“V.Ⅰ(ヴェスパー・ワン)”、ワートリ世界に転生する。   作:サクラン

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C級編想像以上に短くなっちゃった…

まあここからトリガーセットとかで長くできるからええか…

それではお楽しみ下さい。


第6話 B級昇格

 ボーダーに入隊してから一ヶ月、B級に昇格する隊員がちらほらと増えて来る中、風上も遂に4000点を突破し、正隊員に昇格することができた。そして一足先に正隊員に昇格し、エンジニアに転向して東の狙撃手メソッド確立に協力している日向野と共に開発室で軽く菓子をつまんでいた。

 

「こういうのってさ、昇格ギリギリのタイミングで格上の隊員とマッチングして激戦の果てに勝って昇格するもんじゃないのか?」

 

「もうそのポジションは太刀川がいるだろ。そんなポコポコ強者が生えて来てたまるか」

 

 特になんのドラマもなく普通のC級隊員を相手に圧倒して昇格した風上は、正隊員の証明であるジャージ風の隊服の着心地を確かめながら自身が正隊員になったという事実がイマイチ受け入れられてなかった。

 そのぼやきに対して日向野は至極当然と言わんばかりに自分で淹れたコーヒーを堪能している。“フロイト”であったことを知っている“オキーフ(日向野)”からすれば、一ヶ月もC級隊員でいたことの方がおかしい。本気でやろうと思えば一週間で十分昇格も狙えただろう。

 …まあ、太刀川と出会う度に最低でも10本以上勝負して収拾マイナスになっている影響が大きかったのもあるが。

 

「それで、トリガーセットはどうするんだ。正隊員になったから自由にカスタマイズできるぞ」

 

 世間話も程々に、日向野は風上が最も気になっているであろう話題に踏み込む。実はこの祝いの場を用意したのは日向野なのだが、その理由は風上が遅かれ早かれ様々なトリガーを試しに開発室に突貫して来るだろうから、そうなる前に自分のタイミングでコントロールしようと言うわけだ。

 

「んー…気にはなってるがそもそもトリガーの種類をよく知らないからな。弧月専用のオプション?トリガーがあるってのとお前や東が使ってた射手トリガーの通常弾(アステロイド)ってのがあるぐらいしか知らない」

 

 風上としては興味はあるのだが、トリガーの種類についてあまり知らない。日向野や東が使っていた射手トリガーのスタンダード、通常弾(アステロイド)というトリガーと、爆速で正隊員に昇格した太刀川から弧月専用のオプショントリガーがあるということぐらいだ。

 一応今は日向野を筆頭にエンジニアの人数も増えて来て、それに伴ってトリガーの開発も進んでいるというのは聞いていた。事実以前東が語っていた銃手(ガンナー)というポジションの育成も次に入隊した隊員から始めていくらしい。

 

「…まあ、今までのお前はとにかくトリオン体の動きに慣れることと弧月を極めることを優先してたもんな」

 

 日向野は風上の鍛錬光景を思い出しながら席を立った。

 

「折角だ。仮想戦闘室ならここにもある。良かったらここで色々と試してみろ」

 

「マジで?ありがたいがお前がそんなこと提案するとはな。なんかあったか?」

 

「言い出したのは俺だし急に来られても困るからな。今の内に知っておいた方が良いだろ」

 

「へぇ、まあそういうことならありがたい。しっかり活かさせてもらうぞ」

 

 風上はそう言うと席を立ち、日向野の後に着いて行く形で仮想戦闘室に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「それじゃあ、まず正隊員のトリガー仕様について説明しておく。これも重要だからちゃんと聞いとけよ」

 

「ああ、了解した」

 

 日向野は風上のトリガーを預かると、その中央部のネジをドライバーで外し、トリガーを覆っているカバーを外した。するとその中には小さなチップのようなものがそれぞれ上下に4つずつ並んでいる。

 

「この小さいチップが、いわゆる“トリガー”だ。このチップから自分の使いたいトリガーを選んでその都度出力して使うってイメージだな」

 

「へえー、実物はこんなちっこいんだな」

 

 風上は興味深そうにトリガーの中にあるチップをまじまじと見詰める。

 

