前世が大魔道士だった俺、宇宙戦艦を魔改造して銀河を成り上がる 〜退役寸前のゴミ艦隊ですが、魔法で動かせば最強です〜 作:オカノヒカル
その少し前。
揚陸部隊を送り出したあとも、俺は《アーク・ロズベル》の格納庫に残っていた。
整備架の端には、出撃しなかった強化揚陸装甲が一機、固定されたまま立っている。
予備三号機。
傷だらけの装甲は何度も塗り直され、左脚だけ色が違っていた。別の機体から移植した部品なのだろう。
グレッグたちが乗っていった六機と、基本的な形は変わらない。
人に似た胴体と二本の腕。
背中には短距離用の推進器があり、脚部には船体へ固定するための磁気機構が付いている。
これほど人の形に近いなら、中に人を入れなくても動くのではないか?
「セラ」
「はい、司令」
「これは、どうやって動かす」
セラは端末から顔を上げた。
「搭乗者の動作入力を補助制御系が読み取ります。手足の動きや神経反応を機体側で増幅し、姿勢制御と駆動系へ反映する仕組みです」
「人が骨の中に入り、神経を貸すわけか」
「かなり不穏な言い方ですが、大まかには合っています」
「人が入るゴーレムだな」
「強化揚陸装甲です」
『“ゴーレム”を人型作業機械と解釈した場合、構造上の類似点はあります』
「ノア。司令に余計な納得材料を与えないでください」
『事実関係の補足です』
「変なことではない」
「十分に変です」
セラは端末へ機体の制御経路を表示した。
搭乗者からの入力は、胸部の操縦槽から補助制御系へ入り、姿勢制御と各関節へ送られる。
人が動けば、機体がその動きを追うらしい。
「なら、外から同じ命令を入れればいい」
「通常の遠隔操作では無理です」
「なぜだ」
「装甲側の制御装置は、搭乗者の動作を補助するために作られています。人がいない状態で、全身の姿勢や重心を遠隔制御する機能はありません」
「ノアに補わせればいい」
『理論上、姿勢制御の一部は補助可能です。ただし、既存規格に無人運用手順はありません』
「なら、作ればいい」
セラが端末を胸元へ引き、不満げな顔を浮かべる。
「その前に、確認しておきます。巨大構造物の内部では通信が乱れています。こちらから細かな動きを指示しても、遅延や映像の欠落で転倒する可能性があります」
「電波だけで動かす必要はない」
「司令?」
「魔法で命令を通す」
セラの眉間に皺が寄った。
『警告。司令官の発言に、未登録運用案の兆候を確認』
「まだ何もしていないぞ」
『過去の行動記録から、事前警告が必要と判断しました』
「学習していますね、ノア」
『肯定』
少し不利になってきた気がする。
俺は予備三号機の胸部装甲を見た。
機体の中には、搭乗者が座るための空間がある。仕組みとしては、人が命令を出して機械が手足を動かす。
ゴーレムと大差はない。
中に入る人間の代わりに、命令を受け取る仮の核を置けばいい。
「肩だけ動かしてみる」
「待ってください」
セラは機体の整備状態を確認し、非常停止画面を開いた。
「整備架の固定を維持。駆動出力は最低値に制限します。ノア、肩関節以外への入力は遮断してください」
『了解。予備三号機、試験監視を開始』
「肩だけですよ」
「分かっている」
「脚も指も推進器も動かさないでください」
「分かっている」
「本当に?」
「今回はな」
セラがこちらを睨んだ。だが、それ以上は何も言わない。
許可は出たらしい。
俺は装甲の胸へ手を置いた。
冷たい外板の奥に、細い制御回路がある。操縦者の入力を受け取るための道だ。
そこへ、ごく弱い魔力を通した。
大きな力はいらない。
命令を一つだけ置く。
