前世が大魔道士だった俺、宇宙戦艦を魔改造して銀河を成り上がる 〜退役寸前のゴミ艦隊ですが、魔法で動かせば最強です〜 作:オカノヒカル
領主府へ戻ると、休む前に会議室へ連れていかれた。
俺も兄上も。
長い卓には領主府の上級実務官、港湾管理責任者、民政担当者が並んでいる。
クレインも第一艦隊側の代表として映像回線で参加していた。
副官のセラはいない。
まだ完治していないのだから当たり前だ。
ノアの箱舟型投影だけが、俺の横で静かに浮かんでいた。
「これは何の会議だ!」
ガレス兄上が席につくなり怒鳴る。
上級実務官がそれに答えた。
「現在の領主権限を継続可能か、非常時規定に基づき確認します」
「継続可能に決まっている!」
「確認すべき事項があります」
壁面へ記録が出た。
非常用艇の離陸。
統治権移譲なし。
外部武装組織による拘束。
領主認証の使用。
共同治安艦隊への本星港緊急入港許可案。
「私は騙されたのだ!」
「その可能性も含めて調査します」
実務官の声は変わらない。
「ですが、自由意思を確認できない状態で領主認証が使用された事実は残ります」
「未成立だろう!」
「今回は、です」
兄上の顔が強張った。
別の記録。
先遣隊による海賊掃討のあとに署名された事後承認。
「これも問題にするのか!」
「現在の事態へ至った経緯として確認が必要です」
「海賊を処分しただけだ!」
誰も答えない。
実務官は次へ進んだ。
「戦時中、本星を離れる際、統治権または軍事指揮権の正式な移譲は行われていません」
「緊急事態だった!」
「そのための非常時手続きがあります」
「時間がなかったのだ!」
港湾管理責任者が口を開く。
〈本星港も、領主閣下の退避を事前には知らされておりませんでした〉
クレインの映像が続く。
〈第一艦隊にも通知はありません〉
兄上がこちらを見る。
「レオン! お前から説明しろ!」
「俺も知らなかった」
「だから緊急だったと言っている!」
実務官が一度だけ卓上を確認した。
「現時点で、ガレス・ロズベル閣下が外部からの影響を受けず、領主認証を安全に使用できる状態にあると判断することは困難です」
「私を領主から降ろすつもりか!」
「現時点では、正式な継承処理ではありません」
実務官ははっきりと言った。
「非常時規定に基づく、領主権限の一時停止です」
「同じことだ!」
「いいえ。爵位剥奪でも、継承権剥奪でもありません。正式な事情聴取と裁定は別途行われます」
「なら停止する必要などない!」
「外部武装組織が閣下の認証を利用し、本星港、防衛艦隊、ステーション17、《アーク・ロズベル》に関する権限移譲を試みています」
実務官の視線が兄上へ向く。
「同じ危険を、もう一度許すわけにはいきません」
兄上が何か言おうとする。
その前にクレインが発言した。
〈第一艦隊からも記録を提出します〉
戦闘ログが開かれる。
〈本星防衛戦において、第一艦隊はレオン司令の現場指揮と連携して行動しました。その結果、防衛線を維持できました〉
「クレイン!」
兄上が睨む。
〈第一艦隊側の戦闘記録に異議はありません〉
クレインは視線を逸らさなかった。
「貴様までレオンにつくのか!」
〈どちらにつくという話ではありません。記録された事実です〉
兄上の次の言葉が止まる。
上級実務官が続けた。
「領主権限を停止した場合、通常の継承順位では次順位はユリウス・ロズベル様です」
久しぶりに聞く名前だった。
ユリウス兄上。
「ならユリウスにやらせればいい!」
「現在も長期療養中です」
「病状は安定していると聞いている!」
「生命状態の安定と、領主実務を担えることは同じではありません」
医療側の確認記録が表示される。
長時間の執務。
緊急軍事判断。
外部交渉。
いずれも現状では困難。
「本人による正式な継承受諾または辞退も、この場では確認しておりません」
つまり、ユリウス兄上を飛ばして俺が領主になる話ではない。
それは少し安心した。
実務官がこちらを見る。
「したがって非常時規定に基づき、次の適格者へ統治代行を求めます」
嫌な流れになった。
「俺か?」
「はい」
「第二艦隊司令官では足りないのか」
「今回、指揮していただく対象は艦隊だけではありません」
船ではなくこの星系の領地だ。
さらに、ガレス兄上が結んだ協定の停止。
後始末までやることになる。
「領主代行、か」
「正式な領主継承ではありません。非常時の代行権限です」
「面倒だな」
「必要です」
断って終わる話ではなさそうだ。
「認めん!」
ガレス兄上が立ち上がった。
「レオンなどに領主が務まるものか! そいつは何もできない無能だ!」
会議室が静かになった。
クレインは何も言わない。
港湾管理責任者も。
実務官たちも。
誰一人、兄上へ同意しなかった。
それだけだった。
兄上の顔が赤くなる。
「なぜ黙っている!」
「兄上」
「何だ!」
「命は助かった」
「当たり前だ!」
「なら次は、逃げずに説明してくれ」
「何をだ!」
「海賊のこと。共同治安艦隊との取り決め。外部資本との取引。本星を離れたこと」
まだあるが、いちいち並べるのも面倒だった。
「全部だ」
兄上が俺を睨んだ。
返事はなかった。
**
寝台も机も洗面設備もある。
ただ、通信や認証端末は使えない。
「私の端末を返せ!」
「私有暗号端末は保管対象となっております」
「外部通信を開けろ!」
「許可されておりません」
「第一艦隊へつなげ!」
「軍指揮回線への接続権限も停止されています」