「一応上側の方が利き手用の主(メイン)トリガー、下側の方が反対の手用の副(サブ)トリガーだな。それから重要なこととして使えるトリガーはメインサブそれぞれ一つずつが限界だ。メインを二つ同時に使ったり、三つのトリガーを使うことはできない」

 

「なるほど、ACみたいな全武装からの一斉掃射はできないってことか」

 

 その制約に風上は若干の不満を感じつつも、その条件の中でどう戦うかを考えるのも面白そうだと内心で笑みを浮かべる。

 

「今のお前はまだ正隊員に昇格した直後だからまだ入ってるトリガーは弧月一つだけだ。お前の場合利き手が左手だから下側がメインってことになるな。これは変えなくて良いか?」

 

「ああ、取り敢えず左手弧月は固定で行く」

 

「分かった。じゃあどんな構成にするか決める前にこれだけは入れとけってトリガーの説明をしておく」

 

 日向野はそう言うと机の上にあったタブレットを手に取り、その画面を操作する。すると画面内にいくつかの映像が浮き上がった。

 

「そもそもトリガーには弧月や通常弾みたいな攻撃用のトリガーと、戦略を幅広くする為のオプショントリガーが存在する。今俺達エンジニアも色々と開発中なんだが…まず入れておくべきはこの二つだ」

 

 そう言って日向野は自身のトリガーを起動し、首元に手を当てるとマントのようなものが出現し、空中には薄緑色の盾?が浮かび上がった。

 

「こっちは見てくれの通り盾か?けどそっちのマントみたいなのは…」

 

「お前の言った通りこの板みたいなのが“シールド”、トリオンによる攻撃を遮断してくれる盾だ。こいつの優れた点は自身の身体から離れた場所でも展開が可能なこと、小さくすればするだけ耐久力も上がる。まあ逆も然りではあるが、それでも自分の手が塞がらないってのも相まって使いやすさはピカイチだ。…ただ、まだ開発して間もないものでな。肝心の耐久力が狭めないとやや心許ない。少なくともブレードトリガーを受け止めるのは現実的じゃない」

 

「なるほど。頼り切りにはできないがある程度の弾除けになるだけありがたいな。トリオン体の耐久力は大したもんじゃないしな」

 

 日向野の説明を受けて、風上はその有用性に納得する。

 ACと違い、トリオン体の耐久力はそう大して高くない。どれだけトリオンが低くとも攻撃用のトリガーであればダメージは与えられるし、それが運悪く頭か心臓に食らえばその時点でアウトだ。そう言った可能性を減らせる要素としてこれ以上ないありがたさである。

 だが、日向野の説明を信じるなら頼り切りは危険だし、当然ではあるが全ての攻撃を無力化できる絶対無敵の盾ではない。先程の説明と合わせるとシールドを使っている最中はその側の他のトリガーは使えないことになるので、基本的に攻撃は回避で、避けきれなければシールドを張るぐらいのイメージでいた方が良いだろう。

 

「それで、そのマントみたいなのはなんだ?まさかそれで隠れろってんじゃないだろう?」

 

 シールドの有用性には納得が行ったが、今日向野が纏っているマントのようなものの効果がまだ分からない。見た限り隠れる為の迷彩服というのが一番考えられるが、それだけなら“入れとけば良い”という結論にはならないだろう。

 ACの武装構成などもそうだが、“絶対無敵の装備”、“デメリットのない装備”など存在しない。長所と短所、何かを得る上での支払う対価というのは絶対に切り離せないものであり、それはトリガーにおいても例外ではないだろう。

 つまりこのマントのようなトリガーはそのデメリットやリスクを飲み込んでなおあ(・)り(・)余(・)る(・)メ(・)リ(・)ッ(・)ト(・)が(・)存(・)在(・)し(・)て(・)い(・)る(・)ということであり、オキーフ(日向野)に限ってその天秤を見誤ることはないだろう。

 

「このトリガーは“バッグワーム”。こいつを纏っている間は少しずつトリオンを消費する代わりに、レ(・)ー(・)ダ(・)ー(・)に(・)映(・)ら(・)な(・)く(・)な(・)る(・)。まあ隠密行動、奇襲用のトリガーだな」

 

「…なるほどな。確かに、戦場において“隠密行動”ってのができるだけでかなり作戦の幅が広がるな。そりゃトリガー枠潰す価値もあるわけだ」

 

