“V.Ⅰ(ヴェスパー・ワン)”、ワートリ世界に転生する。   作:サクラン

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モチベが高い内に可能な限り投稿していきたい…!

さっさと過去回想終わらせて時間軸現在に戻さないと…

それではお楽しみ下さい。


第4話 日向野幸助①

 かつての同僚─日向野と会った風上は取り敢えず立ち話もなんだということで、元々日向野と東が目指していたラウンジに共に付き添うことにした。

 

「しかし奇妙なこともあるもんだな。昔の知り合いとボーダー(ここ)で再開することになるなんて」

 

「そうだな。俺もまさかまた会えるとは思わなかった」

 

 純粋に古い知り合いと再開したものだと認識している東はその数奇な縁を噛み締めるように驚き、風上は本心からの言葉を返す。

 “フロイト”にとっての“オキーフ”の印象はいつも気怠げな雰囲気を出していたが決して気を抜くことはなく、自分の核心を誰にも悟らせず、踏み込ませない切れ者と言った印象だった。

 だが所属している部門的に戦闘ログの管理や発注したパーツの搬入で世話になることも多く、番号付きとしても上澄みに入る為普通に嫌いじゃない。

 

「ただ…さっきの“オキーフ”や“フロイト”って言うのはあだ名か?あまり名前とのつながりも見えないが…」

 

「昔の呼び方でな。なんとなくで呼び始めたニックネームだったが久しぶりに会ったからそっちの方で呼んじまった」

 

「へぇ、良いあだ名だな。“オキーフ”」

 

「やめろ、混乱する」

 

 東がからかうように“オキーフ”の名を呼ぶと、日向野は苦虫を噛み潰したような顔で東の軽口を否定する。風上から見ても二人のやり取りに嘘や遠慮は見られず、本心から信頼しているのが見て取れた。

 

(前より心に余裕ができたか?ともかくこっちを満喫できてるみたいだな)

 

 そのやり取りをを風上は微笑ましげに見守る。

 “アイランド・フォーの動乱”からそこそこの付き合いになるが“オキーフ”はいつも疲れているようで、心が休まる瞬間が無かったように思えていた。

 他人が心の中で思っていることやその気持ちを察すると言った人心面への配慮や気遣いは不得手だと自覚しているし、そもそも“自分は自分、他人は他人”と言ったスタンスで生きているので変に首を突っ込むつもりもないのだが、それでも知り合いが楽しく生きているのならそれに越したことはない。

 

「そう言えば、ちゃんとした自己紹介がまだだったな。東春秋だ。日向野とは同じ大学で知り合った仲だ。よろしくな」

 

「風上和郎だ。オキ…幸助が世話になったみたいだな。ありがとう。よろしく」

 

 東がにこやかに手を差し出し、風上もその手を取って握手を交わす。

 

「さっきの戦いも見てたが…アンタも大したもんだな。マジに戦うのは初めてか?」

 

「言ってくれるのはありがたいが買い被り過ぎだ。俺と日向野は隊員募集がかかってすぐに合格だったからな。仮入隊の時間で多少慣れることができただけだ」

 

 風上からの称賛と質問に東は謙遜しつつ否定する。しかし風上としてはどうしてもそれを信じ切ることができなかった。

 東の戦い方は日向野のそれと似ており弾を使って相手を削り取って行く戦い方だったが、立ち回りが明らかに素人のそれじゃないし、日向野と比べると僅かに粗は見られるが、そもそも比較対象として大企業の戦闘部隊の隊長、更にその中でもトップに近い位置付けだった“オキーフ”が挙げられる時点でまず只者ではない。

 話し方や立ち振る舞いを見ても自分の核心を悟らせることを絶対にしない。(そりゃオキーフとも気が合うわけだ)と、風上は内心で納得する。

 

「ふーん、まあアンタがそう言うならそれで良いか」

 

