前世が大魔道士だった俺、宇宙戦艦を魔改造して銀河を成り上がる 〜退役寸前のゴミ艦隊ですが、魔法で動かせば最強です〜   作:オカノヒカル

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第26話 禁止された主砲で、味方を救う

〈ようやく出てきたな、《アーク・ロズベル》〉

 

 海賊の声は、妙に落ち着いていた。

 

 星図上には、十隻の敵艦が映っている。

 正面に中型武装艦四隻。

 左右には、小型の高速艦が三隻ずつ。

 

 赤い光点が広がり、《アーク》を囲むように動き始めた。

 

「包囲するつもりでしょうか」

 

 セラが敵の進路を拡大する。

 左右の小型艦は、こちらへ真っすぐ向かっていない。第一艦隊の駆逐艦よりも外側へ回り込もうとしている。

 

「違う」

 

 俺は左右の駆逐隊を見る。

 

「《アーク》から、足の速い船を引き離すつもりだ」

 

 小型艦を追えば、駆逐艦が中央から離れる。

 

 残された《アーク》は鈍い。

 戦闘加速も使えない。

 

 その隙に、そこへ正面の中型艦をぶつけるつもりなのだろう。

 

「駆逐隊は追うな。軽巡洋艦の支援範囲から出るな」

 

 クレイン大佐が、間を置かず第一艦隊へ命令を流す。

 

〈第一、第二駆逐隊。隊列を維持。外側の敵は牽制に留めろ〉

〈第一駆逐隊、了解〉

〈第二駆逐隊、了解〉

 

 左右へ広がった海賊艦から、誘導弾が放たれた。

 

『敵誘導弾、十二』

「迎撃火器、作動!」

 

 兵装管制士の声と同時に、《アーク》の船体各部から迎撃砲火が伸びる。

 白い軌跡が交差し、敵誘導弾が次々と弾けた。

 

 すべては落とせない。

 残った誘導弾へ、第一艦隊の駆逐艦が迎撃弾を放つ。

 

 左翼では二隻の駆逐艦が射界を重ね、右翼では一隻が正面を受け持ち、もう一隻が横から抜けようとする弾を仕留めた。

 

 第一艦隊は、書類だけの艦隊ではないらしい。

 

「左右の小型艦が、さらに散開します」

「多弾頭弾を左右へ一発ずつ」

 

 兵装管制士が振り返る。

 

「使用しますか? 残数は多くありません」

「ここで使う」

「了解。多弾頭誘導弾、目標を分配」

 

 《アーク》の左右から、一発ずつ誘導弾が飛び出した。

 

 海賊の小型艦へ接近したところで、親弾頭が割れる。

 複数の子弾頭が扇状に広がり、それぞれ別の目標へ向かった。

 

 撃沈するための弾ではない。

 海賊側の迎撃火器が一斉に動き、小型艦が回避へ入る。

 

 一隻が外へ逃げ、もう一隻が内側へ戻ろうとした。

 

〈第一駆逐隊、内側の一隻を押し返せ!〉

 

 クレイン大佐の命令で、二隻の駆逐艦が同時に砲撃する。

 一隻が進路の前へ弾幕を張り、もう一隻が回避先へ誘導弾を送った。

 

 海賊艦は中央へ戻れず、さらに外側へ逃げる。

 

 悪くない。

 第一艦隊は、正しく動かせば十分に強い。

 

 正面の中型武装艦が火を噴いた。

 

「敵艦、実体弾発射!」

 

 回避は間に合わない。

 

 高速徹甲弾が、《アーク》の艦首へ直撃した。

 白い外骨格の表面で火花が弾ける。衝撃が艦橋まで伝わったが、分厚い構造梁は折れなかった。

 

 徹甲弾は外骨格の一部を削り、そのまま艦首の外へ逸れていく。

 

『外骨格第一接合部、衝撃を吸収。艦首主骨格への損傷なし』

 

 第一艦隊旗艦から借りた骨は、今度は《アーク》を守った。

 

「副砲。正面二番艦の推進器を狙え」

「レールガン砲塔、照準!」

 

 船体側面の旧式砲塔が、遅い動きで敵へ向く。

 

 初弾は敵艦の横を通り抜けた。

 二発目も装甲をかすめる。

 三発目が、艦尾の推進器付近へ突き刺さった。

 

 敵艦の噴射光が乱れ、船体が横へ流れる。

 

「敵二番艦、速度低下!」

「沈めなくていい。動けなくしろ」

 