 そのトリガーの効果を知った風上は納得したように頷く。

 “フロイト”であった頃、と言うよりAC戦においても敵味方の機体情報を感知するレーダーというのは標準装備されていた。

 敵の位置の把握と言うのは複雑化して行く戦場の中で確実に行わなければならないものであり、攻め立てる場合はジャミングなり囮となる陽動役なりを準備して主戦力の位置を誤魔化し、逆に防衛の場合はそう言ったノイズを潜り抜けて敵の目的を見抜き、どうにか凌ぎ切らなければならない。

 “フロイト”であった頃は戦場を切り開くエースとしての役割であった為、直接的に隠れ潜むことは中々無かったが、自分をどうにかやり過ごす、あるいは嵌めて奇襲して来る輩とその手法を破るべく策を巡らせる相棒たる第2隊長は何度も見て来た。

 

 しかしこのトリガーはジャミングや陽動役の囮など、外的要因に頼ることなく自(・)分(・)自(・)身(・)で(・)反(・)応(・)を(・)消(・)せ(・)る(・)。これだけで誤魔化す為のコストや手間が大幅に省くことができ、他者の協力もあれば二重三重に敵の意識を散らせる。(第2隊長(アイツ)が見たら泣いて喜びそうだなぁ)と、風上は内心で思った。

 

「よほどのことがない限りは、メインサブそれぞれにシールド一枠ずつと、サブにバッグワームは入れておいた方が良い。組織はこれから大きくなって行くだろうし、個より集団としての強さを重視して行くみたいだからな。いざという時連携できるよう、最低限の装備は積んでおけ」

 

「…正直、コソコソ動くのは得意じゃないんだがな…」

 

 有用性は認めたが、隠れ潜むのは性格上得意じゃない。

 訓練は受けているし、待つこともできるが、自分は好き勝手に戦うことの方が向いてるし戦闘スタイルも大局的視点を持ち巧みに味方を支援するサポーターと言うより敵を殲滅し戦局を打開するエースとしての戦い方だ。味方に気を遣いながら戦うのでは自分のベストパフォーマンスは出せない。

 

「…前とは色々と勝手が違う。ランク戦の分の対価だと思っとけ」

 

 無論、そこはオキーフ(日向野)も承知しているが、流石にボーダーで“V.Ⅰ(ヴェスパー・ワン)”としての特権など通らない。そこは飲み込んでもらわないと困る。

 

「あー、面倒なことはもう良い、そうなった時に考える。それより、他のトリガー見せてくれよ」

 

 これ以上考えても良いことなどないと悟った風上は未知のトリガーについての説明を促す。日向野はため息を吐きつつも、実際ここでウダウダ言っても仕方ないので次のトリガーの説明に移る。

 

「…じゃあ、次は攻撃用のトリガーになるわけだが、まずは弧月専用のオプショントリガーからだ」

 

 そう言ってから日向野は少し自身のトリガーを弄り、トリガーチップを入れ替える。そしてトリガーを起動すると、その手には弧月が握られていた。

 

「ただ、聞くよりはまず見た方が良い」

 

 そう言った日向野の10数メートル程先に、ボウリングで使うピンに射的などで使う印が刻印された的が立っていた。

 それに向かって日向野は弧月を腰の横に構える。明らかに跳躍しようとも届かない距離。当然、弧月を振っても届くはずもない。それでもバカにできない雰囲気が日向野にはあった。

 

「“旋空弧月”」

 

 日向野がトリガーの名を呟くと同時に弧月を振り抜く。すると弧月の刀身が一瞬で長大化し、10数メートル先の的を斬り裂いた。

 

「おお」

 

 その予想外の効果には風上も驚いた。そして何となく前に使っていた“レーザーブレード”を思い出した。

 

「これが弧月専用のオプショントリガー、“旋空”。弧月の刀身を拡張してその間合いを広くする。そして刀身の先に行けば行くほど、ブレードの威力が上がる。扱いにはコツがいるが、使い熟すことができれば防御不能の斬撃を相手に叩き込める」

 

「へぇ、面白いトリガーだな。スタンダードな弧月のオプションがこれとは」

 

