“V.Ⅰ(ヴェスパー・ワン)”、ワートリ世界に転生する。   作:サクラン

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原作や他の人の二次見てると「頭の回転滑らか過ぎるやろ…」ってイコさんの気持ちが追体験できる。いやマジであれが一人の人間の脳から出力されてるのヤバい。

それを横目に私はわけの分からない方向性の作品を投稿しているわけですが()

それではお楽しみ下さい。


第3話 同僚

(なるほど…いきなり戦闘訓練とはな…)

 

 風上は目の前の戦闘を見ながらぼんやりと思う。

 入隊式を経て本部長の忍田に案内されて辿り着いたのは仮想戦闘を行う為の訓練室だ。

 個々人の戦闘に対する適正を見る為に最初から大型近界民(ネイバー)が相手という大盤振る舞いだ。ただ訓練用にある程度小型化させているらしく、確かに映像越しで見たものより一回り程度小さい。

 

(とは言え、変にグダグダをするよりはずっと良い。トリオン体の戦闘にも慣れる良い機会だ)

 

 風上は合格が判明してすぐ入隊式だった為、トリオン体に換装するのも今日が初めてだ。“フロイト”としても生身の格闘訓練や鍛錬は積んでいたが、それでも武器─ましてや刀を使った戦闘は初めてである為、まずは慣れることが重要だ。

 

(しかしほとんどの奴が弧月(これ)とはな。手ぶらの奴もちょくちょく見えるが…トリガーの種類ってのは思ったより少ないのか?)

 

 周囲の者を見渡しながら、自身の腰の左側に提げてある武器に目を向ける。ボーダーでは“トリガー”と呼ばれる物を起動してトリオン体に換装し、そこから生成される武器によって近界民を討伐するらしい。そしてC級隊員はまずはトリオン体での運動、トリガーを使った戦闘に慣れる為に攻撃用のトリガー一つでB級昇格を目指して行く仕組みとなっている。

 渡されるトリガーは入隊試験の適正次第で変わるらしく、風上が渡されたのは“弧月(こげつ)”。日本刀に酷似した形状のブレードトリガーだ。

 他にもある程度種類があるものと思っていたが、周囲の者達を見てみるとほとんどが弧月を持っており、その中にポツポツと手ぶらの者がいる程度だ。

 

(まあまだ設立してからすぐの組織だしそういうこともあるのか。これから増えて行くだろうし─お?)

 

 これからトリガーの種類が増えて行くことに期待していると、訓練室に手ぶら入った隊員が戦闘を開始する。

 彼は自身の右手を軽く翳したかと思うとそこから光の立方体が出現し、それが細かく分割されて近界民に向かって射出された。

 

(なるほど。あれが手ぶらだった奴の攻撃手段か。おそらくトリオンをあの形で出力してそれを飛ばして攻撃するって感じか?見たところ弾は真っ直ぐにしか飛ばないようだが…やれることの範囲によってはドローンと似た感覚で使えそうだな)

 

 その攻撃方法に風上は前の世界で愛用していた“レーザードローン”を思い出す。機体に備えられた操縦桿を使って操作するのとは全く違うだろうが、慣れれば相手の追い込みに十分利用できるだろう。

 

(何よりあのロン毛…本当に初心者か?多少の粗はあるが今までの奴と比べると随分“慣れてる”…歳はこの中だと一番上っぽいが…にしたってあれは“戦闘を識ってる“動きだ)

 

 そして今度は今戦っている隊員を注視する。

 “今の”風上は素人だが、それでも“フロイト”として積み重ねて来た経験値とそれから成る観察眼は未だに健在だ。戦う姿や立ち振る舞いから相手の力量を見抜くことなど造作もない。

 その眼で見ると…今戦っている隊員は明らかに他の隊員よりも戦闘に“慣れている”。トリガーを使った戦闘の良し悪しは自分も大した経験はないので分からない。だがあの男は…“戦闘そのもの”を識っている。

 