 逃げられなくなれば、あとで捕まえればいい。

 

 クレイン大佐の軽巡洋艦が、こちらの砲撃へ合わせた。

 軽巡洋艦の斉射が、速度を失った敵艦の砲塔を叩く。

 

 続いて二隻の駆逐艦が接近し、敵艦の迎撃火器とセンサーを順番に潰した。

 正面の海賊艦が隊列を崩す。

 

 右翼でも、もう一隻の軽巡洋艦が駆逐艦二隻を支え、小型艦一隻の推進器を損傷させていた。

 

 冷却に制限があるため、無理な加速はしていない。

 それでも砲撃の間隔は正確だった。

 

 正しい役割を与えれば、第一艦隊は強い。

 壊れた部分を隠したまま使うより、よほどいい。

 

『敵中央艦、進路反転』

 

 ノアの報告と同時に、正面奥の一隻が後退を始めた。

 ほかの海賊艦より通信量が多く、戦闘中も周囲へ指示を送っていた船だ。

 

〈敵中核艦が逃げます〉

 

 クレイン大佐から短い通信が入った。

 

〈追撃許可を求めます。軽巡洋艦一隻、駆逐艦二隻で追えます〉

 

 敵中核艦は、《アーク》の正面方向へ逃げている。

 艦首の軸線からは、大きく外れていない。

 

「クレイン大佐。軽巡洋艦一隻、駆逐艦二隻で追え」

〈了解〉

「ただし、条件がある」

 

 わずかな間を置いて、返答があった。

 

〈条件を確認します〉

「《アーク》の艦首軸線から大きく外れるな。第二艦隊フリゲートの通信中継圏を出るな」

〈確認しました〉

「新しい熱源を見つけたら、すぐに戻れ。撃沈する必要はない。推進器を止めればいい」

〈第一駆逐隊、追撃編成へ。旗艦軸線と通信中継圏を維持する〉

 

 三隻が隊列を離れ、敵中核艦を追い始めた。

 残った軽巡洋艦と駆逐艦二隻が、《アーク》の前へ位置を変える。

 

「本隊の前面を預ける」

 

 俺が命じると、クレイン大佐がうなずいた。

 

〈了解しました。本隊前方を引き受けます〉

 

 敵中核艦の推進光が乱れた。

 急に速度が落ちる。

 

『敵中核艦、推進出力低下』

〈追いつけます〉

 

 クレイン大佐の軽巡洋艦が加速する。

 その先には、廃棄された鉱石運搬船や船体残骸が漂っていた。

 

「クレイン、残骸群の奥へ入るな」

〈了解。外縁で止めます〉

 

 追撃隊が、動かなくなった鉱石運搬船の横を通過する。

 その瞬間、艦隊回線へ強い雑音が走った。

 

「通信妨害です!」

『局地的な妨害波を検出』

 

 クレイン大佐の映像が崩れる。

 音声は途切れたが、追撃隊の位置情報はまだ届いている。

 

 フリゲートの中継が生きていた。

 

「新たな熱源!」

 

 索敵士が声を上げる。

 

「《アーク》と追撃隊の間に、三つ現れました!」

 

 さきほどまで冷えた残骸だった場所で、炉心が起動する。

 廃棄された鉱石運搬船の陰から、中型砲戦艦が一隻。

 

 その左右から、小型襲撃艦が二隻飛び出した。

 炉心を止め、船体を残骸へ密着させ、慣性だけで漂っていたらしい。

 

 駆逐艦のセンサーでも、止まった廃船と重なれば見つけにくい。

 

「待ち伏せ……!」

 

 未確認だった三隻の海賊艦が、追撃隊の背後から砲撃を始めた。

 左右の小型艦が駆逐艦を狙い、中央の砲戦艦がクレイン大佐の軽巡洋艦へ火力を集中させる。

 

 駆逐艦一隻が回避する。

 もう一隻へ、敵の砲撃が命中した。

 

「第一駆逐隊二番艦、被弾!」

『姿勢制御出力、低下。主推進器周辺に損傷』

 

 駆逐艦が回転し、隊列から外れかける。

 

 クレイン大佐の声が、雑音に混じって届いた。

 

〈追撃中止! 損傷艦を回収する!〉

〈……一番艦、損傷艦の左へ……離れるな!〉

 

 無傷の駆逐艦が、回転する僚艦へ接近する。

 クレイン大佐の軽巡洋艦は減速し、損傷した駆逐艦と敵砲戦艦の間へ割り込んだ。

 