 ひとまずそういうことで話をつけ、追及を止める。

 東が実際別の場所で戦いの経験があるのかどうか興味がないわけではないが、別に知った所で何か自身に得があるわけじゃないし、変に勘繰って他人から目を付けられるのはそれはそれで困る。重要なのは“戦って楽しいかどうか”なのだから、それが満たされるなら一個人の経歴など気にする必要もないだろう。

 

「つーか日向野、お前よく入隊する気になったな。性格的に面倒くさがるかと思ったが」

 

「東に誘われてな。安全性の面も最低限担保されてたし、エンジニアやオペレーターの選択肢もあったから入ったってだけだ」

 

「よくこの面倒くさがりを説得できたな」

 

「お前は俺をなんだと思ってるんだ…」

 

 風上からの何気ない辛辣な一言に日向野は苦言を呈する。

 確かに面倒事に巻き込まれるのはゴメンだし、可能ならそれだけ楽もしたいが、そもそも前の世界では第3隊長としての業務と元々ついていた存在からの刺客の撃退やそれに伴う事後処理まで行わなければならなかった為、休む時間が極端に少なかったのだ。

 “オキーフ”の上司に当たる“フロイト”は事務仕事には基本携わらない(というかサボってた)が、もう一人の上司である第2隊長は頭が回る上裏切り者に対する粛清などは容赦せず行う為に彼にだけは自分の裏を悟られるわけには行かなかったのだ。

 身から出た錆とは言え心の休まる時間が少ないとなれば当然身体に影響が出る為、風上はその時の表情や立ち振る舞いが印象に残っているのだろう。

 

「そこまでゴネたわけじゃないさ。まあ確かに興味津々って程でもなかったけどな」

 

「なるほど。それで、どうなんだ?戦闘員として続けられそうか?」

 

 東の発言からして取り敢えず嫌々ここにいるわけじゃないと感じた風上は、日向野に今後のことをついて問い掛ける。

 日向野程の実力者であれば鍛錬相手には申し分ないし、色々と頼れることも多い。風上としてもぜひ戦闘員を続けて欲しいところだが…

 

「…取り敢えずB級まで昇格した後はエンジニアに転向しようと思ってる」

 

「へぇ?そりゃまたなんでだ?」

 

 日向野から帰ってきた答えは予想の斜め上だった。

 風上の予想としては「続けるか」「辞めるか」の二択だと思っていたが、B級まで昇格して“から”エンジニアの道へ進むというのは色々と中途半端なのではないかと感じた。日向野のことだから何か考えはあるのだろうが、その考えが思い当たらない。

 

「…実は、東がB級まで昇格したら新しいポジションを作ろうと思ってるみたいでな。俺にも手伝って欲しいようだから一旦戦闘員としての知見をある程度深めた上でエンジニアとして協力しようってわけだ」

 

「ポジション?どういうことだ?」

 

「隊員の役職みたいなものだ。お前のようにブレードトリガーを使う者のことを“攻撃手(アタッカー)”、俺達のように中距離から弾で戦う者なら“射手(シューター)”って言うんだ。他にも新しく“銃手(ガンナー)”って言うポジションを増やすつもりみたいだが」

 

「アンタの作ろうと思ってるポジションはそれとはまた別なのか?」

 

「そうだ。もっと遠距離から戦場を俯瞰して、いざという時に狙撃を撃ち込む─“狙撃手(スナイパー)”をな」

 

 東の構想しているポジションに風上は前の世界で“惑星封鎖機構”の虎の子である技研兵器相手に特攻兵器であるレールキャノンでシールドをぶち抜いたという第4隊長の姿を思い出した。

 

「わざわざそんなポジション作ろうってのか。アンタなら十分今のままでも戦えそうだが」

 

「確かに、射手としての戦い方も悪くなさそうなんだがな。俺はそういう戦い方の方が向いてる気がしたんだ。戦場でもそういう人間がいれば間違いなく戦術の幅が拡がる」

 

「…アンタやっぱり経験あるんじゃないか?」

 

「あっはっは、だから買い被り過ぎだ」

 