(自身の安全をまず第一に、次点で相手の手札や動きを確実に見切りながら弾で確実な詰めをかけて行く…これまでほとんどの奴がトリオン体の戦闘に浮かれてる感じだったのにコイツはあくまで冷静に無駄なく勝つことを最優先にしている動きだ。…この動きはまさか…)

 

 風上はその戦い方に何処か見覚えがあった。というか自分の“古い知り合い”にそっくりな動きをする者がいた。機体を操作して行うAC戦とは全く違うが、動きの癖や戦法がそのままトリオン体に置き換わったような動きをしている。

 

『記録、48秒』

 

 そして遂に弾丸が近界民の口内の目を貫き、その巨体が倒れ込む。堅実な攻め方ではあったが手並み自体は鮮やかそのものであり、これまでそういなかった1分を切る早さだった。

 戦闘を終えた隊員は踵を返し、訓練室から出て行く。

 そのタイミングで風上は確かに隊員の顔を確認した。

 

「!!」

 

 顔を見た風上は目を見開いて驚く。顔立ちそのものは別に不自然なものではない。強いて言うなら少し老け顔に見えるがそれだけなら他人として気にする程のものでもない。

 風上が驚いた理由はむしろその逆。その顔が─以(・)前(・)の(・)世(・)界(・)で(・)の(・)知(・)り(・)合(・)い(・)の(・)そ(・)れ(・)だ(・)っ(・)た(・)か(・)ら(・)だ(・)。

 その隊員は訓練室から出て行くと同じ年頃─こちらも少し老け顔でロン毛─の隊員と談笑している。

 

(アイツ…立ち振る舞いは前のそれだが、記憶はあるのか?何分知り合いがいるとすら思わなかったしな…普通に馴染めてるっぽいが、俺と同じようにこの世界での記憶もあるならそれも当然か…)

 

 “フロイト”として見てもその人物は前の世界と同じような仕草、立ち振る舞いをしている。が、自分が記憶を引き継ぐことができた理由も全く分からないので、見た目は同じだが記憶は何故か失ってしまっただけの別人という可能性もあり得る。

 

(まあ、これが終わった後に話しかければ良いか。次は俺の番だしな)

 

 そしていつまでもその隊員だけのことを考えているわけにも行かない。いよいよ風上の番が来た。

 訓練室の中に入り、近界民と相対する。多少小型化してあるとは言えそれでも普通の人間の視点では見上げなければならないような巨体だ。

 

(こうして見るとACってデカかったなぁ。近界民はコイツで“大型”ってことなら機動性はACより劣るか…?まあモノによってはデカくて速い奴もいるかもだが)

 

 前の世界の兵器を思い出しながら弧月の鞘に指を掛ける。

 この世界でもある程度動ける方ではあるが刀を振った経験は前の世界を含めてもない為、まずは弧月の使い心地を学ばなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「さて─退屈させてくれるなよ」

 

『開始』

 

 呟くと同時にアナウンスが流れ、近界民が風上に向かって大口を開けて突っ込んで来る。ACの速さと比べると鈍足にも程があり、すれ違いざまに目を叩き切ってやればすぐにでも終わらせることも可能だろう。

 

「とは言え、それじゃあ“慣らし”の意味が無いしな」

 

 風上は攻撃が直撃するギリギリで地面を蹴り、近界民の攻撃を躱す。攻撃が空振った近界民を尻目に、トリオン体の運動性能を体感する。

 

「動き心地は生身と差がないな。身体能力だけそのまま超人になったような感じか。慣らしていけば立体的な動きも行けるのか…?」

 

 動きの感覚を馴染ませるようにその場で軽くジャンプする。

 トリオン体に換装すると本来の生身はトリガー内に格納されているらしいが、特に異物感やトリオン体との乖離は感じない。違和感が無さ過ぎる分むしろこれだけ動けることの方が不思議に感じる。

 

「何がどうあれまずはトリオン体の性能を100%引き出せなきゃ話にならなそうだな。漠然と動くだけだと非効率だし…ここは─」

 

 風上が自分の中で動きのイメージをしているとこちらに向き直った近界民がまた体当たりを仕掛けて来た。風上はその攻撃を目にすると一瞬身体を屈め─

 