「大佐、自艦が狙われます!」

〈駆逐艦の装甲では次を受けられん。本艦で受ける!〉

 

 軽巡洋艦の防御場へ、敵の斉射が突き刺さる。

 

 白い船体の周囲で光が弾けた。

 

『クレイン大佐乗艦、シールド出力低下』

「副砲は届くか?」

「射程内です」

 

 兵装管制士が答える。

 

「ですが、この距離では着弾までに回避されます。敵艦もこちらを探知しています」

「誘導弾は?」

「通信妨害の影響で追尾精度が落ちます。到達前に迎撃される可能性が高いです」

「多弾頭弾」

「迎撃火器は乱せますが、中型砲戦艦を止める威力はありません」

「宇宙魚雷は?」

 

 セラが首を振る。

 

「あの距離では間に合いません。加速も進路変更も遅すぎます」

 

 敵砲戦艦の砲口に、再び熱が集まる。

 

『敵中央艦、次回斉射準備』

『予測。クレイン大佐乗艦、シールド維持困難』

「本艦の戦闘加速は?」

「禁止です」

 

 セラの返事は早かった。

 

「通常加速で近づけば?」

 

 航法士が計算結果を出す。

 

「救援距離へ入る前に、クレイン大佐の軽巡洋艦が次の斉射を受けます」

 

 副砲も誘導弾も間に合わない。

 

 残るのは一つだけ。

 

「主砲を使う」

「駄目です」

 

 セラが即答した。

 

「外骨格移設後、実射試験をしていません。主砲支持架が耐えるかも、反動がどこへ逃げるかも分からないんですよ」

「分かっている」

「一発でも安全とは言えません」

「安全な方法では、間に合わん」

 

 画面の中で、クレイン大佐の軽巡洋艦が再び揺れた。

 損傷した駆逐艦は、まだ姿勢を戻せていない。

 

「リーネ、聞こえるか」

 

 船体監視区画の回線が開く。

 

「聞こえているわ」

「主砲を一発、持たせられるか」

 

 短い沈黙があった。

 

「持たせる」

「リーネ!」

 

 セラが声を上げる。

 

「壊れないとは言っていないわ。でも、一発だけなら負荷を逃がせる」

 

 外骨格の構造図が表示される。

 リーネはそれを見て、荷重経路を次々と切り替えていく。

 

「外骨格固定部を非常時設定へ。艦首側を締めて、中央の仮設固定具は逃がして。反動を複数の主骨格へ流します」

 

 眉間と額にしわを寄せ、端末を開いた。

 

「一発だけですよ」

「十分だ」

「発射後は、結果に関係なく主砲を封鎖します」

「任せる」

「この命令、正式に記録しますからね」

「わかってる。主砲照準へ移る」

 

 操舵士が姿勢制御画面を切り替えた。

 

「操舵、主砲照準モード」

『警告。主砲は使用禁止状態です』

「解除しろ」

『司令官命令を確認』

「主砲照準モードへ移行。兵装管制、目標軸を送れ」

「目標、敵中央艦。予測射撃線を操舵系へ転送」

『航法、操舵、兵装管制を同期。目標追尾情報を統合します』

 

 《アーク》の左右で姿勢制御スラスターが噴いた。

 

 鈍重な船体が、艦首ごと敵艦へ向きを変えていく。

 

「相対回転、停止」

「艦首軸線、目標へ接近。誤差0.4」

『内部偏向機構による補正範囲内』

「姿勢固定」

「主砲照準、固定」

 

 正面に射撃予測線が伸びる。

 

 《アーク》から敵砲戦艦へ。

 さらに、その先にクレイン大佐の軽巡洋艦がいた。

 

 俺は残った第一艦隊の軽巡洋艦へ命令する。

 

「第二軽巡、駆逐艦二隻と旗艦直衛へ! 主砲照準中の《アーク》へ敵を近づけるな」

〈了解しました〉

 

 軽巡洋艦と駆逐艦二隻が《アーク》の守りに入る。

 敵の誘導弾を迎撃し、小型艦を押し返す。

 

 《アーク》は姿勢制御スラスターを噴かし、鈍い船体をわずかに回頭させた。

 

『目標、敵中央砲戦艦』

『艦首軸線との差、照準補正範囲内』

 

 追撃の方向を制限しておいたおかげで、大きく艦首を振る必要はない。

 

「クレイン、聞こえるか」

 

 雑音の向こうから、途切れた声が返る。

 

