。

 

「……残り、返す?」

 

「はい。薬を買った後に、残った分も返します」

 

 子供はまだ疑うように見ていた。

 

 それでも、布袋を取り返そうとはしなかった。

 

「ここで待っていてください」

 

「……うん」

 

 リヴィアは薬屋へ向かった。背後から見られているような気がして一度振り返ると、子供は壁際からこちらを見ていた。

 

 そのまま扉を開け、薬屋へ入る。

 

 店内には乾燥させた薬草や小さな瓶、紙包みが並んでいた。

 

 魔力石を使った器具もあり、その周囲が淡く光っている。

 

 奥にいた店員が顔を上げた。

 

「いらっしゃい」

 

「あの、薬を買いたいんです」

 

「どんな薬だい?」

 

 リヴィアは預かった古い包みと紙を出した。

 

「これと同じ物が必要だそうです」

 

 店員は紙を受け取り、包みも確かめる。

 

「使うのはあなた?」

 

「違います。妹さんに使うそうです」

 

「妹さん?」

 

「私は買いに来るのを頼まれただけなので、年齢までは分かりません」

 

 分からないことを分かったふりはできない。

 

 店員はもう一度紙を見る。

 

「前にもこの薬を使ってるんだね」

 

「はい。この包みと同じ物だと言っていました」

 

「なら、同じ物はあるよ」

 

 店員が棚の奥から薬を取り出す。

 

 前の包みと同じ形なのを見て、リヴィアは少し安心した。

 

「この紙に、使う量も書いてありますか?」

 

「書いてある」

 

「使い方を私にも教えてもらえますか?」

 

 店員がリヴィアを見る。

 

「あなたが使うわけじゃないんだろう?」

 

「渡す相手が、この紙を全部読めるか分からないんです」

 

「なるほど」

 

 店員は紙と薬を並べた。

 

 それから、一度に使う量、使う回数、使用する時に気をつけることを順番に説明した。

 

 リヴィアは説明を一つずつ聞き、分からないところはその都度聞き直した。説明が終わると、覚えた内容を同じ順番で言い直した。

 

「それで合ってる」

 

「紙にも書いてもらえますか?」

 

「今ある紙にも書いてあるが」

 

「読めない字があるそうです。できれば、分かりやすくお願いします」

 

「分かったよ」

 

 店員は新しい紙を出し、古い紙の内容を確認しながら薬の使い方を改めて書き直し、薬の包みにも紙と見比べやすいよう印をつけた。

 

「これなら、前の紙と一緒に見せれば別の薬屋でも分かるだろう」

 

「ありがとうございます」

 

 リヴィアは代金を確認し、預かった硬貨から必要な分を支払って、残りを布袋へ戻した。

 

 薬。

 

 古い包み。

 

 元の紙。

 

 新しく書いてもらった紙。

 

 全部あることを一つずつ確認する。

 

「ほかには?」

 

「大丈夫です」

 

 リヴィアは頭を下げた。

 

「ありがとうございました」

 

 店を出ると外の明るさに目を細め、そのまま先ほどの場所を見る。子供はまだ壁際にいて、こちらを見ていた。

 

 逃げずに待っていてくれた。

 

 リヴィアはそちらへ歩く。

 

 途中で、もう少し遠くへ視線を向けた。

 

 通りの向こうに、アドリアンたちが見えた。

 

 ミアとテオが店先を見ている。

 

 ノエラもそばにいる。

 

 ロランは荷物を持っていた。

 

 アドリアンがこちらを見ている。

 

 目が合ったような気がした。

 

 探していたのかもしれない。

 

 けれど、四人を置いてこちらへ来る様子はなかった。

 

 リヴィアが薬屋の前にいることが分かったからだろうか。

 

 後で謝らなければならない。

 

 先に、頼まれたことを終わらせる。

 

「買えました」

 

 子供の前へ戻る。

 

 薬を見せると、その視線がすぐに包みへ向いた。

 

「同じ薬だそうです」

 

「本当に?」

 

「はい。前の包みも確認してもらいました」

 

 リヴィアは残った硬貨の入った袋を差し出した。

 

「まず、おつりです」

 

 子供が受け取る。

 

 中を開き、硬貨を確かめた。

 

 数が合っているか確認しているのだろう。

 

 リヴィアは急かさずに待った。

 

 やがて、子供が顔を上げる。

 

「……ある」

 

「よかったです」

 

 次に古い薬の包みと元から持っていた紙を返す。

 

「これは元の物です」

 

「うん」

 

「それから、こっちが新しく書いてもらった紙です」

 

「新しい?」

 

「使い方をもう一度書いてもらいました」

 

 子供の表情が少し曇る。

 