 

 

 

 

「━━━━━━━━━━ッ!」

 

 ─バネのように一気に踏み込んで近界民の攻撃を躱し、弧月で左前脚を斬りつけた。そしてその勢いのままに近界民の背後に回り込むと、今度は地面を蹴って大きく跳躍し、近界民の背中に弧月を叩き込んだ。

 

「─硬いな」

 

 手応えを感じると共に呟くと、振り落とそうと暴れる近界民の背中から飛び降りた。

 

「やっぱり自分の中で“速く動けるイメージ”を持つことが大事っぽいな。あとは俺自身がその感覚に慣れることか」

 

 自分の考えが上手く行ったことに歓びを感じつつ、その感覚を思い出す。

 風上がイメージした動きは─自らの愛機だった“ロックスミス”。

 機体重量はACの中だと真ん中あたりの為、理論上の最高速には当然届かないが、全速力でブースターを噴かして相手の背後を取り、ブレードで斬り付けるという動きはたまにしていた。

 世界が変わってもなお鮮明に思い出せるからこそ、人間離れしたトリオン体の動きのモデルケースとしては十分だと判断した。

 久しく超高速の環境にいなかった為、そこに合わせる感覚が鈍っていることは実感したが、それはまた思い出して行けば良い。

 

「しかしこの弧月…硬さがあるからか若干重いな。片手で問題なく振るにはにはちょっと練習がいる」

 

 そして次の課題は武器の扱い。今の一連の流れで風上は弧月を抜いたまま動き回っていたが、片手で扱うには少し気張らなければならない程度に重さがある。

 トリオン体の動きに関しては早速良いイメージができたのと、元々超高速戦闘は飽きる程行っていたのでこちらはモノにするのにそう時間は掛からないと感じた。

 しかし弧月の扱い方に関してはこの重さからなる“攻撃速度の低下”という課題が少し解決が難しい。

 風上は同年代の男子の中だとやや身長が低めであり、それも相まって弧月を片手で持った状態で身体のバランスを保つのが難しい。トリオン体はACと違い防御力は一律である為、AC戦以上に相手の攻撃を躱すことが重要になる。もちろん風上としても攻撃は全て躱す意気込みだが、それでも同格以上の相手となれば片手を奪うくらいはして来るだろう。だからこそ今の内から片手で弧月を扱えるようになることは絶対条件なのだが…

 

「フン、まあ良い。これぐらい歯応えがあった方が極め甲斐があるしな。スペック自体は優秀だし、使うには十分だ」

 

 しかし“フロイト”であった頃より癖のないベストセラーから他に誰が使うんだと言いたくなるようなマイナージャンルまで、ありとあらゆる武装に触れてその使用法を探求して来た風上にとって多少の癖など敬遠するどころかむしろ“実力向上のチャンス”として喜んで飛びつきに行く。

 と言うか少し触った程度ではあるが弧月の欠点らしい欠点が重さぐらいしかない。その重さもしっかりと扱えるようになれば十分片手持ちも視野に入る程度だし、裏を返せば相手の防御を崩す衝撃力にも変えられるので完全なデメリットというわけでもない。

 

「弧月の性能も大体分かったし…さっさと終わらせるか。あとは訓練と対戦で慣れていけば良い」

 

 自身の中で推測と情報の整理を完結させ、風上はこれ以上この場で得られるものはないと判断した。強いて言うならトリオン体の感覚に慣れることはまだできるが、相手はデカいだけの的だし、それなら訓練や対戦の方が得られるものは多いだろう。

 それを露も知らない近界民は大口を開けて風上を食らおうと─

 

 

 

 

 

「その動きはもう見た」

 

 

 

 

 

 ─した瞬間、跳躍してすれ違いざまに弧月で目を両断し、その巨体を訓練室の床に伏せた。

 

『記録、59秒』

 

 結果はギリギリで1分切り。が、風上からすればB級昇格は遅いか早いかの違いでしかないので、結果の優劣などどうでも良かった。

 

「さて、あとは残りの奴らの見物か。どれだけ面白そうな奴がいるか…」

 