扉の前で、兄上の声が響く。
「私は領主だ! この扉を開けろ!」
警備担当が端末を見る。
「現在、閣下の領主権限は一時停止されています」
「貴様――!」
扉が閉じた。
厚い扉だった。
中から何か聞こえたが、よく分からなかった。
『ガレス・ロズベル領主権限、一時停止記録を確認』
ノアの箱舟型投影が明滅する。
『レオン・ロズベル領主代行権限、登録』
「本当に登録したのか」
『肯定』
「間違いでは」
『再確認。登録済みです』
「そうか」
『関係機関および外部記録網への通知を開始します』
これで兄上が以前使った認証情報だけ持ち出されても、現在の領主権限としては使えない。
ひとまず一つ終わった。
クレインから通信が入る。
〈領主代行閣下〉
「その呼び方はやめてくれ」
〈ではレオン司令〉
「そっちで頼む」
〈第一艦隊は、領主代行命令に従います〉
「今までどおりでいい」
〈今までも、ずいぶん司令の命令で動きましたが〉
「なら問題ないな」
〈そういうことにしておきます〉
第一艦隊と第二艦隊は、今の指揮系統のままでいい。
必要な時に連携できれば十分だ。
『追加報告』
「今度は何だ」
『ルシアン・ヴェイルの所在、依然として確認できません』
そういえば、あの男が残っていた。
「航跡は」
『領主府からガレス・ロズベルの非常用艇が離脱した後、外部商会系の小型連絡艇が出港しています。その後、通常航路から外れ、追跡情報が途絶えています』
「乗っていた証拠は?」
『ありません』
「逃げたか」
『その可能性が高いと判断します』
「記録しておけ」
『了解』
今は追わない。
カレドを守った直後に、所在不明の一人を追って艦隊をばらけさせる理由もない。
**
本星港へ戻った《アーク》は、出た時よりさらに酷い姿になっていた。
艦首盾頭はへこんでいる。
白い外骨格にも傷。
主砲はまだ冷却中。
放熱板も一部交換が必要。
《アーク》も第一艦隊も港へ戻った。
グレッグ隊も帰還し、セラも生きている。
共同治安艦隊は去り、港の外では砲火も止んでいた。
ようやく片づいたと思ったところで、俺の端末が鳴った。
「多いな」
未処理案件。
港湾施設被害調査。
砂漠への着弾地点調査。
第一艦隊修理計画。
第二艦隊修理計画。
共同治安艦隊への抗議資料。
捕虜と負傷者の処理。
外部記録網への戦闘記録提出。
兄上が結んだ契約の確認と一時凍結。
ステーション17。
補給。
避難民の帰還。
まだ増えている。
「ノア」
『はい』
「これは何だ」
『領主代行として処理すべき案件です』
「第二艦隊司令官へ戻れないか」
『兼任されています』
「そういう意味ではない」
『質問意図を再分類します』
「しなくていい」
『領主代行権限の付与に伴い、新たに閲覧可能となった記録があります』
「今度は何だ」
『ユリウス・ロズベルに関する長期療養記録です』
手が止まった。
「ユリウス兄上か」
『肯定』
ガレス兄上とは違い、ユリウス兄上は俺を露骨に役立たず扱いしたことはなかった。
仲のいい兄弟だった、というほどでもない。
兄上自身が病弱で、ガレス兄上へ逆らえるような立場でもなかった。
それでも、子供の頃のことを一つだけ覚えている。
ガレス兄上に笑われていた俺の前へ、細い身体で立った。
「もういいだろう、兄上」
それだけだった。
そのあと何かをしてくれたわけでもない。
俺も助けを求めなかった。
少なくとも、俺を笑う側の人間ではなかった。
「病名は」
『現行記録のみからの簡易回答は推奨しません』
「そうか」
傷なら裂けた場所を見つけて塞げるが、病気は同じとは限らない。
何が、なぜ壊れているのか。
それを知らずに力を流すのは危ない。
「なら全部見る」
『診療記録を開示しますか』
「ああ」
端末へ大量の医療記録が現れた。
俺は、ユリウス兄上の診療記録を開いた。
■これにて第二章【星域防衛】はおしまいです。
第三章【星系新生】の34話からは、週二回(火、金)の更新となりますのでご注意ください。
次回の更新は9月22日となりますので、少々お待ちください。
※第二章の区切りということで、今後の参考に少しだけ皆さんの感想を聞かせてもらえたら嬉しいです。
全部に答えなくても大丈夫です。
一つだけでも、番号だけでも構いません。
【① この先も読みたいと思いますか?】
1.かなり続きを読みたい
2.気になるので、このまま読むと思う
3.第二章までで一区切りでも満足
4.まだ分からない
【② 今後、もっと見たいものはありますか?】
複数でも大丈夫です。
1.レオンと第二艦隊の成長
2.《アーク》や第二艦隊のさらなる魔改造
3.巨大構造物や古代技術の謎
4.帝国との関係
5.ヴァルティアとの対立
6.宇宙戦・艦隊戦
7.ロズベル領の発展
8.レオン、セラ、ノアたちのやり取り
9.その他
【③ 今の時点で「いつか答えを知りたい」と思っている謎や伏線はありますか?】
「あれは結局なんだったの?」
「この人物や出来事が気になる」
といったものがあれば、自由に教えてください。
【④ ここまで読んで、一番好きだった要素やエピソードがあれば教えてください】
戦闘、魔改造、艦隊運営、キャラクター、コメディ、謎解きなど、何でも大丈夫です。
例:
①1
②2、3、6
③巨大構造物の正体
④《アーク》を改造していくところ
くらいの簡単な回答でも大歓迎です。
読者の皆さんが、どこを楽しみに読んでくれているのか知りたいと思っています。
よければコメントで教えていただけると嬉しいです。