〈……聞こえて……います〉

「28秒後、右へ全力回避しろ」

〈右へ?〉

 

 ノアが射撃予定線を送る。

 

 《アーク》から敵砲戦艦を貫き、その先へ伸びる一本の線。

 

〈まさか、主砲を……〉

「28秒だ」

 

 クレイン大佐は、損傷した駆逐艦を守る位置にいる。

 

 右へ動けば、敵と駆逐艦の間が開く。

 

「一発で止める」

 

 数秒の沈黙。

 

〈……了解〉

 

 クレイン大佐の声が戻った。

 

〈第一駆逐隊一番艦、損傷艦を左へ押し出せ! 本艦は右へ回避する!〉

 

 艦首の分厚い装甲扉が開き始めた。

 その奥から、長砲身主砲の砲口が現れる。

 

 灰色の装甲の継ぎ目に、黄金の光が走った。

 艦首から船体中央へ、主砲と主骨格の位置をなぞるように螺旋状の術式が浮かび上がる。

 

「主砲支持架、負荷上昇!」

「外骨格固定部、分散開始!」

 

 リーネの声が艦内回線へ響く。

 放熱板が開き、黄金の光を帯びた。

 

 クレイン大佐の軽巡洋艦が右へ噴射する。

 損傷した駆逐艦は、僚艦に押されて左へ流れた。

 

『射線上の味方艦、離脱』

「射線、クリア!」

「目標固定!」

『発射可能』

「撃て」

 

 《アーク》の艦首が光に包まれた。

 

 次の瞬間、主砲の一撃が放たれた。

 

 白金色の一撃が暗い宇宙を貫き、待ち伏せの中央艦へ正面から突き刺さる。

 

 敵艦の輪郭が、白い光の中に浮かび上がった。

 

 船体中央が膨れ上がる。

 装甲が内側から剥がれ、長い船体が艦首と艦尾に裂けた。

 

 続いて炉心区画と弾薬庫が誘爆する。

 艦首が飛び、砲塔が回転しながら離れ、引きちぎられた艦尾が残骸群へ流れていった。

 

 光が収まったあと、元の船体は残っていなかった。

 

 同時に、《アーク》の船体を激しい衝撃が突き抜ける。

 

 艦橋の照明が消え、非常灯へ切り替わった。

 

【主砲支持架、変位】

【艦首冷却配管、圧力低下】

【外骨格第三固定部、変形】

 

 警告表示が次々と開く。

 

『主砲支持軸、許容範囲を超えて変位』

『主砲再射撃不能』

「通常航行は可能か?」

『通常航行および通常兵装への重大な影響なし』

「主砲区画を封鎖します!」

 

 セラが有無を言わさず決めた。

 

「任せる」

 

 セラが主砲への出力経路を切り、冷却班と整備班へ命令を飛ばす。

 砲口を覆う装甲扉が、軋むような遅さで閉じ始めた。

 

 主砲は再射撃不能になった。

 だが、敵砲戦艦からの砲火も止まっている。

 

『敵艦隊の統一指揮信号、消失』

 

 星図上の赤い光点が、一斉に乱れた。

 それまで連動していた海賊艦が、ばらばらの方向へ進路を変えていく。

 

『戦闘中の通信記録を再解析』

『撃破した中央艦を、海賊艦隊司令船と推定します』

「頭だったか」

 

 俺たちが追っていた船は、指揮通信を偽装した囮だったらしい。

 撃破した待ち伏せ艦が、司令船だったようだ。

 

 正面の中型艦は本星と反対方向へ逃げ、左右の小型艦は残骸群へ潜り込もうとする。

 囮だった船も、推進器を全開にして離脱を始めた。

 

「全艦、逃走経路を塞げ」

 

 艦隊指揮回線を開く。

 

「撃沈する必要はない。推進器と武装だけ止めろ」

〈第一艦隊本隊、了解。駆逐艦二隻を左右へ展開させます〉

 

 前方を守っていた軽巡洋艦が左へ進路を変え、駆逐艦二隻が反対側へ開いていく。

 

 第二艦隊のフリゲートは後方から各艦の観測情報を集約し、敵の逃走予測を星図へ表示した。

 

『局地通信妨害、減衰』

 

 雑音の向こうから、クレイン大佐の声が届く。

 

〈第一駆逐隊、全艦生存。二番艦も自力帰還可能です〉

「クレイン大佐。囮艦を逃がすな」

〈了解しました〉

 