 よって関心はまだ戦闘を終えていない残りのメンバーに移る。

 見たところまだポツポツと興味深い者達もいる。少なくとも落胆して終わることはないだろうと、風上は期待に胸を膨らませた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「アイツは…」

 

「ん、どうした?今の奴が気になるのか?」

 

 風上の前に模擬戦を終わらせた隊員─日向野幸助(ひがのこうすけ)は自らの後に模擬戦を行った風上の姿を捉えた。

 

「…いや、古(・)い(・)知(・)り(・)合(・)い(・)によく似ててな。ちょっと昔を思い出した」

 

「そう言えばお前は県外から三門市(ここ)に来たって言ってたな。しかしその割には随分歳の差があるように見えるが」

 

 同じく風上の姿を捉えたロン毛で大人びた顔立ちの青年─東春秋(あずまはるあき)は、中学生程度に見える風上の容姿を興味深そうに見つめる。

 

「昔少し面倒を見たことがあっただけだ。まさかこんな所まで来てわざわざこんな組織に入る必要もないだろう」

 

 日向野はそう言って首を振り、眠たげな─というか睡眠不足にも思える目つきで言った。

 

「それより、一通り終わったらコーヒーを飲もう。ここには食堂もあるらしい」

 

「お前またそんなことを…毎日飲み過ぎてるからそんな不健康な表情になるんじゃないのか?」

 

「これは自前だ。放っとけ」

 

 東が少し呆れたように軽口を叩き、日向野もそれに対して軽口で返す。その深緑色の瞳は、何処かずっと遠くを見ているようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 彼(・)の周囲は、いつも血と死と硝煙の香りに塗れていた。

 コーラルを使って人間の知覚や機能を拡張し、ACの操作に適した改造人間─通称“強化人間”。彼は初めの世代から技術がワンランクグレードアップした世代、“第2世代強化人間”として身体を改造された。

 しかしグレードアップとは名ばかりで、コーラルを利用した第1〜第6世代の強化手術は失敗すれば死、あるいはACを動かす為の機能以外は全て死んでしまうような劣悪なものであり、成功したとしても感情の起伏が激しくなる等の副作用も見られる。

 彼の場合は死ぬのは免れたが、脳をコーラルで焼かれたことによって感情の起伏が著しくゼロに近くなり、軽い言葉を話すのがやっとという廃人に近しい状態だった。

 

 ACに乗り込み、殺し殺されかける毎日。

 そんな死んだ方がマシと言えるような日々の中であっても、彼にとってはそれが日常だった。

 そんな時だ。彼に一個の存在が近付いた。

 

「この世界の理を変え、新たな自分として生まれ変わりたくないか?」

 

「自分に協力してくれるなら、必ずや貴方の望みも叶うことだろう」

 

 何処から嗅ぎ付けて来たのか、その存在は世界をひっくり返すことのできる事象を知っているようだった。

 正直言って怪しさ満点だったが…どうせ根無し草なのは変わらない為折角なら少しの展望を持っても良いだろうと、その計画に乗ることにした。

 

 どうやらその計画には自分のようなコーラルを利用した旧世代型の強化人間が必要不可欠らしく、他にも幾人か協力者の目星をつけているようだった。

 彼は脳をコーラルで焼かれていたがACの操作技能はもちろん、思考能力、情報処理能力は強化人間の中でも更に秀でていた為、戦力としてもそうだが裏工作要員、諜報員としても引く手数多の優秀な独立傭兵として名を馳せていた。

 そしてその優秀さは遂に企業の目にも留まることとなり、“アイランド・フォーの動乱”の際には諜報員として招集され裏工作、暴れ回る“V.Ⅰ(ヴェスパー・ワン)フロイト”のバックアップを務め、“アーキバスグループ”の勝利の一端を担うこととなった。

 

 そしてその能力の高さに目を付けたヴェスパー第2隊長は彼をスカウト、彼は少し悩んだがその時点で計画の鍵に成り得る別の旧世代型強化人間が見つかり、協力者となっていた為彼は企業に潜入し計画を円滑に進めるべくスパイとして潜り込むことを決意。