「…俺もデモンストレーションとして見せたが、使い熟すことがてきてるとは言い難い。何せ“旋空”は斬撃を“飛ばしてる”わけじゃない、ブレードを伸(・)ば(・)し(・)て(・)る(・)ん(・)だ(・)。その分重さも増すし、振り切れば隙も生まれる。現状“旋空”を真の意味で使い熟せているのは、本部長の忍田さんと次点でその弟子に当たる太刀川だけだろうな」

 

 (なるほど)と、風上は現在も圧倒的な実力で個人ランクを駆け上がっている太刀川の姿を思い出す。つい先日正隊員に昇格したばかりの風上は正隊員になってからの太刀川とは戦ったことがない為、どれだけの腕になっているのかしっかり把握はできていない。(次戦ったら面白いものが見れるだろう)と、内心で期待を寄せた。

 

「どうする?銃手トリガーも実用化可能になってるから、中距離戦闘はそっちで補うって手もあるぞ。“旋空”は中距離攻撃手段としてはあまりに癖が強いからな」

 

 銃手というポジションはまだ確立に至ってないが、銃手トリガーそのものはもう問題なく実用可能である。無論適正が無ければ使い熟すことはできないが、ACでありとあらゆる武装に触れて来た“フロイト(風上)”であれば問題はないだろう。

 それを聞いた風上は少し考え込むような仕草をする。

 ブレードトリガーは現状弧月一種のみ。太刀川以外にも風間や三輪など、近接戦闘に適正のある隊員はそこそこいる。しかしそれらの人物すら真に“旋空”を使い熟すに至っていない。ということは“旋空”の習得難易度は相当なものだと推測できる。

 

 

 

 

 

「いや、旋空は入れよう。面白そうだ」

 

 しかし少し悩んだ末に風上は入れることを決めた。その“面白そう”という理由に日向野は思わずため息を吐く。

 

「…9割9分9厘そう言うとは思ってたが、お前…」

 

「良いじゃないか、“癖はあるが使い熟せれば絶大な効果を発揮する武器”。“堅実だが程々の効力の武器”よりよっぽど使い甲斐がある。それこそ、太刀川って手本がいるんだしな」

 

 “フロイト(風上)”は堅実な性能の武装よりは多少癖があり使い方にコツが求められる方が好きだ。強くなる、自身の成長実感できるのが好きなので、使えるまでの過程が長い方が創意工夫がより求められる。

 そして何より─

 

 

 

 

 

「“伸びるブレード”なんて、まさに“ロックスミス”を思い出す。アレの動きをイメージして戦ってるから使わないわけには行かないだろ」

 

「…なるほどな」

 

 ─そう、“ロックスミス(愛機)”を彷彿とさせる伸びるブレードなど、使うしかないだろう。

 風上は戦う上で、“遊び心”を忘れないようにしている。

 効率を極めて最短ルートを貫いて行く戦い方を否定する気はないが、自分としてはそれだけではつまらない。それに最善手を打ち続けるだけでは自然と自らの動きを読まれやすくなってしまう。

 だから敢えて一つ手間や無駄を加えることで、相手の読みを外すこともできる。無論その手間分をカバーできるだけの対応力が求められるので、一概にそれで良いとも言えないが。

 

「ちなみに、武器のオプショントリガーはその武器と同じ側にセットして使うようになるからな。だからサブトリガーとの同時攻撃だったり、バッグワームを纏ったまま奇襲することもできるぞ」

 

「へぇ、そりゃ良いな。弾で追い込んで旋空で斬るとかもできるのか」

 

 日向野からの補足説明に、風上は良いことを聞いたと笑みを浮かべる。サブトリガーの使い方によっては先程風上が言ったように弾で相手の動きをコントロールして生まれた隙を旋空で突く、というやり方もできるのだ。

 最初トリガーを同時に使用できるのは二つまでと聞いた時は多彩な攻撃を行うのは厳しいかと思ったが、旋空のような例外が少しでもあるなら色々と工夫ができそうだと風上は思った。

 

「じゃあ、次は射撃系のトリガーの説明に移るが…射手トリガーの特性も一緒に説明するが良いな?」

 

「ああ、了解した」

 

 風上が了承すると日向野はまたトリガーチップをいくつか入れ替え、トリガーを起動して手をかざすと光の立方体が現れた。

 