右肩を上げろ。
強化揚陸装甲の肩が、かすかに動いた。
『予備三号機、右肩部サーボに反応』
『操縦者、生体反応なし』
『未登録入力を確認』
セラが端末を凝視する。
「動きましたね」
「動いたな」
「そこを嬉しそうに言わないでください」
「肩が動くなら、腕も動く」
「肩だけという約束です」
「今日は動かさない」
「今日は?」
そのとき、格納庫内へ警報が響いた。
『緊急信号を受信』
ノアの声が硬くなる。
『巨大構造物内部にて、複数の未登録自律機械が起動』
『グレッグ隊、撤退を開始』
『通常音声回線、不安定』
セラが試験画面を閉じ、揚陸部隊の監視情報を開いた。
「映像を出してください」
『転送します』
壁面に、ノイズの混じった映像が表示された。
青白い結晶脈が走る通路。
床や壁から現れる六本脚の機械。さらに天井付近へ浮かぶ球形機械。
グレッグ隊は射撃しながら、入口へ向かって後退している。
〈部隊、後方にも反応!〉
〈退路を制圧して抜ける。隊列を崩すな!〉
グレッグの声が、途切れながら届いた。
敵を倒すことに固執せず、部下を連れて戻ろうとしている。
だが、防衛機械の数が増えていた。
『揚陸隊五名、入口方向へ移動中』
『グレッグ隊長機、最後尾』
『隊長機右腕部に損傷』
「救援は?」
俺が聞くと、セラは別の航路を表示した。
「有人の作業艇を出しても間に合いません。接敵位置まで二十分近くかかります」
『作業艇二番を無人運用へ切り替え可能』
ノアが新しい航路を表示する。
『乗員保護用の加速制限を解除し、小惑星帯を直線経路で通過した場合、到達予測二分四十二秒』
「危険な航路ですね」
『有人運用は推奨できません』
「無人なら構わんだろ」
「艇が壊れる可能性があります」
「グレッグが死ぬよりはいい」
画面の中で、若い隊員の脚が拘束ワイヤーに捕まった。
グレッグが引き返す。
敵機を押しのけ、隊員を助けている。
あのままでは、グレッグだけが取り残される。
「予備三号機を出す」
セラがこちらを向いた。
「操縦者がいません」
「俺が動かす。動かせただろ?」
「肩を動かしただけです」
「間に合う可能性はある」
『予備三号機は左脚姿勢制御系に既知の不具合があります』
「ノアが支えろ」
『姿勢制御の補助は可能です。ただし、司令官による命令入力との整合性は未確認です』
「合わせればいい」
「簡単に言いますね……」
セラはグレッグ隊の位置と、予備三号機の状態を何度も見比べた。
「やるなら、私とノアの監視下です」
「分かった」
「出力制限はこちらで持ちます。司令は勝手に上げないでください」
「必要な分だけだ」
「その必要量が信用できません」
『セラ副官の懸念は妥当です』
「二人とも厳しいな」
「人を助けるために、別の事故を起こすわけにはいきません」
これ以上、壊す余裕もない。
「任せる」
セラはすぐに動いた。
「整備班、予備三号機を作業艇二番へ固定してください。艇は無人運用。装甲側の関節保護を最優先します」
『作業艇二番、遠隔航行系を起動』
『ステーション17を経由し、中継回線を確立します』
整備架の固定が外される。
俺は予備三号機の胸部へ、改めて手を置いた。
装甲が骨で、駆動部が筋肉。そして制御回路が神経だと思えば、操縦は苦ではない。
ゴーレムを操る手順で、空の操縦槽へと命令を受け取る仮の核を置く。
立て。
機体の膝が伸びた。左脚が一拍遅れ、上体が傾く。
『姿勢崩壊を予測』
「ノア」
『補正します』
機体が踏みとどまった。
セラが次々と制限を掛けていく。
「関節出力、四割。左脚は三割。推進器は短時間噴射のみ。右腕の外部作業電極は二割から始めます」