 東の戦場全体のことまで考えた意見に風上はまた疑問が再浮上するが、確かに意見としては納得の行くものだった。

 実際の戦場でエースとして戦っていた“フロイト”としても、意識外からの狙撃の一射の可能性がある場所で戦うのは集中しきれずゴメン被りたいし、指揮する立場だった第2隊長も、自分が集中しやすいようそう言った相手は始末してから投入することが多かった。改めて(アイツ気が利いてたなぁ)と、自身の相棒の優秀さをつくづく実感する風上であった。

 

「なるほど、なら幸助が協力するのは狙撃手専用のトリガーを開発しなきゃいけないからか」

 

「メソッドの確立とか、考えることも多いからな。色々な意見があるに越したことはない」

 

「しかし残念だな。アンタなら直接やり合っても十分面白そうなんだが」

 

「B級に上がるまでは相手する機会あると思うけどな。当たった時はよろしく頼むよ」

 

 東は風上に対してにこやかに笑い掛け、風上もやや不満気な表情を浮かべるものの実力者とやり合えることに期待を感じる。古い知り合いと会えたことも相まってただでさえ楽しみだったボーダー生活が更に面白くなりそうな予感がした。

 

「はー、俺もちょっと小腹空いてきたな。なんか買うか」

 

「お前金持ってるのか?」

 

「小遣いぐらい貰ってるからな。菓子パン買うぐらいなら全然問題ない」

 

「心配しなくても、ここの食堂は隊員なら格安って言える額だから買えないってことはないと思うぞ」

 

「なるほど、どんなメニューがあるのか愉しみだ」

 

 この世界の食の虜になってしまった風上はボーダーの食堂に期待を馳せる。前の世界では基地だと基本味気ないレーションだったので基地でまともな食事が取れるという時点でかなりポイントが高い。

 

「ああ、それから購買の職員についてなんだが─面食らうなよ?」

 

「あ?なんかあるのか?」

 

「まあ行けば分かる」

 

 東の意味深な発言に風上は違和感を感じるが、追及しても答えは帰って来ないだろうと諦めて日向野と共に購買へ向かう。

 

「ってかオキーフ、お前さっきコーヒー飲んでなかったか?」

 

「さっき飲んでたのは自販機のやつだ。購買で買えるやつと違いはあるのかと思ってな」

 

「相変わらずのカフェインジャンキーだな」

 

「趣味なんだ、放っとけ。というかそっちの名前で呼ぶな。混乱する」

 

「二人の時はこっちで良いだろ。俺はこっちの方が慣れてる」

 

 日向野と他愛もない会話をしながら購買に到着すると、既に先客が一人いるようで購買の職員と会話していた。

 

 

 

 

 

「貴様ァ!!!きな粉餅を食うだけで何故そこまで汚くなれる!!??赤ん坊が手掴みで食うとしてもそこまでぶち撒けんぞ!!!!」

 

「いやーすみませんねー。バクバク食ってたらここまで汚れちゃって」

 

 髪を短く切り揃えた偉丈夫の身体にピッチピチのエプロンを着込んだ職員がきな粉を口の周りと両手をきな粉で汚しまくった隊員に対して怒声を浴びせていた。

 隊員の方は「なははー」と軽く受け流しており反省しているのかしていないのかよく分からない。

 

「ちゃんと始末は自分でしますから。ということで、布巾もらえます?」

 

「まったく…ちゃんと来た時以上に綺麗にしろよ。さもなくば貴様の鼻にこぼしたきな粉をまとめてぶちこんでやる」

 

「こっわ。拷問じゃないすか」

 

「良いからさっさと行け!今の発言が現実になる前にな!!」

 

 「は〜い」と、職員から布巾を受け取った隊員は自身のいた机に戻って行った。

 そして自然と、職員の視線は次に並んでいた風上と日向野に向けられる。

 

「お?何をぼけっとしている貴様ら。言っておくが割引はしてやれんぞ!」

 

「……………」

 

 職員から声を掛けられても、風上は呆けたように職員から目を離さない。日向野はそんな風上を何故か僅かに冷や汗を流しながら見ていた。

 そうして2秒程職員を凝視した後─

 