 短い返答の直後、クレイン大佐の軽巡洋艦が動いた。

 損傷した駆逐艦を僚艦へ任せ、自ら囮艦の進路前方へ回り込む。

 

 軽巡洋艦の砲撃が、囮艦の正面を横切った。

 進路を塞がれた囮艦が、右へ回避する。

 その先には、損傷艦を支えていた駆逐艦が待っていた。

 

〈第一駆逐隊一番艦、対艦誘導弾発射!〉

 

 誘導弾が囮艦の後方から追いつき、主推進器へ直撃した。

 艦尾が爆発し、推進光が途切れる。

 

『敵囮艦、主推進器停止』

〈囮艦を止めました〉

「そのまま後方を塞げ」

〈了解〉

 

 正面では、中型武装艦二隻が包囲を抜けようとしていた。

 

「副砲、敵の進路前方を狙え」

「レールガン副砲、照準!」

 

 《アーク》の側面砲塔が旋回する。

 

 砲弾が二隻の間を抜け、その先に漂っていた残骸を粉砕した。

 中型艦は正面へ進めず、左右へ分かれる。

 

 左には第一艦隊の軽巡洋艦。

 右には駆逐艦二隻。

 後方にはクレイン大佐の追撃隊。

 

「全周波数で送れ」

『通信回線を開きます』

「海賊艦隊へ告げる」

 

 俺の声が、残存するすべての海賊艦へ送られる。

 

「司令船は沈めた。逃げ道もない。武装と推進器を停止しろ。降伏する艦は撃たない」

 

 数隻の海賊艦が速度を落とした。

 だが、中型武装艦一隻が砲口を《アーク》へ向ける。

 

『敵中型艦、砲撃準備』

「副砲。砲塔と推進器を落とせ」

「了解!」

 

 レールガン副砲が連続して火を噴いた。

 

 一発目が敵の主砲塔を叩き潰す。

 二発目が艦尾を貫いた。

 

 敵艦の推進器が爆発し、船体が回転しながら残骸群へ流れていく。

 別の小型高速艦が、第一艦隊の駆逐艦二隻の間を強引に突破しようとした。

 

〈第一駆逐隊、左へ追い込め!〉

 

 一隻の駆逐艦が進路前方へ弾幕を張る。

 

 小型艦が右へ逃げた。

 もう一隻の駆逐艦から放たれた誘導弾が、その横腹へ突き刺さる。

 

 小さな船体が二つに折れ、爆発の中へ消えた。

 残る海賊艦から、降伏通信が続けて入る。

 

〈降伏する! 武装を停止する!〉

〈炉心出力を落とした! 撃たないでくれ!〉

〈こちらも降伏する!〉

『敵艦七隻、武装停止を確認』

『残る敵艦も航行不能、または戦闘能力を喪失しています』

 

 クレイン大佐から正式な報告が入る。

 

〈第一駆逐隊、全艦生存。二番艦も自力帰還可能です〉

「分かった。隊列へ戻れ」

 

 通信の向こうで、わずかな間があった。

 

〈レオン司令〉

 

 大佐は、今度はそう呼んだ。

 

〈次の指示を〉

「降伏艦を囲め。武装停止と自爆装置を確認する」

〈了解しました〉

 

 第一艦隊の艦艇が、停止した海賊艦の周囲へ展開を始める。

 

『戦場外縁で、四つの艦艇反応が増大』

 

 それまで出力を抑えていた四隻が、同時に主推進器を起動した。

 

 中型艦一隻と、高速武装艦三隻。

 四隻は海賊艦隊の外側から、すでに砲門をこちらへ向けていた。

 

『領主府発行の治安支援識別符号を受信』

「味方なのか?」

『識別上は友軍です。星系連合内の治安協定に基づく共同治安艦隊と登録されています』

 

 四隻のうち、先頭を進む中型艦から通信が入った。

 

〈こちらは共同治安艦隊先遣隊。ロズベル領内で発生した海賊襲撃警報を受信し、援護に参りました。残存する海賊艦を掃討します〉

「戦闘は終了している」

 

 俺はすぐに返した。

 だが、外部艦は速度を落とさない。

 

「海賊艦は降伏済みだ。射撃を停止しろ」

 

 クレイン大佐も、第一艦隊の識別情報を付けて警告を送る。

 

〈こちらは第一艦隊司令官代行、マティアス・クレイン大佐。降伏艦の武装停止を確認している。掃討は不要だ〉

〈当部隊では、完全な武装停止を確認できません〉

 

 外部部隊の指揮官が答えた。

 