「低すぎないか」
「機体を現地まで届ける必要があります。格納庫で壊してどうするんですか」
「分かった」
予備三号機が歩き始めた。
動きは鈍いが、ノアの補正が入るたびに姿勢が整っていく。
俺の命令は大まかなものだけでいい。
進め。
止まれ。
腕を上げろ。
重心を戻せ。
細かな関節制御はノアが補い、セラが出力と冷却を監視する。
俺は大まかな命令だけを通せばいい。
「作業艇への固定を確認」
セラが言う。
『予備三号機、固定完了』
『作業艇二番、発進します』
格納庫の隔壁が閉じた。
無人の作業艇が射出され、旧鉱山帯の闇へ飛び出す。
『直線航路へ移行』
『自動回避限界を超える小型デブリを確認』
『外装への軽微な衝突を許容し、進路を維持します』
「壊すなよ」
『任務達成を優先します』
ノアも随分と大胆になったものだ。
作業艇から届く映像は何度も乱れた。
ステーション17を経由した中継回線で、位置情報と機体姿勢、損傷状態が優先的に送られてくる。
『グレッグ隊長機、右腕駆動低下』
『背部推進器出力、低下』
『揚陸隊五名、構造物出口まで残り十四メートル』
グレッグだけが、まだ撤退できていない。
「急げ」
『作業艇二番、対象外殻まで残り五十秒』
俺は装甲へ通した術式を維持した。
格納庫にいる俺の身体は動いていない。それでも、意識の半分は遠くの装甲へ入り込んでいる。
ノアが拾う断続的な映像に、術式から返る感覚が重なる。
足が艇の固定具へ当たれば、膝の奥に鈍い抵抗が返る。
作業艇がデブリをかすめれば、肩口に小さな揺れを感じる。
自分の身体ではない。
それでも、命令を通すたび、機体の動きが自分の手足に近づいていく。
『作業艇二番、巨大構造物外殻へ到達』
「装甲固定を解除」
『解除します』
予備三号機が作業艇から飛び出した。
背部推進器を短く噴かし、外殻の裂け目へ向かう。
左脚が外殻へ触れた。
磁気固定がうまく働かない。
『姿勢不安定』
「踏ん張れ」
左膝へ命令を通す。
ノアが姿勢を補い、機体が外殻へ立った。
『作業艇二番、裂け目付近で通信中継を継続』
『予備三号機、構造物内部へ進入』
暗い通路が映る。
映像は荒く、ところどころ欠けていた。
壁面に青白い筋が走っている。
防衛機械が動くたび、その一部が明滅していた。
『グレッグ隊長機、前方二十七メートル』
『敵性反応、複数』
通路の奥に、グレッグの乗る強化揚陸装甲がいた。
右腕を壊され、背部推進器も出力を落としている。
それでも、部下の退路を守るように立っていた。
正面では、三体の球形機械が光を集めている。
「間に入れ」
予備三号機が床を蹴った。
左脚が遅れる。
ノアが姿勢を補正し、どうにか前へ出る。
グレッグと防衛機械の間へ割り込んだ直後、三本の光が走った。
「左腕を上げろ!」
予備三号機が左腕で射線を受ける。
装甲表面へ黄金の線を広げ、熱を散らす。
全部は消せない。
左腕の外装が赤く焼け、関節部から白い冷却剤が噴き出した。
『左腕部外装、温度上昇』
『左腕関節、過負荷』
『冷却剤漏出』
「まだ動く」
「もう一度受けたら持ちません!」
セラが出力制限を調整する。
『予備三号機の近距離通信が、グレッグ隊長機を捕捉』
『作業艇二番を経由し、音声回線を再接続します』
〈……誰が、乗っている?〉
グレッグの声が届いた。
「誰も乗っていない」
〈司令?〉
「俺が動かしている」
〈意味が分かりませんな〉
「俺も、この機械については詳しくない」
〈でしょうな!〉
声に力はある。
なら、まだ動ける。
蜘蛛型の機械が二体、予備三号機へ飛びかかってきた。