 

 

 

 

「ミシガン!!!!!」

 

 ─一言人名を叫んだ後、カウンターを飛び越える勢いで職員に飛びついた。

 

「なぁ!!アンタミシガンだろ!!アンタもこっちに来てたんだなぁ!!!やろう!!!今すぐ!!!!!」

 

「いきなり飛び付いてくるんじゃない小僧!!貴様ここまで来てまだ常識というものを身に着けてないのか!!!」

 

 飛び付いて来た風上を抑えながら叱りつけるも、風上が興奮しながら喋り通すせいで全く聞いていない。しかも互いに叫び通しているので当然周囲からの視線も集まって来る。

 

「…うんざりするな…」

 

 日向野が天井を仰げ見ながらぼそりと呟き、取り敢えず落ち着いて話をする為に仲裁に入ることを決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ〜…まさかこんな所まで貴様らの面を拝むことになるとはな」

 

「今日は良い日だな。こんなに知り合いと会えたからな!」

 

 席ではできない話だと直感した日向野によって、職員用の控室にひとまず集まった三人。職員は頭痛を感じたように頭を押さえ、風上は喜びが抑えられないと言ったように満面の笑みを浮かべていた。日向野はそれを見守っていたが、いざという時の仲裁役で着いて来た形だ。

 

「しかし貴様、もっと取り繕うということをせんのか?貴様と“V.III(ヴェスパー・スリー)”ならまだしも、俺と貴様では歳の差からして知り合いは通らんだろう」

 

「有象無象にどう思われようがどうだって良いだろ。ルビコンに戻れるわけじゃあるまいし」

 

 職員は何故か風上しか知らないはずの日向野の()()()()()()()について言及する。そして風上もそれが当然と言わんばかりにルビコンという単語に触れた。

 それが証明するのは彼もまた、ルビコンにいてその戦乱の最中にいた存在であるということ。

 

 

 

 

「改めて、アンタに会えて光栄だ─G.1(ガンズ・ワン)ミシガン”」 

 

「そういうちゃんとした挨拶ができるなら最初からそうしろ─V.Ⅰ(ヴェスパー・ワン)フロイト”

 

 そう、彼のルビコンでの名は“G.1(ガンズ・ワン)ミシガン”。

 “アーキバスグループ”と同様にルビコンに進駐した企業の片翼、“ベイラム・インダストリー”の直属戦闘部隊、“レッドガン”を率いていた傑物である。

 元々は別の企業の武装船団を率いていたがベイラム側の人間にスカウトされたことでレッドガンに入隊、そのまま“G.1(ガンズ・ワン)”としてレッドガンを率いることとなった異色の経歴を持つ存在である。

 ルビコン内における格付けではフロイトに次ぐ2位の位置付けであり、“木星戦争”での鬼神の如き戦いぶりと、徹底した容赦ないスタンスは“歩く地獄”と称され、敵味方両方から恐れられている。

 無論、そんな存在ともなれば“フロイト”が目をつけないハズもなく、レイヴンが頭角を現して来るまでは最も戦いたい相手として目をつけていた相手である。

 

「アンタも猟犬にやられたらしいな。部隊総出で迎え撃ったそうだが」

 

「…ふん!その言い分だと貴様も()()()()()()ようだな!ルビコンは起伏が激しかっただけに足元の石にも疎かになりやすい」

 

「…ああ、アンタは()()()()()()()()()()

 

 “ミシガン”の頓珍漢な物言いに風上は一瞬困惑するものの、すぐに合点が行った。

 ルビコン戦乱の後半、ベイラムの無茶な采配によってレッドガンはボロボロとなっており、離反者も相次いでいた。最早何もしなくとも敗走、壊滅は時間の問題であったが、それでも部隊としての体裁が保てていたのはミシガンの圧倒的なカリスマ性、統率力故だった。

 如何に死に体と言えどもミシガンの実力とそんな状況でも着いて行く部下の練度は侮れないものであり、ヴェスパー側もおいそれと手の出せない存在であることは間違いなかった。