「見ての通り射手トリガーはこのトリオンキューブを分割して発射することで攻撃する。コイツの利点は弾数、威力、射程、弾速、弾丸のスペックをその都度調整できる。その上発射地点もある程度散らして多角的な攻撃もできる。色々と万能性が高い」

 

 一通り説明を終えると分割したキューブを発射し訓練室の的を撃ち抜いた。

 

「ただ…その都度調整できるって都合上、上手く扱えなきゃ持て余す結果になる。狙いつけるのは自前になるし、精度もやや犠牲になるな。射手トリガーを扱うにはどんな時でも冷静に状況を俯瞰できる精神力と、弾丸のステータスを最適化できる判断力が求められる。“ドローン”を扱ってたお前なら、射手トリガー(これ)も使いこなせると思う」

 

「まあ確かにな。ただ、だからって銃手トリガーが射手トリガーの下位互換ってこともないんだろ?」

 

 日向野からの“射手トリガーも問題なく使える”という意見を肯定した風上だが、かと言って銃手トリガーがいらないという結論に至るのは早計だと考えていた。

 

「ああ、銃手トリガーの利点は何よりその汎用性だ。射手トリガーのように弾丸のスペックを弄ったりはできないが、銃というツールである分狙いがつけやすいし、射程も20%上乗せされる。射手トリガーはトリオンキューブを出してから撃ち終わるまで、それぞれの行動にタイムラグが生まれるが、銃手トリガーは継続的な弾幕が張れる上に練習すればする程撃つまでの時間を短縮できる。積み重ねた鍛錬が身に付きやすい分、扱いやすさは断然銃手トリガーの方が勝ってるだろうな」

 

 日向野の説明に、風上は(なるほど)と納得した。

 戦場において、一瞬の迷いというのは死に繋がりかねない。射手トリガーはどれだけ一瞬で弾丸を発射しようと思っても、それまでの行程で僅かに時間が取られる。

 しかし銃手トリガーなら構えて撃つまでをひたすら練習していれば、迎撃の際にも一瞬で狙いをつけて撃てるようになる。この速射性と極める上でのハードルの低さは銃手トリガーの明確な強みと言えるだろう。

 

「それから、銃手トリガーには銃の形でそれぞれ性能が違ってな。今の所二種類があるが、それぞれ説明しておく」

 

 そう言うと日向野は両手に二つの銃を生成し、見やすくその場に置く。片方は取り回しの良さそうな拳銃であり、もう片方は少し大きめのアサルトライフルだった。

 

「今の銃手トリガーの銃は二種類。連射性は劣るが取り回しに優れて即座に撃てる拳銃型、拳銃型より取り回しはやや劣るが連射性に優れて継続的な弾幕を張れる突撃銃(アサルトライフル)型だ。お前みたいな接近戦をするタイプだと取り回しの良い拳銃型の方が良いだろうな」

 

「なるほど、つまり両方の強みを理解した上で使うのが重要ってことだな」

 

「何も両方同時に使えとは言ってないんだが…まあ、使えるに越したことはないな」

 

 あっさりと「両方同時に使う」と宣った風上に日向野は呆れつつも(コイツならそう言うだろうな)と納得し、総括に入る。

 

「で、今射撃トリガーは通常弾オンリーなんだが、エンジニアが追加効果のある弾も開発中でな。もう少ししたら完成するみたいだ」

 

「へぇ、そりゃ楽しみだ」

 

 前の世界の色々な武装を思い出しながら、風上はその日を待ち遠しく思う。

 

「ま、これが今のボーダーにおけるトリガーの種類だな。この中から自分のトリガー構成を選ぶようになる」

 

 そう言って日向野はトリガーを解除し、改めてトリガーを風上の前に提示する。まだ数は少ないが、今聞いた要素だけでも十分楽しめそうな気配だ。

 

「そうだな…そう言えばトリガー切り替えるのってどんな感覚なんだ?」

 

 風上は一つ気になったことを日向野に質問する。流石に手動でACを操作するのとは全く感覚が違うだろう。勿論練習で慣らしていくつもりだが、ひとまず先駆者の意見は聞いてみたかった。

 

「ん、そうだな…頭の中でそれぞれのトリガーを引っ張り出して来る感じだな。まあ何度か練習すれば慣れると思うぞ」

 