〈自爆攻撃の危険があるため、排除を継続します〉

〈待ってくれ! もう武装は止めて――〉

 

 降伏した海賊艦からの通信が、砲撃音にかき消された。

 

 外部艦四隻が、一斉に火を噴いた。

 砲弾と誘導弾が、停止していた海賊艦へ同時に襲いかかる。

 

 一隻が爆発する。

 続けて二隻。

 

 航行不能になっていた中型艦と、クレイン大佐たちが止めた囮艦にも、複数の砲撃が集中した。

 

「撃つな! その艦は降伏している!」

〈武装停止を確認できませんでした〉

「全艦、外部艦を照準追尾! ただし、俺の命令なしに撃つな!」

 

 俺は続ける。

 

「第一艦隊各艦、外部艦の砲口を監視! 全射撃記録を共有しろ!」

 

 

 外部艦は領主府の治安支援識別符号を出している。

 形式上は友軍だ。

 こちらの艦は、降伏した海賊艦を囲んで散開している。撃ち返せば、味方艦まで射線へ入る。

 

「ノア。降伏通信、武装停止時刻、外部艦の発砲記録を保存しろ」

『記録を固定保存します』

 

 ロズベル艦隊が再配置するよりも早く、第二斉射が放たれた。

 

 囮艦の艦橋と通信区画が吹き飛んだ。

 降伏していた小型艦が、二隻まとめて爆発する。

 

『海賊艦から脱出艇三隻を確認』

「救難信号を送信している! 撃つな!」

 

 高速武装艦の砲塔が動いた。

 三つの小さな反応が、一つずつ星図から消える。

 

〈武装艇による接近の危険を排除しました〉

 

 外部部隊の指揮官は、声色一つ変えなかった。

 

 最後に残った海賊艦も、艦橋と機関区画を同時に撃ち抜かれた。

 船体が砕け、熱源が散る。

 

 星図上から、海賊側の生体反応がすべて消えた。

 

〈海賊艦隊の掃討を完了しました〉

 

 外部部隊の指揮官が、落ち着いた声で告げた。

 

〈ロズベル艦隊の皆様、ご無事で何よりです〉

 

 誰も答えなかった。

 

『記録』

 

 ノアの箱舟型投影が青白く明滅する。

 

『最後に撃沈された海賊艦は、攻撃の32秒前に武装を停止しています』

『降伏通信も受信済みです』

 

 セラが、四隻の航路を戦術表示へ重ねた。

 

「海賊襲撃警報を聞いてから来た速度ではありませんね」

『外部警備艦は、海賊襲撃警報の発信以前から、本宙域へ向けて航行していた可能性があります』

「最初から近くにいたか」

 

 戦場へ現れた時には、四隻とも海賊艦へ砲門を向けていた。

 

 救助艇は出していない。

 生存者を探す動きもない。

 

 クレイン大佐から、短い通信が入った。

 

〈第一艦隊側でも、すべての射撃記録を保存しました〉

「消すなよ」

〈もちろんです、レオン司令〉

 

 外部部隊の指揮官が、さらに通信を送ってくる。

 

〈今後の治安確保について、領主府との協議を希望します〉

 

 海賊側の生体反応は、もう星図に残っていない。

 

 四隻から救助艇が出る気配もなかった。

 

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現代日本に住む30歳のサラリーマンが何でもできるチートを手に入れて俗っぽく使う話。▼お金稼いだり恋愛したりするよ。▼ざまぁは気分が悪くなるほどのやつはありません。▼現代ファンタジーというよりSFっぽいかも。▼他のチート所有者なし(重要)。▼AIを補助で使ってます。▼【執筆状況】▼仕事で時間が取れないので更新空きます。▼感想とか評価とかもらえたらちょっと頑張る…


総合評価:4872/評価:8.39/連載:10話/更新日時:2026年09月06日(日) 20:05 小説情報

ヨキですが、静かに生きたいだけなんです。(作者:千遇万歩)(原作:鋼の錬金術師)

目が覚めると、そこは『鋼の錬金術師』の世界。▼しかも憑依したのは、まさかのヨキだった。▼原作知識があるからこそ、危険な未来も知っている。▼だから決めた。▼静かに生きよう。▼だが、小さな選択は人を救い、人との出会いは運命を変えていく。▼これは、平穏を望んだ一人の男が、仲間と共に"もう一つの未来"を紡ぐ物語。


総合評価:72/評価:-.--/連載:15話/更新日時:2026年09月11日(金) 00:00 小説情報


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