 だからこそヴェスパーは独立傭兵レイヴンあるいは裏切り者としての疑いを掛けていた第4隊長を向かわせることを決定し、それによってレッドガンを壊滅、その二人でダメならば削れた所にフロイトを向かわせて確実に撃破する心積りだった。

 結果としてレイヴンがレッドガン迎撃を受け持ったことによりミシガン率いるレッドガン部隊と激突、奮闘したもののレイヴンの手によってレッドガンは壊滅させられる結果となった。

 

 しかしレイヴンとレッドガンは最初から敵同士だったのかと言われるとそんなことはなく、ルビコン戦乱の序盤には共闘することもあったし、最大の障壁であったコーラル集積地点の防衛を担っていた巨大兵器を相手にする際にはミシガンの指揮化に入ることもあった。

 ミシガンもレイヴンの飼い主であったハンドラーとは旧知の仲であった為、過度に肩入れすることはなかったものの、部隊の末席ナンバーである“G.13(ガンズ・サーティーン)”の名を貸与し、蔑むことなく平等に接するなど、厳しさに溢れていながら筋を通すだけの義を持った人物である。

 

 部下に対してもそれは同様で、直属の番号付きだけでなく末端のMT乗りから直接的に戦闘には関わらないメカニックまで、全員の名前から長所まで覚えて徹底的に面倒を見て育てて行く総長としての器が大きい人物である。

 厳しく育てるのも過酷な戦場から部下を生きて帰らせる為であり、生存が難しい死地においてもまずは自身の安全、厳しくなれば脱出レバーを引かせることを徹底させまず無為に生命を投げ捨てるような真似は許さない。

 レイヴンとの戦いにおいても最後の砦である自身が出陣する際には志願者のみ付いて来させ、戦線離脱した部下に対しても叱責することなくまずは身の安全を確保するよう促す。

 傭兵として自分達を殲滅しに来たレイヴンに対しても無駄な情が湧くことがないよう徹底して語り掛けることなく、しかし最後まで“G.13(ガンズ・サーティーン)”として扱い、惜しくもレイヴンに敗れてしまった際にも自身の死を飾ることなく、部下達に「無駄な仇討ちで生命を散らすことはない」と、レイヴンとハンドラーに対しては「気負うな」という意味を込めて、そして実力はどうあれ「13も番号が下の相手に負けた記録なんぞを残してたまるか」という自身の意地を併せて「伝記には転んで死んだと書いておけ」と、言い遺してその生涯に幕を下ろした。

 世界が変わってもそんな側面は変わっていないようで、彼にとって未だにレイヴンは“G.13(ガンズ・サーティーン)”のままらしい。

 

「しかし“レッドガンの歩く地獄”が“食堂のおっさん”とはな。立ち振る舞いに対して随分謙虚だな」

 

「あまり買い被ってくれるな!この世界では所詮俺は“何も成せてない中年”でしかないのだからな!」

 

「そうか?その割には…結構思うところがありそうだが」

 

 風上は探るような目つきでミシガンを見詰める。

 “ミシガン”としての経験がある故に風格が生まれるのは当たり前だが、それ以外にも何かあると“フロイト”の感覚は訴え掛けていた。

 おそらく自分とオキーフ(日向野)とは違い、彼はこの世界で“何か”経験している。ボーダーに関することかあるいは別の何かなのかは分からないが。

 

「…さっきも言ったが俺はこの世界においては“何も成せてない中年”だ。それ以上でも以下でもない。お前達に教えられることなどそう無いぞ」

 

 風上からの言葉に対して特に答えることはないと─しかし僅かに声のトーンを落として返した。その姿と声色からやはり何かあると確信した風上だったが、過去をしつこく追及するのが趣味ではない為ひとまずそれ以上問い掛けることはしなかった。

 

「あ、そう言えばまだこっちの名前聞いてなかったな。名前教えてくれミシガン」

 