「まあ感覚的なものだとそんな感じになるか…分かった。実戦で慣れていくさ」

 

 日向野からのアドバイスはやはり感覚的なものであまり参考にはならなかったが、風上としても“実戦に勝るものはない”という考えだったので、どれだけ時間が掛かってでも慣れていくつもりだった。

 

「それじゃあ改めてトリガーセットだが、メインは“弧月”、“旋空”、“シールド”…サブが“通常弾”で拳銃、射手トリガーの“通常弾”、“シールド”、“バッグワーム”で頼む」

 

「…やっぱり全種詰め込むのか」

 

 ある種予想通りのトリガーセットに日向野は呆れつつも風上のトリガーチップを入れ始める。

 

「そりゃな。こんな面白いネタがあるんだから使わなきゃ勿体ないだろう」

 

 しかし風上としてはこんな面白そうなネタ触れない方が損というもの。一つのトリガーをとことん極め抜くのも悪くないが、ACで駆けていた時にも様々な武装、パーツを試して可能性について追求していた為、トリガーもそれぞれの組み合わせで試してみる方が性に合っていると思った。

 

「あ、あとこれは余談というかついでなんだが、正隊員になればある程度トリガーを自分に合わせてチューニングできる」

 

「え、何か機能を追加できるってことか?」

 

「いや、あくまで機能のないアクセサリーをつけるようにしたり、トリガーに装飾を追加する程度だ。独自の機能を追加するにはA級にならなきゃな」

 

 本当についで程度の情報に風上は若干肩を落とすが、C級時代にずっと引っ掛かっていたことを解決できるかもしれないと日向野に聞いてみた。

 

「なぁ、トリガーの大きさを変えたりすることってできるか?」

 

「ん、まあその程度なら全然構わないが…どうした?」

 

「いや、弧月の重さについて悩んでてな。問題なく片手で扱えるとは言えサブトリガーの方にも意識割かれるとなるとノイズが無いに越したことはない」

 

 そう、弧月の重さの問題。

 C級時代に片手で扱えるように矯正していたが、サブトリガーを使うとなると弧月だけに集中するわけにも行かない。現状隊員のトップを突っ走る太刀川もそうだが、風間や三輪など、C級の時点で油断ならなかった猛者達も着々と実力を付けてきている。

 太刀川は弧月一つで頭一つ抜けた実力を有している為ある意味逃げとも取れる行動だが、風上は単純な弧月の腕前、剣の実力で太刀川に勝てるとは思っていなかった。

 無論弧月を扱う上で太刀川の動きや太刀筋は参考にしていたが、それで太刀川の真似をするだけでは太刀川に勝てないし、成長したとして太刀川も自分と同じように、いやそれ以上に成長する為その後追いをしたって猿真似にしかならない。

 だから自分だけの強さを作る為に、できることは全てやるつもりだった。

 

「構わないが、大きさを縮小するってことはリーチが短くなるってことだぞ。良いのか?」

 

「構わない。俺ガタイの都合で鍔迫り合い不利だったし、嫌でも近付かなきゃならなかったからな。重さが減る方が振りやすくなるし、諸々を鑑みてもメリットの方が大きい」

 

 そう、元々身長が小柄気味な風上としてはリーチが短くなることより、刀身を縮めることで削減される重さの方がずっと魅力的だ。縮まるリーチも微々たる差だし、射撃トリガーも入れるので十分リカバリーが利くだろう。

 

「なるほどな。まあお前が良いなら構わない。刀身を短くする調整で良いか?」

 

「ああ、構わない。刀身を2割程度縮めてくれ。ちょっと素振りしてそれでもダメならまた頼むかも」

 

「…ミリ単位で調整とかやめろよ?」

 

「流石にそこまで口煩くないさ。…あ、試し斬りに付き合ってくれるならウェルカムだが?」

 

「勘弁してくれ、正隊員になってすぐ転向だぞ。お前の相手は荷が重い」

 

 そう言いながらトリガーチップの調整を済ませ、軽く素振りしてみる。2割程度なので激的に変わることはなかったが、やはり遠心力なども削減されてかなり振りやすくなった。

 