 その際流石に旧世代型のままでは活動に支障が出るということで脳のコーラルの焼き付きを中和する第9世代の強化手術を受けることを条件に承諾、第2隊長もそれを許可し彼はその優れたACの操作技能、そして何より諜報員としての素質を見出されヴェスパー部隊の隊長職でも上位の立ち位置、“ヴェスパー第3隊長”及び“情報局長”としての肩書を手にした。

 

 第9世代の強化手術を受けてから、彼の世界は変わった。

 ヒビ割れていた音は鮮明に聞こえ、くすんで曇っていた景色は色を持ち、散々嗅いできたハズの血と硝煙の香りはむせ返るような酷い匂い、最低限の栄養を摂る為に食べていたレーションはあまりに不味く、吹雪の舞う大地に肌が晒されれば貫かれたような痛みが走った。

 ヴェスパー部隊に入り、ルビコンに来てからも生活は大して変わらなかった。敵対する企業や“惑星封鎖機構”の裏を掻くべく莫大な量の情報を精査し、時にACに乗り込んで敵を蹂躙する。今まで何とも思っていなかった、人を殺す際に聞きたくもない断末魔や最期の言葉を聞くことになった。

 

 だが、悪いことばかりじゃなかった。

 

 ヴェスパー部隊の同僚は誰も彼も癖が強く、一筋縄ではいかない曲者ばかりだったが、そんな彼らとの生活は嫌いじゃなかった。

 第8隊長は少々口が軽いが勤務態度は素直で教えたことはすぐに自らの力としていった。

 第7隊長は旧世代との狭間の世代で手術への恐怖心から人格が歪んでしまったものの、そんな彼の恐怖心はよく理解できた。

 第6隊長は真面目過ぎたきらいがあったが、指示に対しては忠実で唯一の女性でもあったので話すと新鮮な気分だった。

 第5隊長は隊の中でも随一の人格者で、共に軽口を言い合いながら飲み合うフィーカは不味いけれども嫌いじゃなかった。

 第4隊長は新進気鋭のエースであり、性格も好青年で見所が多かった。そして何より─自身と同じように目的を持ってこの場所に来ていた。実力は申し分なかったがその分立ち回りには青臭さが垣間見え、事実上の敵ではあるがなんだか放っておけなかった。

 第2隊長は高慢で常に上から目線だったが、その分最も部隊で働いていることは間違いなく、時々付き合うティータイムは第5隊長とはまた違った趣があった。

 そして部隊のトップ兼エースである第1隊長は敵対企業の製品すら平気な顔をして発注する為搬入や処理には苦労させられるも、彼からの報告とその圧倒的な実力をフィーカを飲みながら見るのは嫌いではなかった。

 

 圧倒的に何かが良くなったわけじゃない。むしろ世界をより良く感じやすくなったせいでうんざりすることも多い。

 だが─そんな生き方の中で、時折ふと感じる小さな喜びや幸せが、とても心地良かった。そしてそれこそが─人間として、“当たり前”の生き方なのかもしれないと、彼は思った。

 そしてそこまで来ると、むしろ新しい世界など興味はなく、むしろ恐ろしかった。自分が自分でなくなる。これまで残酷ながらもその中で感じて来た美しさや尊いものを感じられなくなる。世界を感じられるようになった彼にとって、それはとても恐ろしい事実だった。

 

 だから彼はギリギリまで芝居を打った。

 彼を勧誘した存在は確かに有能かつ能力もあったのだが、何故かやけに人間を侮る上にアドリブに弱いというあまりにも人間臭過ぎる欠点があり、ルビコン内の騒乱のかなり序盤で計画の要であった旧世代型の独立傭兵をレイヴンによって撃破され、打てる手がほとんど無くなってしまっていた。

 それでもしぶとく裏工作を行い、無論彼にも指示が飛んで来ていたのだが、彼はそれを適当な報告で誤魔化し、かの存在がヤケを起こさないようにギリギリのバランスで調整していた。

 