右腕を前へ出す。
外部作業電極へ、細く魔力を通した。雷撃魔法の手順だ。
相手を砕くほどの威力は出せない。露出した制御部だけを焼く。
黄金の雷が先頭の蜘蛛型へ落ちた。
六本の脚が固まり、機体が床へ崩れる。
接触していた二体目へ細い光が跳ね、そちらも姿勢を失った。
続けて、右側の球形機械へ雷撃を向ける。
表面に火花が走り、照準光が消えた。
『前方の蜘蛛型二体、制御停止』
『球形機械一体、照準機能喪失』
『残存敵性反応、複数』
「奥の機械は止まっていません!」
「退路は開いた」
グレッグの後ろには、出口へ続く道がある。
「グレッグ、走れるか」
〈隊長を走らせる司令は初めてですな〉
「生きて帰るなら何でもいい」
〈了解。走ります〉
グレッグの機体が動いた。よろよろとしながらも、徐々に走るスピードを上げていく。
俺は予備三号機を一歩前へ出し、追撃する機械との間に入った。
床から拘束ワイヤーが伸びてくる。
「右下だ」
『捕捉』
ノアが駆動部の位置を表示する。
雷撃を細く落とし、ワイヤーを巻き取る機構だけを焼いた。
床面の拘束具が止まる。
さらに球形機械が照準を合わせてきた。
右腕の作業電極へ、もう一度魔力を通す。
光が走り、球形機械の姿勢が崩れた。
同時に、予備三号機の右腕が大きく震える。
『右腕部外部作業電極、過熱』
『右腕部制御系、部分停止』
腕が下がった。
「右腕が動きません!」
「左は?」
「ビームを受けて冷却剤が漏れています!」
「身体は残っているな」
「戦い続ける判断は認めません!」
もう戦う必要はない。
グレッグたちは、すでに裂け目へ近づいている。予備機もこれ以上は傷めたくない。
機体を後退させる。
しつこく蜘蛛型が追ってきた。
機体の肩をぶつけ、先頭の一体を通路の壁へ押し込んだ。
装甲同士が擦れ、火花が散る。
『左脚姿勢制御、悪化』
『機体転倒の可能性』
「ノア、姿勢制御でなんとかしろ」
『補正を継続』
「セラ、あと少しだ」
「分かっています。推進器を一度だけ使えます。その後は冷却限界です」
「使ってくれ」
背部推進器が短く噴いた。
予備三号機が後方へ跳び、グレッグ隊との距離を詰める。
『揚陸隊、作業艇一番へ収容開始』
『グレッグ隊長機、収容圏内』
若い隊員たちの声が聞こえた。
〈隊長、急いでください!〉
〈止まるな。先に乗れ!〉
「グレッグ」
〈分かっています!〉
グレッグの機体が作業艇へたどり着く。
『揚陸隊六名、収容完了』
『死亡者なし』
それを聞いて、力を抜いた。
「予備三号機を戻す」
『作業艇二番を入口へ接近させます』
敵性機械は、まだ通路の奥で動いていた。
予備三号機には、もう攻撃できる腕がない。
だが、倒す必要もないか。
入口まで下がり、待機していた作業艇二番へ身体を固定する。
『予備三号機、回収完了』
『作業艇二番、離脱します』
巨大構造物の裂け目が遠ざかった。
壁の青白い筋は、最後まで淡く明滅している。
こちらを追ってくる様子はない。
術式を解くと、遠くの装甲へ置いていた意識が戻ってきた。
視界の端に残っていた暗い通路が薄れ、《アーク・ロズベル》の格納庫がはっきり見え始める。
床を踏む自分の身体の重さも戻った。
少し酔うな。
次に使うなら調整が必要だ。
「司令」
セラが端末を抱えたまま、不思議そうにこちらを見ている。
「今、どこを見ていました?」
「作業艇の中だ」
「予備機からの映像は表示されていませんが」
「意識を半分だけ入れたから、その影響だ」
セラが黙り、ノアが反応する。
『新規記録項目を追加します』
「追加しなくていい」