「聞くのが遅過ぎるぞ貴様!!普通そこから聞くところだろう!!!」

 

 そして風上がふと(あ、そういやまだこの世界での名前聞いてなかった)と思い質問して来たその破天荒なマイペースぶりにミシガンはまた怒声を飛ばす。

 

「─“虎尾剛(とらおつよし)”だ。耳をかっぽじってその粗末な頭によく叩き込んでおけ!」

 

 ミシガン─虎尾は改めて自己紹介を済ませ、その豪快な名前に風上は思わず笑みを漏らす。

 

「虎尾ね、前の乗機を思わせる名前だな。俺は風上和郎だ。改めてよろしく」

 

「自己紹介ができる程度には常識を身に着けているようだな!次は敬語の扱いを学んでおけ!」

 

「…日向野幸助だ。よろしく頼む」

 

「ああ!よろしく頼むぞ!それから日向野!貴様らのところの第2隊長─評論家気取りのカタツムリ野郎はいないのか!?」

 

「…アイツはまだ確認できてないな。ひょっとしたらこっちにはいてまだボーダーに入ってないだけなのかもしれんが」

 

「そうか!俺も気を付けておくが風上にはしっかり常識を叩き込んでおけ!ルビコン程この世界は殺伐としてないからな!」

 

「…肝に銘じておこう」

 

 虎尾からの念押しに日向野もしっかり覚えておく。

 実際前の世界で“フロイト”の面倒を見ていた第2隊長がまだいないので、自然と風上を制御できるのは自分と虎尾だけになる。“フロイト”であった頃より多少マイルドになっているとは言え癖のある人間であることに変わりはないのでその点はしっかりフォローしなければならない。

 …改めて前の世界でこれより尖った状態の“フロイト”の制御をした上で作戦行動に組み込んでいた第2隊長の苦労に日向野は内心同情した。

 

「んで気になったんだが虎尾、ここの食堂オススメのメニューとかってあるのか?」

 

「貴様話を聞いていたのか!?歳上相手には敬語を使うということをその粗末な頭に叩き込んでおけ!!」

 

 早速マイペースに雑談を始める風上に虎尾はまたブチギレながら訂正する。その様子を見て日向野はこれからのボーダー生活の波乱さを感じ取ってため息を吐いた。




はい、今回はここまで。なんか話進めて行ってたら当初の予定よりずっとキャラ達が姿見せるのが早いんだけど…自分の脚本のガバガバさを思い知ってる…


・風上和郎(戦闘狂)
前回に続いて最高の相手に出会えてウキウキ。東さんに対しても興味津々。だいぶマイペースだけどこれでもマシになったってマ?

・日向野幸助(フィーカおじさん)
こっちに来てからコーヒーにハマったカフェインジャンキーおじさん。射手スタイルも嫌いじゃないけど性格的にはやっぱエンジニアの方が合ってる。風上君に色々振り回されて陰険オールバックメガネの苦労を改めて実感した。慣れはしたし極端な裏はないと思ってるけど東さんのことはすこーしだけ警戒してる。

・東春秋
いつ頃に狙撃手の存在を考えてたか分からないけどC級の頃にはもう構想ないと辻褄が合わなくない??要素書き出して行ったらやっぱりスペックおかしいよこのおじさん…

・虎尾剛(ミシガン)
愉快な遠足大好きおじさん。レッドガン食堂のババアならぬボーダー食堂のおっさんにジョブチェンジ。一応歩く地獄具合は世界観に合わせて多少はマイルドになった。けどこっちでも何か修羅場を潜ってるみたい…?けど原作から分かる抑えきれない聖人オーラ。何処ぞの陰険オールバック企業メガネも見習って??


こんなもんかな。AC側のキャラはもっとゆっくり出すつもりだったのになんか皆あまりにアクティブ過ぎてどんどん自分から前に出て行っちゃう…何処ぞの陰険オールバック企業メガネさんまだー?
???<「頭も計画性もない馬鹿者には、教育が必要です(メガネクイッ)」

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それでは次回をお楽しみに。
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