 そうしている内にレイヴンによってフロイト撃墜の報が入り、最後の足掻きとして差し向けた要撃艦隊も壊滅、解放戦線の最後の希望であったヴェスパーにスパイとして潜入していた元第4隊長もレイヴンとの死闘の末撃墜、そしてレイヴンの初めての友人だったコーラルの意思を乗せた機体も撃破され…ルビコンは史上二度目の災禍に見舞われることとなった。

 彼も宇宙から拡がる絶望的な光景はその目で見ていたが、死への恐怖心は湧いてこなかった。これまで屍の山を築き上げて来た以上、自分がその一部になることは覚悟していた。それどころか、むしろ満足感すらあった。自分は本来、世界を感じることもできなかった。だが何の因果か、ほんの一時でも安らぎを感じることができるようになった。彼は火に呑み込まれる寸前、僅かに笑みを浮かべてこう呟いた。

 

「ようやく…まともに眠れるな…」

 

 こうして彼はルビコンを燃やし尽くす災禍に巻き込まれ、その人生を終えることとなった。

 

 

 

 

 

 

“アーキバスグループ直属戦闘部隊”

“ヴェスパー第3部隊隊長”

“V.III(ヴェスパー・スリー)─”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─“オキーフ”」

 

「……………」

 

 対近界民相手の戦闘訓練を終え、B級隊員に上がる方法を一通り説明を受け、ラウンジ兼食堂に東と共に向かっていた日向野は、久しく聞くことのなかったその名で背後から呼び掛けられた。

 その声色はとても平坦で─しかしどこまでも戦いに対する好奇心と闘争心に溢れているそれは、彼は前(・)の(・)世(・)界(・)で(・)飽きる程聞いて来た。

 どうやら先程感じた既視感は間違ってなかったらしい。

 だからこそ日向野は僅かにため息を吐きつつ背後に振り返り、僅かに笑みを浮かべてこちらを見ている少年に向かって、彼のかつての名を呼ぶ。

 

 

 

 

 

「…お前もここに来てたんだな。“フロイト”」

 

「ああ、久しぶりだな。“オキーフ”」

 

 ルビコンとは異なる世界の異邦の地で、かつてのV.Ⅰ(ヴェスパー・ワン)とV.Ⅲ(ヴェスパー・スリー)が相対する。




はい、今回はここまで。そこそこ進められたかな…?(なおこの一話丸々過去回想)


・風上君(フロイト)
ウッキウキでボーダー隊員生活スタート。トリガーの種類が少ないのでまずは弧月から。トリオン体の動きに関してはイメージが重要だと直感したのでロックスミスのイメージで動いてる。実際ゲームでもしばらく距離取ってるといきなり距離詰めて後ろ取ったと思ったらブレードでぶった斬って来ることある。まさかの同僚と再開して内心ウキウキ&ビックリ。

・東春秋
みんな大好き東春秋(20歳)。入隊したての時はスナイパー(とガンナーも?)がないので多分シューターなんじゃないかなーと妄想。盤面見れるしこの時点で普通にミズカミングみたいな動きもできそうな気がする。日向野(オキーフ)さんとは同じ大学で知り合った。

・日向野さん(オキーフ)
もうちょい後で出すつもりが想像以上に早く出しちゃった。まあ3つながりだし良いでしょ(適当)。
???<「企業たる私を差し置いてオキーフを出したのは…まあいいでしょう…」
個人的に原作だとかなり味わい深くて好きなキャラ。オマちゃんの指示と刺客出し抜きながら(描写見る限り)陰険オールバック企業メガネから疑われない程度には隊長としての業務もやるってかなりオーバーワークしてない?のんびり異世界生活満喫してたらなんか意味分からんバケモン出た上に戦闘狂の上司と会っちゃった。


こんなもんかな。評価して下さった皆様のおかげでランキング7位まで載ることができました。本当にありがたい限りです。読者の皆様が期待してるランク戦を書くことができるかは分かりませんがせめてキャラ同士の絡みは面白おかしく書いて行きたいと思います。

評価、感想もよろしければお願い致します。

それでは次回もお楽しみに。
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