『必要です』
「司令」
「何だ?」
「あとで詳しく聞きます」
また事情聴取が増えるらしい。
**
先に戻った作業艇一番から、グレッグ隊が降りてきた。
装甲のあちこちに焦げ跡が残っている。
右腕を壊されたグレッグの機体は、整備班に支えられてようやく歩いていた。
医療班が隊員たちを引き取り、一人ずつ負傷状態を確認する。
若い隊員は装甲を降りた途端、その場へ座り込んだ。
グレッグも顔色は悪い。それでも、俺の前まで来ると敬礼した。
「司令。命を拾いました。この借りは、いつか必ず」
「借りは治ってから返せ」
「返す頃には、また増えていそうですな」
「なら、長生きしろ」
グレッグは敬礼した手を、しばらく下ろさなかった。
「了解しました」
続いて、無人の作業艇二番が帰還した。
予備三号機が整備架へ運ばれる。
左腕の装甲は赤黒く焼け、関節部から冷却剤が漏れていた。右腕は力なく下がり、色の違う左脚も出撃前より大きく歪んでいる。
「損傷報告です」
セラが端末を読み上げる。
「左腕外装焼損。左腕関節過負荷、冷却剤漏出。右腕外部作業電極および制御系焼損。左脚姿勢制御悪化。通信系と冷却系にも過負荷があります」
「よく戻った」
「作業艇がなければ、戻せませんでした」
「作業艇も労っておけ」
『作業艇二番、外装損傷軽微。航行機能を維持』
「そちらもよく働いた」
『記録します』
セラが端末を閉じかけ、こちらを見た。
「無人装甲が使えることは分かりました」
「そうだろう」
「ただし、今のままでは実用運用できません」
「なぜだ」
「司令、私、ノアの三者が付ききりです。予備三号機も一度の救援で両腕が使えなくなりました。作業艇も必要です。通信中継が切れれば、姿勢制御も映像も失います」
「直すところが分かったな」
「そういう意味で言ったのではありません」
「だが、直せば次はもっと動く」
「否定はしません。無人偵察に使える可能性もあります」
セラは焦げた装甲を見上げた。
「有人部隊を危険区画へ入れる前に、表層だけ確認させる。作業艇で運び、ノアの補助範囲内だけで使う。それなら、検討する価値はあります」
「次は最初から無人で行けるな」
「まず修理です」
「飯も必要か」
「整備班には出してください」
「分かった」
ノアが、揚陸部隊と予備三号機の記録を再解析していた。
『追加報告』
格納庫の壁面へ、巨大構造物内部の簡易図が表示される。
グレッグ隊が設置したセンサー。
起動した防衛機械。
壁面を走る青白い反応。
そして、さらに奥にある、強い反応。
『防衛機械起動時の記録を再解析』
『巨大構造物深部に、高密度未登録媒質反応を確認』
『星脈結晶サンプル周辺で確認された反応と、部分的に一致』
「俺の雷撃が原因か?」
『因果関係は判定不能です』
『防衛機械の起動によって、既存反応が一時的に観測可能となった可能性があります』
「奥に、何かあるのは確かですね」
セラが内部図を拡大した。
「ですが、今度は有人部隊を送りません。予備三号機の修理と解析が先です」
「分かっている」
「本当に?」
「今はな」
セラは疑わしそうだったが、追及はしなかった。
『さらに報告』
ノアが、ステーション17の旧記録を壁面へ表示する。
『巨大構造物の反応位置と関連する可能性がある、旧補給記録を確認』
「施設名か?」
『断定不能です』
『記録の破損が大きく、識別対象、施設名、計画名の判別は不可能』
崩れた文字列が、一つずつ復元されていく。
「何と書いてある」
『残存文字列を表示します』
壁面に、短い単語だけが残った。
『アーク』
《アーク・ロズベル》と同じ名だった。