「良いね。重さが減って振りやすくなったし距離感も掴みやすくなった。相手の体勢は崩し辛くなったかもだが俺のパリィ+ヒット&アウェイスタイルならそこまで影響はないな」

 

「なんだそのスタイル名は」

 

「風間の攻守一体の戦い方。良いなと思ったから使わせてもらってる」

 

「そうか。…というかお前、いい加減話し方ちゃんとした方が良いぞ。下手したら上層部に目をつけられる」

 

 「良いねー」と言いながら弧月の使い心地を堪能する風上に日向野はやや語気を強めながら警告する。

 ボーダー内で絶対に敬語を強制されるような規則はないが年功序列は最低限存在しているし、そう言った細かい配慮ができない人間は嫌煙される傾向にある。

 そういう意味だと風上は暴言を吐くことなどはしないが誰に対しても自分のペースで話をする為、目上や歳上の人間に対して敬語を使うことはほとんどない。そう言った点に眉を顰める人間が一定数いるのは事実だった。一応前の世界からの関わりがある知り合いが除隊処分をされるのは気分が悪い為、最低限忠告しておこうというわけだ。

 

「そうは言ってもな…隊務規定違反はしてないし一々配慮してると疲れる。別に言葉遣い直さないと戦えないわけじゃないし」

 

 しかし風上としては敢えて意地悪くしているわけじゃないし、他者からどう見られようとどうでも良いと思っていた。流石にランク戦出禁なんてされたら考えなければならないが。

 

「まあ、上のオッサン達からなんか言われたらその時はその時だ。それまでは好きにやらせてもらう」

 

「…まあ、頼むから無茶だけはするなよ」

 

 一応思う所はあるらしいが、今の所は直すつもりが無さそうな様子の風上の答えに、日向野は額を押さえながら最低限の念押しをしておいた。

 

「ああ、了解した。で、良かったら試し斬りで10本程度どうだ?」

 

「お前俺の話聞いてたか?」

 

 適当な返事と共に模擬戦に誘って来る風上に流石の日向野も平坦な声色で質問を返した。その後も結局20分程押し問答を続け、日向野が「ブースに多分太刀川でもいるだろ」と提案し、それに乗っかった風上がブースに向かって事なきを得た。

 疲れ切った日向野は自分でコーヒーを淹れて一服しながらため息を吐く。

 

「アイツ、本当にこれから大丈夫か…?」

 

 元上司の破天荒さに僅かに胃の痛みを感じながら、日向野はコーヒーを流し込んだ。




はい、今回はここまで。ワートリ二次なのにここまでまともなバトル描写2話しかしてないってマ?


・風上和郎(頭フロイト)
特にドラマもなく昇格してしまった男。本当にワートリ二次かこの作品???トリガーセットのカスタマイズについてはまだトリガーの種類そのものが少ないからややテンションは抑えめ。隊員がもうちょい増えてそれに伴ってトリガーが増えて来たらハッスルしだす予報。

・日向野幸助(やや胃痛気味)
風上より一足先に昇格。現在東さんや鬼怒田さんと一緒に狙撃手トリガーとメソッドを開発中。エンジニアとしての仕事とメソッド開発で狙撃手の立ち回りも試行錯誤して隊員のトリガー調整もしてとわりとデスマーチ。戦闘狂がやらかさないかと若干胃に来てる。それに伴ってカフェインの摂取量が増えて行ってるので睡眠不足と寝不足とで色々と健康がヤバい。やることが多過ぎるので本部住み込みになった。

・トリガーのカスタムについて
原作読み直してて「そういやオビ=ニャンって弧月片手持ちだけど重くないんだろうか」って思ったので弧月に注目して読み返してみると体格と弧月の大きさの相対比は見た感じ他の隊員と大差なかったけど「それはそれでオビ=ニャン大分小さいのに差がないってある?」って思って「じゃあ大きさ変えてんじゃね?」って結論に至ったので弧月の刀身を縮めました。まあ鍔つけるぐらいできるなら刀身の長さ変えるのも大した手間じゃないでしょ、うん(適当)


こんなもんかな。序盤は隊員が少なくて若干書くネタを迷う。しかし時系列が進んで来ると辻褄が合うように話に気を遣わないといけない…ワートリ二次って難しい!!!

評価、感想もよろしければお願い致します。

それでは次回もお楽しみに。
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