 リヴィアは紙を渡す前に尋ねた。

 

「読めるところまで、一緒に確認してもいいですか?」

 

「……うん」

 

「薬屋の人から、使う量と回数、それから気をつけることを聞いてきました」

 

 リヴィアは説明された内容を順番に伝えた。

 

 子供は黙って聞きながら、途中で新しい紙へ目を落とした。分かる字を探しているようだった。

 

「ここは分かりますか?」

 

「それは分かる」

 

「こっちは?」

 

「……分からない」

 

「では、そこは今言った内容です」

 

 リヴィアはもう一度説明する。

 

「覚えられそうですか?」

 

「覚える」

 

 返事がすぐに返ってきた。

 

 少し強い声だった。

 

 妹に必要なことだからだろうか。

 

「念のため、使い方を一度だけ言ってもらってもいいですか?」

 

 子供は一瞬眉を寄せたが、それでも先ほど聞いた内容を順番に言った。リヴィアが薬屋で聞いた内容と合っている。

 

「大丈夫です」

 

「子供扱いするな」

 

「ごめんなさい」

 

 リヴィアは素直に謝った。

 

「でも、大事な薬だから、間違っていない方がいいと思って」

 

 子供は答えない。

 

 けれど、怒って去ることもなかった。

 

 リヴィアは最後に薬を差し出した。

 

「これで全部です」

 

 子供が手を出すと、リヴィアはその手のひらへ薬を置き、落とさないようもう片方の手も添えた。

 

「気をつけて持って帰ってください」

 

 子供の指が薬を握る。

 

 リヴィアは薬から視線を上げ、子供の顔を見て笑った。

 

 子供は自分の手を一度見た。

 

 握った指から、先ほどまでの強張りが少し抜けているように見えた。

 

 それから薬を見る。

 

「……ありがとう」

 

 小さな声だった。

 

「はい」

 

「妹さんのところへ行くんですよね」

 

「うん」

 

「気をつけて」

 

 子供は薬と紙を服の内側へしまい、頭巾を直して黒い髪を隠すと、通りの先へ向かった。

 

「またね」

 

 声をかけると、子供は少しだけ振り返った。何も言わないまま人の流れへ入り、遠ざかっていく。

 

 以前も、同じように背中を見送った。

 

 あの時は、何もできなかった。

 

 食料を買えないまま、硬貨だけを持って逃げていった。

 

 今日は違う。

 

 同じように遠ざかっていく背中だった。

 

 けれど、その手には必要な薬がある。

 

 それだけで十分な気がした。

 

     * * *

 

「リヴィア」

 

 戻ると、アドリアンが名前を呼んだ。

 

「はい」

 

「急に見えなくなったので驚きました」

 

「すみません」

 

 リヴィアは頭を下げた。

 

「声をかけずに離れました」

 

 アドリアンは少しだけ眉を寄せている。

 

 怒っているというより、心配しているように見えた。

 

「何かあってすぐに動かなければならない場合もあるでしょう」

 

「はい」

 

「ですが、次に同じことがあれば、可能なら離れる前に声をかけてください。難しければ、戻ってからでも構いません」

 

「分かりました」

 

「無事なら、それでいいです」

 

 それ以上は聞かれなかった。

 

 リヴィアも、自分からは話さなかった。

 

 隠したいわけではない。

 

 尋ねられれば答えるつもりではある。

 

 ただ、以前あの子はアドリアンの司祭服を見て逃げた。

 

 今日も、アドリアンに気づいた後に離れようとしていた。

 

 もし神父さまが探しに行けば、また怖がらせてしまうかもしれない。

 

 必要な薬はもう渡せたのだから、今はそれでよいと思った。

 

「リヴィア、次はあっちのお店?」

 

 ミアが尋ねる。

 

「次は石鹸だったでしょう?」

 

 ノエラが買い物の順番を確認する。

 

「そうでした」

 

 リヴィアは持っていた買い物の紙を見る。

 

「この先の店です」

 

「今度こそ俺が袋持つ」

 

 テオが言うと、ロランが答えた。

 

「今のは俺が持ってる」

 

「次に増えたら」

 

「じゃあ次」

 

「重さを見てからにしてください」

 

 アドリアンが二人へ言う。

 

「はい」

 

「分かった」

 

 六人で再び歩き始めた。リヴィアが一度だけ後ろを振り返っても、古びた頭巾は人混みにも薬屋の前にも見えなかった。

 

 前へ向き直ると、少し先を歩くアドリアンの背中が見えた。

 

 あの時より、少しだけ自分にできることが増えた気がする。ただ、急にいなくなれば心配をかけてしまう。次は、できるなら声をかけてから行こう。

 

 リヴィアはそう思いながら、皆の後を追った。

 

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